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音楽館と富士通、業務用「鉄道運転シミュレータシステム」を発表
ゆくゆくは博物館などでサービスも

5月8日 発表

富士通の池田尚義氏。「鉄道運転シミュレータ」とグループウェアなどを組み合わせることで総合的なシステムの構築を組み上げるとことができるとアピール
 株式会社音楽館と富士通株式会社は5月8日に富士通で記者会見を行ない、音楽館の「フルハイビジョン実写映像可変速再生技術」を使った業務用鉄道運転シミュレータシステムに参入すると発表した。販売価格は個別見積もりだが3,000万円からで、販売目標は今後3年間で100システム、50億円としている。

 鉄道運転シミュレータシステムへの参入理由について富士通の池田尚義氏は鉄道事業者からリアルな訓練システムを導入したいとする意見が多いことを挙げた。現状ではCGを使用したものが圧倒的だが、システム価格が高い上、ヴァーチャルな状況で4駅から5駅ほどをシミュレートしたものだという。これに対して音楽館の鉄道運転シミュレータシステムでは実写映像を撮影すれば全区間の上下線を再現することが可能となる。

 このほかにも、グループウェアと連携させることで社員の横の繋がりを強化したり、業務と連携させたいという鉄道会社側の要望や、短期で導入したいといった声も上がっているという。そういった中で「フルハイビジョン実写映像可変速再生技術」を持つ音楽館と技術的、営業的にお互い補完しながら進めていく事になった。

 ラインナップとしては、実際の車両さながらのモックアップをベースにしたシミュレータから、実際のマスコンを使用した簡易運転台からなる鉄道運転シミュレータ、PCと簡易ハンドル型運転台を用いたCAI教室向け運転シミュレータ、個別に運転士が利用できる高性能ノートPCを使ったシステムまで4段階のものを想定。グループウェアと連携させることで、シミュレータを利用した履歴の管理なども行なえるなどの用途もある。マシンスペックとしては、Core 2 Duoプロセッサ (2.40GHz) 以上、メモリ容量は2GB程度のマシンが推奨とされている。

 池田氏は実写を使用したシミュレータの利点について、実際に近い環境で訓練できて訓練成果が高い点や、事故の発生や臨時電車の運行などのアクシデントに関して柔軟に対応できるとしている。またダイヤの変更や高架線になった場合の映像の差し替えなどは、差分をSaaSで対応する予定だという。

 向谷氏によれば、これまで実写を使用したシステムを鉄道関係者に見せる度に「実写ってこんなに綺麗なの?」と現場のプロが驚くという。前述のようにCGによるシミュレータが圧倒的な中、向谷氏は「全区間のシミュレートが必要なのでは」と指摘。実写映像を撮影すれば全区間を再現することは可能。さらに技術的にはフルハイビジョン映像を60フレームでリアルタイムコントロールすることはすでに可能で、実際に先日開催された「東急東横線開通80周年記念 鉄道フェスティバル」でもお伝えしたとおり常時約60フレームを実現している。向谷氏によれば理論上、秒間100フレームから120フレームも可能だという。現在使用しているカメラよりさらに高速撮影が可能なカメラなどで撮影すれば、さらにスムーズな動きを再現できるという。

 制作にあたっては撮影車両の運行 (実写映像を撮影するための特別な車両を走行させる) についてもかなりのこだわりを持っているという。これまでにも多数の撮影を行なってきた同社にノウハウとして蓄積されていると言うことだろう。

音楽館の向谷実氏。この日も熱い口調で各種質問に答え、実写を使用したトレインシミュレータの優位性をアピールした
プレゼンテーションで「トレインシミュレータ」の第1作目を手にして「『トレインシミュレータ』とは?」と言うところからスタートした
 今回の発表はあくまでも業務用システムだが、博物館などに設置される鉄道運転シミュレータシステムなどに利用したいともしている。富士通はアプリケーションサービスとして各種導入事例があり、たとえば2005年に行なわれた「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」の関連イベントとして開催された「ポケパーク」のアトラクション「ポケモンわくわくサファリ」などを手がけている。

 音楽館はすでに「D51シミュレータ機関室」をトータルメディア開発研究所などと共同で制作し鉄道博物館に納入していることを考えると一般の人でもプレイできるシミュレータの登場も近いうちに実現するかもしれない。

 トレインシミュレータは昨年「Railfan 台湾高鉄」が発売されて以来、コンシューマ製品の新作は発表されていないが、「フルハイビジョン実写映像可変速再生技術」および可変再生に特化した同社独自の映像の圧縮技術はブラッシュアップが続けられており、プレイステーション 3でもその技術の再現は可能だという。「東急東横線開通80周年記念 鉄道フェスティバル」に出展されたシステムは映像データを全てハードディスクに収録しているが、1路線の容量は30GB前後で4路線で100GBにも及ぶという。この映像クオリティはプレイステーション 3で扱うには様々な技術的側面から厳しいようだが、これまで発売されてきたタイトルより発展した形で落とし込まれるのではないだろうか。

 今回の発表会とは直接関係はないが、いくつか面白い話題も披露された。音楽館のトレインシミュレータは、天気や様々な要因を徹底的にシミュレートしているが、雨や霧などの天候の表現は実際の映像に対してCGを使用し、周囲の状況を判断しながらリアルタイムにCGで表現。さすがに昼撮影した映像を夜にすることはできないので夜は別途撮影することになるという。またダイヤによっては乗車率120%や200%になることもあるが、このシミュレートについては「最近の車両は応加重装置を搭載しており、車両がどれくらいの乗客を乗せているか掴んでいる」という。もちろんトレインシミュレータでも同装置のシミュレートは組み込まれており、ブレーキの効き方などに変化が発生するようになっている。こういった点については、いくつかダイヤごとに用意された路線を選択することで訓練することができる。

 また、「D51シミュレータ機関室」で導入された運転台のCGの揺れは、「D51シミュレータ機関室」では運転の仕方や場所によってリアルタイムに計算され反応しているが、「東急東横線開通80周年記念 鉄道フェスティバル」に出展されたシミュレータではそこまでは対応できなかったという。ちなみにこの揺れのシステムもプレイステーション 3のパワーで充分カバーできるということなので、いつか登場が予想される新作でも導入されるかもしれない。

「東急東横線開通80周年記念 鉄道フェスティバル」で展示されていた本物のマスコンを使用したシミュレータを会場に特別に設置 向谷氏は自分でトレインシミュレータをプレイしながら注目ポイントや優位性を解説した
会場で流されたスライドから。「鉄道運転シミュレータシステム」の優位点をまとめたもの。ハイビジョン映像を60フレームでコントロール。向谷氏によれば120フレームも実現可能だという 映像データは各PCのハードディスクに格納し、システム的な変更点などやグループウェア部分などを富士通のデータセンター経由でSaaSとして提供する予定だという 富士通の池田氏は「フルハイビジョンの実写映像の可変速再生技術は富士通ではできない。富士通にはない音楽館の技術とシステム提供とを合わせて進めたい」とコメント。今後3年間で100システム、50億円を目指す
ラインナップとしては実際の車両を再現した本格的なシミュレータを想定したAシステムからはじまり、Bシステムではマスコンとシステムを融合させて関連施設向けのシステム。以下、より簡易なシステムのCシステム、ノートPCで利用できるDシステムまで想定している


□音楽館のホームページ
http://www.ongakukan.co.jp/
□ニュースリリース (PDF形式)
http://www.ongakukan.info/pdf/fujitsu.pdf
□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
□ニュースリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/05/8.html
□関連情報
【5月8日】タイトー、DS「鉄道ゼミナール」
音楽館の向谷実氏、タイトー津田洋介プロデューサーインタビュー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080508/tetsu.htm
【5月2日】音楽館、「東急東横線開通80周年記念 鉄道フェスティバル」に出展
フルハイビジョン、本物のマスコンを使用したシミュレーターを出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080502/tokyu.htm

(2008年5月8日)

[Reported by 船津稔]



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