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CESA、ゲーム開発者を対象としたカンファレンス「CEDEC 2006」開催
和田洋一CESA会長基調講演「ゲーム産業は第2ステージへ」

8月30日~9月1日 開催

会場:昭和女子大学

 社団法人コンピュ-タエンタ-テインメント協会は、ゲームソフト開発者を対象としたカンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006 (CEDEC 2006)」を8月30日から9月1日まで昭和女子大学において開催する。

 このカンファレンスは毎年開催されているもので、今年は3日間で基調講演と90プログラムほどの講義が予定されている。内容は家庭用ゲーム機のゲーム開発にかかわらず、PC、携帯電話など多岐にわたる。ジャンルも「NVIDIA GPU での物理演算」など技術の最新動向から、「モバイルと家庭用ゲーム機との連動とその先の可能性について」といった市場をまたいだ可能性に言及するセッションも用意されている。

 残念ながらすでに参加申し込みは締め切られているが、弊誌ではゲームファンが読んでも興味深いものを中心に様々なセッションのレポートをお届けする予定だ。


今日はCESAの会長として壇上に立った和田洋一氏
 「CEDEC 2006」開催初日の朝からは、和田洋一氏による基調講演「日本のゲーム産業の今後」が開催された。ホームページ上では肩書きが「株式会社スクウェア・エニックス 代表取締役社長」とされているが、会場ではスライドに「社団法人コンピュータエンタテインメント協会 会長」と書かれており、一デベロッパとしての提言ではなく、大きな意味でゲーム業界を代表する形のスケールの大きな基調講演となった。

 講演の内容としてはシンプルで、現在の日本ゲーム産業の立ち位置を再確認し、共通の課題を確認し、今後なにをしなければならないのかといった提言となっている。

 和田氏はまず最初に「家庭用ゲームソフトの世界市場規模推移」と題されたデータをスライドで映し出した。このデータは新聞やテレビなどで引用されることの多いデータで、世界市場規模としては右肩上がりだが、日本市場の占める割合は減少しているように見える。この点について「このグラフはデータの見方によって量的危機感を煽っている」とし、「ゲームを作っている側から言えば、市場は依然として成長市場。そういった点では楽観的でいいと思う」と説明。

 その根拠としては、このデータが「家庭用ゲーム機」に限定されており、携帯電話やネットワークゲームといった新興市場について触れていない点をまず挙げた。さらに海外との市場比率については、「ゲームは日本が市場的に先行していたので、市場の確立は日本が早く、大きく成長し社会に浸透した。欧米で本格的に家庭用ゲーム機市場が伸び始めたのが'99年から2000年にかけて。2005年頃から浸透したと考えている。人口比率や購買意欲比率を考えれば (このデータ比率は) 当然だろう」とした。

 このグラフのデータが非常に限定されていると指摘した上で、輸出競争力が依然として高いことや、ユーザーの年齢分布などに触れた。年齢分布については各年齢層のユーザーパーセンテージをデータとして示し、20歳代男性が57.2%となっている点を指摘し、「今後この層の年齢が上がってくるということは市場も広がってくると言うこと。これはゲーム産業がこれまで育ててきた資産」と和田氏は語った。また「50歳代が18.8%もいることが凄い。現役ゲーマーといえる」と示した。

 さらにゲームに対して参加待機しているユーザーのパーセンテージを示したデータをスライドに表示し、「(ゲームをしてもいいと考えている人が多い数値を示して) 自分にマッチしたコンテンツがあればゲーム市場に入ってくる人はこれだけいる」として市場余力がまだあると説明。世代によってライフスタイルも違えばアクセスするデバイスも違うわけで、そういった点を克服していくことで市場を開拓していくことはできるとした。

 ゲーム市場は誕生以来30年程度のメディアだが、すでにメインをはれるメディアに成長しており、産業として確立しているとという見方を示した上で、「ゲーム業界はこれから第2ステージに入る」と続けた。

和田氏はこのデータを示し「このグラフを見ると日本市場が縮小しているように見えるが、それは“量的”な危機感を煽る使われ方をしている」と説明した 「国内ゲーム産業の市場規模推移」のデータスライド。携帯電話とオンラインゲーム市場といった新興市場で大きな伸びを示している プレーヤー人口の年齢別構成比。20代の男性は圧倒的だが和田氏は「この層が今後年齢を重ねていく事でプレーヤー人口は増えていく」と分析

プレーヤーがゲームをプレイしようと考えているかどうかのデータ。このデータから「自分のライフスタイルにあったコンテンツがあればやろうと考えている人は多い (和田氏)」と説明 世界的なゲームの産業市場規模を映画産業などと比べたグラフ。和田氏は「ゲームは登場して30年くらいの市場だが、すでにメインをはれる産業として確立された」と語った



今後、ゲーム産業が取り組むべき事を「横断的、体系的ではないので、例えばだが……」としながらも列挙。今後のハードはほぼ全てマルチコアプロセッサ化するが、技術的には一変してしまうことからかなりの影響が懸念されるという
 この第2ステージにはいることによって、ゲーム業界は「(これまでのような) 量的な変化ではなく、質的な変化を遂げなければならない」とした。これからはより大きな話となる。単純にゲームを楽しむレベルに留まらず、話はゲームから派生した技術、他産業への応用まで及んでいく。

 和田氏は「たとえば」と断わりながら映画との関わり合いを挙げた。ゲームと映画の関係と言えば「映画のコンテンツを利用したゲーム作品の発売」と考えがちだが、和田氏は「そんな単純な話ではない」という。「ハリウッド映画では、俳優の拘束時間を減らしたり、様々な理由からプリビジュアライゼーションを多用するようになった。CGを使ってカット割りを練りに練って作り上げ、撮影は短時間で済ませてしまう」といい、ここにゲームで培われてきた技術が使われているという。また、リソースの共有も挙げられる。

 同様の他産業でのゲームデザインのアイディアを応用した例として、オンラインショッピングでのサービスなども挙げている。「RPGでは戦闘を繰り返しアイテムを集めて強化したり販売したりすることがシステムとしてよくある。たとえばオンラインショッピングでものを購入してポイントがたまりサービスを享受できるのも構造的には同じ」と説明。

 さらには最近注目を集めつつあるシリアスゲームについても触れ、「(ゲームを何時間もプレイするのは) 常に判断を迫られ、結果に対してフィードバックがあって、成功すれば報酬がある。この報酬がきちんと設定されているので、何時間でもゲームをプレイする。ゲーム側から見ればなんてこと無いことだが、教育ツールとしてみれば最強のツール。そういった意味で今後は (教育産業にも) 入り込んでいくだろう」とした。

 ゲームそのものだけでなく、ゲームを核とした応用分野でも発展を見せるゲーム産業について今後の課題はどこにあるのか。

 和田氏は「わたしはクリエイターではないので細かいところはとやかく言えないが」としながら、まず挙げたのが「クリエイターのコミュニティ作り」と「ツールについての理解」。以前から和田氏はツールについての重要性を解いてきたが、この場でも改めて説明した。「これまでハードを突き詰めてゲームを作り、どこまで表現できるかと言うのが手段のひとつだった。これまで『ツールを使用しても平均的なものしか作り出せない』という意識があったが、ハードが進化し表現できる範囲となった」とし、「ツールを使うとつまらなくなるという誤解があるが、それはとんでもない」と語った。

 「ゲームに限らず産業が次のステップに進むときは必ず異質なものが導入される。ツールが優秀になればなるほど、そういった異質な才能が入り込んでくる。その土壌を作る」と和田氏は続けた。

 このほかにも、和田氏はWeb 2.0などの例も挙げながらユーザー参加型のコンテンツへの取り組みを挙げた。ここでは「これまでゲームは、システムだけでなく全てのデータを作り上げてきた。しかし、ユーザー参加型のコンテンツではユーザーが触ることで変化することが前提となってくる。変化することが当然な中でのシステム作りが必要。ゲームの制作者ではないので判らないが、これまで全て作り上げてきたデータの部分を、外部から取り込むのかといった論議がされることで、何かこれまでと違ったものが生まれるかもしれない」とアイディアの一環も披露した。

 また、今後のマルチコアプロセッサ時代の到来による技術的な変革の波が予想外に大きい事も課題として挙げた。ひとつのCPUを極限まで使う業界はゲーム産業と遺伝子情報や宇宙規模のシミュレートなどに使う科学系の産業だとしたが、CPUのこの変革は大きく、技術的な問題点として和田氏は挙げた。


和田氏はいつもの通り論理的に淡々と講演を進めていったが、その内容には開発者やゲーム関係者に向けての熱いエールのようなものを感じた
 和田氏は最後に「ゲーム産業はリードしているが故に、より大きな使命があるのかもしれない。通信インフラがこれだけ整備されている国は日本以外にない。その下にこれだけ均一して高性能な端末がぶらさがっている国もない。そしてそこに高度なコンテンツがこれだけ配信され、それを享受しているユーザーがこれだけいる国はない。これだけ進んだ環境の国は世界に日本しかない。その中で、最も進んだ産業はゲーム産業であるべきだ」と語り締めくくった。

 とかくネガティブなイメージの報道が先行する最近のゲーム業界に向け、国内産業に対して立ち位置を再確認し、必要な問題意識を共有し今後の問題点を明確に提示、ゲーム業界の今後の動向について和田氏は提案した。様々な問題や立場はあるだろうが、和田氏の行動力の元、課題について様々な議論が行なわれ先に進むことが重要だろう。ある意味、今回の講演はゲーム開発者に向けてのエールのようにも受け取られた。

□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「CEDEC 2006」のページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□関連情報
【2005年8月29日】CESA、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2005」を開催
“次世代”を見据えた意欲的なセッションが目白押し
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050829/cedec_01.htm

(2006年8月30日)

[Reported by 船津稔]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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