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会場:シンガポール動物園
「SPORE」は9月7日に発売が予定されているシミュレーションゲームで、単細胞生物の世界から銀河系宇宙までをゲーム化したという野心的な作品だ。米Erectronic Artsは本作を今年度の目玉として熱心にアピールしており、EAのアジア部門であるErectronic Arts Asiaが今回開催したイベントはアジア地域向けに限定して本作を紹介するはじめての機会となった。 ■ 動物園でクリーチャーを作り、ウィル・ライトのゲームデザイン哲学を聞く
シンガポール動物園は檻のない動物園として有名で、自然環境に近い状態で飼育されている動物を見ることができる。その園内の各所には「SPORE」のクリーチャーをかたどったポップが配置されていて、まるで動物園にクリーチャーが住んでいるかのような面白い光景が見られた次第だ。
また、会場となったロッジの屋内には、6月18日に先行発売された「SPORE Creature Creator」をプレイできる最新PC各種が設置され、参加者が作成したクリーチャーを対象に即興のコンテストも行なわれていた。
6歳のころ、映画「2001年宇宙の旅」を見て、地球外知的生命体やロボットに強い関心を持つようになったというWright氏。それが昂じてロボット工学に興味を持ち、プログラミングを勉強してロボットを作り始めたという。このような体験を通じてゲームデザインを行なうWright氏にとって、ゲームとは科学的好奇心の延長線上にあるもののようだ。
Wright氏は「SPORE」のゲームデザインにおいて、この宇宙に地球外生命体が存在する確率を表現する「ドレイクの公式」から強いインスピレーションを得たと語る。その公式の各項を分析すると、ミクロからマクロの順番に、物理学、化学、地質学、生物学、社会学、天文学の要素が含まれており、これらのすべてを「SPORE」のゲームデザインに注ぎ込んだ。
そのゲームデザインコンセプトの中でWright氏が重要視するのが「創造性」だ。人々に長く愛される作品は、多くの場合オリジナルのストーリーがあり、それが各要素に分解されたのち再解釈、再構築され、新たなストーリーが拡大再生産されるという循環構造を持っている。 そしてゲームのプレーヤーはコンテンツを作り出すこと自体を楽しみのひとつとして捉えているため、ゲーム自体に創造的なプロセスを組み込むことで、ひとつの作品のなかで上記のような循環構造を実現することができるはずだ。
しかしながら万人が参加する創作では「ゴミが沢山、傑作は一握り」という状態になりがちである。そこで「SPORE」の制作にあたっては、ユーザー作品全体のクオリティを底上げするため、細部のデザインを肩代わりしてくれる優秀なアーティストをゲーム内に搭載する必要があった。その方針を技術的に実現したのが「SPORE Creature Creator」に見られる半自動エディタというわけである。
これについてWright氏は「SPORE Creature Creator」を使って作られたクリーチャー数が1か月あまりで250万種類を超えたことを報告し、神によって地球上に存在する全生物種158万種が作られたとすると、ユーザーは158万種のクリーチャーを18日で誕生させているので、「SPOREのファン=神の38%(0.38G)」という等式を導き出して、会場の笑いを誘った。
またその内容も、クリーチャー然としたものから、人類型のもの、地球生物を忠実に模したもの、はたまた車、バイク、船、飛行機といった無機物まで存在しており、「Creature Creator」の機能的な趣旨から見れば想像外のものまで大量に作られていることが紹介された。これはまさにWright氏の方針が効果的に機能したこを意味している。
■ Will Wright氏による実演で「文明ステージ」、「宇宙ステージ」のプレイシーンを確認
プレイデモは早速「文明ステージ」からスタート。このステージではプレーヤーが率いる文明が惑星上の他の文明をすべて支配することが勝利条件となっている。戦う手段としては軍事、経済、宗教の3種類が用意されており、Wright氏は宗教型の文明を使って、他の文明の都市を陥落させるまでをプレイした。 球体として表現されている惑星上にはいくつかの都市があり、それぞれがプレーヤーを含む各文明に属している。都市では建物を建築し、他文明に侵攻するためのユニットを作ることができるのだが、そのすべてをクリーチャーと同様のやりかたでユーザーが自由にデザインできるようになっている。 Wright氏は早速、他文明に「布教」するためのスピーカー搭載型戦車を作成して近隣の都市に派遣した。戦車に搭載されたスピーカーから洗脳ビームのようなものが放たれ、ライバル都市に降り注ぐ。やられる側もカウンター攻撃をして対抗するのだが、やがて根負けしたかのように白旗を振り、プレーヤー文明に帰属した。
発達した都市ではついに宇宙船の建造が可能になる。Wright氏はここで、新たな宇宙船を「SPORE Creature Creator」と同じ要領でデザインする。完成式典の様子が写されたあと、宇宙船は惑星上を離れて宇宙へ飛び出していく。これで「文明ステージ」が終わり、「宇宙ステージ」の開始だ。
デモプレイでは、惑星を飛び出した宇宙船が別の恒星系に向かい、そこで見つけた無人の惑星に到着。Wright氏が宇宙船の機能を使うと、惑星の核を刺激して火山を作ったり、近傍の小惑星を引っ張って地面に落として惑星の環境が変えられていった。こうして自分たちの生存に適した環境にしていくのだろう。 このステージで宇宙を徘徊していると無線信号をキャッチすることがあって、その発信源を探ると他の知的生命体とコンタクトすることがある。ここにはちょっとした外交機能があり、通商を行なったり、同盟を結成することが可能だという。最終的には広大な宇宙を「自分色に染めていく」ことがゲームの目標になるようだ。
「SPORE」のプレイそのものはシングルプレーヤーとなっているが、その広大な宇宙には他のプレーヤーが作成したクリーチャーなど様々なコンテンツが、ネットワークを通じて現われるという。その意味において本作は、シングルプレーヤーとマルチプレーヤーの中間のようなゲームであり、本人もそのことに言及していた。直接プレイすることはできなかったが、ますます発売が楽しみになるデモセッションだった。
・プレーヤーの行動からヒントを得るWill Wright氏の姿勢
「予想を超えて200万以上のクリーチャーがアップロードされてのご感想は?」という質問にWright氏は満面の笑顔を見せて、「とても嬉しいです。SPOREPEDIAをチームで観察していて気づいたことは、プレーヤー達が自分のクリーチャーにタグをつけて分類していますが、ほかのプレーヤーはキーワードで検索していることです。プレーヤーから日々多くのことを教わっています」と答え、プレーヤーの行動からシステム改善のヒントを得ていることを示唆した。 他の国のメディアからは「宇宙人が実在すると信じていますか?」という質問がなされた。これに対してWright氏は明確に答えて、「SETIの研究にあるように、宇宙人の存在は生物学的に、また機械的に証明されると思います」と、ドレイクの方程式について楽観的な捉えかたをしているようだ。Wright氏の宇宙観はまさに「SPORE」の宇宙ステージに反映されているのだろう。
多くのゲームファンを待たせ続けた野心作「SPORE」の発売日はワールドワイドで9月7日に決定しており、目前である。知的好奇心を刺激するゲームコンセプトが、ゲーム性においても期待以上に楽しいものになっているかどうか、実際に遊べる日を楽しみに待ちたい。 (C) 2008 Electronic Arts Inc.
□Electronic Arts(英語)のホームページ (2008年8月14日) [Reported by 佐藤カフジ]
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