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Taipei Game Show 2008現地レポート

台湾台北市にてTaipei Game Show 2008が開幕
コンシューマゲーム色の強いショウに。台湾産タイトルは低調傾向

1月24日~28日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人200台湾ドル(約700円)
子供100台湾ドル(約350円)


 Taipei Computer Association(TCA)主催の台湾最大規模のゲームショウ「Taipei Game Show(台北国際電玩展)」が、現地時間の1月24日、台北市の世界貿易中心において開幕した。小雨が降りしきる肌寒い初日となったが、新作ゲームの体験や即売会限定アイテムを目指して多くのゲームファンが訪れた。本稿では、初日の模様からショウ全体の概要をお伝えしていきたい。


■ 規模縮小に歯止めがかからず。ショウを牽引するのは海外メーカー

開幕式典では、今年から新設されたデジタルコンテンツフォーラムのスピーカーと主催者が同席してセレモニーが行なわれた。左から二番目にいるのが日本から招待された富野由悠季氏。言わずと知れた「機動戦士ガンダム」を代表作とするアニメ監督である
祝辞を述べる遊技産業振興会代表のSoftworld董事長王俊博氏。わずか9社の出展ブースを持って「九大戦場」と称揚するのは、やや現実離れしている感がある
こちらも新設されたBtoBコーナー。日本からはゲームポットとサイバーステップが参加
 Taipei Game Showは、日本を除く主要アジア地域でもっとも重要な休日に当たる旧正月の時期に開催される一般ユーザー向けのゲームショウ。旧正月に合わせて開催されるため、開催時期は毎年変動し、ここ数年は旧正月前に行なわれるようになっている。旧正月時期は、市民の消費意欲がもっとも旺盛になる時期ということもあり、試遊よりも購入に重きが置かれているのが、他のゲームショウとは大きく異なるところだ。

 ソフトウェアの即売会としてスタートしたTaipei Game Showも、2002年以降のオンラインゲーム興隆後は、大きくその姿を変え、ステージショウが大々的に取り入れられたり、SCE AsiaやMicrosoftといったコンシューマゲームメーカー参入後は、ゲームの試遊が本格的に取り入れられたり、ガイド役のコンパニオンを置いたりなど、徐々にゲームショウらしくなりつつあるが、即売コーナーは必ず設置してあるところがユニークだ。

 それはSCE AsiaやMicrosoftといった海外メーカーでも例外ではなく、ゲーム機とソフトウェアがバンバン売れていく光景は、まさにTaipei Game Showの風物詩と言っていい。一方、地元の台湾メーカーは、オンラインゲームのスターターキットやプリペイドカードを値下げして販売するほか、Taipei Game Show限定のアバターチケットを格安で販売していたりする。普雷伊をはじめとしたゲームショップも会場内にTGS限定店舗を設置し、“歳末大セール”を繰り広げる。東京ゲームショウでオフィシャルグッズを売るという光景は見られるが、ゲーム機やゲームそのものをバンバン売るところが特色である。

 さて、Taipei Game Show 2008は、昨年度と比較して、さらに規模を縮小していた。またメーカー数も減少傾向で、昨年は韓国メーカーが出展を見合わせる傾向が顕著だったが、今年は台湾大手メーカーまでが出展を見合わせるか、規模を縮小するかしており、今年目立っていたのはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアジア部門SCE Asiaの台湾支部SCET(Taiwan)と、Microsoftという海外のゲームコンソールメーカーだった。

 具体的には、Gamaniaは未出展、Softworldはショウステージのみ、Softstarは即売のみといった具合で、大手メーカーではFunTownぐらいだろうか。これでは台湾ゲームファンの期待に答えるのは難しく、海外から訪れたバイヤーも興味を失うだろう。台湾大手が軒並み出展を取りやめたため、昨年の特色だった台湾産タイトルの出展もあまり見られず、国際的な競争力はおろか、認知すら覚束なくなりつつある。

 なお、今年は、そうした状況を少しでも緩和するためか、海外バイヤー向けにBtoBコーナーを新設し、さらに海外から有識者を招いてセミナーも企画されたが、認知が十分ではなかったようで、BtoBコーナーはガラガラ、セミナーもゲーム業界に就職を希望する学生や現役クリエイターが参加している様子も見られず、極めて中途半端な内容だった。

 こうした状況は、韓国のアミューズメント協会がオンラインゲームショウを主催していたKAMEXの末期の状態に近く、台湾のPC産業の協会がゲームショウを主催しているところにそもそもの無理がある。その後、韓国が政府主催のGStarを立ち上げ、インターナショナルゲームショウへと新たに生まれ変わったように、Taipei Game Showも時代の変化にマッチしたゲームショウへと生まれ変わる時期に来ているように思える。

【デジタルコンテンツフォーラム】
初日のキーノートは、3DCGクリエイターのDavid Gould氏が務めた。Gould氏は「The Future of Visual Effects」と題し、3DCG技術の変遷を紹介した。明日は富野由悠季氏のキーノートが行なわれる

【即売コーナー】
やはりTaipei Game Showと言えば即売コーナー。ゲーム機から周辺機器、ゲームパッケージ、オンラインゲームのプリペイドカード、アバターまで、ほとんどなんでも揃う


■ SCEとMicrosoftが2年ぶりにそろい踏み。SCEがクリエイター育成プログラムを発表

SCETは、アジア限定カラーのPS2「朱宝紅(朱色)」と、8色目となるPSPの新色「薄荷緑(ミントグリーン)」を公開。ハードのカラーと、コンパニオンの衣装のカラーを合わせるところは、いかにもアジア的な見せ方だ
Microsoftは、ミストウォーカーの大作RPG「ロストオデッセイ」を中心に豊富なラインナップをアピール。本日発売ということもあり、Xbox 360とセットで購入する来場者も見られた
SCEは「台湾クリエイター育成プログラム」を発表。政府高官を招いて記念式典が開かれた。向かって右がSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏、中央が日本の経済産業省の大臣に相当する経済部部長の陳瑞隆氏
 先述したように、今年元気だったのはSCETとMicrosoftというゲームプラットフォームホルダーだ。両メーカーとも、際だった出展内容だったわけではないが、台湾メーカーの元気がなく、相対的に際だってしまう結果となった。

 SCETは、まさに日本と欧米からかき集めたといった感じで25本ものPS3タイトルと、10本のPSPタイトルをプレイアブルで披露し、過去最大規模での出展となった。初日の発表会では、テレビカメラを含め、多くの現地報道人が集まる中、SCE Asiaプレジデントの安田哲彦氏をはじめ、台湾政府の経済部、行政院、そしてコーエーやバンダイナムコゲームスといったサードパーティーのトップが参席し、華やかな雰囲気でオープニングセレモニーが行なわれた。

 目立った発表内容としては、アジア限定の真っ赤な「朱宝紅」カラーのPS2を発表し、旧正月直前の2月4日に発売されることが告知されたことと、SCETと政府が協力して「台湾クリエイター育成プログラム」を2008年9月からスタートさせることが明らかにされた。いずれもSCE Asiaの台湾での7年の蓄積から生まれた新たな取り組みであり、アジア限定カラーについては、SCE全体におけるアジアのウェイトが拡大していることを伺わせ、また、「台湾クリエイター育成プログラム」については台湾政府との信頼関係が極めて良好で強固であることを実感させてくれる。

 「台湾クリエイター育成プログラム」は、SCETと現地の教育機関が提携し、日本からゲームクリエイターを呼んで、選ばれた生徒たちに、実践的なゲームの作り方を教育する。第1回目は、2008年9月から1年程度の期間で実施し、教育機材にはPS3やPSPを用いる。教育の結果誕生した優秀な作品については、今春サービス開始が予定されている「Home」やPlayStation Storeを通じて配信される予定となっている。その後のキャリアパスについては現段階では不明瞭ながら、長期的視野でコンシューマゲームの開発に興味を持ち、また優秀な才能を持った人材を発掘することを目標にしているようだ。これはなかなか世界に通用するクリエイターが育たないアジア市場を見かねて、SCE自らが育成に乗り出したという見方もできそうだがどうだろうか。

 即売コーナーでは、やはり発売されたばかりの深紅(ディープレッド)のPSPが人気だった。発売後、店頭在庫が無くなってしまうほどの勢いで売れたため、Taipei Game Showのために一部取っておいたのだという。

 一方、Microsoftは、Xbox 360一色の展開だった。台湾大手液晶メーカーのCHIMEIとタイアップして、52インチのフルHD液晶モニタで、「ロストオデッセイ」や「バーチャファイターV」、「デビル メイ クライ 4」といった30本以上の新作タイトルを試遊させていた。台湾独自のタイトルは見られなかったが、ラインナップに秀れるXbox 360は、52インチ液晶の迫力とも相まって上々の集客ぶりだった。Xbox 360は台湾ではすでに200タイトルがリリースされており、据え置き型ハードとしてはもっとも勢いを感じさせてくれる。

 印象的だったのはMicrosoftの即売コーナーで、本体と好みのゲームソフト数本にMicrosoftポイントを付けたセット商品が会場限定で発売され、行列ができるほどの人気だった。タイアップしているCHIMEIの液晶モニタを購入することも可能で、購入するとMicrosoftポイントが付いてくるという仕組みだ。ゲームソフト1本というよりはやはり大物狙いが多いようで、両メーカーの即売コーナーを見ている限りでは、もともとゲーム機狙いでTaipei Game Showを訪れる台湾ゲームファンは意外と多いのかなという印象を持った。

【新色PS2、PSP】
新色の公開は安田氏自らが行なった。PS2の新色は、アジア人が好む赤となっている。旧正月直前の2月4日に発売される。アジア地域ではPS2がまだまだ現役であることを伺わせる。ミントグリーンのPSPは4月発売予定

【台湾クリエイター育成プログラム】
台湾クリエイター育成プログラムの概要については、SCE Asia企画開発部部長の金澤克彦氏により行なわれた。SCEとしても実験として捉えており、2008年9月から1年間のスパンで教育を行なっていく。その後は楽明美さんが登壇し、生徒の第1号に選ばれ、記念に新型PS3が贈られた

【SCETブース】
SCEは、PS3を25タイトル、PSPを10タイトル出展。初日は、オープニングセレモニーのため試遊が限定されていたが、明日以降は多くのユーザーで埋まりそうだ。ブースの詳細については別途お伝えしたい

【Microsoftブース】
Microsoftは、大手液晶メーカーのCHIMEIとタイアップし、52インチの大画面で新作ゲームの出展を行なっていた。この環境を整えるのは難しそうだが、次世代機のパワーは十二分に伝えられていたようだ


■ 低迷する台湾オンラインゲーム市場。台湾メーカーはどこに向かおうとしているのか?

台湾へのアーケード展開が加速しつつある。バンダイナムコゲームスは「太鼓の達人11」のアジア版を出展。テキスト、音声のローカライズのみならず、新曲として24曲ものChinese Popを採用。導入時期は4月を予定。詳しくは別稿にてお伝えしたい
 冒頭でも触れたように、今年の台湾オンラインゲームメーカーは全体的に低調だった。出展社数が少なく、出展規模も小さいだけでなく、純国産タイトルがふたたび勢いを無くし、海外産タイトルばかりが目立っていた。膨大な人口を抱える国ならともかく、台湾はわずか2,200万人の小国である。正直なところ、積極的な海外タイトルの獲得より、市場のさらなる飽和化が気になる。いずれにしても、台湾ならではのオンラインエンターテインメントを求めてTaipei Game Showを訪れる海外関係者としては非常に残念な結果だった。

 台湾ユーザー向けの出展では、大手メーカー不在の中、FunTown、IGSといったメーカーが元気だった。両社はもともとオンラインゲーム専業メーカーではないところがおもしろい。

 FunTownは、オンライン麻雀の成功で急成長を遂げたメーカーだが、それらの収益と、親会社である台湾大手IT企業GIGAMEDIAの資金をバックボーンに、昨年から海外から「Hellgate: London」(Flagship Studios)や「ファンタシースターユニバース」(セガ)といったタイトルを獲得し、総合的なオンラインゲームパブリッシャーへ姿を変えつつある。今回は、「Hellgate: London」、「NBA Street Online」(Electronic Arts/Neowiz)などを出展していた。

 IGSは、台湾では数少ないアーケード系のゲームメーカーで、台湾内ではいわゆるゲームセンターの営業が法律で禁止されているため、韓国や中国への輸出を主なビジネスとしてきたが、こちらもやはり韓国Wemadeと提携し、オンラインゲーム事業へのシフトを進めている。「蒼天」(Wemade)、「We Dancing Online」(Wemade)

 今年の台湾メーカーの動き、そして上記2社の動きから伺えるのは、国内指向の強さだ。韓国や中国の積極的な海外志向と比べると、台湾は海外進出への意志が弱く、台湾から国際的なオンラインゲームが生まれる余地は限りなくゼロに近いように感じられた。もっとも、GamaniaやSoftworldといった大手メーカーは、その限りではなく、しっかり複数の開発パイプラインを整え、国内のみならず、海外への展開を目指して準備を進めている。その当たりの事情はメーカー訪問レポートで追ってご紹介していきたい。

【台湾ブース】
台湾メーカーは、FunTownやIGSなど一部を除いて全体的に元気がなかった。台湾ゲーム市場を今後継続的に発展させるためにもゲームショウの活性化は必要不可欠だろう

□Taipei Game Showのホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□関連情報
【2007年2月9日】Taipei Game Show 2007が台湾台北市にて開幕
台湾タイトル豊作の年、ゲーム機はXbox 360が盛況
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070209/tgs_01.htm
【2005年2月17日】Taipei Game Show 2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070213/tgslink.htm

(2008年1月25日)

[Reported by 中村聖司]



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