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2月22日~23日 開催 会場:ベルサール神田
本稿では株式会社ゲームポット代表取締役社長植田修平氏の「ゲームポットの事業戦略について」を紹介したい。この講演は21日の講演の中で最も話題を集めた内容だったといえる。なにしろ、植田氏はこの講演を通じて「スカッとゴルフ パンヤ」、「CABAL ONLINE」、「君主」の3つのタイトルにおける具体的な「運営テクニック」を明らかにしたのだ。 ゲームポットの明確なテクニックの開示に対して、受講者すべてはメーカーの“戦略”というものに対して改めて考えさせられただろう。今回の講演が今後業界にどのような影響を与えるかという点でも楽しみである。
■ コミュニティ形成に力を入れた施策を集中的に行なったことが成功に繋がった「パンヤ」
2004年8月からオープンβサービス、同年の11月から基本プレイ無料アイテム課金制の正式サービスをスタートした「スカッとゴルフ パンヤ」(以下、「パンヤ」)はサービス当初は会員数が5万人というオンラインゲームとしては“微妙”な成績だった。スポーツゲームはMMORPGと違い、1回のプレイ時間も短く、チャットのみのシステムだったためアバター要素も乏しかった。また、対戦のみで協力プレイもないというゲーム性のため、コミュニティ形成が難しかった。 ゲームポットは公式掲示板を作ることでユーザー同士の交流を後押しし、イラストコンテストなどで同人誌コミュニティを応援した。さらにブログのスキンを提供するなどゲーム以外の部分でのユーザー間の情報共有と交換が活発になるように働きかけた。 開発元である韓国Ntreev Softに要望を出し、友達登録機能、メッセージを残せる伝言板機能、クラブ(ギルド)システムなどを導入。特にクラブシステムは15%ものユーザーが増加するという大きな結果を生み出した。「パンヤ」のコミュニティを形成するには何が必要かを開発元と話し合いコミュニティに特化した要素を次々と加えていったのだ。 コミュニティ施策の“集大成”となるのが2006年11月に実装された大規模アップデート「Season3」だ。このアップデートで「チャットルーム」が実装され、「パンヤ」のキャラクタはゴルフをするだけでなくフィールドを歩き回り様々なアクションを行なうことが可能になった。プレーヤー達はMMORPGのように自由にキャラクタを操作し、服装のチェックや、キャラクタにアクションをさせるパフォーマンスが可能になった。 チャットルームを使ったスクリーンショットコンテストでは“花嫁を追いかけ回す多数の男性キャラクタ”といったストーリーを持ったものや、多くのキャラクタで作る人文字、同じ格好をしたキャラクタによるアクションなど多数のユニークな作品が生まれた。現在もユーザーによって様々な“ゴルフ”以外の遊び方が出されているという。 このコミュニケーションシステムは特に好評で、「Season3」実装以降ユーザーの平均接続数は30%増、最高同時接続者数は28%増加した。ゲーム内の世界のユーザーの交流はさらに活発になった。
ゲームポットは更なる施策として、お笑い芸人のレイザーラモンHGさんの衣装が登場するキャンペーンや、タレントの時東ぁみさんがゲーム内に登場するオンラインイベントなどを行なった。特にレイザーラモンHGさんの時はゲームの雰囲気にミスマッチだったためか賛否両論の反応が大きく、様々なところで話題になったという。ゲームポットは今後も様々な施策によってゲームの内外で話題を提供し、ゲームを知らないユーザーにも興味を持ってもらうようにしていくという。
■ 情報を押さえた「CABAL」、ユーザー自身の情報も参照できる「君主」、ユーザー間を密接にする2つの試み
本作はこの時点ですでに韓国でサービスされていた。コアなユーザーは韓国のサイトから情報を集め、翻訳して個人ページに情報を掲載した。ゲームの情報を求めるユーザーはそういった個人ページに集中し、強固なコミュニティが作られるきっかけとなった。 ゲームポットはその後も大きな情報開示を行なわず、GMブログを公開し、ソーシャルネットワークの「ミクシィ」内でのコミュニティを立ち上げ、小さなコミュニティに向けてのみ少しずつ情報を発信した。クローズドβテストも大々的に募集せず、500人という少数のユーザーを最初に募集し、彼らがそれぞれ5人の新しいユーザーを呼び込んでいくような特殊な方法で行なった。 ブログのみでミクシィ会員枠を設ける事を発表するなどその方向性は徹底していた。このため、GMブログのトラックバック、ミクシィのコミュニティの会員数は鰻登りになり、そこで活発な議論が行なわれていった。結果としてオープンβサービス時には強固なコミュニティが形成されており、多くの会員を獲得することができた。 韓国NDOORSが開発し、2006年3月よりアイテム課金が行なわれている「君主」は、会員数こそ他のタイトルよりも少ないものの、ユーザーのアクティブ率は他タイトルよりも高い。ゲームポットはこの作品に関しては特に自社のコミュニティサイト「プチコミ」と連動させることでユーザーの「囲い込み」を計ったタイトルだ。 「君主」は政治色の強いMMORPGであり、選挙で選ばれたユーザーが政治を司るというユーザー自身の自治を可能にしている。本作には3つの国家があり、国ごとのコミュニティを形成しやすいゲーム性を持っている。ゲームポットはさらにゲーム内から直接ユーザーが書いている日記など「プチコミ」の内容を(本人が許可すれば)参照することができるシステムを導入した。 結果として「君主」のプレーヤーは友達のキャラクタのみならず、キャラクタを操るプレーヤー自身のことも詳しく知ることが可能になり、より繋がりが強くなった。本作のユーザーの10%がプチコミを利用している。また、各サーバーに5人のみという厳しい選択によって選ばれる「新聞記者」を設定し、彼らに情報を発信させた。新聞記者達は日記だけでなく、ユーザーの意見を運営に伝えるなど、様々な役割をこなしているという。 今回植田氏がここまで具体的に自社の戦略を明らかにしたことは正直、驚かされた。それと共に、多くのメーカーがこういった各タイトルを細かく分析した上で、明確な戦略を持って運営しているのか、それともゲームポットが特別なのかということも考えさせられた。 1つだけ確かなことは、ゲームポットは「パンヤ」というすぐれたコンテンツを最初にパブリッシングできたというだけで成功したのではない、ということだ。各タイトルによるそれぞれの練られた戦略は、コンテンツの進化にも明確な方向性を持たせている。「パンヤ」は本国である韓国以上に日本で成功をおさめているタイトルであるが、その理由はゲームポットのこの戦略があってこそだろう。
今回の講演で植田氏、そしてゲームポットは本来“秘策”といってもいい運営上のノウハウを明らかにした。それは彼らが、今回の「AOGC2007」をどれだけ重要な場と考え、ゲーム制作者や運営者、我々メディアを含めた参加者に対しての期待の大きさを物語っていると思う。この講演を受けた業界の今後には注目したいところだ。それと共に手の内を明らかにしたゲームポットの“自信”も確かに感じた。ゲームポットは、今年多くの新タイトルのサービスをスタートさせる。どのような“秘策”をもっているのだろうか。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2007年2月22日) [Reported by 勝田哲也]
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