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電通スポーツ事業局竹田氏とGoodplayer.jp犬飼氏による
「E-Sportsの現状と今後の展望」
アジア室内競技大会のe-Sportsで金メダルを!

【アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京】
2月22日~23日 開催

会場:ベルサール神田

 AOGC初日となる2月22日のセッションでは、基調講演後の2コマを使い、株式会社電通スポーツ事業局竹田恒昭氏と有限会社ネクサムGoodPlayer事業部犬飼博士氏による講演「E-Sportsの現状と今後の展望」が行なわれた。アジア大会の正式種目として採用されたe-Sportsへ日本からの選手の派遣に向け、1コマ目を使って本種目の模擬対戦が行なわれた上、犬飼氏がe-Sportsとは何かと、今後の展望を軸に講演を進めた。

 今年のAOGCのキーワードである「コミュニティ」だが、犬飼氏は、プロ・アマプレーヤー、開発者、投資家、観衆が一体となったコミュニティの創造性の発現がe-Sportsの発展への出発点になるという。犬飼氏は従来のスポーツとe-Sportsを比較しながら、e-Sportsの発展が、良質なソフトウェアや、入力デバイスへのニーズにつながり、従来のスポーツと同じ効能を社会に与えるとした。

 本稿では犬飼氏の講演内容を踏まえながら、アジア室内競技大会の新種目「e-Sports」への日本からの参戦のビジョンについてもお伝えしていく。



■ e-Sportsは情報化社会の生んだ新スポーツ

有限会社ネクサムGoodPlayer.jp事業部犬飼博士氏。「金メダルを取ろう!」と犬飼節は健在
 犬飼氏は2000年頃から日本にe-Sportsの概念を紹介し、以来数年に渡り各種世界大会への出場をもって普及させようとしてきた。いち早くゲームを競技として浸透させるべくAceGamer.netやGoodPlayer.jpを立ち上げ、世界で競技として行なわれているゲームタイトルをイベントに取り入れ、選手を世界に送り込んできた。

 しかし、世界大会のメインストリームが「Counter-Strike」や「Quake」、「Starcraft」といったWindowsのパッケージタイトルが主体で、これに合わせる形で展開してきたため、コンシューマ機主体の日本市場では犬飼氏の提唱したe-Sportsが広く根付くことはなかった。そして2006年には、世界大会に選手を送れなくなってしまう。2007年は犬飼氏にとって再チャレンジの年でもある。

 犬飼氏は「金メダルを取りにいこう」という往年のスタイルは崩さなかったものの、e-Sportsを「自身の身体能力や技術、思考、精神をデジタルデータ化しコミュニケートするスポーツ」と明確に定義し、その上で社会貢献の可能性を探った。

 犬飼氏はまず、e-Sportsとは何かを説明した。採集・狩猟社会では格闘技、農耕社会ではサッカー等の球技、工業化社会ではモータースポーツ、そして情報社会ではe-Sportsと、その時代や社会におけるスポーツと紐付けて並べ、体を動かす従来のスポーツとe-Sportsを比較した。そして、これまで様々な形でe-Sportsの定義が語られてきたことを踏まえたうえで、コントローラーやキーボード、マウスを使って身体の動き、思考、感情、精神をデジタルデータに置き換え、プレーヤーの行動がデジタルデータ化された上で他のプレーヤーとコミュニケートされることがe-Sportsだとした。

 体の動きなどをデジタル化したデータを他のプレーヤーとやり取りすることが決定的な差であり、今後従来のスポーツにも影響を及ぼすだろうとしている。例えばアメリカンフットボールのホームページでは、行なわれている試合の選手の動きがリアルタイムでホームページ上に再現されているが、ここから実際の選手の動きが切り離され情報化されたコミュニケーションのみの試合となれば、それはe-Sportsとなるだろうと述べた。

 2005年のAOGCでも犬飼氏は同様のセッションを持ったが、e-Sportsの明確な定義付けをしていなかった。アジア室内競技大会で採用されるなど、e-Sportsに対する関心が高まる中で、こうした概念を竹田氏と共にいかに広く浸透させていくか、今後の動きに注目したい。

講義の中でe-Sportsの定義を「情報化社会の新スポーツ」と説明。自身も出演したフジテレビの番組「NON-FIX」を引きながら、株式会社アスクでプロゲーマーとして活躍したSIGUMA選手や、FPSを家族で楽しんでいる例を紹介した
犬飼氏はe-Sportsの未来像の一例として、バスケット一面にモニターが埋め込まれ、映し出された円盤を投げあう競技を紹介した。デジタル化されたデータのため、円盤に属性をつけるなど多様な遊び方、競技の開発が可能になるとのことだ。さらにはe-Sports選手の各種デバイスに対するニーズが、より人間の繊細な行動に根ざしたアナログ志向のデバイス開発を牽引するだろうとした



■ アジア室内競技大会へのタイトなロードマップ

株式会社電通スポーツ事業局竹田恒昭氏。講演時間を残すところ10分で登場したが、アジア室内競技大会を通じた電通のビジョンが見えにくかった
アジア室内競技大会へ向けたロードマップ。非常にタイトなスケジュールだ
 竹田氏は自身が「Counter-Strike」のプレーヤーであり、各種世界大会への日本代表を経験した後、2005年から株式会社PSYMINでプロゲーミングチームをプロデュースし、選手を育成していた。過去6年間に渡りビデオゲームのオリンピックWorld Cyber Games(WCG)やCyber Professional Leagueといった世界大会に日本から選手を送り込んできた犬飼氏とは、世界大会への出場やイベント運営を通じ、友人関係にある。現在はPSYMINを辞して株式会社電通スポーツ事業局で、野球、水泳、e-Sportsに関する業務を行なっている。

 今回のカンファレンスで気になるのは、10月にマカオで開かれるアジア室内競技大会への出場の可否だ。昨年末に発表されたアジア室内競技大会では、「NBA Live」、「Need For Speed」、「Winning Eleven」(いずれもPCプラットフォーム)の3種目が、「競技」としてアナウンスされている。元来は「ゲーム」として親しまれている3作を、競技の舞台に引き上げ、アジア一を決しようというものだ。

 10月に行なわれるアジア室内競技大会を含め、広州での第16回アジア大会と第17回アジア大会の全世界独占マーケティング権・放送権は電通が取得しているが、日本からe-Sportsの代表選手がマカオに赴くためには、統括団体のないe-Sports種目には超えるべきハードルがある。まず統括団体を設立させ、6月22日までに日本オリンピック委員会(JOC)が、アジア室内競技大会の主催であるアジアオリンピック評議会(OCA)に申し込まなければならない。その後、国内予選会を開催し、9月14日までに代表選手名簿をOCAに提出して、ようやく10月のマカオでの本選に出場できる。

 非常にタイトなスケジュールの中で、電通は開催に向けて動いているわけだが、この日は具体的な出場種目の内容はおろか、スケジュールの進捗さえも語られることはなかった。竹田氏は「電通としてはノーコメントだが、私個人としてはe-Sports種目での日本選手出場はできると思う」という。アジア室内競技大会に出場決定後の展開に関しても答えられないと歯切れが悪かった。電通の展開によっては、ワールドカップのようなマスに向けた大々的なプロモーションもあり得るだけに、もどかしさの残るセッションだった。

【模擬対戦】
1コマ目のCDNネットワークス・ジャパンのスポンサー枠のセッションでは、大西響太氏、UZI the 9mm氏、DJ OASIS氏が登場した。ゲーム音楽の制作やゲーマーとしても活躍するなど、ゲームにゆかりの深いによる3人のアーティストにより、e-Sportsの模擬対戦が行なわれた。当初「スカッとゴルフ パンヤ」でのプレイが予定されていたが、急遽Xbox 360「Need For Speed: Carbon」に変更された。このため、熟練したプレーヤーたちがデッドヒートを繰り広げる面白さは伝えられなかったものの、オーディエンスが見守る中で、イコールコンディションで試合が進行し、解説実況が加えられ、勝者には盾が贈られるという、犬飼、竹田両氏の目指す一連のe-Sportsのスタイルが伝えられた
Xbox 360「Need For Speed: Carbon」は初体験という3氏だったが、プレイの中でコツをつかんだDJ OASIS氏が勝利した。犬飼、竹田両氏は、BMXやスケボーを用いるXスポーツライクなプレイスタイルでe-Sportsを紹介し、その方向性を示した


□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/bba/
□「アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京」のページ
http://www.bba.or.jp/AOGC2007/

(2007年2月23日)

[Reported by 三浦尋一]



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