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会場:NHN Japan本社
しかし、自社パブリッシュの路線は維持しつつ、2006年末からふたたびチャネリングを強化し、12タイトル(10月23日時点「ファンタジーアースゼロ」まで)ものチャネリングを行なっている。これは2002年からスタートしたチャネリングの実績としては過去最高であり、かつ日本の大手メーカーの参入が目立つところが大きな特徴となっている。 今回は、NHN Japanのコアビジネスとなっているチャネリングを軸に、同社の今後の戦略を伺った。インタビューに応じていただいたのは、チャネリングを専門に取り扱っている新設のゲームエンタープライズ事業部の事業部長 田代克行氏。インタビューでは、日本国内での圧倒的な実績を背景に、自信に満ちた発言が目立った。後半では運営プラットフォーム「PURPLE」構想も飛び出し、将来の具体的なプランを聞くことができたのが収穫だった。
■ チャネリングとパブリッシングに特化したゲームエンタープライズ事業部
田代氏: もともと、主にMMORPGを中心としたパブリッシング事業のコアとなるチームがいて、そこに他社様のコンテンツをお預かりしてサービスするチャネリングの事業と、バンダイナムコさんと共同開発した「ファミスタオンライン」を担当した開発事業、あとは純然たるパブリッシング事業と、この4つの事業が一緒になったのがゲームエンタープライズ事業部です。 編: つまり、既存のパブリッシング事業部の上位に位置する戦略的な部署というわけですか? 田代氏: 考え方としてはそうなるかもしれません。領域としてはパブリッシングと、業界的に言われているチャネリングのふたつの事業が柱になっています。 編: ゲーム事業も全部傘下に入っているということでしょうか。 田代氏: いえ、全部ではなく、ハンゲームのカテゴリで「かんたん」と言われるタブの中に入っているカジュアルゲームなどはまた別の事業部です。 編: 以前は、ハンゲーム事業部がNHNのゲーム事業を統括していましたよね。 田代氏: 今年8月にハンゲーム事業本部はなくなり、フラットな組織になりました。その後も変革があり、現在はカジュアルゲームを作って運営しているクリエイティブ事業部、アバター関連の企画を担当するキャラクタ事業部、サイト全般の運営と若干のコンテンツビジネスをしているサイト運営事業部、そしてゲームエンタープライズ事業部が一体となって、ハンゲームを構成している感じですね。 編: ゲームエンタープライズ事業部の設立意図と事業内容について教えてください。 田代氏: もともとコンテンツに紐付いた形で事業組織がバラバラになっていたんですね。例えば「FREESTYLE」や「SPECIAL FORCE」を扱っているグローバルパブリッシングという事業部と、「ファミスタ」を扱っていたゲームクリエイティブ事業部、あとはマーケティングタイトルを扱っているチャネリングのチーム、それから「コンチェルトゲート」、「アークロード」を扱っていた新企画準備室というのがありました。 まず、同じ事業ドメインの中で、別々に組織があるというのは効率的ではないという趣旨と、もう少し事業展開を速くしましょう、事業規模を大きくしていきましょうという趣旨で、9月1日に設立しました。 編: 中でも重要なのはチャネリングということになると思いますが、メーカーとのチャネリングについては、どのようなスタンスで取り組んでいますか。 田代氏: 積極的に取り組むという点で特に変化していません。2002年からチャネリングの事業を行なっていて、2006年だけスピードダウンしてる感じかもしれませんけれども、もともとこの時期はパブリッシングのタイトルを多くリリースしていた時期で、「SPECIAL FORCE」を仕込んでいたり、「ファミスタオンライン」を開発していた時期でした。 編: タイトル一覧を見るとまさに壮観ですが、これだけ多くの提携メーカーが誕生したことについて理由は何だと思いますか。 田代氏: そうですね、パブリッシングを大きく展開したのが去年のことになりますが、社外のタイトルに関しても積極的に事業を展開していくんだ、という部分でコンテンツホルダー様へのアピールが伝わったのかな、というのがひとつです。また、市場の中で比べていただくと、我々の集客力というのはズバ抜けていますので、その中でWIN-WINの関係を築けると期待していただけたパートナー様が増えてきたのかなと考えています。 編: ここ数年、日本でもゲームポータルビジネスの動きがいくつか出てきています。こうした動きについて最大手としてどのように見ていますか。 田代氏: 市場全体が活性化するという意味では非常にいいことかなと思っていますけれども、実際きちんとお客様を集められてゲームも運営されて、きちんと実績を出してらっしゃるというのはもしかしてそんなに多くないんじゃないかなという目では見ています。 編: 大手メーカーの大作を取り合っているという意味では、最近では「Lievo」さんが東京ゲームショウで色々発表されて、ゲームポータルビジネスがちょっと面白いことになっています。ユーザー数的には2強という状態ではないと思いますけど、コンテンツパワーの総量という点では、結構面白いことになっているのかなと見ています。 田代氏: これは私見ですけども、「Lievo」さんの特徴としてはまずマルチプラットフォーム化ということで、開発会社様に対して参入しやすい環境と、あとは店舗のようなものを提供されているのかなと。そういう意味では、我々も勉強しなければならない部分は多いんですけれども、実際、新規に参入されているケースでもありますので、正直、集客の部分でお困りになっているんじゃないかと思っています。ただ、その中でも「WarRock」などを見ていますと、頑張ってますよね。 編: NHNさんと提携関係にない国内大手メーカーというと、コナミさん、カプコンさん、ハドソンさん、コーエーさんともう残り少なくなってきましたよね。今後も、これらのメーカーさんとチャネリングする努力を継続していくのが基本スタンスと考えていいのでしょうか。 田代氏: そうですね。相手ありきの話で相互のメリットが見えないと成立しませんので、できればご一緒できる機会があればお話をさせていただきたいなと思っています。 編: NHNの韓国の本社でも、そういった大手とのチャネリングが結構増えてきているように思えます。NHN Japanのチャネリング強化はそういった戦略の一環なのか、それとも個別のものですか? 田代氏: 意思決定のレイヤーで言えば別々です。我々のほうは持ち込んでいただける案件のほうが多くて、それから実際に来てくださるエンドユーザーの皆様からの要望もあり、それに応えるためにやっている部分が大きく、結果的にこういう形になっていますね。韓国側の戦略意図とは別個のものです。
■ ネクソン、セガ、続々続く大型チャネル提携のゆくえ
田代氏: ネクソンさんもゲームポータルとして長い歴史をお持ちですし、韓国系という面もありますけれども、もともと老舗のタイトルでお客様を多く集められていて、我々にとってもある種、新しいお客様を獲得するひとつの切り口になるのではないかという思いがありました。また、ネクソンさんの中でも、ひとつチャネルを増やすことによって、さらにお客様が集まるのではないかというあたりで思惑が合致し、それで今回、提携のお話をさせていただきました。 編: ネクソンさんのタイトルは今後NHNさんでも展開していくと言う形になるのでしょうか。 田代氏: 実はいくつか準備させていただいております。直近でまた一本のタイトルが入ります。「マビノギ」です。10月11日を予定しています。今後については基本的にタイトルごとの判断になりますね。全部というわけではなく、個別に考えていきます。 編: 選定基準は何ですか? 田代氏: ネクソンさんの意向も当然ありますけれども、オンラインゲームとしてきっちり運営されていて、ある程度認知が広がっていて、ボリュームのさらに望めそうなもの、という考え方です。 編: 韓国Nexonは実に様々なタイトルが展開されていますが、ネクソンジャパンがすべて展開しているわけではないですよね。今後はNHN Japanさんがパブリッシングするという流れになるとスピード感が出てきて面白くなるのかなという思いがありますけれども。 田代氏: ご期待に沿えるようにしたいです(笑)。可能性という意味では、ないわけではないですけれども、具体的に考えているかというと、まだまだオンラインゲーム市場を一緒に頑張って盛り上げていきましょうという形でまだそこまでたどり着けていないのが現状です。 編: もうひとつの大きな話題としてはセガさんとの提携ですが、セガを提携先に選んだ理由は何ですか?。 田代氏: もともとはセガさんからお声掛けを頂いたのが理由のひとつです。国内でも有数の老舗のメーカーさんでもありますし、我々としてもチャンスがあれば、ということでラブコールをずっと送り続けてきた過程の中で、案件として浮上してきた経緯がありました。f 編: 提携の内容はあくまでもチャネリングに限るのでしょうか。それとも運営の部分まで担当することになるのでしょうか? 田代氏: 現状ではチャネリングに限られています。今後については、いま「プロサッカークラブをつくろう! ONLINE」と「プロ野球チームをつくろう! ONLINE」の2タイトルをお預かりしていますので、今後さらに増えていくようなことがあれば、セガさんのほうでもセクションを区切ってブランドをフィーチャーしていくような展開もしていますので、将来的には検討できるのかなというふうに思っています。 編: セガさんのオンラインゲームというと、何と言っても「ファンタシースター」シリーズが有名ですけれども、こちらについてはいかがですか。 田代氏: まだ検討中という段階です。前向きに考えています。 編: 現在、国内大手メーカーさんが続々とハンゲームさんに繋ぎこんでいるという状況が生まれつつありますが、昨年千(取締役会長)さんとお話したときにひとつ印象的だったのが、PCもひとつのプラットフォームであり、提携の相手としてプラットフォーマーさんも例外ではないと、一緒にやれたらいいんじゃないかという話をされていたんですね。例えば日本ですと任天堂さんとSCEさんなどがいらっしゃいますけど、プラットフォーマーさんとの提携についてはどのように考えていますか。 田代氏: 現状では具体的なプランがあるわけではないですね。ただ、可能性として、お話ができるのであればアリなのかなとは思います。 編: 自社タイトルと、他社タイトルとの兼ね合いについてはどのように考えてらっしゃいますか。 田代氏: パブリッシングタイトルについて、我々の選定基準というのは、例えば「FREE STYLE」であったりとか、「SPECIAL FORCE」であったりとか、「アラド戦記」といったところというのは、当時比較的目新しいジャンルに対してチャレンジャブルなタイトルを選定してきたつもりです。 その趣旨というのは、新しいタイトルを入れていくことによって市場のパイを広げていって、より多くのお客様にオンラインゲームに触れていただきたいという意味づけからパブリッシングに力を入れてきているという経緯があります。 その一方で チャネリングについては、これはハンゲームをゲームポータルとして考えたときの、ポータルコンテンツとして位置づけています。より多く集客したいと考えてらっしゃるパートナー様と、弊社のサイトにお越しいただいているお客様に向けて価値のあるタイトルだと考えさせていただいたものに関して入れていきますよと、そういうバランスで進めていきます。 編: ハンゲームでの見せ方についてですが、今年7月にリニューアルされて、比較的見やすくなりましたが、その後もタイトルをどんどん追加してきたこともあって、もう溢れ気味ですよね(笑)。トップページに表示できるコンテンツの数にはどうしても制限があるわけで、このあたりはどうされるおつもりですか? 田代氏: そうですね、課題は感じています。将来的にはもう少し見やすいというか、ターゲットを明確にしたサイトのあり方を考えなくてはいけないのかなという風に思っていますね。現状ではリニューアルをしたばかりですので、しばらくはこの形でサービスを提供していくことにはなると思うんですけれども。 編: しかし、他社様も絡む話となると、それでは自社タイトルを落とすのか、旧タイトルを落とすのか、物理的な制約でどうしてもそういう話になってきますよね。 田代氏: 基本的にタイトルに動きがあったものに対しては前面に出していくような形でやらせていただいています。目に触れる部分ですので、そこはお客様本位で、お客様に対してメリットのあることを提供いただけた場合は前面に出すような形で運営しています。そのあたりはご理解していただいているものと思っています。
■ 「ファンタジーアース ゼロ」で発生したゆがみを今度どうしていくのか?
田代氏: 今後も力を入れて行きたいと思っていますね。韓国からのライセンスタイトルに限らず、グローバルで良質なコンテンツがあれば積極的にパブリッシングをしていきたいとは考えています。 編: 自社開発は今後ありえるのでしょうか。 田代氏: 自社開発はまた別の事業部が考えているので、私の担当外になりますね。 編: 9月にマルチタームさんを吸収合併されました。そこではオンラインゲームの開発は行なうのでしょうか。 田代氏: はい。元々NHNにも開発部隊もいましたので、そこと一緒になってやっていますね。 編: 「ファンタジーアースゼロ」に関しては、現在NHNさんが開発元ということになりますが、ハンゲームでは提供しないのですか? 田代氏: 「ファンタジーアースゼロ」のパブリッシャーはゲームポットさんですので、現在チャネリングという意味でゲームポットさんと検討を進めている段階です。 編: 「ファンタジーアース」の開発はどこでやっているのでしょうか。 田代氏: テクノロジーセンターの中のゲーム開発室の中でやっています。 編: ゲームポットさんとのお付き合いは「スカッとゴルフ パンヤ」からですから、結構長いほうだと思いますが、「ファンタジーアースゼロ」に関しては妙なねじれ状態になっていますね(笑) 田代氏: ええ、「ファンタジーアース」に関してはそうですね。ほんとにねじれてしまっていますね(笑)。 編: そのあたりは今後どうされていくおつもりですか。特にゲームポットさんは「Lievo」さんともお付き合いを深めつつありますよね。 田代氏: まだマルチタームとは一緒になったばかりですし、こと「ファンタジーアースゼロ」に限っても既にお客様がたくさんいらっしゃって楽しんでいただいているタイトルでもありますので、まずそのお客様たちにデメリットのないことを前提に、将来的にきちんとNHNでも扱っていきたいなと思っています。
■ NHNが推進する運営プラットフォーム「PURPLE」とは何か?
田代氏: 今年はパブリッシングと、チャネリングのタイトルを順次リリースしてきました。その勢いを変えることなく来年以降ももっとお客様に対して価値を提供していきたいと思っています。 編: それは具体的にはどのようなことでしょうか。 田代氏: 他社さんでもプラットフォームビジネスを展開されているところがありますが、我々も2年近くパブリッシングと、4年近くチャネリングを進めてきた中で、技術的なノウハウもずいぶん貯まってきました。ではそれを一回コンポーネント化して、パートナー様にもっとわかりやすく提供できるような形はないかというところを今まさに志向しておりまして、だいぶ準備が整ってきたという段階です。基本的にはパブリッシングが中心なんですけれども、韓国側が開発しているプラットフォームを日本の水に合わせて作り変えてきているところです。 「PURPLE Platform」と呼んでいますが、3つのレイヤーで開発を進めています。NHNの持っているインフラと、ゲームとインフラを繋ぐミドルウェアと、開発会社さんそれぞれに生じる繋ぎこみの技術的なハードルみたいなものを解決していくアプリケーションのレイヤーという3つのレイヤーでコンポーネントを作っています。 編: 開発に着手したのはいつからですか。 田代氏: パブリッシングビジネスを始めた当初からです。最初のうちは、パブリッシングをお受けする段階でどうしても必要に迫られてツギハギ的に作ってきたのですけれども、実はそれは各開発会社さん共通の課題になっているという部分がありました。 編: メーカーが抱える共通の課題とは何ですか? 田代氏: 例えばビリングシステムですね。それから我々の持っている会員のメインデータベースに対する繋ぎこみといったような、弊社のシステムに対してくっつけていく部分について、どうしても開発会社さんは我々のシステムをご存じないので、ゲームクライアントとサーバーの開発で困られているケースが多かったわけです。そこに対するソリューションを提供しましょうということになります。 編: なるほど。これはどういうビジネスになるのでしょうか? 田代氏: 提供の開始は2008年以降なのですけれども、単に集客できますだけではなくて、こういうテクノロジーを基盤としたプラットフォーマーになろうという直近のビジョンの一環になります。 編: 提携メーカーに対して、「PURPLEもいかがですか?」という売り方をしていくと。 田代氏: はい。ただ、そこでお金を取るつもりはありません。パブリッシングやチャネル提携に対する障壁を低くして入っていただきやすくしていく。その一環がこの「PURPLE」というプラットフォームになります。 編: この「PURPLE」には、インフラ部分に加え、ミドルウェアとアプリケーションというレイヤーが用意されています。ここには何が含まれるのですか? 田代氏: 基本的な構成は図のとおりです。ゲームサーバーモニタリングというのは、例えばGMツールなどの環境はタイトルに応じて様々ですが、これを統合的に提供しましょうというものです。DBゲートウェイは、データベースサーバーへのアクセスの最適化を行なうミドルウェアです。このミドルウェアを導入することにより、データベースの負荷軽減と効率的な運用が可能になるため、ゲームシステム全体の安定性が向上します。MRTGというのはサーバーのCPUの使用率などの状況をを監視するもので、そのオペレーションを提供するものです。 編: まさにオンラインゲーム運営のためのフレームワークという印象ですが、たとえば、「PURPLE」を利用して一からゲームを開発するということはできないわけですよね? 田代氏: それも考えていますが、やはり我々としては、国内の開発会社様には得意の部分である、ゲームクライアントを作りこむという作業に集中していただいて、サーバー周りやサービスプラットフォームまわりの技術的なお手伝いは我々でやらせていただきたいと思っています。 それからサーバー周りの部分ですけれども、非常に深いシステムのレイヤーに関してのソリューションというのも今後考えていきたいと思っていましす。SDKみたいな形で各社様にコンポーネントを提供して、開発をお手伝いしていく。このようなことを2008年に向けて検討を進めています。 編: これらを提携をしたメーカーさんに無償提供をしていくというのは、非常に太っ腹ですよね。 田代氏: NHN全般として、あまりBtoB側のビジネスに力を入れるという文化がありません。それよりは良質なコンテンツをお客様に提供した上での商いを中心に考えていますので、環境整備という意味で我々の範疇の中にこれを考えているという感じですね。
■ 「PURPLE」はカスタマイズ可能。将来的にはモバイルにも対応
田代氏: 別種です。具体例でいうと、ハンゲームの中で使っているゲームのランチャーとはまた別のものですし、細かいところでひとつひとつ、パブリッシング向け、チャネリング向けに作っています。 編: さすがに全てのノウハウを無償提供するわけではないというわけですね。 田代氏: いえ、そういうわけではなく、ご一緒させていただく際に必要になるものに関しては全て網羅しています。 編: 例えばGMツールが使いにくいので改良してくれないかといった提案が出てきた場合には、どのように対応されますか。 田代氏: できるだけ統一の仕様であることが望ましいのですが、現状でも各社様向けにカスタマイズできる部分というのはあります。それに関しては柔軟に対応していますし、今後もそのようにしていくことになると思います。 編: 欧米ではゲームエンジンビジネスが当たり前に行なわれています。日本でもコミュニティーエンジンさんなどがオンラインゲーム向けの開発ソリューションをBtoBビジネスとして提供されていますけれども、それらと同じ土俵でビジネスをするつもりは全く無いわけですか? 田代氏: 「PURPLE」はどちらかというとサービスに近いものです。オンラインゲームサービスを実現するに当たって、例えば旧マルチタームの「MPS」はオンラインゲーム開発を行なうためのプラットフォームでしたが、オンラインゲームをビジネス化していくためには、これ以外にもサービス側に近いプラットフォームとして、ビリング、認証、パッチャー、パッケージングなどまた別のソリューションが必要です。そこの部分を切り取ってひとつのパッケージにして、見えやすくわかりやすく開発会社様やライセンスホルダー様にアピールしたい、というのが「PURPLE」の趣旨です。 編: ハンゲームさんは何といっても集客力が一番の強みでしたが、今後はソリューションも強みにしていくと? 田代氏: はい。そのとおりです。 編: 今後、「PURPLE」プラットフォームをベースにした日本独自のサービス展開を予定ということですが、これは何を意味しているのでしょうか。 田代氏: 具体的にいうとモバイルですね。まだこれは検討中の段階ですが、やはりニーズが高い分野ですので、この中にモバイルと連動するようなものも含めて行きたいと考えています。例えばゲームサーバーをそのモジュールにつなげれば、ゲームサーバーの持っているデータを非常に簡単にモバイル側に表示できるとか。 編: モバイルというのは、オンラインゲームのモバイル版的なイメージでいいですか。 田代氏: そうですね。 編: それは自社のパブリッシングタイトルでも使っていくことになるわけですか? 田代氏: 自社もそうですし、チャネリングもそうです。ハンゲームの中で扱えるタイトルというのは、そういった技術的にもサービス的にも出口が沢山あります。自社だから、チャネリングだからといった区別はあまり考えずに、エンドユーザーにとって良い物を提供していこうということです。 編: 「PURPLE」の完成はいつくらいを考えていますか。 田代氏: 現在、韓国で開発が進められていまして、実はもうほぼ完成しています。実際に自信をもってエンジニアがゴーできるかできないか、というところまでは出来上がっていますね。 編: ドキュメントは当然日本語で提供されるわけですか。 田代氏: はい。 編: 「PURPLE」というコードネームにはどのような意味が込められているのでしょうか。 田代氏: 非常に簡単で、パブリッシングプラットフォームだから「PURPLE」になっています(笑)。韓国のコードネームそのものなんです。 編: 「PURPLE」の最終目的地はどのあたりにあるのでしょう。 田代氏: いくつか構想があります。まず技術的なレイヤーとして「PURPLE」があって、次に開発環境向けのプラットフォームとしてのSDKがあります。そして日本独自という点で、これはまだ構想の段階なのですけれども、マルチプラットフォーム向けのモジュールを考えています。この3つが揃えば、ある種技術的な完成形なのかなというふうに思っています。 編: SDKとマルチプラットフォーム向けのモジュールの開発は韓国ですか?。 田代氏: モジュールに関しては、キャリアさんの問題もありますので日本で開発しましょうということで準備を進めています。SDKに関しては基本的にオンラインゲーム、ウチで言っているカジュアルゲーム以上、MMORPGまではひととおり対応したいと考えています。 編: それはNHN韓国本社のほうで利用していたゲーム開発用のSDKをベースにして発展成長させたようなイメージですか。 田代氏: いえ、どちらかというと独自で作られてきたものです。 編: マルチプラットフォーム向けのモジュールは、マイクロソフトのDirectXみたいなものをイメージしていいのでしょうか。 田代氏: そうですね。他のデバイスと繋ぎこみやすくするためのモジュールです。 編: 対象プラットフォームは何を想定していますか。 田代氏: まず、モバイルですね。すべてのキャリアかどうかは今のところ未定です。ビジネスモデルについてもまだ検討してないです。チャレンジの領域ですね。 編: なるほど。ある程度スケジュールが見えているのはパブリッシングプラットフォーム「PURPLE」のみなんですね。 田代氏: そうですね。2008年年初あたりを目標に準備を進めています。 編: 使い方については、日本に委ねられている感じですか? 田代氏: 各国の裁量次第です。例えば韓国の場合ですとNeowizさんがこういうプラットフォームをガチッと組まれていて、それをある種の売りにしているという状況があります。それは事業的なお金をもらうというものではなくて、そこに預ければ安定的にサービスが稼動しますというものです。 「PURPLE」はそこに対してのひとつのNHN Koreaとしての回答だと思うんですけれども、日本の場合ですと我々のポジションで言えば先行できる部分だと思っています。他にもゲームポータルはありますが、お預かりしているタイトルの数で言えば先行できる材料になるのではないかという風に見ています。日本に関しては、できればこれをひとつの強みとしていきたいと思っています。
■ 「PURPLE」提供以降は運営力で勝負する時代に
田代氏: 私見ですけれども、今はどちらかというとタイトル個別に、ゲームのクセに応じて運営や事業展開の仕方を検討するケースが多いように思います。「PURPLE」によって、プラットフォームとして統一された環境が整います。事業的には、もうひとつ洗練された、ゲームコンテンツの面白みだけではない、運営力でもってコンテンツを光らせていったりですとか、そういった環境を整えられるでしょうね。 編: 2006年、2007年といまだにローンチで躓くというケースが多いですが、どのようにご覧になっていますか。 田代氏: そうですね、技術側、運営側、それぞれにほとんど経験がない状態で、自社の環境に適合させるという段階で随分苦労されているケースが多かったようです。我々もその部分は非常に苦労してきたところです。 編: しかし、NHNさんは今期もかなりの新作タイトルをリリースされていますけれども、ローンチでトラブルにならないですよね。これは本当に偉いことだと思います。 田代氏: ありがとうございます。 編: 昨年、今年といわゆる大作がローンチで躓いたりしましたが、仮にNHNさんが運営したら、あるいは「PURPLE」を使っていたら、躓かなかったと思いますか? 田代氏: それはなかなか難しいご質問ですね(笑)。ただ、まあ、大規模なシステムで、同時接続数をさばくというのは、NHN Japanが多くのノウハウを持っていますので、多分そこは大丈夫だったんじゃないかなというふうに思います。 別の部分、例えばゲームそのものにバグが潜んでいました、という部分は、どちらかというと事故的なものですので、それに関してはプロジェクト推進の粗雑さに起因するのかなと。また、会員のエントランスになる部分について、大量のお客様が押し寄せてきたとき、お客様をうまく捌くということについてはもう十分な実績があることなので、そこでの不安は無いかなという風に思っています。 編: 最後にユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。 田代氏: 数多くのタイトルをご提供するなかで、遊びたいタイトルが必ずひとつふたつと見つかるような環境は整いつつあります。来年以降はもっとアクティビティにあわせたインセンティブみたいなものを考えていて、より多くのタイトルを遊んでいただくと、さらにもっと面白いことや、ちょっとお得なことがあるというようなものを是非提供したいと思っています。ですので、来年以降も是非ハンゲームを注目していただけたらと思います。 編: ありがとうございました。
□NHN Japanのホームページ (2007年10月23日) [Reported by 中村聖司]
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