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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人150台湾ドル(約450円)
■ 今年のキーワードは「消費券」。不況下でも即売コーナーの売り上げは好調
最新ゲーム機やゲームソフト、オンラインゲーム等に使用するプリペイドカード、グッズのたぐいまで、ありとあらゆるものが取引されている。メーカーやショップも、近年はTaipei Game Showで売りまくるために、抱き合わせにして値下げしたり、限定アイテムを付けたりなど、他との差別化に余念がない。売り手、買い手で混み合うブースの風景はTaipei Game Showの風物詩のひとつといっていい。 今年は世界的な不況により、即売コーナーの後退が予想されたが、結果はまったく逆で、例年並みかそれ以上の好評を博していた。もともとゲーム(デジタルエンターテインメント)は比較的不況に強い産業と言われるが、今回追い風となったのは「経済振興消費券(消費券)」と言われる、経済振興を目的に全住民を対象に配布された地域振興券の存在である。 消費券は、現在日本でその取り扱いが議論されている「定額給付金」とまったく同じ性質のもので、台湾では1月21日から1人当たり3,600台湾ドル(約1万800円)をクーポンの形で配布。金券との交換は制限され、使用期限が定められているものの、基本的に現金と同じように使うことができる。3,600台湾ドルといえば、なかなか使い出のある金額であり、メーカーやショップもそれに当て込んで、消費券の使用に対して一定のプレミアムを提示したりするなど、Taipei Game Showでの使いっぷりを見る限りでは、経済対策に一定の効果があったと言って良いようだ。 初日に行なわれた遊技産業振興会(日本のCESAに相当)の開幕セレモニーでも消費券の話題で持ちきりだった。祝辞を述べた台湾経済部長(経済産業相)の尹啓銘氏は、消費券の効果を自画自賛し、それと同時にゲーム業界が毎年40%という高い成長率を維持していることを祝した。 これに対して、遊技産業振興会初代会長の王俊博氏(Softworld総経理)は、挨拶の中で「オンラインゲーム業界は消費券に落胆した。なぜなら消費券はプリペイドカードに使えないから、(決済にプリペイドカードを使用する)オンラインゲーム業界はまったく恩恵を受けられなかったからだ」と尹氏の目の前で消費券を否定し、会場をどよめかせた。 王氏は聞き手のどよめきを予想してたかのように一度言葉を切り、場内を眺め渡して、「しかし、オンラインゲーム業界は(消費券に関係なく)年末年始の間も右肩上がりの成長を続けた。オンラインゲーム業界は消費券がなくても成長できる産業であるということであり、プリペイドカードをあえて外した台湾政府は先見の明がある!!」と中華圏らしいまとめ方で台湾政府の消費券政策を誉めあげ、大きな拍手を受けた。
なお、今年の開幕セレモニーのメインイベントは、遊技産業振興会の新会長就任式だった。台湾ゲーム業界の名実共に長老的な存在である王氏に代わり、2代目会長に就任したのは、台湾指折りのデベロッパーとして知られるXPEC総経理の許金竜氏。最有力候補だったGamania CEOのAlbert Liu氏を抑えての当選であり、一気に若返りが計られる。日本や欧米、そして中国のメーカーとの交流もあり、今後、台湾ゲーム産業の海外展開が勢いを増す可能性もある。
■ コンシューマゲームとアーケードゲームが勢いを増すTaipei Game Show
プラットフォーマーでは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアジア部門SCE Asiaの台湾支部SCET(Taiwan)と、台湾Microsoftが特大のブースを出展。それぞれ数十タイトルの試遊台を設置したほか、初日の午前中からプレスカンファレンスを開催し、初日の会場を大いに盛り上げてくれた。 台湾メーカーでは、Softworldのゲームパブリッシング部門Gameflierを筆頭に、Wayi、M-etel、IGS、IGC、iPlayer、Cayennetechなどが出展。GamaniaやSoftStar、FunTownといった海外展開を果たしている大手メーカーが出展を見合わせる中で、新規メーカーによる新規タイトルラッシュは依然として続いているという印象だ。 日本のメーカーは、バンダイナムコゲームスとコーエーが出展していた。バンダイナムコゲームスは、アーケードゲームのみの出展で、ブース規模は中程度だったものの、「太鼓之達人 亜州版」や「鉄拳6」、「Razing Storm」といったアーケードゲームを実機で出展したことで、人だかりができていた。 一方、コーエーは、台湾で2008年12月に発売したばかりの「ガンダム無双 2」と台湾で流通提携関係にあるバンダイナムコゲームスの「ソウルキャリバー6」、台湾版GAMECITY(アドレスのみ)、過去の発売タイトルカタログと、新作の試遊よりはメーカーそのもののプロモーションに力が入れられていた。
今回は海外から来たバイヤーとミーティングを行なうBtoBコーナーや、海外から講師を招いて学生や開発者を対象に行なうフォーラムなども用意されず、純粋にユーザー向けの展示のみに注力していた。本来主役であるはずの台湾メーカー勢が脇役に回っている現状には違和感があるが、即売と試遊というエンドユーザーに特化したゲームショウとして進化していくアプローチは間違っていないと思う。許会長新体制のもとで、今後Taipei Game Showがどのように進化していくのか注目されるところだ。
■ Webゲーム専門コーナーを設置、台湾独自のレーティングもスタート?
まずWebゲームについては、今年初めてWebゲームに特化したゾーン「Web Game Party」が設けられ、Gamania、Wayi、Gameflier、GeeGameの4社が新作のWebゲームタイトルを出展していた。PCにはASUS製のネットブックが使用され、マシンスペックが低いPCでも快適に動作することをアピール。ちなみにGamaniaの出展タイトルは、ゲームポットの子会社GPコアエッジが開発した「Web戦牌(邦題「アルテイル」)」。 2008年、ネットブックブームの火付け役を担った台湾だが、この「Web Game Party」にTaipei Game Showには不参加を通しているGamaniaが出展していることからも伺えるように、今年はネットブックに向けた有効なソリューションを提供したいという政府筋の強い意志が働いている事を伺わせる。 現在、Webゲームを開発しているメーカーはこの4社に限らず、台湾の主要メーカーのほとんどが開発に着手していると見られる。日本では、ビジネス的に大きな成功を収めたタイトルはまだ存在しないが、ハードがあるところには必ずエンターテインメントが存在しうる。Webゲームが台湾で大きなムーブメントとなるかどうか注目したい。 レーティングに関しては、まず大前提として、台湾のコンシューマゲームにはレーティングシステムが存在しない。並行輸入品には北米のESRBや日本のCEROによるレーティングが記されているものの、正規品には年齢制限が一切無いという世界に類を見ない状態になっている。 SCETと台湾Microsoftのブースでは、それぞれ18歳以下の入場を規制するコーナーを設置。フォトIDで年齢を確認し、18歳に満たない来場者は入場できないという措置を取った。日本や欧米のゲームショウではごく普通に見られる光景だが、台湾では史上初の試みだ。 自主規制の契機となったのは、2008年に台湾Microsoftが「Gears of War 2」(ESRB:Mature指定:17歳以上、日本未発売)のテレビCMを流したことだ。その表現の過激さが視聴者の間で問題となり、台湾政府が対策に乗り出す騒ぎとなった。 現時点では、今春頃にレーティング機構が設立され、台湾独自のレーティングシステムが施行されるのではないかと言われている。現在はその途上段階であるため、政府から相談を受け、協力を要請されている手前、自主規制を行なったというわけだ。 ちなみに対象となったタイトルは、SCETが「バイオハザード5」、「KILLZONE 2」、「RESISTANCE」、「Fallout 3」の4タイトル。台湾Microsoftは、「Gears of War 2」、「Halo 3」、「Fable 2」、「Ninja Blade」、「Grand Theft Auto IV」、「Left for Dead」の6タイトルに、年齢制限はなかったもののクローズドブースにしていたのが「バイオハザード5」といった感じだった。 アジアを取材していると、時折、「まだ無かったのか」というケースに出くわす。今回のレーティングの不備に関してはまさにその典型と言った感じだが、根本問題には、コンシューマゲームとPC(オンライン)ゲーム間の深い深い溝がある。台湾ゲーム業界の人脈を見ても、台湾ゲームメディアのあり方を見ても、PCとコンシューマではっきり二分しており、交流がほとんどない。 今回、遊技産業振興会の会長に、PCとコンシューマの双方にワールドワイド規模で広い人脈を持つXPEC会長の許氏が就任したのは、非常にユニークであり、台湾ゲーム産業の真の意味でのグローバル化、近代化が促進されるかもしれない。後日、許氏には、遊技産業振興会会長としてのインタビューも予定しているので、ぜひその当たりをたっぷり聞いてみたい。どうぞお楽しみに。
□Taipei Game Showのホームページ (2009年2月13日) [Reported by 中村聖司]
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