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日本eスポーツ協会設立準備委員会、発足記念イベントを開催
3種目で日韓戦を実施、ジョニー黒木と武蔵丸親方が乱入!?

12月1日開催

会場:お台場メディアージュ特設会場

 日本eスポーツ協会(JESPA)設立準備委員会は、12月1日、お台場メディアージュ内特設会場にて、JESPAの発足記念イベント「eスポーツ日韓戦」を開催した。会場には多数の業界関係者や報道関係者らが訪れ、日韓両国の選抜選手による「eスポーツ」という、新たな競技方式のデモンストレーションが披露された。


■ 「eスポーツ」文化の確立・推進を目指すファーストステップ

開会宣言でスピーチを行なうJESPA準備委員会委員長補佐・平方彰氏。日本における「eスポーツ」文化の現状を確認し、今後の発展にかける期待を語った
 日本eスポーツ協会設立準備委員会は、eスポーツ文化の普及と発展を目的とする公的団体「日本eスポーツ協会(JESPA)」の設立を目指す組織である。組織委員長は元通商産業省・現参議院議員の西村康稔氏。同委員会は直近の目標として、2008年にベトナムで開催が予定されているアジア室内競技大会に日本選手団を送り込むことを掲げている。

 今回行なわれた「日韓戦」の趣旨は、設立準備委員会初の主催イベントとして、広く一般社会への「eスポーツ」認知を図るというもの。このため一般的なゲーム競技会とは異なり、業界関係者および報道関係者のみを招待するというクローズドな形式ながら、進行・演出は非常に洗練された内容。日韓両国選手団による試合のほか、エキシビジョンマッチとして武蔵丸(第67代横綱、現年寄・武蔵川部屋親方)とジョニー黒木(現千葉ロッテマリーンズ投手)によるゲーム対決が企画され、会場内には複数の民放キー局取材陣の姿も見られた。

 開会宣言では、委員会で委員長補佐を勤める平方彰氏が登壇。平方氏はまず「日本はゲーム大国でありながら、国際的に見てeスポーツの世界では立ち遅れている」という現状認識を紹介。委員会が取り組む課題として、「eスポーツを広く紹介し、日本における普及促進を目指す」、「ゲーマーにもたれているネガティブイメージを払拭し、アスリートゲーマー像を確立・普及・発展させる」、「先行する各国のeスポーツ協会と連携を取りつつ、選手の意識向上を図る」という3つの活動テーマを紹介し、「eスポーツ」文化の普及・発展に期待を寄せた。

 「eスポーツ」デモンストレーションとして、今回の種目に選ばれたゲームタイトルはWindows PC用「フリスタ! -Street Basketball-(フリスタ)」、プレイステーション 3用「ワールドサッカー ウイニングイレブン2008(ウイイレ2008)」、同じくPS3用「鉄拳5 DARK RESSURECTION ONLINE」の3種。それぞれの種目で日韓の代表選手が対決し、種目毎に日韓の勝敗を争うという形式で試合がおこなわれた。

会場入り口には日韓の国旗が掲揚されていた。韓国eスポーツ協会の協力のもと、両国選手が対決 場内の照明が落とされ、選手がプレイに集中する様子がモニターに映し出される 選手宣誓。スポーツマンシップに則ったクリーンな試合を両国の代表が誓う



■ プロゲーマーリーグを持つ韓国選手層の厚さを再認識。日韓戦では全種目で韓国が勝利

「フリスタ」で対決する両国の代表選手。チームカラーは日本が青、韓国が赤を基調としたものに統一されている
 実際の競技では韓国勢の強さが際立った。最初に行なわれた種目「フリスタ」では、3対3、2セット先取形式で2試合を実施。対決したのは日韓を代表するトップチームである。ホームチームは日本。第1戦目、Kang Nam Jun選手がリーダーを務める韓国チームが圧倒的な強さを見せ、第1セット15-37、第2セット18-26でストレート勝ち。第2戦目も、Lee Seung Kyu選手がリーダーを勤める韓国チームが17-34、16-33と、ダブルスコアの大差をつけてストレート勝ち。韓国生まれの「フリスタ」で、韓国勢がその実力を証明して見せた。

 両チームのプレイの差として際立っていたのは、まずチームプレイの完成度だ。韓国チームは全員が動き回りながらも、常に1名のプレーヤーがスリーポイントラインの外側に位置してパスコースを確保。不意を付いて3ポイントシュートを多数決めることができたのが、大差の理由だ。対する日本チームはゴール際に3人とも集まってしまいがちで、パスコースを消されてボールを失うシーンが目立った。もうひとつの違いは、良いプレイをした際に、プレーヤー同士が声を出して称え合い、互いの士気を鼓舞するシーンが韓国勢に多かったことだ。

プレイに集中する両国の選手達。「フリスタ」では韓国勢の実力が非常に高く、試合は終始韓国ペースで進行した。日本勢も個別のプレイでは素晴らしいものがあったが、チームの連動性で差をつけられた格好である

「ウイイレ2008」は個人戦。日韓それぞれのナショナルチームを使い、10分の試合時間で勝敗を争った
 2つ目の種目「ウイイレ2008」では、日本生まれのゲームということもあり日本勢の活躍が期待された。しかし韓国勢はここでも強さを見せる。対戦形式は1対1、試合時間は10分。異なるプレーヤー同士で前後2戦を行ない、日韓の勝利は合計得点差によって決定するというルール。使用チームは両国のナショナルチームで、リアルサッカーの「日韓戦」の様相を呈するゲーム画面に声援を送る来場者の姿も多数見られた。

 第1戦は点の取り合いになった。前半18分に韓国側が先制ゴールするや、日本側は同30分に同点ゴールを挙げる。44分には日本側に追加点が生まれ、ロスタイムに韓国側が同点ゴール。ゴールシーンのたびに観客席から大きな歓声が上がった。2-2で折り返した後半は、完全に韓国ペースで進み、結果は2-5で韓国側の圧勝。第2戦は日本側が2-0で勝利するも、合計得点は4-5となり韓国側がトータルの勝利を獲得した。日本側はトータルで敗北してしまったものの、今回の種目の中で最も客席が盛り上がったのは間違いなくこの「ウイイレ2008」だ。ゲーム経験の少ない人々にもわかりやすく、プレイ内容にゲーム固有の特殊性が少ないのがポイントだろう。

「フリスタ」、「ウイイレ」ともにスポーツゲームであり、ゲーム経験の少ない観客にも試合展開が伝わりやすい。チャンスシーンには会場内に大きな歓声が巻き起こった(左、中央)。ゴールを決め、ゲーム内の選手と、操作する選手が連動する。「eスポーツ」とスポーツゲームは合性がよさそうだ(右)

「鉄拳5」は相手を浮かせてからのコンボ攻撃がキーとなる格闘ゲーム。そこにいたる読み合いが見所だ
 最後の種目となった「鉄拳5」は5対5の団体戦。両チーム1名ずつが対決し、3本先取したチームが勝利するという形式で争われた。これも日本生まれのゲームということで日本勢の善戦が期待されたものの、またしても結果は異なるものに。日本勢は先鋒戦から中堅戦まで3人が敗北し、早々にチームとしての敗北が確定。ここで緊張がほぐれたのか、副将戦、大将戦では日本側が勝利。合計勝利数は3-2となり、惜しくも日本勢の敗北で幕を下ろした。

 ここで日韓両選手のプレイスタイルの違いとして現われていたのは、やはりチームメンバーが「互いに声を出す」ということだ。韓国チームは、対決中の選手の後ろに控えて試合を見守りながらも、プレーヤーが良いプレイでコンボを決めたり、ラウンドを勝利した際には互いに手を叩き歓声を上げて選手を祝福する。日本チームはこういった動きが希薄で、傍目にはメンタル面での違いがかなり際立っていた印象だ。この違いは、韓国がプロゲーマーリーグを持つ国であることに大きな要因があるかもしれない。ゲームに対する姿勢がより積極的で、アスリート的なものに見えるのである。

両国選手団には明確な温度差が見られた。それは、プレイに参加しないチームメイトが全員で仲間を応援する姿勢に顕著だ(左、中央)。勝利した韓国の大将パク・ヒュンキュ選手は、「緊張してもいいプレイができるように練習することが大事」とコメント(右)


■ まだまだ日韓の温度差が目立つ「eスポーツ」。内実を伴った文化推進を期待

勝利した韓国選手団にトロフィーが手渡され、「日韓戦」イベントは成功裏に終わった。今回のイベントが今後どのような形で報道されていくかが注目される
 「日韓戦」の結果は、3種目全てにおいて韓国勢が勝利するという結果に終わった。そこで見えた事実は、日韓の実力差だけではなく、ゲームに対する姿勢と、アスリートとしての意識の差だろう。韓国には12ものプロゲーマー団体が成立しており、そこではひとつの職業としてのゲーマー像がある。子供達の憧れである選手は単なるゲーマーではなく、一人の人間としても注目される存在だ。そこではゲームの文化的役割が非常に大きなものになっている。

 今回、eスポーツ協会設立準備委員会が韓国eスポーツ協会(KeSPA)の協力のもと、韓国のトッププレーヤーを招いた背景には、そういったゲームの文化的可能性を示してみせるという狙いがあったのかもしれない。何かとネガティブイメージをもたれがちな日本のゲーマー像を寄り良い方向に変えていくため、今後も今回のようなKeSPAとの連携が重要な役割を果たすことになるだろう。

 eスポーツ協会設立準備委員会・副委員長の平方彰氏は、弊誌取材に対して「ゲームアスリート」についてこう語ってくれた。「びっくりしたのは、教育の部分です。韓国のトッププレーヤー達は、アスリートとしてしっかりとした受け答えをします。ゲームアスリートとしてのマインドを、日本の協会として教育していくべきということも、韓国eスポーツ協会から学んだ重要なことです」

 平方氏によれば、eスポーツ協会設立準備委員会の今後のロードマップについて、現時点ではこれからの展開を考えている段階だという。6月末の委員会設立以来の活動の成果として、今回のイベントをファーストステップとし、今後やるべき活動について「ある程度の考えはある」としながらも、基本姿勢としては「特定の考え方に固執せず、ニュートラルに柔軟に考えてやっていきたい」とも語ってくれた。世界におけるeスポーツの現状認識として、目先の現象に囚われすぎたために活動に支障を来たしているケースもあるということで、先を急ぐことなく慎重に準備を進めていく姿勢であるようだ。

 平方氏の発言を咀嚼してひとつ言えるのは、「eスポーツ」文化は日本における主流のゲーム文化とは異なる構造を持つものであるということだ。「eスポーツ」はフィジカルスポーツと同じく、アスリートによる競技が文化価値の中核であり、ゲームメーカーや流通業界が主導してきたこれまでのゲームのあり方とは全く違ったパラダイムに基づくことになる。それはユーザーニーズによって生まれるものではなく、今あるプレーヤー活動の「実態」こそが本質である。だからこそ急がず着実に、日本のゲームシーンの現実に即した文化の普及・発展を期待したい。


【特別イベント】
会場では特別イベントとしてエキシビジョンマッチを開催。派手な演出とともに、武蔵丸親方が登場! 続いて登場した男の仮面を剥ぎ取ると、正体は千葉ロッテマリーンズのジョニー黒木選手。リアルアスリート同士の「鉄拳5」対決が実現した
「僕のは相手が目の前にいるスポーツだから、ゲームはよくわからないね」と武蔵丸親方。対する黒木選手は「反射神経が本当にスゴイね。彼らは頭を使うアスリートだと思う」と、この日戦った選手達を評価した(左、中央)。続けてその二人が「鉄拳5」で対戦開始。ゲームコントローラーは武蔵丸親方の大きな手には窮屈そう。それにしても凄い絵だ(右)
ゲームはジョニー黒木選手のペース。負けてしまった武蔵丸親方は「もう一度!」と再戦。試合後、「やっぱり勝ちたい気持ちが出てくるね、負けてしまった時は悔しくて少し涙がでちゃったよ」と、ゲームでも闘争心を隠せなかったようだ

□日本eスポーツ協会設立準備委員会(JESPA)のホームページ
http://www.japan-e-s-a.jp/
□関連情報
【2月23日】電通スポーツ事業局竹田氏とGoodplayer.jp犬飼氏による「E-Sportsの現状と今後の展望」
アジア室内競技大会のe-Sportsで金メダルを!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070223/esp.htm
【11月22日】日本eスポーツ協会設立準備委員会、発足記念イベント開催決定
「ウイイレ2008」、「鉄拳5DR」、「フリスタ!」の日韓戦を実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071122/jespa.htm

(2007年12月3日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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