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会場:昭和女子大学
■ 今年から基調講演を新設。8回目を迎え、規模を拡大しつつ進化を続けるCEDEC
GDCと比較すると、ゲームデザインやビジュアルアーツといったゲームの根幹に関わるセッションの比率が若干低い反面、アーケード、サウンド、モバイル、シリアスゲーム、国際分業などをテーマにしたビジネス&ロウといったセッションの比率が高い傾向が見受けられる。アーケード、サウンド、モバイルといったジャンルは、いずれも日本が強みとしている部分であり、これらのセッションが充実するのは次代のクリエイターを育てる意味でも非常に頼もしい限りだ。 今年のCEDECで注目されるのは、今回初めて基調講演が導入されたことだ。GDCのスタイルを模したものと思われるが、1日に1回ずつ、オープニングセッションとして行なわれる。前述したように初日はスクウェア・エニックスの和田社長が務め、2日目はエンターブレイン代表取締役社長の浜村弘一氏、3日目はマイクロソフトXbox事業部長の泉水敬氏の講演がそれぞれ予定されている。 初日のセッションを一通り受講した限りでは、今年の傾向として、CEDEC 2005で大いに語られた次世代機関連の話が、すでに開発者レベルでは“現世代”に降りてきていることもあり、不気味なほどに陰を潜めていたのが印象的だった。一般セッションはともかく、受講者も交えて大いにディスカッションされるラウンドテーブルでも、プレイステーション 3やWiiの話題に触れるのはお互い開発者としてタブーとしている雰囲気があり、スピーカーも参加者もやややりにくそうだったのがおもしろかった。 また、オンラインゲーム関連のセッションも減少傾向だったが、これは毎年2月に開催されているアジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC)の規模の拡大を受け、明確な差別化を図るためだという。欲を言えば、CEDEC 2005開催以降から今年にかけての最大のムーブメントといえるニンテンドーDSの舞台裏を伝えるようなセッション、あるいはその担い手である任天堂のセッションがまったくないのがやや寂しいといった印象だろうか。 変わって今年のメインテーマとなったのは、次世代機とは関係なく進化を続ける各種テクノロジー、サービス、ビジネスモデルといった国内最新トレンドのレポートや、昨年のCEDEC以降にリリースされた大作タイトルのノウハウの共有を目的としたセッションだ。大手メーカーのメジャータイトルが扱われている例も多く、例年になく内容が充実したセッションが目白押しだ。CEDEC事務局によれば、昨年の参加者が1,300人だったにも関わらず、今年は事前応募で1,700人強を記録したというが、素直に頷けるセッション内容である。 なお、今年の会場は東京三軒茶屋の昭和女子大学が選ばれた。CEDECは、GDCにおけるIGDAのような世界的ネットワークを持つ強固な運営母体を持たず、財団法人のCESAが直接運営を行なっているということもあり、予算の都合と規模の拡大に対応して毎年会場を変えるという実にきわどい綱渡り運営を続けている。実際、会場の収容人数は年々拡大され、セッション内容も確実に充実してきているが、受講者に対するホスピタリティが向上してきているかというと微妙なところで、客観的に見て必ずしも快適な受講環境が提供されているとは言い難い。 今年の場合、会場が同時多人数の移動を前提としておらず、会場間の移動に手間が掛かること、無料、有料を問わず飲食サービスがほとんどないこと、重要な目的のひとつである参加者間の交流スペースの少なさなどが不満点として挙げられる。内容といい参加者数の規模といい、そろそろ本格的なカンファレンスセンターに会場を移す時期が来ているように感じた。CESA会長の和田氏も基調講演で「ゲームは産業として確立し、第2ステージへ」と高らかに宣言している。第2ステージのクリエイターを育成する意味でも、来年度の課題としてぜひ検討してほしいところだ。
□CESAのホームページ (2006年8月30日) [Reported by 中村聖司]
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