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★PCゲームレビュー★

諸勢力の参戦でより混沌とした戦国地図へ
ゲームバランスを意識した新システムが目白押し

信長の野望・革新 パワーアップキット

  • ジャンル:歴史シミュレーションゲーム
  • 開発/発売元:コーエー
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • 価格:5,800円(本体同梱版12,800円)
  • レーティング:A(全年齢)
  • 発売日:9月14日(発売中)



 「信長の野望・革新」の発売から2年余りの時を経て登場した「信長の野望・革新 パワーアップキット(以下、革新PK)」は、見た目のドラスティックな変化には乏しいものの、独自の南蛮技術を持つ南蛮勢や、軍勢を擁する国人勢力などが新たに登場し、より多極的な戦略を要する深みのあるバランスが盛り込まれている。

 追加シナリオは、本能寺の変後の1582年のシナリオ「覇王の後継者」、1600年8月「関ヶ原合戦」、架空シナリオ「太閤の恩」の3本。また、経済面では各城によって異なる特産品が産出されるようになり、これを用いて商人衆と取引したり、特産品を諸外国と交易することで新技術を得たりできるなど、新しい経済システムの柱が設定されている。同時にコーエーの「三国志」・「信長」シリーズのパワーアップキットではおなじみとなった武将や城のエディット機能もきっちり盛り込まれている。

 本パワーアップキットの発売までに2年を要したことを考えるといささかボリューム不足という印象もなくはないが、「革新」で最大のネックだった近隣の数国を統一しただけで兵力や資源が倍々で増えていき、なし崩し的に全国統一への道筋が見えてしまうゲームバランスは確実に改善されているため、バランスの悪さに中断してしまった向きには格好のパワーアップキットと言えそうだ。

 昨今では専らオンラインタイトルに注目が集まっているが、コーエーのお家芸「革新PK」のプレイを早速お伝えしたい。尚、プレイには「信長の野望・革新」本体が必要になるのでご注意願いたい。


■ 裸の大筒隊に野武士が襲いかかる! 1にも2にもとにかく懐柔!

追加された新シナリオは3つ。本レビューでは「覇王の後継者」北条家の中級、全国モードでプレイしている
協定を結んでいる諸勢力には敵対大名家を襲撃させたりできる他、各種政策コマンドに影響がある
 「革新PK」の数ある改良点の中で、本作のゲーム性の向上に最も貢献したのが、地方の国人衆や忍者衆、寺社の門徒、水軍衆といった「諸勢力」が、兵力や国力を伴った一勢力として登場するようになったことだ。

 大名家は各諸勢力に対し、特産品や金銭などと引き換えに協定を結ぶことができる。協定を結ぶことで、その諸勢力の種類によって収入面や軍事面などにさまざまな恩恵が受けられる。

 さらに忍者衆や国人衆は「指示」コマンドによって、敵対大名の部隊を襲撃させたり、無差別に輸送隊から物資を奪わせるといったこともできる。これが実に強力だ。国人衆は足軽隊で敵勢力に突如として襲い掛かる。拠点から出陣してくるのではなく、敵部隊の隣に突如として現われるのだ。鉄砲隊や兵器を装備した部隊は近接攻撃に弱いため、張り付かれるととにかく厄介だ。

 国人衆は足軽の強力な戦法「槍車」を装備し、武将の能力も高い上に1万人規模で展開してくるため、序盤から終盤まで終始脅威の存在となる。このため、侵攻する地域の国人衆はとにかく懐柔し、あらかじめ仲良くなっておくことが肝心だ。

 ただ、諸勢力システムの優れているのは、すべての諸勢力を味方につけることはできないところだ。各諸勢力には嫌悪勢力が設定されており、また、近隣の勢力同士で反目しあっている。旧作の「信長の野望・嵐世記」では、諸勢力にことごとく金や米を与えて懐柔し、日本中味方だらけにしていくこともできたが、「革新PK」では、より現実的なシステムにブラッシュアップされている。こうした諸勢力は交渉によって協定を結ぶこともできるが、嫌悪勢力と協定を結んでいる場合にはいずれかと手を切らなければならない。

 その一方で残念なのが、こうした諸勢力に「顔」となる武将や人物が登場せず、すべてが「~~衆」として十把一絡げの扱いにされてしまっていることだ。彼らの部隊は、基本的に壊滅させるしかない。この点、国人衆の部隊をランダムでその地域の国人出身や浪人中の武将に率いさせ、壊滅させることで臣従を誓わせるといった仕組みもあってよかったのではないかと思う。

 協定は、外交交渉の他に、諸勢力の拠点を軍事的に攻め落とすことでも強引に取り付けることも可能だ。この場合、協定期間が通常36か月に対し、60か月となっている。

築城中の支城をめぐって佐竹家と戦闘中、後方で射撃している鉄砲隊に突如として襲い掛かる国人衆。文字通り足元から沸いてくる


■ 新経済システム「特産品」。交易で南蛮技術を獲得せよ!

イギリスの南蛮商人から新技術を教わった。技術のほかに、南蛮の珍しい品物がもたらされる場合もある
特産品を増産する奉行所が建設可能となった。また、城の耐久度がゲージ1本で相対的に表現されていたものが、ゲージ2本で絶対値を表現するようになり、改築の度合いもわかりやすくなった
 「革新PK」では新経済システムとして「特産品」が登場した。「書画」や「日本刀」、「塩」や「金(きん)」といった地域の特産品で、大名家が支配している城で毎月1種類の特産品を一定量、定期的に産出する。産出した特産品は、協定を結んだ商人衆と取引することで、他の特産物と交換することができる。実はこのシステムの本質は新技術である南蛮技術の習得と繋がっている。

 「革新PK」では「革新」から技術ツリーの増加は無く、各兵科の戦法威力の強化系技術が威力を削ぐ形でバランス調整された。その代わりに、ポルトガルやスペイン、オランダ、明の4国との貿易の中で、新技術がもたらされることになった。新技術の種類は4国がそれぞれ4つの技術を持っているので全16個存在する。

 貿易を始めるための条件は、港を1つ以上支配していることと、南蛮各国の求める特産品を用意して契約することだ。貿易を開始すると、毎月特産品を換金してくれる。これを一定期間繰り返した後、新技術がもたらされる仕組みだ。1つの国から2個目、3個目と技術のレベルが上がるほど最初に要求される特産品の数が多くなる。

 南蛮技術を早く獲得していくコツは、いくつかの商人衆と協定を結び、相場を見ながら自国の特産品を目的の特産品に集約させていくことだ。通常の技術ツリーと異なり、技術の研究のために武将を割り当てなくて済むため、小勢力にも南蛮技術獲得のチャンスが開かれているのが良い。

 「革新PK」では大兵団による大味なゲーム展開を遅くするため、「革新」の通常技術ツリーから得られる各部隊の戦法威力増加を下げるなどしているが、南蛮技術ではこれを補うように各部隊兵科の攻撃力や守備能力が上がるものが多い。

「南蛮技術一覧」

ポルトガル
・ カノン砲 大筒の威力+20%
・ 製図法  軍事コマンド「製造」で作られる兵器や艦船が倍増する
・ 板金鎧  全部隊の守備力+8
・ 拡散砲弾 攻撃目標の周辺(施設や部隊)にも攻撃を加える

イスパニア
・ 鋼輪式銃 鉄砲隊の攻撃速度+5
・ 鉄柵   鉄砲隊への騎馬戦法の被害が半減
・ 火打式銃 鉄砲隊の攻撃力+8、鉄砲隊の守備力+4
・ 西国方陣 鉄砲隊の戦法威力+50%

オランダ
・ 携行食  部隊(輸送隊・築城隊を除く)の兵糧消費が減少
・ 蘭方医  傷兵・傷病武将の回復速度が上がる
・ 馬車   輸送隊・築城隊の兵糧消費が減少
・西洋建築 施設の建設・拠点の改築・修復期間が短縮

イギリス
・ 大弩弓  弓隊の攻撃力+8、弓隊の戦法威力+100%
・ シールド 弓隊への足軽・騎馬戦法の被害が半減
・ 長弓   弓隊の射程+3
・ 活版印刷 技術の研究期間が短縮


・ 苗刀  足軽隊の攻撃力+12、足軽隊の守備力+4
・ 環鎖鎧 騎馬隊への鉄砲戦法の被害が半減
・ 鎖子甲 足軽対の機動力+6
・ 汗血馬 騎馬隊の攻撃力+12、騎馬隊の守備力+6

 これらの新技術はゲームバランスの調整にも一役買っている。たとえばオランダの「携行食」の技術。部隊の消費兵糧が軽減される技術で、中盤以降に数十万単位での兵力がぶつかりあう本作のシステムにおいて、非常に重要となる技術だ。「革新」では十万人の兵士を連れた輸送隊をいくつか移動させるだけで、すぐに兵糧が0になってしまったが、「携行食」の技術を用いることで、そうしたイライラから多少は改善される。

商人衆とのやりとりで特産品を集積させていき、諸外国との貿易の契約に必要な物資を集めていく

オランダの新技術は大部隊を動かすのには不可欠だ。ゲーム後半は部隊の強さもさることながら、大兵力をいかに動かしていけるかがカギとなる


■ 「委任」コマンドで大兵力を動かしやすく。50万の大軍勢を操れ!

新システム「譜代家臣」。支城を築くと家臣の1人を城主に任命できる。その武将は「譜代家臣」として、婚姻と同じく、支城が奪われない限りは大名の一門のように忠誠を誓う。譜代家臣は任命期間が長くなるにつれて、武将個人の能力にボーナスが与えられる
 「委任」コマンドは、徴兵や調達といった単純で地道な作業を、プレーヤーが指揮する軍団でも手の空いている武将が金と民忠のバランスを程よく取りながら自動でやってくれる(!)優れたコマンドだ。

 「革新」で全国統一を成し遂げるためには、とにかくこまめに徴兵と調達をする必要があり、版図を広げるほど、単純作業に耐えざるを得なかった。

 このため、最前線の城以外はすべて家臣に軍団を任せ、定期的に兵力を輸送させるのがもっとも効率的という偏ったゲームバランスに陥っていた。

 しかし、委任コマンドのおかげで、広い地域をプレーヤーの軍団で支配するのが楽になった。さらに、軍団の兵力の増加スピードも速まることになり、地方の統一を成し遂げる頃には数10万人単位での兵士の動員が可能になっている。

 また、「革新PK」での特産品の導入に伴い、各城の建設物では新施設の「奉行所」が新たに導入された。奉行所を建設し、城内の武将を割り当てておくと、産出する特産品の量が奉行になった武将の能力によって増加するという仕組みだ。

 だが、このシステムは結果として、本作の武将が際立ちにくいインターフェイスの弱さを助長してしまう結果になった。というのも、本作では城にいる武将が一見して誰が何をしているかわからないのだ。長期間技術の研究を行なっている武将や、奉行所に割り当てられている武将をついつい忘れてしまいがちになる。

 城に所属している武将達は、何人中何人が任務に従事しているかはすぐに把握できるが、誰が何をしているかはわかりにくい。そのため、奉行に割り当てられた武将が日の目を見ないまま寿命を終えてしまうようなケースもたびたび見られた。武将のアサインメントが明快にわかるインターフェイスの採用を望みたいところだ。

大名軍団の各城における徴兵と調達の委任状況は一目で確認できる。1地方を支配する頃には、近隣大名と10万人単位の兵力を動員した大規模な戦いが繰り広げられることになる

南蛮技術を獲得した結果、部隊が非常に硬くなった。戦法で兵力の削り合いが多かったバランスから、城に張り付く部隊数をとにかく多くして、城を取り囲んで拠点の士気を削いで制圧する展開が多くなった


■ 兵站の効率化で中盤以降は慌しい展開へ!とにかく前に出る!

拡散砲弾を撃てるようになった大筒隊。着弾地点からおよそ周囲1マスにもダメージを与える。大部隊同士の戦いの後方から攻撃したり、街を効果的に壊すシーンが多かった
 「革新」の攻城戦は、何十万人と兵力がいる場合でも、城を囲まれた場合には積極的に打って出て包囲を解かなければ兵士達の士気が下がり、すぐに城が落とされてしまう。「革新PK」では、攻撃側は委任コマンドの存在で、兵站の拡充がより効率的に行なえるようになり、長期の城攻めが可能になったため、中盤以降はとにかく城から討って出て野戦を行なうという、忙しい展開になった。

 攻撃側としては、攻城戦は能力の高い武将を固めて、強力な兵法を発動して攻め落とす方法から、包囲して城の士気を下げて落とすのがセオリーになり、とにかく人を集めることが重要になった。その一方で攻撃側は、新機軸となる国人衆の動向にも注意を払わなければならなくなり、「革新」以上に城獲りを巡って熱い攻防が繰り広げられることになった。「革新」の攻城戦はパワーアップキットをもってようやく完成したといった印象だ。

 総評として、「革新PK」は、日本全国を俯瞰する巨視的なシミュレーション性を維持しながら、リアルタイムの戦いをさらに激しく、それでいてマルチな戦略を要求するという、これまでになくゲームバランスの調整に注力したアップデートとなっている。単調な作業になりがちな兵站の補強などは効率化させ、攻城戦の采配の妙を引き立てるという味付けだ。

 コーエーの「信長」シリーズは、これまでどちらかというと、将棋を指すようなゆったりしたシミュレーションゲームというとらえ方が一般的だったが、リアルタイムストラテジーとしての新たな楽しみ方をも見出せる1本になっている。ナンバリングタイトルの発売テンポが遅くなって心配していたが、今後も継続して新たな試みを見せてもらいたい。

「革新PK」では商人衆が拠点を持つようになった。彼らの力を頼みにしなければならないこともしばしばだ

パワーアップキットではおなじみとなっているエディット機能は、勢力のステータスや史実武将の他に家宝も編集できる

(c) 2005,2007 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.


    【信長の野望・革新パワーアップキット】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4 1.7GHz以上を推奨)
  • HDD:200MB以上(本体込みで3GB以上が必要)
  • メモリ:256MB以上(512MB以上を推奨)
  • ビデオメモリ:32MB以上(64MB以上を推奨)


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「信長の野望・革新 パワーアップキット」のホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/kakushin/pk/
□関連情報
【8月7日】コーエー、WIN「信長の野望・革新 パワーアップキット」
戦略面に多大な影響を与える追加要素の詳細を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070807/nobu.htm
【7月20日】コーエー、WIN「信長の野望・革新 パワーアップキット」
戦略面に多大な影響を与える追加要素の詳細を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070720/nobu.htm
【6月22日】コーエー、WIN「信長の野望・革新 パワーアップキット」
「信長の野望・革新」の遊びの幅を広げる追加キット
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070622/nob.htm
【2005年6月20日】PCゲームレビュー「信長の野望・革新」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050620/kakusin.htm

(2007年9月14日)

[Reported by 三浦尋一]



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