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会場:コーエージェミニビル
開発は意外なことに、同社のオンラインゲームの開発部門であるソフトウェア3部が担当している。プロデューサーは、「大航海時代 Online」の開発ディレクターの竹田智一氏。2007年8月の「大航海時代 Online」拡張パック第2弾「Cruz del Sur」のリリースと前後して、本格的な開発がスタートし、武将のイラストや設定データの一部を既存作品から流用することで、1年程度で開発を完了させている。 3部が担当していることもあり、企画初期の段階で、発売プラットフォームをニンテンドーDSに定め、最大4人による通信対戦機能や、Wi-Fi対戦の成績上位者に「征夷大将軍」等の役職を与えるランキング機能など、「信長の野望」の味わいを残しながらも、時代が求めるオンライン機能をもれなく搭載している。 また、人気フランチャイズのメリットを活かし「信長の野望 Online」をはじめとした各タイトルとのコラボレーションキャンペーンが予定されているなど、「信長」ファンに対するアピールも忘れていない。さらに18日には、PC上でプレイできる体験版も公開された。オンラインやPCプラットフォームと親和性の高い3部らしいプロダクトと言える。 さて、今回のイベントは、この新機軸満載の未知のタイトルの最大のウリである4人対戦モードをゲームメディアに一足先に試してもらおうという趣旨で企画されたものだ。会場となったのは、オンラインゲームの開発を担当するソフトウェア3部が入居するコーエージェミニビル。その屋上にある社員用休憩室が丸ごと会場に割り当てられた。
イベントは、練習、予選、決勝、懇親会という流れで進行し、懇親会では同社スタッフも対戦に参加するなど、終始和やかな雰囲気で先行プレイを楽しむことができた。それでは、体験プレイで得られた「国盗り頭脳バトル」のゲームの特徴とその魅力をお伝えしたい。 ■ 歴史シム「信長の野望」をモチーフにしたカジュアルなボードゲーム
ゲームの目標は、武将のコマを動かして、敵勢力を撃破し、多くのマスを占領して石高や城の数で相手を上回ること。勝敗を分ける決定的な要因となるのは、双方のコマが同じマスで遭遇することによって発生する「合戦」だが、「国盗り頭脳バトル」では、個々の合戦は、コマの力を示す“戦力値”によってあっさり勝ち負けが判定される。 「信長の野望」シリーズでは、武将の能力や技術、地形、スキルなど、無数の要素によって、合戦の勝ち負けを判定され、合戦の駆け引きが大きな魅力だったが、「国盗り頭脳バトル」では、合戦を簡略化したことで、その前後の頭脳戦が大きくクローズアップされている。 ゲームの進行は、一定時間のコマンド入力フェイズがあり、全員が入力し終わると、一定の行動ルールに従って全ユニットが一斉に行動を行なう。そこに事前の予測と、実際の動きにズレが発生し、狙いが当たれば優勢に事を進めるが、狙いが外れると自勢力に危機が訪れる。そこでお互いに敵の行動を予測しながらコマンド入力を行なっていく。この過程が非常に楽しい。タイトルに「頭脳バトル」とわざわざ挿入されているのは、合戦中の瞬間的な判断よりむしろ、合戦前後の頭脳戦を楽しむゲームという開発側の意図が現われた表現と言える。 もちろん、純粋な頭脳バトルにしてしまうと、「信長の野望」の名前を冠した意味がないので、名将、知将、勇将の類には、特技や切り札といったスペシャルな能力が与えられている。特技は合戦時に一定の確率で発生する武将独自の能力で、合戦の判定を有利に進めることができる。一方、切り札は、文字通り、戦局をひっくり返すほどの効果を持つが、1枚に付き1回しか使えない。同じ戦力値の武将なら、特技や切り札があるほうが有利と言える。 特技や切り札を持つ武将のデメリットとしては、軍団編成時のコストとなる「知行」が高くなる傾向にある。大名を決定した後は、軍団編成に移る。軍団編成は、全プレーヤーに平等に与えられる知行合算の枠内で、大名以外の配下武将を決めるフェイズだが、優れた特技や切り札を持つ武将は知行が高いため、有名な武将ばかり選ぶと、ユニット数が少なくなってしまう。合戦の勝率を上げるために有能な武将を取るか、コストの安いマイナー武将をあえて選んで、数で勝負するか。駆け引きは合戦の前から始まっていることになる。 そのほかにも重要なことは、兵科間の3すくみや、兵科のクラスアップ、マスの種類、行動順のルールなど、覚えるべき要素は意外と多いが、重厚長大で難解な路線を歩み続ける「信長の野望」を、タッチペンで簡単に、1回30分程度で楽しめるレベルまで落とし込んだ努力は最大限に評価したい。もっとも、ゲームの内容はシンプルなようで、実はそれなりに複雑で奥が深いため、見た目から“子供向けの「信長の野望」”と甘く見ていると痛い目にあるので注意したい。往年の「信長の野望」ファンにお勧めしたい、なかなか油断できない姉妹作だ。
それでは、以下、体験会の模様をダイジェストでお届けしたい。ゲームの大まかな流れ、その駆け引きの妙を掴んでいただければ幸いである。 ■ 「国盗り頭脳バトル 信長の野望」メディア対抗戦レポート
予選では弊誌を含む3媒体により争われた。残り1枠をNPC大名が埋めて、4人対戦の形式が取られた。弊誌からは「信長の野望」シリーズの大ファンであるライターの三浦尋一が参加。三浦は「武田信玄だけで練習し続けたから」という理由で武田信玄を選択。位置は右下の隅で比較的守りやすく攻めやすい。その他の媒体は織田家、毛利家を選択。軍団編成では、主力武将として大友宗麟を入れ、そのほかは、低コストで切り札を持っている武将ばかりを集めた。 武田信玄の騎馬隊と大友宗麟の足軽隊の二本柱で侵攻をかけ、空き地を低コストの武将が押さえていく作戦だ。切り札持ちにこだわったのは、切り札を連続して一気にたたみかけるためだ。武田信玄自身は切り札に「風林火山」を持っており、自軍各部隊の戦力の最大値を1上げ、さらに戦力値を全回復させる。相手の戦力を減少させる切り札と合わせて使うことで最大限の効果を発揮してくれる切り札だ。 まずは本拠地となる躑躅ヶ崎館を中心に長野家、北条家といった、周囲に点在するNPC大名を倒しにかかる。はずだったのだが、出陣している全部隊の戦力を-2させる切り札「牛歩の息吹」をうっかり発動してしまい、敵勢力を蹴散らすどころか、低コストで構成した自軍手駒が軒並み撤退してしまった。しかもNPCに本城まで押さえられ、いきなり従属させられてしまう。最悪の展開である。 しかし、これでゲームオーバーにならないところがマルチプレイの良いところだ。武将は撤退しても3ターン後に城から再出撃が可能になるため、挽回は(一応)可能だ。従属状態にある大名は、従属先大名の城から再出撃することになる。この時点でだいぶ出遅れてしまっているが、それでもめげずに少しずつ領地拡大へ。 10ターン前後で序盤が終わろうとしているところ、今度はさらなる悲劇が襲いかかる。従属先大名が交代したことで、マップ上の自勢力のコマがすべて撤退してしまったのだ。信州の金山や鍛冶場を押さえて少しずつ石高を回復してきたところを再び振り出しに戻されてしまう。 そこで三浦は自軍の部隊がいないことを逆手に取り、またもや「牛歩の息吹」を発動。今度は自軍の部隊がいないので一方的に他の勢力に損害を与えられる。転んでもタダでは起きない。武将達が復帰したところで、すぐに近隣の領地を獲得し、従属先勢力を上回り独立を果たす。そして「風林火山」発動! すぐに部隊を反転させ、今まで従属関係にあった勢力の城を攻め落とす。「下克上サイコー!」(三浦)。 勝負に大きな影響を与えたのは、マップ中央に居座ったNPCの存在だ。このNPCは、勝負には無関心とでも言うように城にドンと構えて動かない。コーエーによると、少し引いておけば城マスから出撃してくるとのことだが、少ない手ゴマで広範囲をカバーしようとしているところに通り道に居座られると本当に厳しい。この処理には考えあぐねてしまい、他媒体の勢力も同様に前線が膠着してしまう。NPCの大名は弱小の部隊で城に接近したところで特に打って出て来る様子でもないので、彼らを避けるようにPCの他家とわたり合う形に。この予選の中ではじめて他媒体のプレーヤーと本格的に刃を交えた。 その後20ターンが過ぎてから武田家はマップ右下から右上を確実に獲得していき、30万石前後の領地で他大名とわたり合う。40万石を越えたあたりで今まで居座っていた織田家の騎馬隊と左下に陣取っていた毛利家との両面作戦となり、右上に逃げることに。右下の領地の大半を失ってしまったが、金山を死守できたのが大きく、少ない領地でもまずまずの石高を維持。 特に領地を効率よく取得するポイントは、8万石の石高を誇る金山の存在だろう。他のマスに比べて数倍の価値があるので、石高争いの場合は極めて重要な戦略拠点となる。また、最終局面に近いところでは残り少ない城を徹底的に強化したのも大きかった。城の防御力はそのまま石高としてカウントされるため、部隊の強化よりも城の強化に資金を使った結果、最終画面をご覧のとおり、目ぼしい城がほとんどないにも関わらず石高はかなり確保している。
結局、3誌とも中央のNPC大名を攻めあぐね、本願寺を囲うような状態で終了した。残念だったのは最後の最後に本願寺に動かれて、防御力を9まで強化した城(9万石相当)を失ってしまったこと。「死守できていればあるいは勝利できたかもしれない。NPC大名の空気の読めなさにはがっくりです……」とは三浦の敗戦の弁。
この試合は北条家、上杉家、伊達家、武田家の4家で争われた。ゲーム開始時の配置図を見てみると、右上の伊達家と左上の上杉家、左下に北条家と武田家が近接している。特に左下はかなり接近しており、初期からお互いを意識する展開になった。初動は双方とも左右方向に展開し、本拠地右手で小競り合いが行なわれた。 左下の北条家は、高戦力ユニットの雑賀孫一の鉄砲隊と大名のユニットを両翼に展開させていった。右上では伊達家が信州と佐渡の金山を早くから押さえる展開で、豊富な資金で初動から有利な展開に。7、8ターンのうちにあっと言う間に40万石に達し、他家が10万石台しか持っていない状況下でいきなり王手をかけてきた。 さすがに他家も驚いたのか、ここぞとばかりに全員で伊達家を狙う「リアル同盟」が発動! 左下で小競り合いを繰り返していた北条家と武田家がやってきて交互に左上の伊達家の領土を分捕っていく。10ターンを過ぎたところで、20万石台で武田家、北条家、伊達家が並ぶ。どこかが突出すると、1位がそのまま勝利するのを防ぐために、周囲から攻められてしまう。このあたりがマルチプレイのおもしろいところだ。 そしてその後勝負が一気に動いた。伊達家はこのターンと次のターンで次々に切り札を発動。回復した戦力で、奪われた領土を回復すると、右中央にいたNPC大名の本拠に攻めかかる。45万石からあと一押しの動きは本当に素晴らしいもので、使用ターンは戦力が倍になるがターン終了後に戦力が1になってしまう文字通りの切り札「ど根性」を使用して、1回のターンでNPC大名の長野家を落とし、総石高51万石を得て勝利を確定させた。
予選で惨敗した三浦は、予選の中で「ど根性」の札を持つ武将を1人も採用しなかったが、お手本のような戦いにただただ脱帽するばかりだった。伊達家を担当した電撃DS誌で、戦略判断といい思い切りのよさといい本当に素晴らしい試合を見せてくれた。
□コーエーのホームページ (2008年6月23日) [Reported by 中村聖司 / 三浦尋一]
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