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CEDEC2007現地レポート

CESA、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2007」を開催
セガ小口副社長「楽しい国、日本」。DiGRA併催で東京大学にて開催

9月26日~9月28日開催

会場:東京大学



 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、ゲーム開発者を対象にした国内最大規模のゲームカンファレンス「CESA DEVELOPERS CONFERENCE(CEDEC) 2007」を、9月26日より、東京大学において開催した。参加費はデイリーパスで1万円からとなっている。

 初日は、東大を象徴する歴史的建造物安田講堂にて、セガ代表取締役副社長小口久雄氏の基調講演から始まり、東大の各会場において基調講演を含む全36セッションが行なわれた。本稿では初日の模様をお伝えしていきたい。


■ コ・フェスタの公式イベントとして開催、DiGRAとの併催で過去最大規模に

今年のCEDECは、DiGRA(国際デジタルゲーム学会)との併載。セッション数は50を超え、基調講演も1日2回開かれる
CEDEC初日の人気セッションは、安田講堂で行なわれたカプコンの「Lost Planetのビジュアル表現」。詳しくは別稿にてお届けしたい
安田講堂は一階のみならず、二階部分も開放。会場のキャパシティは過去のCEDECとは比べものにならないぐらい大きくなった
 CEDECは、CESAが日本のゲーム開発者に対しての先端情報のキャッチアップを目的に、'99年に開始したゲームカンファレンス。規模の肥大化に伴い、毎年、会場を変えてきたCEDECだが、今年はついに東京大学での開催となった。

 会場に東京大学が選ばれたことには2つの理由がある。ひとつは、DiGRA(Digital Games Research Association、国際デジタルゲーム学会)の今年の学会開催地が日本となり、DiGRA Japanの拠点が東京大学であること。そして、もうひとつは今年、経済産業省が主導する取り組みである「JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)」の公式イベントとなったためだ。セッション会場には主に工学部が使用され、基調講演は安田講堂を採用。今年のCEDECは、学内が一個の街として機能してる広大な構内の中でじっくりセッションを聴講する環境が整えられている。

 今年の場合、特にDiGRA同時開催の影響が大きく、DiGRAの講演も含めると同時間帯に最大13セッションが実施される。世界最大規模のGame Developers Conference(GDC)を彷彿とさせる密度だ。CEDEC単体の規模としては、前年比で微増傾向だが、DiGRAからの並行受講や、国内でもっともゲーム研究が活発である東大の学生達の参加も多いため、参加者数としては過去最多となるのは間違いない。

 セッションの傾向を見ると、“オンラインゲーム”、“次世代機”といったここ数年続いたキャッチーなキーワードが姿を消し、産学連携やシリアスゲーム、アニメーション、ミドルウェア、モバイル、サウンドなど、これまで大きなキーワードの影で見えにくかった多様な分野のセッションが開催されている。セッションの方向性には、多少コ・フェスタやDiGRAの影響も伺えるが、GDCにはないCEDECの独自カラーであるアーケード系のセッションが減っていたのが残念だった。

 また、今年は次世代機が現行機となり、まだスマッシュヒットタイトルが少ないことも影響しているのか、ゲームデザイン系のセッションが減少傾向となっている。また、今年も例年通り、任天堂は講師を派遣していないが、今年は同社がゲーム市場を牽引する立場になっているだけに、その影響はひとしお強く感じられる。任天堂の参加は、来年のCEDECでもっとも大きな課題と言えるだろう。

 さて、昨年から正式スタートした基調講演は、26日は前述したセガの小口副社長、27日は今年コーエーの代表取締役社長に就任した松原健二氏、28日にはエンターブレイン代表取締役社長 浜村弘一氏の3名のスピーチが予定されている。

 CEDEC 2007のトップバッターを飾った小口氏は、現場叩き上げのクリエイター上がりであることを印象づける軽快な口調で、フロイトの「快感原則論」や日本の自殺者の多さを引き合いに、人間の本能からゲームを組み上げていくというユニークなゲーム制作手法を披露。最後に、有名なキャッチフレーズをもじった「楽しい国、日本」というメッセージで、現役クリエイターたちに発破を掛けた。

 CEDECは本日だけで36セッション、明日以降も2日間で60以上のセッションの開催が予定されている。GAME Watchではできるだけ多くのセッションを紹介していくつもりなので、ぜひ今年のCEDECレポートにもご期待いただきたい。

【CEDEC基調講演「あそびをつくる」・・・その本質とは】
小口氏は、経営者の立場ではなく、あくまで元ゲームクリエイターの立場から、ゲームの本質論を展開した。サンプルタイトルが、「ポケットモンスター」、「どうぶつの森」、「脳トレ」など、他社製ばかりだったのはご愛敬だが、「闘争」モノは本能に根ざした欲求だから安全パイである一方で、逆にいえば、別の本能を刺激すれば「闘争」要素がなくてもゲームができるとした視点はユニーク。個人的には「シューティングの弾が出る音が気持ち悪いと思う人はいない」と切り出した、ゲームにおける音とデザインの関係をもう少し詳しく聞きたかった

【DiGRA基調講演「Perfidious Oeconomy」】
こちらはDiGRAの基調講演「Perfidious Oeconomy」。聴講者をゲームに参加させながら、その場で実証しながら話を進めるという独特のアプローチで話が進められた。講師はインディアナ大学テレコミュニケーション学部準教授のエドワード・カストロノヴァ氏。ゲーム内経済を実経済と同じアプローチで見つめ、「『EverQuest』の経済活動規模がロシアのそれに匹敵する」という趣旨の論文を発表したことで知られる。カストロノヴァ氏は、RMT問題を、森林伐採や車の渋滞、スポーツ選手のステロイド使用などと同列に並べ、ルールを尊重しなければ“社会的なコスト”が発生するとし、包括的な管理ツールの必要性を主張。これだけでも十分おもしろかったが、後半ではファンタジー世界は現実世界からの避難場所だとする、先の言説とは見事に二律背反するバーチャルフロンティア論を展開し、狐につままれたような気分にさせられた基調講演だった

【インタラクティブコンピューティングの世界】
講師は東京大学大学院情報理工学系研究科準教授 五十嵐健夫氏。セッションでは、過去のSiggraphの講演素材をベースに、五十嵐氏が推進するインタラクティブコンピューティングの研究成果が披露された。具体的には電子ホワイトボードシステム、手書きスケッチによる3次元モデリングシステム、自動ズーミングインターフェイス、非言語音声認識など。「人間の自然なPC操作から、PCならではのアウトプットを行なうために、ツールが適切なサポートをする」ということをコンセプトに、PC初心者でも直感的に扱える極めて便利なツールを開発している。中でもスクロール速度に応じた自動ズーミングは画期的だ

【展示コーナー】
メイン会場となっている工学部2号館の2階スペースでは、協賛各社のブースが出展されている。今年、珍しいところではソニー・コンピュータエンタテインメントが出展し、PS3用マルチプラットフォーム開発環境「PSSG」などを出展している

【各セッションの模様】
初日実施されたのは36セッション。会場は一箇所ではなく複数の棟に点在しているため、様々なバリエーションの教室が使われている。レギュラーセッションのほかワークショップ、ラウンドテーブルなどがあるが、GDCに比べると日本は人気がないためかワークショップ系のセッションが少ない

□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「CEDEC 2007」の公式ページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□関連情報
【2006年8月30日】CESA、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2006」を開催
過去最多の1,700人強が参加する国内最大のゲームカンファレンス
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060830/cedec_01.htm
【2006年8月30日】CESA、ゲーム開発者を対象としたカンファレンス「CEDEC 2006」開催
和田洋一CESA会長基調講演「ゲーム産業は第2ステージへ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060830/cedec.htm
【2005年8月29日】CESA、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2005」を開催
“次世代”を見据えた意欲的なセッションが目白押し
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050829/cedec_01.htm

(2007年9月26日)

[Reported by 中村聖司]



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