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植田修平氏は、「スカッとゴルフ パンヤ」などのオンラインゲームをパブリッシングしている株式会社ゲームポットの代表取締役社長を務めている。昨年はそのゲームポットの立場で同社のコミュニティ戦略について講演しているが、今年はJOGA会長として、日本のゲーム市場規模に関する調査報告と、JOGAの活動紹介を行なった。
■ 急激な拡大・成長は2007年で収束。淘汰が始まったオンラインゲーム市場
最初にオンラインゲームサービス会社の数について、これまで増え続けてきて、2006年には128社あったものが、2007年には115社となり、初めて減少に転じたことが明らかになった。傾向としては、オンラインゲームのサービスを専門に行なう会社よりも、会社の一事業部として展開してきたところが撤退しているという。 次にタイトル数については、これも2006年まで急速に増えて264タイトルとなっていたものが、2007年には微増の266タイトルに留まった。植田氏は、「これまでは参入障壁が低く、立ち上げたばかりの小資本の会社でも、海外から安い価格で買ったタイトルをローカライズしてサービスできた。カジュアル系ゲームであれば、比較的少人数でできる。そのため一気にタイトル数が増えた」と流れを分析。2007年の数字に関しては、「需給バランスが取れてきていることが推測される」とし、これは衰退傾向ではなく「正常化に向かっているのでは」と語った。 川口氏がこれを補足し、「2004年から2005年にかけての市場規模は50%拡大、2006年は30%。市場規模の伸びとタイトル数の伸びが、今年あたりで同じくらいになってくるのでは」と語った。市場規模については今回は発表されなかったが、タイトルの供給過剰だった状況が、需給の取れたところに収まりつつあるのではという考えを示した。 タイトル数については、前年から継続しているもの、新規のもの、そしてサービスを終了したものというグラフも示された。2005年、2006年は、新規タイトル数が終了タイトル数を圧倒的に上回っていたが、2007年には新規タイトルが減り、終了タイトルが大幅に増え、ほぼ同数となった。この傾向について植田氏は、「タイトルの多くは海外産で、韓国産に依存しているところがある。韓国ではここ1年はランキングの変動がなく、昔からやっているタイトルが上位にいる。韓国で新規タイトルが上に伸びにくくなっているため、依存度の高い日本でも同じようなことが起きているといっていいと思う」と述べた。 また、植田氏自身が以前から述べているコミュニティ戦略についても触れ、「コミュニティはオンラインゲームを継続させるための主な原動力のひとつ。古くからやっているゲームが強いのは、コミュニティが密接にかかわっている。早い段階でサービス終了するところが増えてきており、今後の新規参入タイトルにはコンテンツや運営・サービスの質が問われる」と語った。 続いて示されたデータは、ジャンル別のタイトル増減数。RPGやアクション(FPSなど)は伸びているが、スポーツ系や、コミュニティにゲームが付随したものなど、カジュアルなものが減少傾向だという。植田氏はこの傾向を、「ゲーム性が高いものにユーザーの趣向がシフトしている」と分析。ユーザーがより遊びこめるゲームを求めるようになってきているという流れを示した。 さらにカテゴリ別に見ると、MMOタイトルが増加し、カジュアル系ゲームが減ってきている。植田氏は「カジュアルゲームはプレイ時間が短く、コミュニティができにくい」と、ここでもコミュニティを重視することを強調した。 これらのデータのまとめとして植田氏は、「市場規模はまだ拡大傾向にある。しかし淘汰は始まっている。パブリッシャーに求められるのは、良質なコンテンツ。市場は成長期から成熟期を迎えつつあり、ユーザーの質も高くなっている。良質な運営サービスをきちんとやっていくところが、今後勝ち残っていけるという状況になっていると思う」とした。 オンラインゲーム市場は決して悲観すべき状況ではないが、参入すれば誰でも当たるというような時代は既に終わっており、勝ち組と負け組が明確になる、といったところだ。もっとも、ユーザーはとっくに肌で感じていたことだろう。市場が成熟するとともに、ユーザーの質も上がっていくものだけに、運営会社にはより高い品質を求められることになりそうだ。
これらのデータは、5月に改めて発表される予定。また今年度から、「オンラインゲーム市場統計調査報告書2008」として発行、市販化するとしている。
■ JOGAの活動はゲーム内広告や海外展開など4本柱で展開 続いてJOGAの活動報告が行なわれた。JOGAには現在41社が参画し、うちオンラインゲーム運営会社(正会員)が22社。ほかに関係企業や代理店などが準会員として参加している。現在JOGAでは、不正アクセス・RMT分科会、ゲーム広告分科会、人材育成・マッチング分科会、ゲーム輸出分科会という4つの分科会を設置して取り組んでいるという。 不正アクセス・RMT分科会は読んで字のごとく、不正アクセスとRMTについての対策を練るもの。特にクレジットカードの悪用などによる不正課金について話されており、現在は3Dセキュアの導入によって被害額が以前より少なくなっているという。植田氏は、「情報共有が重要。JOGAを通してパブリッシャーに情報共有し、業界全体で未然に防ぐという取り組みを行なっている」としている。 RMTについては、その資金の大本となるBOT被害を大半の会社が経験しているというデータを示し、運営費用の上昇、アイテム課金の売り上げ減少、ゲームバランス崩壊など、ゲームに与える被害が広範囲に及ぶことを示した。JOGAとしても、業界としての取り締まり・啓蒙活動を行なっていくという。 ゲーム広告分科会は、ゲーム内広告に注目し、オンラインゲームを新しいメディアに位置づけようという研究会。「従来型のWEB広告とは別の、もっと価値ある形でマーケットを創出したい」という。これには問題もあるようで、広告代理店などは、ユーザー数や接続数といったデータがないと始まらないと言い、対して運営会社はそれらのデータは公開できないとして、話がうまくいかない状況もあるようだ。ただ市場としては有望であるという見方が強く、「日本のユーザーはログイン時間が長く、ゲームに対する忠誠心、客単価が高い。今までにないモデルでのサービスをしたい。JOGAはその橋渡しをしたい」という。 人材育成・マッチング分科会は、これから活動を開始するもので、人材不足に悩む業界をサポートするもの。まだ歴史が浅い業界だけに、認知度も教育という点でも低いというのが悩みのようだ。これについては、「これから社会人になる学生にアピールしていきたい。会員合同でのマッチングイベントも企画中だ」と話している。 最後のゲーム輸出分科会は、国産ゲームの世界展開を後押しするもの。BRICs諸国や東南アジアなど、新興国に対する展開や調査も既に行なっているという。「オンラインゲームは海賊版が出回りにくい。昨年はJETRO(日本貿易振興機構)の支援を受けてタイのイベントに出展し、マッチングの後押しなど、メーカーになるべく負担にならないよう支援している」という。 オンラインゲームの海外展開をサポートするというのは、日本ゲームメーカーも気になる話題のようで、質疑応答では「どんなサポートをしてもらえるのか」など詳しい説明を求める声が上がっていた。海外イベントなどの出展において、JETROとも連携しながら、メーカーの金銭的な負担を減らすような施策も行なっているという。
オンラインゲーム業界のデータとJOGAの話を、45分間という短時間にまとめたため、内容が薄くなってしまったのが残念。データについては、5月の発表を待ちたい。特に、既に淘汰が始まったこの業界において、果たして市場規模の実情がどうなっているのかが気になるところだ。
□OGC 2008のホームページ http://www.bba.or.jp/ogc/2008/ □日本オンラインゲーム協会のホームページ http://www.japanonlinegame.org/ □関連情報 【2007年6月28日】OGF、「日本オンラインゲーム協会(JOGA)」設立発表会を開催 初代会長にはゲームポット植田氏が就任、国内25社でスタート http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070628/joga.htm 【2007年2月22日】植田氏が語る、ゲームポットのコミュニティへの取り組み 「パンヤ」、「CABAL」、「君主」、3つのタイトルの“秘策”とは? http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070222/gamepot.htm (2008年3月14日) [Reported by 石田賀津男]
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