★ PCゲームレビュー ★
すでに多くのアドオンソフトが国内外で発売されている「Microsoft Train simulator」だが、また新たなソフトが発売された。今回ご紹介するのは、トワイライトエクスプレスが3月29日にリリースした「Microsoft Train simulator リアルアドオンシリーズ4 JR東日本 東京-横浜(以下東京ー横浜アドオン)」。これまではタイトルに代表されるひとつの路線しか遊べないものがほとんどだったが、このアドオンソフトでは東海道線と横須賀線の東京-横浜間を楽しめる仕様となっている。さて、それでは今回も実写写真を交え、その内容を見ていこう。
■ 二つの東京-横浜間
特にこのアドオンに収録されている3つ目の路線である京浜東北線は、東京駅より南側では東海道本線を、北側では東北本線を利用する形で運用され、神奈川-東京-埼玉を結ぶ通勤・通学路線として多くの本数が走っている。東京-横浜間は、東海道線と京浜東北線が並行して走っているが、東海道線の停車駅が、東京-新橋-品川-川崎-横浜と数少ないのに対して、京浜東北線は各駅に停車し、東海道線は快速、京浜東北線は緩行列車という位置づけになっている(ただし、京浜東北線は山手線と並行する田端-東京-田町間において、昼間は快速運転を行なっている)。 一方横須賀線は、明治22年(1889年)に東海道線の大船駅と当時(今もだが)軍港であった横須賀港を結ぶ目的で開通した路線で、後に久里浜まで延長された。東海道線の列車が静岡のみかんの実と葉(みかんとお茶畑という説もある)をイメージした橙と緑で塗られていたのに対して、横須賀線は海と砂浜をイメージした青とクリーム色の列車を投入。前者を湘南色、後者をスカ色と呼び、両線の始発となる東京駅では一目で行き先がわかるなど実用上のメリットもあった。その後'80年に、横須賀線が分離され、東京駅では地上から地下へ、さらに神奈川-東京-千葉を結ぶ総武本線快速としての直通運転が開始され現在の状態になっている。 もちろん、このアドオンソフトでもそれら線区の状態はよく再現されている。アクティビティで東海道線や京浜東北線を選べば、東京駅の地上ホームを、横須賀線を選べば東京駅の地下ホームを使用する設定になっている。トワイライトエクスプレスでは「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」で、東京駅を収録したものを発売しているが、4作目となるこのタイトルでは再現度もアップ。地上の東京駅のホームからまわりを眺めれば、シリーズ1よりも作り込まれた東京駅を望むことができ、地下ホームの雰囲気も抜群だ。
横須賀線では東京-品川間で地下を走りっぱなしになるのだが、実際よりも明るく再現されているのでそれほど単調にならずにすんでいる。品川を過ぎて横須賀線が東海道本線と別れて行く部分、多摩川の橋梁、横浜駅付近のゴチャゴチャした沿線風景など、さすが4作目と言えるデキだ。
■ 各種通勤・近郊形電車を収録
一般的に、短距離を走り短い停車時間で多くの乗降客を効率よくさばく必要のある通勤列車は4扉、長距離を走り駅の間隔が長くなりがちな特急・急行列車は2扉(もしくは1扉)、その中間的な近郊形は3扉となっている。ある意味扉の数が各タイプを見分けるポイントともなっていたのだが、乗客の便を最優先したE217系の登場で、一概に近郊形とか通勤形とか言えなくなってきているのかも知れない。 とはいえ、211系とE217系には2階建てのグリーン車が組み込まれており、長距離通勤客や、熱海・鎌倉などの観光地に向かう人に配慮されている。また、209系にはラッシュ時には座席をはね上げ、お客さんは全員立たなければならないという6扉車が組み込まれているなど、路線のカラーにあわせた列車となっている。 「東京-横浜」アドオンでは、路線同様3形式の電車の再現度も高い。209系では、ステンレス車体や、編成に組み込まれた6扉車。211系では、複雑な前面形状や屋根上のクーラー類。E217系では、独特の湾曲した先頭車がよく再現されている。211系とE217系には、2階建てのグリーン車も組み込まれ、15両編成という長大な列車を運行できる。 これまでトワイライトエクスプレスのアドオンでは、運転台が単に実車写真をテクスチャとして貼り付けたものであった。リアルと言えばリアルな処理なのだが、運転台から見える風景との落差が大きく、違和感があったのも事実だろう。が、このタイトルではまわりの風景となじむような工夫がされ、その違和感も解消。209系とE217系では、実車同様新幹線にも使われているATC(Auto Train Control:自動列車制御装置)の指示が速度計に表示され、そのATCに沿った運転が楽しめる。 また、211系ではATCより緻密に制御はされないものの、ATS-P(Auto Train Stop-Pattern:パターン方式による自動列車停止装置)での運転が可能だ。これら運転面では従来より遙かに充実した東京-横浜アドオンなのだが、室内視点は今ひとつ。209系では通常の4扉車の室内視点が、211系とE217系では後部運転台の視点が設定されている。209系はともかく、211系やE217系では眺めのよい2階建てグリーン車からの視点を用意してほしかったところだ。
■ アクティビティの数は豊富だが……
・209系運行チュートリアル 東神奈川-鶴見間 このうち、チュートリアルは画面に次に行なうべきことが表示される入門モードで、そのほかはタイトルどおりの列車を走らせるモードだ。最後の2つが通勤時間帯ということで、やや列車のコントロールが大変なものの、すべて季節は夏となっており変化に乏しいのは事実。もともと季節による違いや列車運行の変化の少ない通勤・通学路線だけに難しかったのだろうが、もう一工夫がほしかった。停車駅に近付くと「次は○○~」という車内放送が流れたり、沿線風景や列車そのものがよくできていたりするだけに、残念に思えた点だ。
アクティビティに不満は残るものの、従来のトワイライトエクスプレス作品とは一線を画した列車の再現、ていねいに描かれた駅や町などの風景、そしてATCやATS-Pに従っての運転など、MSTSファンにはぜひ一度遊んでほしいアドオンソフトの登場だ。 ■ JR東日本 東京-横浜間徹底比較 とりあえずお約束ということで、今回も比較写真を掲載。しかしながら、今回は時間帯が悪くて209系の室内写真を撮影できず。加えてなかなか変化のある撮影ポイントが見付からなかったため、外見のみの比較にとどめた。
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□トワイライトエクスプレスのホームページ http://www.twilight.co.jp/ □「Microsoft Train Simulator」のホームページ http://www.microsoft.com/japan/games/trainsim/ □「リアルアドオンシリーズ4 JR東日本 東京-横浜」のホームページ http://www.twilight.co.jp/trainsim/trainsim_jreast.htm □関連記事 【12月26日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ2 JR信越本線 碓氷峠」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011226/yokokaru.htm 【11月13日】PCゲームレビュー「MSTS アドオンシリーズ 国鉄485・583系特急」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011113/485583.htm 【10月15日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/tyuou.htm 【8月24日】PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010824/train.htm (2002年4月4日)
[Reported by DOS/V POWER REPORT編集長 谷川 潔] |
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