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Microsoft Flight Simulator 2002

  • ジャンル:フライトシミュレータ
  • 発売元:マイクロソフト
  • 価格:オープンプライス(推定小売価格11,800円)
  • 対応OS:Windows 98/Me/XP/2000
  • 発売日:2月1日


 フライトシミュレータの定番『マイクロソフト フライトシミュレータ』シリーズの最新版。水陸両用機を含む5機種が新たに追加されたほか、コックピット内部を3Dで再現した「仮想コックピット」機能や、管制官とリアルタイムで更新する「ATC機能」なども盛り込まれた。等高線データを元に地形を忠実に再現している点も見逃せない。


■ 水陸両用機を含む5機種が追加されて全16機種になった

静岡上空を飛行中。向こうは富士山、手前に見えるのは山中湖
 まず最初に新しい機能について、ざっと確認をしておこう。今回新たに追加されたのは、ボーイングB747-400、セスナ172SP、ビーチクラフト バロン 58、セスナ 208 グランドキャラバン、フロート付きセスナ 208 キャラバンの5機種。このほかに旧版(『Flight Simulator 2000 Professional Edition』)に収録されていた11機種が用意され、全16機種が収録されている。

 「ATC(Air Traffic Control)」と呼ばれる、航空機の管制システムも導入された。これは、管制官から飛行する高度や方位をリアルタイムで示されるというもので、プレーヤーは原則としてこの指示に従って飛ばなければならない(オプションでオフにすることも可能)。そのぶん勝手気ままな飛行はできないが、航空業務という巨大な交通システムの一部に組み込まれたという臨場感をたっぷりと味わうことができる。臨場感といえば、今回からコクピット内部を3Dで再現した「仮想コックピット」が採用されたのも見逃せない点だ。いままでは平面的だったパネルやレバーを実物大のサイズで配置。機体の内部と外部がシームレスに描かれることによって、映像に統一感が生まれた。

 等高線をベースにした原寸そのままの地形データが採用された点も、大きな改良点のひとつ。『マイクロソフト フライトシミュレータ 2002』には、富士山やグランドキャニオン、アルプス、ヒマラヤなど世界の主な地形がそっくりそのままの高さと大きさで登場する。これによって、いままで以上に自然な風景が再現できるようになっている。

ボーイング B747-400。旧747をベースに改良した新鋭の大型旅客機。翼単のウィングレットが特徴的

ビーチクラフト バロン58。コミューターやビジネス用として人気がある、双発の小型機だ

セスナ 172SP。汎用の小型機で、農薬散布や空中撮影、軽飛行機の練習用などに使われている

セスナ 208B グランドキャラバン。'85年に登場した比較的新しい機体で、アメリカでは宅配便の輸送等に使われている

フロート付きセスナ 208 キャラバン。208B グランドキャラバンに大型のフロートを取り付けた水陸両用機


■ 教習方式で行われる「フライトレッスン」モード

ムービーを使って操縦と計器類の見かたを簡単に説明
 インストールを終えてソフトを最初に起動すると、タイトル画面に続いてガイダンスが始まる。テキストとムービーを組み合わせた内容で、どことなくテレビショッピングのような雰囲気だ。ここではジョイスティックとキーボードの使い方、計器類の見かたについてざっと学ぶことができる。高度計や方位計などごく初歩的なものについてのみの解説だが、極めて簡潔な説明で、フライトシミュレータの初心者でも十分理解できるに違いない。

 ガイダンスが終わると、そのまま「フライトレッスン」モードへ入る。教官と2人でセスナ 172SPに乗って教習を受けるという設定で、「水平飛行」「離陸」「着陸」など5カテゴリ、全27項目が用意されている。教官の会話がとても自然であること、飛行状況にあわせてインタラクティブなアドバイスを受けられること、また教官が先に手本を見せてくれたあとに同じ動作を行えばよいので、教習はとてもわかりやすい。フライトシミュレータは離着陸できるようになるまでが一苦労なのだが、このやり方なら比較的短時間で基本的な操作をマスターできると思う。ちなみにレッスンは各5~20分程度と短く、必要な項目、苦手な項目だけを繰り返して練習することも容易だ。

 もっとも、すべてを完璧にマスターするとなるとそれなりの時間が必要だし、肝心のフライトを楽しむことができない。カテゴリ「訓練操縦士」の7項目、および「自家用操縦士」の6項目を消化できればプレイに支障はないだろう。

インストール後初めて起動すると、ガイダンスが始まる 「フライトレッスン」では教官と共に搭乗し、教習形式で学ぶことができる 「フライト!」モードでは、飛行する日時を自由に設定できる

高度50,000メートルまで500メートル単位でそれぞれ風速や視界、乱気流の有無なども設定可能 インターネットを経由して気象情報をダウンロード。「いま」の状態で飛行できるというわけだ オプションの設定で、使用するテクスチャのサイズやスムージングを調整することができる


■ 2つのフライトモードで世界の空を舞う

フロート付きセスナ 208 キャラバンに乗るフライト「アラスカ水上機パイロット」を試す
 さて、「マイクロソフト フライトシミュレータ 2002」には2つのフライトモードが用意されている。ひとつは自分で機種、離陸する場所、着陸する場所、天候、時間をプランニングする「フライト!」モード。自由に飛行ルートを設定することができるので、フリーフライトに近い感覚だ。メインメニューから「フライト!」をクリックし、機種と場所、天候、時間をそれぞれ指定する。あまりにも膨大な組み合わせなので、最低でも操縦したい機種と場所ぐらいは決めておかないと途方に暮れてしまうかもしれない。利用する空港は「地域」→「国名」→「都市名」→「空港名」の順で選び、滑走路が複数ある空港の場合は使用する滑走路とその向きを指定することも可能だ。フライトプランはVFR(有視界飛行)とIFR(計器飛行)を選択可能で、ダイレクト(空港間を最短距離で飛行)、低高度エアウェイ、高高度エアウェイ、VOR-VOR(無線標識をつなぎながら飛行)を選ぶこともできる。

 もうひとつは、予め用意されているシーナリー(シナリオ)を楽しむ「フライトの選択」だ。こちらは、世界各地の名所や観光地を遊覧飛行感覚で楽しめるモード。機種や離陸する空港、天候を選ぶことはできないが(着陸する空港は選ぶことができる)、そのぶん空からの絶景を眺められる。搭乗時間は30分から4時間弱までまちまち。難易度もシーナリーによって異なるが、比較的易しく、操縦の難しさよりも風景を楽しむほうに重きが置かれているようだ。今回新たに追加されたシーナリーの目玉は、フロート付きセスナ 208 キャラバンで楽しむ「アラスカ水上機パイロット」だろう。アラスカの雄大な景色を背景に、湖への着水やマッキンリー観光など6本が用意されている。

 新たに追加されたATCは、英語の音声と日本語字幕で表示される。オプションで設定した交通量にあわせて、交信周波数と高度、方位、着陸する滑走路などが指示される仕組みだ。字幕は箇条書きで表示されるのでとても見やすく、必要なら反復を求めることもできる。指定に従って操縦すれば目的地まで楽に移動することができるので、飛行の自由度は失われるが、これによりフライトシミュレータとしての完成度は確実に上がった印象だ。

 もっとも、ATCの指示を無視してもペナルティが課せられるわけでもないので、その意味では管制官とのやりとりはあくまでも「ATCごっこ」に過ぎない。ATCを楽しめるかどうかはプレーヤーの思い込み次第だと思う。頻繁にポップアップするウィンドウが鬱陶しく感じる感じることも少なくなく、かといって表示を止めてしまうと英語の音声だけになってしまうわけで、ATCを利用するかどうかはちょっと悩むところだ。商業飛行を目的としたシーナリーならATCの利用は必須だが、フリーフライトや観光系のシーナリーなら、無理に使うまでもないかもしれない。それよりは、景観や操縦の楽しさを優先したほうがよいとも思う。

エンジンを起動して滑走路まで移動 離陸。アラスカの雄大な自然を楽しむ ATCで管制官の指示を受けた

「マップビュー」を開いて現在地を確認。飛行場を選ぶ ATCにしたがって高度と進路を取り、空港が目視できる距離に接近 そのまま無事着陸。30分ほどの遊覧飛行を楽しむことができた


■ 映像の緻密さと美しさにため息

セスナ 172SPでロサンゼルス国際空港(LAX)を離陸。今日はあまり天候がよくない
独特のデザインのターミナルビルと管制塔。右奥に見えるのがダウンタウン
 現時点での飛行時間は30時間程度だろうか。旧版の「フライトシミュレータ」シリーズや「コンバットフライトシミュレータ」シリーズでそれなりに飛んでいるので、改めて飛行訓練することなく、すぐに飛ぶことができた。シーナリーを何本か試したほか、新たに追加された5機種とヘリ(ベル206Bジェットレンジャー)を中心に、世界各地の遊覧飛行を楽しんでいる。

 以前、E3の取材で出かけたロサンゼルス。なんとなく気になるニューヨークマンハッタン島。ニュースでよく見かけるカブール近郊。そして、筆者が住む霞ヶ浦周辺。実際に(というか、仮想的になのだが)操縦桿を握って飛んでみると、現地の様子が手に取るようによくわかる。街の広さや位置関係、大まかな距離などを体感することができて、これが実に楽しい。

 映像の緻密さにも感動した。たとえば東京の場合、レインボーブリッジや東京タワー、新宿の高層ビルといったランドマークはもちろん、大手町のオフィスビルや聖路加、皇居なども正確に描かれ、その周辺を囲む低層のビル群までもがひとつひとつきちんと“存在”している。いったいどれほどの手間を費やしたのか、考えるだけでも気が遠くなってしまいそうだ。

 また高度線をベースに地形を再現しただけあって、高高度から見下ろした映像も、ため息が漏れるほど美しい。このソフトを手に入れたら、B747-400に乗って羽田空港を離陸し、関西空港に向かうルートをぜひ一度試していただきたい。快晴の日の午後、14時前後がいいだろう。離陸直後に見える都心部、遥か彼方に連なる奥多摩と丹沢の峰々、眼下に見下ろす富士山の雄姿、駿河湾の優雅な曲線、海上に浮かぶ関空。『マイクロソフト フライトシミュレータ 2002』がいかに凄まじいソフトであるか、思いっきり納得できるはずだ。

 ただし、劇的に向上した美しさの代償として、「マイクロソフト フライトシミュレータ 2002」はいままで以上に高いマシンスペックを必要とする作品になっている。今回もっとも顕著に感じたのが、フロート付きセスナ208キャラバンで着水したときだった。飛行中はスムーズに描きかえられていた画面が、着水して水しぶきが舞った瞬間に、突然カクカクとコマ落としになってしまう。想像以上のCPUパワーが、水しぶきの描写に費やされているのだろう。

 また湾岸から都市部上空へと進入するシーン、たとえばハドソン川方面からマンハッタンに接近する場合や、東京湾から東京都心部へ接近する場合なども、パフォーマンスの低下が起こる場合がある。霞の向こうに無数の高層ビル群が現れた瞬間にハードディスクへのアクセスが発生し、そのまま5~6秒画面が止まってしまったことがあった。いずれもたいしたことではないのだが、こうした現象を最小限に抑えるために、そしてクオリティの高い風景を自然に楽しむためには、やはりそれなりのマシンパワーが必要だろう。

塗料がはがれ、いかにも使い込まれたという感じの概観。パイロットの姿も見える 大きく旋廻して北東のダウンタウンを目指す 高層ビルの間を飛行。ビルに描かれた文字まで再現されている

ハリウッドに向かうが、天候が崩れて嵐に巻き込まれてしまった 遠くに“HOLLYWOOD”の文字が見えてきた。翼よ、あれがハリウッドの丘だ!! 巨大な文字の横をすり抜けて、バーバンク空港へと向かう


■ フライトシミュレータの次に来るもの

 推定小売価格11,800円(オープンプライス)はやや高く感じるかもしれないが、しかし手に入れる価値は十分どころか、たっぷりあると思う。というか、フライトシミュレータ系のソフトが好きな人なら、この作品を絶対に見逃してはいけない。現時点では紛れもなく最高のフライトシミュレータであり、おそらく当分の間、これを超える作品は登場しないだろう。ひたすら絶賛し続けている自分がなんだか滑稽に感じるが、諸手を上げておススメできるシミュレーションゲームにそうそう巡り合えない昨今、レビュアーとして大変シアワセなことだ。

 幸い旧版(「Flight Simulator 2000」「Flight Simulator 2000 Professional Edition」「Flight Simulator 98」「Flight Simulator for Windows 95」の4製品)を持っているユーザーなら、2002年6月30日の消印有効で3,000円のキャッシュバックが行なわれるとのことなので、このチャンスを有効に利用しよう。

 あと直接関係ない話なのだが、余談ということで最後にちょっとだけ。今回『マイクロソフト フライトシミュレータ 2002』をプレイして、強く確信したことがある。それは「マイクロソフトは、地球を丸ごとデータ化するつもりだ」ということだ。

 現在マイクロソフトは『フライトシミュレータ』シリーズ以外にも、鉄道をテーマにした『トレインシミュレータ』、そしてロンドンやサンフランシスコ市街を気ままにドライブできる『 ミッドタウンマッドネス』シリーズを販売している。しかし地球の地形や各都市の街並みをそっくりそのままデータ化することができれば、飛行機や鉄道をそれぞれ分けて扱う必然性が失われてしまう。ならば、いずれこれらのソフトは一本化され、飛行機も鉄道もクルマもなんでもありの「グローバルトラフィックシミュレーション」のようなものに統合されていくのではないだろうか。

 はたしてそれが10年後なのか、あるいはもっと遠い未来なのかはわからないが、「ニューヨークから成田まで飛行機で飛んで、成田から都内へは鉄道で移動。その後、首都高をクルマで走る」といった作品が登場するかもしれない。これはエンターテイメントであると同時に、地球規模のナビゲーションシステムとしても利用可能であり、新しいビジネスになるだろう。マイクロソフトが乗り物系シミュレーションにこだわる理由は、おそらく、このあたりにあるのではないかと筆者は思う。

フロート付きセスナ208キャラバンで着水。水陸両用機の登場で楽しさも広がった セスナ172SPに乗って、夜の都心を空中散歩。前方に東京タワーが見える ニューヨーク、マンハッタン上空。エンパイアステートビルの真横を抜ける

そのままハドソン川を越えて、自由の女神が立つリバティ島の西側を旋廻 カブール空港からベル206BジェットレンジャーIIIで離陸 ATCのメッセージは英語の音声で流れるほか、日本語字幕でも表示される

(C) 2002 Microsoft Corporation. All rights reserved.


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□「Flight Simulator 2002」の公式ページ
http://www.microsoft.com/japan/games/fs2002/
□関連情報
【1月1日】PCゲームファーストインプレッション「Microsoft Flight Simulator 2002」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020101/fs2002.htm
【12月11日】マイクロソフト、水陸両用フロート付セスナも操縦可能な最新版「Flight Simulator 2002」を2月1日発売へ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011211/fs2k2.htm

(2002年1月30日)

[Reported by 駒沢 丈治]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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