★iPhone/iPod touchゲームレビュー★
プラットフォームの魅力を「卵」で端的に表現 シンプルなルールで集中力の極限状態を体験
「Catch The Egg」 |
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- ジャンル:アクション
- 開発元・配信元:ハドソン
- 利用料金:450円
- プラットフォーム:iPhone/iPod touch
- 配信日:9月8日(配信中)
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新しいゲーム機に最初に触れる瞬間は、いつも緊張してしまう。進化した“楽しさ”を体験できるのか、新しい次元を見せてくれるのか。期待に胸が高鳴ってしまうのを抑えられない。
9月に米Appleのスティーブ・ジョブズCEOが、新型音楽プレーヤーの発表会で新しいiPod touchを「最高のゲームプレーヤーでもある」と語った。iPhoneと同じように加速度センサーとタッチスクリーンを採用した新型iPod touch。このゲームマシンには一体、どんな“楽しさ”が詰まっているのだろう。
その実力を体験するべく、今回、iPhone/iPod touchのゲームアプリを初めてプレイした。プラットフォームの魅力を端的に表現したハドソンの「Catch The Egg」のレビューを通して、iPhone/iPod touchに秘められたゲーム機としての可能性を少しでも伝えられれば幸いである。
【スクリーンショット】 |
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iPhone/iPod touchの魅力を予想外の形で教えてくれた本作。遊びの本質とは何かを問いかけてくる |
■ “エッグパフォーマンス”とは何ぞや? 架空の競技で、世界記録を目指せ!
本作の目的は、上空から落下してくる卵を割らないようにキャッチすること。この「空高くから落下する卵を割らないように、いかに芸術的にキャッチするか」を競うスポーツは、作品中で“エッグパフォーマンス”と呼ばれている。公式設定によると、エッグパフォーマンスは、2007年6月、カルフォルニアに本部を置く団体“NEPA”が提唱した競技だとされている。
主人公の鈴木掴無(すずきつかむ)は、世界を旅する駆け出しのエッグパフォーマー(エッグパフォーマンスの選手のこと)。現在23歳で、あだ名は“キャッチくん”。米国の大学に留学中に出合ったエッグパフォーマンスを世界に広げるため、旅を続けているというのが、主人公のバックボーンだ。ちなみにエッグパフォーマンスの現在の世界記録は、Edger.G.Georgeが持つ3,333フィート(1,016m)だそう。
これだけ読んでみると、なんだか本当にありそうな競技だなと思ってしまいそうだが、あくまで架空のスポーツ。「落ちてくる卵をキャッチする」だけのことに、ここまで設定を作り込んでくるあたりからすでに、制作側が“遊び”を“スポーツ”にすり替える仕掛けになっている。
【スクリーンショット】 |
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iPhone/iPod touchがインターネット接続されていると、ウェブサイトが見られる |
では、実際にゲームを開始するとしよう。アプリケーションを起動させると「プレイ上のご注意」なる警告文が、毎回表示される。「“Catch The Egg”は、ゲームの性質上、iPhone/iPod touchを振り回す等のアクションシーンがあります。重大な事故や破損等につながる可能性がありますので……(以下略)」
しっかり握って遊ぶこと、手を乾燥させること、過度に振り回さないことなどの注意が促される。じっとり常に汗ばんだウエッティな手の持ち主である筆者は特に心にとめて、先に進めることとする。初回起動時には、続いてチュートリアルが始まる。
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未体験の操作を要求されるだけに、しっかりしたレクチャーがあるのは心強い |
■ 加速度センサーを利用した独特の遊び方。繰り返し練習するのが上達への道
まずは、上空にあるエッグに照準をあわせることから。iPhone/iPod touchを持って、見上げるように上に向けることで、空を見上げることができる。ちなみに上下方向だけでなく左右に向けると、ちゃんと画面も合わせて左右方向に動く。
空の中にぽつんと浮かぶエッグ。画面中央に出現した照準をあわせると、エッグの高さが表示されて、落下までのカウントダウンが開始される。3カウント後に、エッグは重力に従い、まっすぐこちら側に向かって落下してくる。
いよいよエッグのキャッチだが、この操作が本作のポイントである。落ちてくるエッグにタイミングを合わせて、iPhone/iPod touchを振るのだ。iPhone/iPod touchを振った瞬間に、キャッチ動作が開始され、振った強さが“Shake Strength”となる。
エッグを受け止めるには、タイミングはもちろんのことだが、“Shake Strength”つまり「エッグの勢いを受け止める力の強さ」を調整する必要がある。エッグが重ければ重いほど、落下距離が高ければ高いほど、より強い“Shake Strength”が求められ、強さが適正でなければ、キャッチできてもエッグが手の中で割れてしまい失敗となる。
【スクリーンショット】 |
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タイミングが合わず、地面に激突。大惨事と言わざるを得ない |
“Shake Strength”が適切でないと、キャッチした後に“ピシッ”という亀裂音がかすかに聞こえる。哀れ、手の中でつぶれてしまったエッグ。食べ物を粗末にしてしまった罪悪感がある |
iPhone/iPod touchを振るタイミングと強さ、両方をコントロールして初めてキャッチは成功する。言葉で書くと「なんだ、そんな簡単なこと」と思えるかもしれないが、実際に体験してみるとこがかなり難しい。慌てるとついつい強く振りすぎてしまうし、「優しく優しく」と意識しすぎるとキャッチのタイミングを見失う。“Shake Strength”は、かなり微妙な力加減が計測されるので、大雑把な振り方ではキャッチはままならない。
一度成功してしまうと、おおよその感覚はつかめる。しかし、コンスタントにベストな動作ができるかというと、そうでもない。このもどかしさは確かにスポーツと同じ。簡単そうなことなのに、できないと悔しくなって、繰り返しできるようになるまで練習してしまう。まさにスポーツ上達を目指して練習する気持ちになっている自分に気づいた。
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まぶしい空の中に小さく浮かんでいる白いエッグ。本作をプレイすれば、どこでもいつでも青空気分だ |
キャッチ結果を確認するときは、画面を下に向ける。ちょうど、キャッチしたようなエッグをおなかのあたりに持ってくる姿勢になる |
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チュートリアルでは、ワンハンドグリップで、真下にスイングするスタイルだが、本体を投げ飛ばさないように気をつけてほしい |
ゲームはiPhone/iPod touchを上に向ければいいので、プレイ姿勢は立とうが座ろうが寝ころぼうが構わないのだが、やはり本作は立って遊んでいただきたい。足は肩幅ぐらいに開き、膝は軽く曲げ気味。力みのない自然な姿勢で上空にiPhone/iPod touchを掲げる。そう、エッグパフォーマンスはスポーツなのだ。
スポーツの基本はフォーム。iPhone/iPod touchの持ち方は、シングルハンドグリップとダブルハンドグリップ(筆者が勝手に命名)どちらでも構わないが、前述したように筆者は汗っかきなので、ダブルハンドグリップが自然と身についた。スイング(振り方)も、個人のやりやすさを優先すべきだろう。前方に向かって投げだすタイプ、真下に引きつけるようなスイング、などいろいろ試したが、最終的にはスナップを利かせて上に小さく振ってから下に引き戻すスイングに落ち着いた。
冷静さを失わずに、プレイするのも大切だか、画面から得られる情報をフル活用することも重要。画面右上の“Maximum Height”は、エッグが落とされる高さ。“Current Height”、今エッグがどの高さにあるかを示す値。これが0になる前にキャッチしよう。画面下のバーが“Shake Strength”。自分の振り方の強さがどのくらいなのかを、バーで示してくれる。強弱の感覚をつかむのに不可欠だ。
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失敗したときは、“Your Timing is Too Slow”、“Shake Strength is Little Weak”など、なにが失敗の理由かを教えてくれるので、次のチャレンジの目安になる。失敗から成功を導きだすのもスポーツの基本 |
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成功したときは、“NICE CATCH”の表示とともに“Awesome!! Perfect!! (すばらしい! 完璧だ!)”、“Cool! Way to go! (かっこいい! よくやったぞ!)”の2パターンで評価される。キャッチの強さが、よりベストかを判定している。できれば常に“Perfect”でキャッチしたくなってしまう |
■ 追加されるエッグはさらに手強い。感覚を研ぎ澄ませて、真剣勝負に挑む
各ステージごとにキャッチのチャンスは4回与えられており、1回でも成功したら次のステージに進める。ステージが進むとだんだんと落下距離が高くなる。落下距離が高くなればなるほど、キャッチするときのエッグの速度が速くなるので、最初と同じタイミングでは遅くなってしまう。しかも“Shake Strength”を強めにあわせないと潰れてしまう。
ある程度の高さになるとエッグの落下速度が急激に速くなり、飛躍的に難易度が増す。浅いステージのうちは、タイミングよりも強さをコントロールするのに苦労するが、先に行くと一瞬のタイミングを掴むというキャッチング技術が重要になるのだ。
キャッチ1回ごとにリプレイが見られるので、失敗したときは何度も再生して研究するといいだろう。どれぐらいタイミングがずれていたのかが客観的にわかる。4回のキャッチチャンスを全部ミスするとゲームオーバー。リスタートできるが、1つ前のステージから開始となる。
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プレーヤー視点、観客視点、エッグ視点の3通りのリプレイ。エッグ視点だと、まるで自分がスカイダイビングしているような感じになる |
苦労しながら、なんとかステージ10と、エクストラステージをクリアすると、主人公のランクが“Egg Rookie”から“Egg Performer”に昇格。“Ostrich Egg(ダチョウの卵)”を使用してのエッグパフォーマンスが可能になる。最初から使用しているベーシックな“Chicken Egg(ニワトリの卵)”に比べて、“Ostrich Egg”はかなり重い(設定では20倍)ため、キャッチにはかなりのパワーが必要になる。ついつい強すぎる力でキャッチしてしまう人は、“Ostrich Egg”をメインにプレイしてするのがよいかも。
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エッグパフォーマーの新星として、新聞を飾る主人公。少しずつ世界記録の夢に近づいて行く |
“Egg Performer”でも同じようにステージをクリアして、ゲームを進めていくと、今度はなんと“Alien Egg(エイリアンのたまご)”が出現する。“Alien Egg”は、これまでの2種類のエッグの中間のサイズだが、より微妙なパワーコントロールが要求される。歯応えを求めるプレーヤー向けのエッグだ。
“Egg Performer”をクリアすると、最後のレベル“Egg Master”に。3,333フィートの世界記録を目指して、ひたすらエッグパフォーマンスの腕を磨くのみ。最終目標である世界記録を達成すると、ゲームクリア。スタッフロールが流れ、“チャレンジモード”で遊べるようになる。“チャレンジモード”は好きな落下距離を選んでプレイするモードだ。エッグパフォーマンスのさらなる精度向上のために、ストイックに技術を高めていける。
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なんとも不気味な外見の“Alien Egg”。うっかり割ってしまうと、大変なことに |
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攻略のポイントとして、“オプション”で単位表示を“フィート/ポンド”から“メートル/キログラム”表記に変更しておくと距離感をつかみやすくなる |
プレイ記録はすべて“データ”で確認できる。成功率や、“Awesome!”、“Cool!”それぞれの回数などが記録されている |
プレイ途中にホームボタンを押しても、次回アプリを起動させると中断させたところから再開できる |
■ iPhone/iPod touchが教えてくれる“遊び心”。最新技術と柔軟な発想力の先に見えるものとは?
本作からは、新しい“おもちゃ”で、どうやって楽しませてやろうかという、制作側の柔軟な発想力とチャレンジ精神が伝わってくる。卵キャッチという原始的な発想の競技をあえて選ぶことで、ゲーム機としてのiPhone/iPod touchの魅力が引き出した。しかも、単なるiPhone/iPod touchのデモ用アプリになることなく、きっちりとゲームとしての面白さに昇華している。
大げさに“スポーツ”という看板を掲げることで、あえて未経験の遊びに対する抵抗感を拭いさる仕掛けに最初は気づかなかった。エッグと無心になって向き合ううちに、時間の感覚すら忘れ、宇宙に自分とエッグだけが存在するような錯覚にとらわれた。スポーツ選手は究極まで集中力が高まったとき、身体感覚の拡大、知覚神経の鋭敏化が起こる“ZONE”呼ばれる領域に突入するという。どうやら、私の集中力も、もしかしたら“ZONE”の入口ぐらいまでは高まっていたのかも。ここまで、ゲームに没入する感覚に陥ったのは久しぶりのような気がする。
特殊な体勢でプレイするので、電車での移動中や、ちょっとした空き時間に、などという遊び方には向いていない。時と場所を選ぶゲームなのは事実だが、ついつい他人に「ちょっと面白いゲームがあるんだけど、どう?」と言いたくなる魅力がある。忘年会なんかでポケットからiPhone/iPod touchを取り出せば、みんなでワイワイと盛り上がれるだろう。しかし、そうなるとますます手からスポーン! とiPhone/iPod touchが吹っ飛んでいく可能性が高まる。これがWiiなら「ストラップを手首に巻け!」と注意されるところだ。プレイする際には、シリコンジャケットの装着をお勧めしたい。
(C)2008 HUDSON SOFT
□ハドソンのホームページ
http://www.hudson.co.jp/
□「Do the Hudson!!(β)」のページ
http://www.dothehudson.net/jp/
□「Catch The Egg」のページ
http://www.dothehudson.net/jp/app/egg/catalog.html
□関連情報
【10月6日】ハドソン iPhoneアプリ統括の柴田真人氏インタビュー
iPhoneで日本向けのコアゲームは実現できるか?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081006/hudson.htm
【7月11日】ハドソン、iPhone/iPod touch用ゲームの配信を開始
「BOMBERMAN TOUCH」など3タイトルをプレイレポート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080711/hudson.htm
【6月13日】ハドソン、iPhone/iPod touch用ネイティブアプリを発表
「ボンバーマン」など3本を「App Store」公開と同時配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080613/hudson.htm
【3月31日】ハドソン、「iPod touch」向けサイト紹介イベントを開催
銀座Appleストアに高橋名人が登場。20本のネイティブアプリを投入
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080331/ipod.htm
【2007年12月11日】ハドソン、「iPod touch」向けサイト「Do the Hudson!!(β)」
12月12日開設。ゲーム、音楽、ムービーなどを随時配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071211/ipod.htm
(2008年11月20日)
[Reported by 山科明之進]
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