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会場:お台場メディアージュ特設会場
■ 「eスポーツ」文化の確立・推進を目指すファーストステップ
今回行なわれた「日韓戦」の趣旨は、設立準備委員会初の主催イベントとして、広く一般社会への「eスポーツ」認知を図るというもの。このため一般的なゲーム競技会とは異なり、業界関係者および報道関係者のみを招待するというクローズドな形式ながら、進行・演出は非常に洗練された内容。日韓両国選手団による試合のほか、エキシビジョンマッチとして武蔵丸(第67代横綱、現年寄・武蔵川部屋親方)とジョニー黒木(現千葉ロッテマリーンズ投手)によるゲーム対決が企画され、会場内には複数の民放キー局取材陣の姿も見られた。 開会宣言では、委員会で委員長補佐を勤める平方彰氏が登壇。平方氏はまず「日本はゲーム大国でありながら、国際的に見てeスポーツの世界では立ち遅れている」という現状認識を紹介。委員会が取り組む課題として、「eスポーツを広く紹介し、日本における普及促進を目指す」、「ゲーマーにもたれているネガティブイメージを払拭し、アスリートゲーマー像を確立・普及・発展させる」、「先行する各国のeスポーツ協会と連携を取りつつ、選手の意識向上を図る」という3つの活動テーマを紹介し、「eスポーツ」文化の普及・発展に期待を寄せた。
「eスポーツ」デモンストレーションとして、今回の種目に選ばれたゲームタイトルはWindows PC用「フリスタ! -Street Basketball-(フリスタ)」、プレイステーション 3用「ワールドサッカー ウイニングイレブン2008(ウイイレ2008)」、同じくPS3用「鉄拳5 DARK RESSURECTION ONLINE」の3種。それぞれの種目で日韓の代表選手が対決し、種目毎に日韓の勝敗を争うという形式で試合がおこなわれた。
■ プロゲーマーリーグを持つ韓国選手層の厚さを再認識。日韓戦では全種目で韓国が勝利
両チームのプレイの差として際立っていたのは、まずチームプレイの完成度だ。韓国チームは全員が動き回りながらも、常に1名のプレーヤーがスリーポイントラインの外側に位置してパスコースを確保。不意を付いて3ポイントシュートを多数決めることができたのが、大差の理由だ。対する日本チームはゴール際に3人とも集まってしまいがちで、パスコースを消されてボールを失うシーンが目立った。もうひとつの違いは、良いプレイをした際に、プレーヤー同士が声を出して称え合い、互いの士気を鼓舞するシーンが韓国勢に多かったことだ。
第1戦は点の取り合いになった。前半18分に韓国側が先制ゴールするや、日本側は同30分に同点ゴールを挙げる。44分には日本側に追加点が生まれ、ロスタイムに韓国側が同点ゴール。ゴールシーンのたびに観客席から大きな歓声が上がった。2-2で折り返した後半は、完全に韓国ペースで進み、結果は2-5で韓国側の圧勝。第2戦は日本側が2-0で勝利するも、合計得点は4-5となり韓国側がトータルの勝利を獲得した。日本側はトータルで敗北してしまったものの、今回の種目の中で最も客席が盛り上がったのは間違いなくこの「ウイイレ2008」だ。ゲーム経験の少ない人々にもわかりやすく、プレイ内容にゲーム固有の特殊性が少ないのがポイントだろう。
ここで日韓両選手のプレイスタイルの違いとして現われていたのは、やはりチームメンバーが「互いに声を出す」ということだ。韓国チームは、対決中の選手の後ろに控えて試合を見守りながらも、プレーヤーが良いプレイでコンボを決めたり、ラウンドを勝利した際には互いに手を叩き歓声を上げて選手を祝福する。日本チームはこういった動きが希薄で、傍目にはメンタル面での違いがかなり際立っていた印象だ。この違いは、韓国がプロゲーマーリーグを持つ国であることに大きな要因があるかもしれない。ゲームに対する姿勢がより積極的で、アスリート的なものに見えるのである。
■ まだまだ日韓の温度差が目立つ「eスポーツ」。内実を伴った文化推進を期待
今回、eスポーツ協会設立準備委員会が韓国eスポーツ協会(KeSPA)の協力のもと、韓国のトッププレーヤーを招いた背景には、そういったゲームの文化的可能性を示してみせるという狙いがあったのかもしれない。何かとネガティブイメージをもたれがちな日本のゲーマー像を寄り良い方向に変えていくため、今後も今回のようなKeSPAとの連携が重要な役割を果たすことになるだろう。 eスポーツ協会設立準備委員会・副委員長の平方彰氏は、弊誌取材に対して「ゲームアスリート」についてこう語ってくれた。「びっくりしたのは、教育の部分です。韓国のトッププレーヤー達は、アスリートとしてしっかりとした受け答えをします。ゲームアスリートとしてのマインドを、日本の協会として教育していくべきということも、韓国eスポーツ協会から学んだ重要なことです」 平方氏によれば、eスポーツ協会設立準備委員会の今後のロードマップについて、現時点ではこれからの展開を考えている段階だという。6月末の委員会設立以来の活動の成果として、今回のイベントをファーストステップとし、今後やるべき活動について「ある程度の考えはある」としながらも、基本姿勢としては「特定の考え方に固執せず、ニュートラルに柔軟に考えてやっていきたい」とも語ってくれた。世界におけるeスポーツの現状認識として、目先の現象に囚われすぎたために活動に支障を来たしているケースもあるということで、先を急ぐことなく慎重に準備を進めていく姿勢であるようだ。
平方氏の発言を咀嚼してひとつ言えるのは、「eスポーツ」文化は日本における主流のゲーム文化とは異なる構造を持つものであるということだ。「eスポーツ」はフィジカルスポーツと同じく、アスリートによる競技が文化価値の中核であり、ゲームメーカーや流通業界が主導してきたこれまでのゲームのあり方とは全く違ったパラダイムに基づくことになる。それはユーザーニーズによって生まれるものではなく、今あるプレーヤー活動の「実態」こそが本質である。だからこそ急がず着実に、日本のゲームシーンの現実に即した文化の普及・発展を期待したい。
□日本eスポーツ協会設立準備委員会(JESPA)のホームページ (2007年12月3日) [Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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