★ PCゲームファーストインプレッション ★
PCゲーム史上最高のベストセラーシリーズといっても過言ではないマイクロソフトの「Flight Simulator」の新作がいよいよ日本でも2月1日に発売される。「Flight Simulator 2002」(以下、FS2002)は、グラフィックエンジンの大幅強化、バーチャルコクピットの採用など、新作にふさわしい全体の底上げをはかりつつ、その一方で、離着水可能な水上機の実装、21,000もの空港を収録、ATC(航空交通管制システム)のフルサポートなど、ユーザーニーズにもしっかり応えた充実した作品に仕上がっている。本稿では発売に先立ち、FS2002はどんなゲームで、またどういったゲームプレイが可能なのかといった基本的な情報をまとめておきたい。 ■ まったくの初心者でもOK! 充実のフライトレッスン
空港の数はFS2002でついに21,000にも達し、任意の空港を指定するためには幾重にもフィルタを掛けて検索をしなければならない。日本の空港も成田、羽田はもちろん、全都道府県の空港を収録しており、貴方の地元の空港から直接韓国の仁川空港に着陸したり、沖縄に行くと見せかけておいて途中で進路を変えて台湾に行くこともできる。
特に今回、水面があればどこにでも降りられる水上機が加わったため、ホノルル空港を飛び立ち、途中着水しながらハワイ全島をまわったり、関空から琵琶湖観光に向かったりと、シチュエーションは無限と言い切っていいほどまでに広がっている。ともかくも、空への好奇心とわずかな遊び心さえあれば、無限に遊び続けられるのがFS2002である。
おそらくFS2002を初めてプレイする人はこういった凄まじいデータ量にまず圧倒されることだろう。「ジャンボジェットの飛ばし方なんてぜんぜん知らないし」とプレイする前から不安に思う人も多いかもしれない。しかし、FS2002は前作にも増してフライトレッスン要素を充実させており、具体的には膨大な量のマニュアル、ムービーによる解説、インストラクター付きの「フライトレッスン」モードで、一からすべてを学べる仕組みになっている。今回マニュアルはすべてPDFファイルで提供され、以下7冊が揃えられている。その詳細は以下のとおりだ。
FS2002のセットアップ情報やオプション設定の説明など、FS2002の概要部分が簡潔な表現でまとめられている。
・「ロッド マチャドのグラウンドスクール」 全187ページ
・「航空機ハンドブック」 全118ページ
・「フロート付き水上機ハンドブック」 全24ページ
・「ATCハンドブック」 全71ページ
・「クイックリファレンスガイド」 全7ページ
・「もっと楽しむために」 全35ページ
ところで、FS2002で驚くべきは、マルチプレイモードをまるまるインストラクターモードに割り当てていることだ。具体的にはFS2002のマルチプレイモードでは、教官と生徒にわかれ、生徒はふつうに操縦する一方で、教官も生徒のゲーム画面を共有し、操作の具合を厳しくチェックしつつ、チャットであれこれ指示を出すことができる。これならマニュアル嫌いな人も一発だろう。従来、近い空域をともに飛び回るだけだったマルチプレイモードも、今回も改良により複数人で体験を共有できるという点で非常に親しみやすくなったといえるだろう。
■ 収録機は新機体5機を含む、全16機
これらは、フライトの際に同じ空域を航行し、プレーヤーとの接触事故を起こす危険性を含ませている。こういった大事故を未然に防ぐためにATCがあるわけである。ATCは16機種のうち、第一次世界大戦で活躍した「ソッピーズキャメル」以外はすべてATCを使用することができる。これは「Combat Flight Simulator 2」からの復活組である「ボート F4U コルセア」も同様だ。 さて、FSシリーズでは、98ではヘリコプター、FS2000ではコンコルドといった具合に毎作ごとに目玉となる強力な機体が収録されてきた。FS2002ではどうかというと、水陸両用フロート付きセスナ「C208 キャラバン」がそれに当たるだろう。 C208 キャラバンは、足回りに車輪付きのフロートを擁した水陸両用の単発セスナで、ほかの航空機と同様、空港の滑走路に自由に離着陸できることに加え、水面に着水する機能を持つ。水上でスロットルを全開にすると、ゆっくりと水上を進み始め、しばらくするとフロートの左右に激しく水しぶきを上げ、水上に白く美しい軌跡を残して速度をあげてゆく。この際の疾走感は従来の陸上機にはなかった心地よさがある。 離水する際は、厳密にはまず周りに航空機がいないかどうか確かめ、ATCで離水許可を求め、しかるのちに舵を上げ、ヨークを引きし、さらに吹き流しをみたり、放送を聞いたりして風向きを調べて風上をまっすぐ進まなければならない。が、ともかくも、水上で出力をぐんぐん上げ続け、水しぶきがプロペラにかからなくなったところで機首を上げれば機体はふわりと浮かぶ。疲れてきたら(別段疲れなくてもいいがシチュエーション的に)、出力を下げ、フラップを最大角度にしてゆるゆると着水すればいい。この気軽さこそが水上機の醍醐味といえるだろう。 また、離水/着水のほかにも、状況に応じた4種類の水上移動が行なえる。中でも「セイリング」は、エンジンアイドル状態で風の赴くままに水上を航海するというもので、こういった楽しみはこれまでのフライトシミュレータタイトルでは味わえなかった要素だ。水上機にはまったく興味がない人から、水上機といえば英軍の水上雷撃機“ソードフィッシュ”や旧日本海軍の水上戦闘機“強風”を思い浮かべてしまう人、はたまた実機所有者まで、ユーザーを問わず満足度の高い新要素といえるのではないだろうか。
■ ゲーム世界との一体感が素晴らしいATCシステム
特にFSシリーズは、セスナやセイルプレーンのみならず「大型旅客機も飛ばせる」というところに醍醐味があり、「だったらATCでIFR(計器飛行)飛行させるべきだろう」という主張は至極まっとうなものだった。これまでFSシリーズでは「Pro Pilot '99」のようにセスナ機で視界ゼロの嵐の中をATCとGPSを頼りに飛び続けるなんてことはできなかったのである。 FS2002でついに搭載されたATCシステムは、ATCそのものの機能の搭載に加え、ATCを必要とする環境までリアルに再現している。前述したように、ゲーム世界には自機のほかに無数のコンピュータ機が存在している。それも単に上空を飛び回っているだけでなく、着陸直前であったり、タキシング中だったりする。つまり、現実世界と同じように待たされたりするわけである。 ATCは音声でやりとりされ、プレーヤーは操縦桿を握ったまま、ATCウィンドウにリスト表示される項目の中から適当な番号を押していくだけでいい。通信内容は全世界すべて英語で(やや荒っぽい仕様だが、FS2002では全世界の空港でATCが利用されている設定になっている)、日本語版ではその翻訳文が字幕で表示される。音声は男女合わせて10パターン用意され、航空交通量(空域の混み具合)も「ATC」オプションで自由に設定できる。このあたりのこだわりようは実に素晴らしい。
これがあるがために、ボーイングに乗るのがおもしろくてたまらない。ロッド マチャド教官によれば、IFR飛行は「自家用操縦士」と「計器飛行」の2つの教程をすべてクリアした後でなければならないと厳格に規定しているが、そんなことは聞いてられないぐらいにおもしろいのである。計器飛行では、飛行ルート、その各過程における高度などが厳密に定められ、離陸時もいきなり滑走路を走り出すことは許されず、管制官からクリアランスをもらわなければならない。滑走路の混み具合によってはしばらく待たされることもある。こういったシチュエーションプレイがフルインタラクティブな環境で行えるというのは、多くのフライトシムファンにとって大きな喜びになるに違いない。
■ FS2000より軽く美しくなったグラフィック 最後にグラフィックについて触れておきたい。FS2002のゲームエンジンは、2000を改良したものを採用しており、グラフィックエンジンもFS95からの延長線上にある。が、見た目としてまったく違った印象を受けるのは、自動生成シーナリーと呼ばれる新技術の導入により、地表に建物やオブジェクトが自動生成されるようになったためと、海岸線が「Combat Flight Simulator 2」同等の滑らかさになったことによる。 機体のディテールもより細かくなり、アンチエイリアスにも対応したことで「Combat Flight Simulator 2」よりまた一段とリアルになっている。今回、太陽光が機体や水上に反射するようになり、また地上に機体の陰を投影することもできるようになっているのも大きい。さらにハードウェアT&Lに対応したことにより、対応ビデオカードでのパフォーマンスも向上している。事実、同程度のオプションではFS2000より軽くなっているようだ。
ただ、FS2002のグラフィックも完璧ではなく、たとえば、リフレクション効果については月光は適用外で、アンチエイリアスを掛けると特に離陸直後の外部視点ではめだってパフォーマンスが落ち、また自動生成されるオブジェクト群は米国的建築物のみとなっている。しかし、事実上、FS98の焼き直しに過ぎなかった前作に比べれば、グラフィックのクオリティは格段に向上している。今後、サードパーティ各社より発売が予想されるシーナリーも楽しみな存在といえる。まさしくフライトシムファン待望の大作の登場といえるだろう。
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□マイクロソフトのホームページ (2002年1月1日)
[Reported by 中村聖司] |
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