★ PS2ゲームレビュー ★

今度のFFは声と表情で表現する
新たな感動を生み出した大作RPG

ファイナルファンタジー X

  • ジャンル:ロールプレイングゲーム
  • 発売元:株式会社 スクウェア
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 価格:8,800円
  • プレイ人数:1人
  • 発売日:7月19日(発売中)


 7月19日、待ちに待ったファイナルファンタジーの新作「ファイナルファンタジー X(以下FFX)」がついに発売された。
 FFシリーズで初のプレイステーション 2対応とDVD-ROM化、さらに声優の起用など、今までとは大幅な進化を遂げたFFX。それらの変更がゲームにどのような変化をもたらしたのかを、プレイした感想とともに紹介したい。


■ 音声を取り入れることで新境地を開拓

顔を見ているだけでキャラクタの感情がわかる。口もセリフに合わせて動くが、すべてリップシンクしているわけではないのが少々残念
 今回のポイントは、シリーズすべてを通して初めてキャラクタが音声で“しゃべる”ようになったことと、キャラクタの表情が変わること。これまでは、画面に表示される文章とキャラクタの動きで感情を表現してきたが、ついに声や表情で“想い”を伝えるようになった。

 音声は、主要キャラクタ以外にも名前の出てくるほとんどのキャラがしゃべる。イベントや町での会話はもちろん、戦闘中でもキャラクタたちは個性豊かな会話を交わす。シリーズ初の音声ということで、世界観や感情移入の点で個人的に心配していたが、感想としては、しゃべることでよりキャラクタの個性が引き立ち、親近感がわくようになったと言える。

 また、デモムービーに代表されるように、キャラクタの眼球の動きなどが実現したことで、今までにない感情表現が可能となっているのもポイント。キャラクタの心情がよりわかりやすくなっている。


■ 一癖も二癖もありそうな個性的なキャラクタ

物憂げな表情を浮かべるティーダとルールー。ふたりとも、内面はもちろん外見も特徴的
 FFXでプレーヤーの分身として活躍するのは、水中格闘球技「ブリッツボール」の選手でもあるティーダ。性格は明るく子供っぽい。「~っす」と語尾に付くのが特徴で、スポーツマンタイプだ。ゲームでは個性的な衣装を着ているが、これは私服ではなくブリッツボールの競技用の服である。町中でも競技服を着ている人を多数見かけることから、FFXの世界では私服としても通じるらしい。

 一方、ヒロインとしてティーダと共に旅をするのは、偉大なる召喚士の血を引く少女ユウナ。純粋で一途な性格で、ファイナルファンタジーシリーズのヒロインとしては珍しく控えめでおとなしい。召喚獣に対しても、「呼び出す」というより「来ていただく」といった印象が強い。しゃべり方は真面目な優等生といった感じで、非常に好感度が高く、大正風アジアンテイストあふれる衣装が特徴的だ。

 他にも、ブリッツボールの選手兼コーチのワッカや、ユウナの姉的存在のルールー、幼いころからユウナに付き従うキマリ=ロンゾなど、見た目も性格も個性的なキャラクタばかり。

 キャラクタの性格づけや、その行動は映像の表現力の強化により、従来よりもダイレクトにプレーヤーに伝わるようになっている。

ティーダ ユウナ
バリバリ体育会系の主人公。パーティーの中では小柄な方で、行動も一番子供っぽい 奇抜なデザインの和服(?)に身を包むヒロイン。舞を舞う姿が非常に美しい


■ 敵に合わせた戦略を考えろ!!

 戦闘は、最大で味方が3人、敵が3人まで同時に戦う。戦闘メンバー以外は常に待機していて、L1ボタンを押すことで、ターンを消費することなくメンバーを交代することができる。
 FFXは前作のようなリアルタイムではなく、ターン制を採用している。パラメータの“素速さ”が高いほど行動する順番がまわってくるシステムだ。そのため、“素速さ”のパラメータの低いキャラクタや魔法で遅くさせられていると、1回攻撃する間に2回攻撃される場合もある。もちろん、その逆も可能。
 敵味方がどの順番で行動するかは、戦闘画面の右上に常に表示されていて、次に誰が行動するかが一目でわかる。これを上手く利用すれば、次に行動する敵を集中的に攻撃したり、次の攻撃に耐えられそうにないメンバーを交代させることもできる。

 また、戦闘においては敵の弱点を知ることが重要になる。「見破る」アビリティをもった武器かライブラの魔法を使うと、相手の弱点がわかる。普通の攻撃でほとんどダメージを与えられなくても、弱点に見合った攻撃をするとあっさり倒せる場合もあるのだ。特に今回は、空中に浮いている敵の回避率がとても高いため、飛び道具や魔法をうまく使わないと非常に苦労するだろう。

 出現した敵に合わせ、どのメンバーでどのような攻撃をするかが戦闘の決め手となるので、様々な攻撃を試して最適な戦い方を見つけよう。力押しだけではなかなか勝てない。

 さらに、各キャラクタにそれぞれ「オーバードライブ」と呼ばれる必殺技が用意されている。序盤はダメージを受けることでオーバードライブゲージが増加していき、最大まで溜まると発動させられる。オーバードライブはキャラクタによって内容が異なり、タイミング良くボタンを押すことで威力を発揮したり、順番にボタンを押すことで威力が上がるキャラクタもいる。失敗しても攻撃が失敗するというわけではなく、威力が低下するぐらいのペナルティだから、何度もチャレンジしてコツをつかもう。
 このオーバードライブを使えば、通常の何倍ものダメージを与えられるから、ボス戦などのここぞという時に使うといい。

 前作までで不評の多かった長時間かかる召喚獣のエフェクトは、FFXではコンフィグ設定で通常の「ノーマル」と、短縮された「ショート」から選べる。また、プレイステーション 2のおかげか、戦闘シーンの始まりと終わりにかかる読み込み時間が、時間にして2、3秒ととても短い。そのため、ストレスなく戦闘が行えるのはとてもありがたい。

 PS2になり、この戦闘時のエフェクトは非常に豪華になり、行動を起こすたびに変化するカメラワークも大きな特徴となっている。視点移動は毎回ランダムだが、キャラを隠したりなどすることなく、演出としてうまく機能している。

左に敵の情報、右に行動順序、上に戦況情報、下にパーティーの状態と、所狭しとデータが表示される。データを見極め、自分のおかれている状況を常に把握しておこう


■ スフィア盤でお気に入りキャラをパワーアップ

 FFXでは成長システムに経験値ではなく「スフィア盤」を使用している。戦闘でAP(アビリティポイント)を獲得し、一定数溜まるとS.LV(スフィアレベル)が1つ増える。このS.LVの数だけスゴロクのようにコマを進めていき、その通った道によりキャラクタは様々なタイプに成長していく。止まったマスが「体力」ならHPが上昇し、「魔力」なら魔力が増える。また、魔法や特技もスフィア盤で覚えていく。

 初めのうちは、各キャラクタがそれぞれのポイントからスタートするため、誰がプレイしても同じように成長していく。だが、シナリオを進めるうちに、他のキャラの道にも進めるようになる。そうすると、肉弾戦のキャラに攻撃魔法を覚えさせたり、魔法が得意だが体力の少ないキャラの体力を増加させることもできる。このシステムを使えば、自分のお気に入りキャラを好きなようにカスタマイズすることが可能となり、他の人とは違う戦術が使えるようになる。
 ただし、何も考えずに成長させていくと、どのスキルも中途半端な器用貧乏なキャラになってしまう。そのため、どんなスキルを覚えさせたいか考えて成長させるといいだろう。


■ 召喚獣をいかに使いこなすかが勝利のキーポイント

初めに召喚できるヴァルファーレ。飛行しているため、空中の敵にも絶大な力を発揮する召喚獣
 ファイナルファンタジーシリーズで、もはや欠かせない存在となった召喚獣。FFXでもその存在感は健在で、物語のキーを握っている。
 前作までは、戦闘時に呼び出して敵に攻撃してもらい、一回攻撃し終わったら再び還らせるという使い方だった。だがXでは、一度呼び出すと、任意に還らせるか攻撃で倒されるまでパーティーメンバーの代わりに戦ってくれる。そのため、召喚獣にも体力や力など、それぞれのパラメータが用意されている。

 召喚は、戦闘でユウナの行動の時に行なえる。コマンドで召喚する召喚獣を選ぶだけで召喚は可能。その後、メンバー全員に代わり召喚獣が敵と戦う。後は普通の戦闘と同じで、自分の順番が来たらコマンドで行動を選択して攻撃。戻るを選択するか、HPがなくなると召喚獣はいなくなり、再びメンバーと交代になる。

 召喚獣は、序盤はユウナのパラメータが成長するとともに自動的に強化されていく。だが、あるアイテムを手に入れれば自分で成長させることも可能だ。
 召喚獣の育成は、アイテムなどを使うことでパラメータをアップさせたり、様々な技・魔法を追加することができる。どのアイテムを与えると何が成長するかは決まっているので、色々与えてみてどういった成長をするのか調べていこう。

 前作までは序盤に登場した召喚獣は終盤ではほとんど必要としなかったが、FFXではうまく育てれば終盤でも活躍させられる。気に入った召喚獣は集中的に育て上げ、頼りがいのあるパートナーにしよう。


■ ブリッツボールでリーグ優勝を目指せ

 FFXのキーワードのひとつにティーダが選手として活躍している「ブリッツボール」がある。これは、球体状の巨大な水槽の中で、互いのゴールに球を入れ合う競技だ。
 試合は6対6で行なわれ、相手ゴールに入れれば1点が入る。前半5分、後半5分の合わせて10分で、より多くの得点を手に入れたチームが勝ちとなる。しかし、ただ球を入れ合うだけではなく、体を使った妨害が可能だ。激しいタックルで相手を吹き飛ばすところから、水中格闘球技とも呼ばれている。
 なおFFXの世界では、ブリッツボールは全国的に広まっているスポーツで、各地にチームが点在し、町のいたるところで選手の姿を見かける。

 ゲーム中、何度かブリッツボールをプレイすることになるが、ドッヂボールとサッカーを足したような独自のルールを持った競技なので、慣れるまでに多少時間がかかるだろう。
 操作方法は、攻撃と防御で異なる。攻撃の時は、方向キーかL3ボタンで移動。移動時以外はコマンド選択式になり、□ボタンでコマンドを開き、パス・シュートから選択。成功するかどうかは、妨害する敵のパラメータや目標との距離によって決まる。パスもシュートもなるべく目標に近づいて行なうのが成功させるポイントだ。
 防御時は完全オートになっており、自動で球を持った敵に向かっていく。この時は操作ができないので、味方が無事ゴールを守り切れるよう祈ろう。

 この競技は、ある程度ストーリーが進むと好きなときに楽しめるようになる。自分でチームを育成し、優秀な選手を各地でスカウトし、大会に参加することができるという、スポーツ要素と育成シミュレーション要素を兼ね備えたゲームシステムになっている。

 また、操作方法も独自のものだから、初めのうちはなかなか大会で勝つことは難しいだろう。だが、コツを掴めると俄然楽しくなってくる。大会でもらえる賞品も魅力的だが、純粋にゲームとして遊べるのだ。一試合が前後半合わせて10分と短く、シナリオを進める合間にプレイできるし、少し時間が空いた時などに少しずつプレイするのにちょうどよかったりする。

 ひたすらシナリオを進めるだけではなく、ブリッツボールもぜひ楽しんでもらいたい。


■ 夏休みはFFXをしゃぶりつくそう

 初のプレイステーション 2専用とのことで、期待と不安が入り交じった状態でゲームをプレイしていたが、良い意味で裏切られた気がする。
 まず、スペックに見合った美しいキャラクタや背景が挙げられるだろう。キャラクタは瞳の動きまで再現されており、表情からも感情をうかがうことが可能だ。背景も、リアルなだけでなく、見事に独自の世界観を構築している。

 さらに、DVD-ROMを採用したことも大きな長所となっている。その大容量のため、ムービーの画質を劣化させることなく収録しているし、ディスクの交換も必要ない。また、DVDでなければ、これほどの音声は収録できなかったであろう。

 ゲーム内容に関して感想を言えば、やればやるほど味が出るスルメ的ゲームだ。様々なミニゲームが用意され、どれもがやり込む要素を含んでいる。もちろん、ブリッツボールもおもしろく、各地でスカウトする楽しさもある。加えて、隠し要素も多く、一度クリアしただけではまだまだ遊び尽くしたとは言えないだろう。

 この夏休みは、自分なりの遊び方を見つけ、FFXを遊び倒してはどうだろうか。

プレーヤーを圧倒する美麗な映像の数々。しかも、サウンドは一部5.1chに対応しているから、対応するシステムでは迫力のあるサウンドも楽しめる。ゲームという枠を超え、「ファイナルファンタジー」はどこまで進化していくのだろう

(C) 2001 SQUARE CO.,LTD.


□スクウェアのホームページ
http://www.playonline.com/
□ファイナルファンタジーオフィシャルサイト
http://www.playonline.com/ff/index-j.html
□関連情報
【7月24日】スクウェア、「ファイナルファンタジーX」初回出荷214万本の9割を販売完了。追加生産を決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010724/square.htm
【7月19日】スクウェア、「ファイナルファンタジーX」発売記念イベントを開催。発売初日だけでダブルミリオンの出荷を達成
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010719/square.htm
【7月19日】「ファイナルファンタジーX」、SHIBUYA TSUTAYAで発売カウントダウン。都内各所で早朝販売開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010719/ffx.htm

(2001年7月25日)

[Reported by 田名網陽平]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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