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会場:Shanghai New International Expo Center
入場料:50元(約800円)
通常、オンラインゲームビジネスは、発表直後の段階では、開発元はあまり話すネタがないというより、運営元に遠慮してあまり話せないものだが、中国オンラインゲーム市場の特異性か、あるいは長谷川氏の性格によるものか、リリースの淡泊さとは打って変わって、マグマのようにどんどん企画中のアイデアが飛び出し、非常に楽しいインタビューとなった。
もちろん、現在開発中のタイトルであるため、曖昧模糊としてスッキリしない部分は多々残されているが、Lievo Studioの覚悟の程を知ることができたという点では非常に有益な取材だった。次回の日本市場に対する情報公開がいつになるのかわからないが、日本展開を待ち望むオンラインゲームファンは、要チェックのインタビューである。 ■ 「DOA ONLINE」の企画コンセプトと、PCオンライン化に際しての美麗グラフィックスの落としどころ
長谷川氏: 「PCオンライン上で進化させる格闘ゲーム」が本作の大きなコンセプトです。「DOA」はアーケードからコンシューマーへ舞台を移し、より高みを目指して研ぎ澄ませ、「DOA 2」、「DOA 3」、「DOA 4」という形で進化してきました。それは他社さんも同じような形で軸は違えどやっているビジネスですよね。 格闘ゲームの歴史を振り返ると、14、5年くらい前にものすごく流行った時期がありました。2D対戦格闘ゲームの代表作であるカプコンさんの「ストリートファイター 2」に始まり、そこの波にのれなかったユーザーさんはセガさんの「バーチャファイター」の出現により、いままでゲームをやったことのないユーザーをも巻き込んで格闘ゲーム市場が拡大していった時代がありましたよね。 当時はバブルだったのかもしれないのですが、多くのユーザーが格闘ゲームと向き合って、どこのゲームセンターでもなんともいえない熱気を出していました。当時、私はその熱気の中でいちユーザーとして対戦格闘ゲームが作りたくてこの業界に入ってきたのですが……(笑)。 あのときの興奮と、あれほど皆が熱中していた空間というところを、PCオンライン上で形を変えて再起させたいと考えているんです。格闘ゲームの魅力を、大勢のユーザーが集うオンライン上で、「DOA」という魅力的なコンテンツを通し、家庭用ゲームとは異なった進化をしていけるのではないか。そういう理由から、冒頭で掲げたコンセプトを軸に制作に取り組んでいます。 編: 具体的に研究開発がスタートしたのはいつぐらいでしょうか。 長谷川氏: この日から開発が始まりましたという明確なラインは無いのですが、2006年の夏から秋ぐらいにかけて具体的な話が出始め、水面下で動き出しました。今回7月3日に盛大さんと発表するまで、社内的にも厳重にこの情報が取り扱い、進めていました。 私は「DOA ONLINE」の企画コンセプトを作ったうえで、それを実現するためにはどういったスタッフで、どういったフォーメーションでなら成し遂げられるのか、安田(代表取締役社長)や板垣(Team NINJAリーダー)とミーティングを行ない、Team NINJAのスタッフや、パチンコパチスロ部門のグラフィッカー、「モンスターファームオンライン」などから精鋭スタッフを集め、プロジェクトを立ち上げました。それが2007年の初めくらいです。 編: Lievo Studioの開発体制はどのようになっているのでしょうか。 長谷川氏: Studioの構想は2年程前からありました。当時より家庭用のタイトルに携わってきたスタッフや、ネットワークのスキルやまた関心のあるスタッフ、さらに多様なスキルを持つスタッフなどで構成し進めています。スタッフの中には、他のタイトルの開発ラインと掛け持ちする者もいます。開発の軸となるスタッフは、プロジェクト序盤から最後まで通して組まれるように構成しています。 さらに言えばLievo Studioは、あまり1つのことに縛られずにどんな案件でも、どんな内容でも、どんな変化にも対応できる組織にしていこうという思想で動いています。なぜならオンラインゲームは、開発後のサポートなどがありますよね。常時スタッフを配置しなければならないケースとそうでないケースがあるので、計画性を持ちつつ、突発的に出る案件に対しても柔軟に理解を示して対応していける開発体制を目指しています。 編: その責任者である長谷川さんは、元々どのようなタイトルを担当されてきたのでしょうか。 長谷川氏: 私はテクモに入社する以前は、4年ほど同業他社にてアーケード用の2D格闘ゲームなどを制作していました。その後、テクモに入社し、コンシューマゲームの開発を9年間してきています。大きなタイトルでは「影牢」シリーズや「零」シリーズが主ですね。「DOA」シリーズは今回が初めてとなります。 編: 「DOA」といえばTeam NINJAや板垣さんのイメージが強いですが、Team NINJAはどのようにこのプロジェクトに関わっているのですか? 長谷川氏: 「DOA ONLINE」立ち上げ時、まずTeam NINJAの板垣へ報告に行き、企画コンセプトをプレゼンしました。序盤から協力体制を引いて貰い、Lievo StudioにもTeam NINJAからスタッフを合流させてもらいました。部門は異なりますが、目標達成のために人や技術の交流は常に行なっています。実は、先月まで「DOA ONLINE」の開発メンバーは、Team NINJAのフロアで開発していたんです。私の方から板垣へ開発を進める上での様々な依頼を行ない、協力して貰っています。 編: 板垣さんといえば職人肌のクリエイターというイメージがあります。「DOA ONLINE」を作るにあたり、どのような注文を付けられましたか? 長谷川氏: まさにそのとおりで(笑)、プロジェクト開始時「DOA ONLINE」は、COプロデューサーとして板垣、COディレクターとして同じくTeam NINJAの江原に協力して貰いました。定期的なミーティングやプレゼンの中で頂くアドバイスは非常に有意義で、「DOA」シリーズの中で培ってきたものを継承しつつ、オンラインで進化するコンセプトを入れながらゲーム的なアイデアが企画の中に盛り込み進めています。 編: それは例えばどのようなものでしょう? 長谷川氏: ゲームの中での人の流れですね。コンシューマゲームにも言えることですが、ユーザーがゲームをプレイして何をもって快楽を得て、何をもって引き付けられ、何に対して放出していくかと。その部分は中国だから、アメリカだからというのは関係なく構成しようと。遊びに対する本質にはしっかりとしたグローバル性を持たなければいけないということです。 編: そうすると、「DOA ONLINE」は、Team NINJA全面支援のオフィシャルな「DOA」シリーズの1タイトルを捉えていいのですか? 長谷川氏: そうですね。「Team NINJA協力」という印があるわけではありませんが、全面的に協力してもらっています。その上で開発はLievo Studioが行ない、テクモから世界へ発信していくタイトルとなります。 編: 歴史の長い有名フランチャイズですから、さすがにゼロから作るわけではなく過去の資産を活かした作り方になると思いますが、「DOA」シリーズのどのあたりをベースにされているのでしょうか? 長谷川氏: 理想を言うと最もクオリティの高いものを持っていきたいところです。1年後の中国市場に向けてもっとも普及しているであろうスペックを想定して、落とし込んでいきます。かといってスケールダウンするわけではありません。「DOA」シリーズには「世界で1番美しい」というキャッチフレーズがありますが、あれは絶対に汚したくありませんので。かといってPCというハードはユーザーによってスペックが一定というわけでもありません。折衷案は中々難しいのですが、「DOA」の何がベースになるかは調整中です。「DOA 4」、「DOA 3」といった具体的な数字は指せません。 編: Xbox 360のハイデフクオリティをベースにしていると考えてよろしいですか? 長谷川氏: Xbox 360のクオリティをベースにするためにはかなり高いスペックのPCが必要となります。そこをベンチマークとするとユーザーさんの数を制限してしまうことになりかねません。また、逆にPCならではの落としどころとして、低スペックのユーザーに合わせるということがあります。しかし高スペックユーザーにしてみれば、低スペックに合わされたのではたまったものではありません。「DOA ONLINE」では高スペックのPCを持っている人には高スペックのクオリティを届けたいと考えています。低スペックやミドルスペックのユーザー、高スペックのユーザーでビジュアルを色々切り替え、環境に応じてより高度なビジュアルになるようにしようと計画中です。 編: つまり、アーケードやコンシューマと違って、任意でグラフィックスクオリティを変えられるようなスケーラビリティの高い作品になると? 長谷川氏: そうですね。 編: となると、ハイエンドPCのユーザーは、ハイエンドのクオリティで遊べるわけですね。
長谷川氏: 遊べるようにしたいですね。 ■ 「DOA ONLINE」のゲームデザインについて。男性KINがかすみのコスプレを着て戦う不思議な世界
長谷川氏: 出展した映像を見ていただくと、最後にカイン同士がぶつかったときに、レイファンとかすみの格闘のゲームが始まりましたよね。まさにあのイメージなんです。自分の分身となるカインを操作し、お気に入りの「DOA」キャラクタのコスプレをすることで、そのキャラクタを使用できる。そして特定のフィールドで相手とエンカウントすると「DOA」キャラクタでの格闘モードに切り替わるといったイメージです。 もちろんカインを操らずゲームを始めたら多様なマッチングですぐ対戦できるような設計も施しています。そのような部分をふまえ、視覚的に多人数で溢れるアウトゲーム部分で、深さと広さを楽しんで貰おうと考えています。 そのために存在させたのがカインです。本作でラウンジと呼ばれるエリア(ビジュアルロビー)で、他のユーザーが操るカインを見れば、「あのユーザーはレイファン使いだ!」なんて一見してわかります。またゲームの中でバイマンの衣装を手に入れれば、それを着ることでバイマン使いになれるというわけです。 編: カインについてですが、コスチュームによってキャラクタイメージが変わるとのことですが、カインとは何なんでしょう? 男性女性があるのでしょうか。 長谷川氏: 男性女性はあります。カインは純粋にユーザーの分身です。顔とか髪型、肌の色などは自分の分身なので好きなように設定することができますが、コスチュームに関しては世界にあるものを着て、コスチュームを着たキャラクタが使えます。 編: 仮に私が男性キャラクタを選びますよね。かすみの衣装を着たらどうなるのでしょうか。 長谷川氏: 男性がかすみコスプレしているようなイメージです。短い男の髪型にかすみの衣装です。 編: それはいくらなんでも変ではないですか?(笑) 長谷川氏: 位置づけとしてはユーザー自身のコスプレのようなものなので、3頭身のキャラクタでユニークに表現できると思います。男の方でも女性の格好をしたい、女性のキャラクタでも男性の格好をしたいユーザーさんはいると思うのです。雰囲気にマッチさえしていればOKだと思います。 編: 変な話ですが、特徴である大きな胸の部分はどうなるのでしょうか? 長谷川氏: そこは色々考えています。たとえば、水着の衣装カテゴリですと、柄が同じ男性用の水着になります。 編: かすみの衣装を着るとかすみが使えるとのことですが、使える技も丸ごとかすみになるのですか? 長谷川氏: かすみの衣装を着るとかすみをプレイ可能になるわけです。カイン自体がかすみの技をたくさん覚えて使えるわけではありません。カインはあくまでも「DOA」の格闘の世界に参加しているユーザーなのです。 編: カインと既存のキャラクタの関係を詳しく教えてください。 長谷川氏: まず「DOA」という世界があります。それはコンシューマーで育ってきた「DOA」キャラクタが息巻く世界です。今まではユーザーは直接その世界に入り、かすみやレイファンなどのキャラクタを操作してきました。今回の「DOA ONLINE」はその世界の外側に覆い被さるようにもう1つ世界を作っています。そこがユーザー自身の分身となるキャラクタ、カインのいる世界となります。このカインたちが「DOA」キャラクタとなりきって格闘シーンで決着をつけていくのです。その仮想世界で行なわれる大会が「DEAD OR ALIVE China」となります。 編: なるほどなるほど。よく理解できました。私はてっきり、まず格闘素人のキャラクタを世界に生み出して、私はジャン・リーが好きだから、まっさきにジャン・リーの衣装を着て、回し蹴りとか裏拳とか技を1つ1つ覚えていく、みたいなゲームデザインを想像していたのですが、そうしたプロセスは丸ごと無いのですね。 長谷川氏: そうですね。格闘技のプロセスの中で技を覚えていったり、パワーが変わっていくことはゲームバランスとして非常に難しいところです。一方、カインのほうは、色々なものを覚えていけるようになっています。 編: それは例えばどのようなものでしょう? 長谷川氏: カインのアクションですね。「走る」、「歩く」であるとかですね。例えばカインの起こせるアクションの数に制限があるとしましょう。走ることができるカイン、走ることができないカインでは能力的に差が出ますよね。カイン同士が立ち回るバトルフィールドで、複数のカインが集まってグループ戦を行なう際、カインの能力というのが戦況に大きく影響してきます。 そこでは先ほど話したように、相手カインとエンカウントすることで「DOA」の対戦格闘シーンに移行します。その対戦シーンにもっていくまでのプロセスを、ユーザーはリアルタイムで仲間のカインと協力したり、能力をうまく使って相手を翻弄させたり、立ち回ったりできるのです。その際使用するカインの能力に幅があれば、有利なフォーメーションを組めるようになります。足が遅いと後ろから追いつかれてしまうかもしれない。 編: ほうほう、意外と「DOA」の外の仮想世界そのものにも、アクション的な楽しさがあるのですね。
長谷川氏: あります。といっても、カインがなんでもできてしまうのではなく、あくまで決着は格闘シーンで決めるというルールを設けています。またカインの能力はわかりやすく表現しようと考えています。MMORPGのような細かいパラメータ設定のようなものまでは考えていません。
■ 60フレームのリアルタイムバトルをいかに実現するか。開発上の抱負を聞く
長谷川氏: Xbox Liveでの通信技術は4年程前、Team NINJAにより培ってきたものがあります。今回その技術をアレンジしつつ、盛大さんの培ったSGDPサーバーシステムといったネットワーク技術を混ぜていきます。課金であったりセキュリティであったりそういった部分を強くサポートしてくれます。また当時の「DOA」でのネットワーク担当者も「DOA ONLINE」に加わっています。テクモの技術と盛大さんのノウハウである程度の算段が立ててきていますので、あとは段階に分けてしっかりとクリアしていこうと言うところですね。 編: 目標としているフレームレートはいくつですか。 長谷川氏: 家庭用と同じ60です。 編: グラフィックスは先ほどスケーラビリティの高い設定にされるというお話でしたが、上限はどのあたりに設定していますか。 長谷川氏: これから調整していくところですが、パソコンのグラフィックボードでも違ってきますよね。PCユーザーの中には1,920×1,200ドットまで出せる人もいます。そこまで対応できたらものすごく綺麗だと思います(笑)。対応することそのものは簡単なのです。しかし、それを動かせるユーザーは限られてきますよね。ゆえに落としどころは、これですよとは一概には言えませんが、1年後に出る頃には、PCオンラインの格闘ゲームとしてクオリティ1番を目指しています。 編: 「DOA 4」には勝てますか。 長谷川氏: 別の意味では勝ちます。中国市場でも「DOA 4」をやられているユーザーさんはいると思うのですが、コンシューマーの普及は中国市場では難しい部分もあります。ハードル達成の違いから争うことはできませんが、別の意味では肩を並べるように成長できると思います。また、我々は世界に向けてより多くのユーザーの方々にプレイしていただきたいという気持ちが第一なので、そういった意味ではサービス後にユーザーの方々に色々と判断していただきたいですね(笑) 編: 「DOA ONLINE」はオンラインゲームですので、ユーザーコミュニティが大事になります。独自のシステムがあれば教えてください。 長谷川氏: “何々システム”と一言で言ってしまえるものがあるかといえば難しいのですが、我々の考えているコミュニティは、格闘ゲームから発生していく人の感情や気持ちをサポートしていくシステムを考えています。例えばこのプレーヤーに負けて悔しいと。そのユーザーさんにもう1度対戦を申し込みたい。そのコミュニケーションはどこで取ればいいのだろうと。あの人は強い。あの人の弟子になりたい。あの人に教えを請いたいけどどうしたらいいのだろうと。戦うことに端を発する色々な思いがありますよね。そうした気持ちをフォローできるようにコミュニケーションシステムを考えていきます。そうした気持ちがゲーム内で繋がれるような流れです。 編: ボイスチャットで、対戦中に「やったー」とか「やられたっ」とかやりたいですよね。 長谷川氏: 検討事項には入っています。盛大さんとも初期の段階からそういった話はしています。ラジオチャットやボイスチャットなどいろいろありますけど、ゲームとのマッチングや地域性もありますので、そこは市場の変化を見て進めていきます。ベースの部分はテキストチャットで考えていますので、それ以外に多様に対応できるように検討事項に入っています。 編: となると「DOA」の対戦中にコミュニケーションを取ることは基本的にできないと。 長谷川氏: さすがに対戦中にテキストを打ち込んでのコミュニケーションは難しいと思います。ショートカットに入れる自分のコメントなどはできるかもしれないです。 編: 試合中にテキストチャットをしようと思えばできるのでしょうか。 長谷川氏: できるようにはしたいですね。またショートカットに割り当てて簡易的にしようとも考えています。 編: それ以外に独自にエモーショナルな動作をするですとか、そういったことはありえるのでしょうか。たとえば、かすみが「DOA ONLINE」オリジナルのアクションで相手を挑発をするですとか。 長谷川氏: そこも現在検討中ですね。「DOA」はキャラクタ性がしっかりと確立してますよね。キャラクタのイメージに合わないようなことは格闘ベースでそんなにしようとは思っていないのです。カインのほうではそういった表現の導入を考えています。 編: インゲームの「DOA」はあくまで「DOA」そのものがプレイでき、オンラインゲームらしい表現はその外の仮想世界で行なうという考え方ですか。 長谷川氏: はい。ユーザー自身がユーザーの表現をします。相手のカインに対しての挑発や戦った結果の喜びなどは、やはり視覚的に表現したいと思います。そこはユーザーの分身であるカインに行なわせたいですね。 編: 私は格闘ゲームが好きでそれなりにやりますが、自分で言うのもなんですがとてもヘタです(笑)。手加減をしてくれる友人となら対戦したいけれども、まぐれ勝ちを狙いながらワンサイドゲームをひたすら繰り返すぐらいなら、1人プレイでいいやと思う方です。だから私はヘタくそゆえに、オンラインゲームにおけるレベルマッチングの重要性をよく理解しているつもりですが、そのあたりのシステムについてはいかがですか。 長谷川氏: 僕は格闘ゲームのヘビーユーザーなのですが(笑)、それでも人によって得手不得手なタイトルってありますよね。その場合、ゲームを楽しく遊ばせるためにはどうすればいいかということを今回の課題にしています。それはチュートリアルであったり、1人でもしっかり遊べるモードなどの充実ですね。今回のゲーム内でもそれらは、初期の段階から考えていて、しっかり設定していきます。 盛大さんからも要望がありました。ゲームを始めて何をしたらよいかわからない、低ランク者狩りを行なうプレーヤーが現われて、負けたユーザーがログアウトをして二度とゲームをやらなくなってしまうことがないよう、初心者や中級者それぞれランクを分けています。戦っていくことで、ランクが分かれていきます。 編: 基本的に同一ランクの戦いになるのでしょうか。 長谷川氏: 同一ランクでも考えていますし、ランダムマッチも考えています。 編: ということは、エンカウントバトルだからといって、強い人に後ろからドンとぶつけられて、強制的にバトルになっていきなり負けてしまうことはないのですね。
長谷川氏: それはありません。皆が共存するビジュアルラウンジはエンカウントしても戦いは起きません。特定のバトルフィールドのみです。やはり格闘ゲームは同ランクの闘いが最も面白いですよね。格闘ゲームというのはプレーヤースキルに依存するので、時間を掛けても上手くなれないユーザーもいるのです。それでも好きでプレイしてくれたり、また上手くなりたいとプレイし続けてもらえるようにモチベーションが継続する楽しさを盛り込んでいくつもりです。そういったところをフォローできるようにマッチングに関しても初期の頃からそのあたりを意識した設計にしてあります。 ■ ユーザーの創造性をいかにゲーム内に投影させるのか。プロモーターシステムとは?
長谷川氏: ユーザープロモーターでいいますと、また昔話になりますが(笑)、私は格闘ゲームが大好きで中学高校の頃はゲームセンターに通いつめていました。ゲームセンターに通い詰めていると見ず知らずのうまい人たちとであったりしますよね。常連の人とか意識してプレイすることで、あの人は何のキャラクタを使って、どんな技が得意なんだろうと色々とゲームを通して関係が深まっていくわけです。不思議なことに日を重ねていくうちに親近感や仲間意識ができたりします。そんな折り、仲良くなった常連の方と私は当時通い詰めたゲームセンターで、そこに通う見ず知らずの方を巻き込み格闘大会を開いたのです(笑)。 参加するのは誰でもいい。参加料をもらって優勝したらこうったものがもらえると。大会は最初はセッティングは色々難航しましたが、日を追うごとに面白いものになっていって、進化していったのです。挙げ句の果てには店長も協力してくれたり(笑)。大会の告知やレギュレーション、どうすれば盛り上がるのか。格闘ゲームは、個人で楽しむ要素とは別に、ギャラリーを引きつける要素が沢山盛り込まれています。ゲームというコンテンツの周りにも実はエンターテインメント性があるんです。個人で楽しむ以外にも、人が集まることで様々な表現があるのではないか。そういうところで、ユーザー自身が大会を開くことができる「ユーザープロモーター」というシステムを企画しました。 もうひとつ例えをあげると、年末によく格闘団体がマッチメイクを行なうじゃないですか。プロモーターの人が異色な組み合わせを行ない、大会のルールを決めて盛り上げるあれですよね。それで観客が期待感を持って、「あの戦いは見てみたい!」、「また参加したい!」と繋げていくことが「DOA ONLINE」でできるのではないかと。ユーザー自らが知り合いのプレーヤーであるとか集客できそうな有名なプレーヤーを集めて、全員かすみだけで闘うかすみ杯を開くとかね(笑)。 編: そのプレーヤー主催大会の様子が想像しにくいですが、たとえば、試合のアナウンスをどうするのか、それから進行をどうするのか。観客はどのような形で参加できるのでしょうか。 長谷川氏: その部分は考えていまして、何から何までレギュレーションを設けてしまいますと自由度を奪いかねません。変な話、意図的にシステムに穴があればユーザー自身による独創性と創造性でその穴を使って広げていくと思うんです。何時何分に戦いますという部分はゲーム内で設定して、後は自由にするとその中に自然にルールなどができあがり、仕組みができあがっていったりするものです。 あまりにも投げっぱなしにすると混乱させてしまいますが、最低限のものだけは開発側が提供するつもりです。そのさじ加減は今後の調整になってくると思います。やはり観戦スタジアムがあれば盛り上がるだろうし、そこで野次を飛ばせるようにしたいですし、ユーザーがアナウンスを行なってもいいかもしれません。やり方もどうすればライブ感を得てみんなで盛り上げることができるのかという点でテストを重ねて設計していますのでご期待ください。 編: 欧州で開発が進められているSCEさんの「home」だと、高解像度のバーチャル空間の中にでっかいモニターがあって、「リッジレーサー7」の映像が流れたりしますけど、ああいうイメージでよろしいですか? つまり、「home」の世界が「DOA ONLINE」で、数千人のカインたちがいて、モニタで展開している「DOA」の決勝大会を観ながら、野次を飛ばしたりしている空間です。 長谷川氏: 最も素直なイメージではそれが近いかもしれませんね。ただ「そうです」と簡単に言えない部分がありまして、というのは、その場合ちゃんと大勢のカインは表示できるのか、リアルタイムで表現できるのかという工夫が必要になります。開発スタッフは僕も含めて想定しているイメージとしては、それに近いと思います。 編: プロモーター以外のユーザーの創造性はどのような部分に盛り込まれるのでしょうか。 長谷川氏: ユーザー創造サービスというのはバランス感が非常に難しくて、なんでもかんでもユーザー創造サービスとしてしまうと、ユーザーが創造しなければ何も始まらなくなってしまいます。きっかけはこちら側が与えないといけないと思います。「DOA」を楽しんでもらう発展性として計画している1つ目がプロモーターです。2つめ3つめは色々な候補はあるのですが、現段階では検討中です。 編: アイデアレベルで結構ですので、もうちょっとヒントをお願いします。 長谷川氏: 案で言えば、プレーヤーの手によってスタープレーヤーを生み出して行きたいと考えていますね。その世界でもっとも強いユーザーが自分ひとりの力で「スタープレーヤー」の称号を得たとします。ただ、そういったプレーヤー意外にも別のプロセスでスタープレーヤーに導かせることをしたいなと。格闘技にはトレーナーがいたり、応援する仲間がいるわけです。「強さ」以外にも、様々な人たちの応援やサポートによって有名になるプレーヤーがいても良いと思うんです。試合に勝ったら町中にポスターを貼ってあげようとか知名度を上げる礎を皆が作ってあげるわけです。 編: イメージイラストの街の中に銅像がありました。有名な選手のカインということも考えられるのでしょうか。 長谷川氏: 考えています。例えばある大会で優勝したユーザーが期間限定で銅像として街のシンボルになるというのもおもしろいですし、短いスパンでやっている格闘大会の優勝者は、街の看板に自分の名前が張り出されるかもしれません。世界に生きているライブ感をカインのいる世界の中でで表現していきたいです。 編: 私が知りたいのは、テクモさんがどこまで許容するつもりなのかという部分です。すべてを許容するなら「Second Life」になるわけです。しかし有名フランチャイズの場合、コンテンツホルダーとしてブランドは守らなければいけない。よって一定のハードルは設定しなければいけません。そのハードルとはどこなのかというところですね。 長谷川氏: 「Project EDEN(プロジェクトエデン)」構想にも深くかかわってくるのですが、「DOA ONLINE」は「DOA」というしっかりとしたコンテンツを活かしたタイトルです。「DOA」の世界を壊すようなことはしません。そこは守らなければいけない。次にその周りでカインがいる世界、そこに関してはいろいろなものが創造していけます。ただ、将来的に、「Second Life」になっていくのかといえば、やっぱり我々が進むべき方向とはちょっと違うと思うのですね。 やはりゲーム制作を長くやってきているので、その中にユーザーさんを楽しませる喜びであるとか悲しみであるとか、感情を揺さぶるものをしっかりと創造サービスの中に入れていきたいと思います。しっかりとエンターテインメント性のあるものを提供し、その中でユーザーが互いの感情を膨らませて、互いのコンセンサスを取って楽しんでいけるような世界を考えています。 編: 私はオンラインゲームをずっと観てきていますので、どうしてもユーザークリエイションと聞くと、鉱石を採掘して、延べ棒にして鎧を作りましょうというイメージから入ってしまうんですね。絹を一反買ってきて、かすみの服が作れますという方向性はまったくないわけですか?
長谷川氏: そういう部分がまったく無いかといえばそうでもありません。プレーヤーがすることの中にはそういったプロセスも必要だったりします。何かエンチャントしたらパワーアップするかもしれないし、お互いに協力したら別のものが生まれるとか。ただ、今作で我々が目指しているのは人の感情や気持ちが交錯し、形作られる構造なのです。1+1=2になるようなものとは別に、その答えが3や4になっていく仕組みを考えているんですね。そこをデジタル化したりシステムに落とすのは難しいのですが、ゲーム制作をやっていく上で、そこをしっかりと実現していきたいのです。ある程度設計した上で最高のエンターテインメントを用意し、その中でユーザーの皆さんが増幅させ、楽しんでいくことを考えています。 ■ ビジネスモデルはアイテム課金+αのハイブリッド課金か
長谷川氏: 「コスチュームを売っていたら買うよね」という話はよく聞きます。 編: 「アイドルマスター」的な発想ですね。 長谷川氏: 水着に対するユーザーの価値がものすごく高いのであれば買うのかもしれない。それは人が欲しいと思ったものに対して直結した流れです。そこを避ける理由はあまり無いと思います。今回盛大さんと課金システムについては、アイテム課金だけでなく、より新しいタイプのものを含めていこうと検討を重ねています。 たとえば、格闘ゲームは、早く戦いが終わったほうが美しかったりしますよね。結果が出るのが早いですよね。対戦が始まって10秒で勝負が決まってしまうかもしれない。そういったことを繰り返していくゲームというのは格闘ゲーム以外あまり見かけません。そういった特性を活かした課金アイデアはないかと、今盛大さんと協議しています。 編: よくわからないのですが、もう少し噛み砕いておしえてください。スピードが速いとそこに課金が発生するのでしょうか? 長谷川氏: 違います。格闘ゲームの特性は結果までのプロセスが短いですよね。その特性を活かしたアイデアをかぶせていくことで、独自の課金アイデアが構築できると思うんです。誰かに負けた場合、すぐその人と再戦したいであるとか、ランダムマッチで戦えば、短時間により多くのユーザーと拳を交えることになる。そういった仕組みとそこで生まれる感情にうまくかぶせられるような課金システムです。まだ検討段階なので具体的にはお話しできないんですけど(笑)。 編: たとえば、負けた人に再戦するためのアイテムであるとか、10連勝したら「このトロフィーいかがですか?」とかですか? 長谷川氏: 是非そのアイデアを使わせてください(笑)。そういったレベルで色々と盛大さんと検討しています。 編: いつぐらいに明らかになるのでしょうか。
長谷川氏: タイミングは難しいですね。なぜならまだ調整段階にすら入っていませんので。クローズドβテストの段階でそれを公開するかは別として、そのあたりでこういったことをやりますよという何らかの意思表示はしていく思います。 ■ 「DOA ONLINE」の今後の開発について。ストーリーラインや新キャラクタは?
長谷川氏: あります。今はいえないのですけど。しかし、ユーザーが1人で入って、1人でも楽しめる世界になっています。これを求めに行こうというか、これを倒しに行こうとか。MMORPGでいうクエストに近いものがあるかもしれません。1人でも長く楽しんでもらいたいですし。 編: シングルプレイモードも実装されるのでしょうか? 長谷川氏: もちろん、あります。 編: コンピュータAIも既存の「DOA」シリーズのものを使っているのでしょうか。 長谷川氏: そうですね。 編: その中で、これまでに登場していないライバルやボス的な存在もいるのでしょうか。 長谷川氏: もちろん考えられます。それらは急に出てくるかもしれません(笑)。オンラインゲームは、同じことの繰り返しになる傾向があるので、突発的な演出やイベントもスパイスとして考えています。 編: プレーヤーキャラクタとして新キャラクタは登場するのでしょうか。 長谷川氏: まだ計画には入っていません。盛大さんと話はしていて、長い目で見た場合に考えられるかもしれませんが、新キャラクタよりもまずはオンラインによる進化を実現させることを優先的に行なっていますね。 編: 「DOA 4」までの登場キャラクタは全員出るのでしょうか。 長谷川氏: そこは断言できないです。例えば中国の市場や日本の市場でもそうですが、かすみであったりレイファンであったり人気キャラクタはしっかりと出していかなければいけない。どこの段階まで開放していってどのキャラクタがどのタイミングで入ってきたほうがゲーム的にもり盛り上がっていくのかということは考えていきます。現時点で、14人や8人ですといったことは確定していないです。 編: ということは、プレイできないキャラクタが出てきてしまうかもしれません。 長谷川氏: そこはご想像におまかせします。ただし期待を裏切らないように開発はしています。 編: メインの「DOA」シリーズも、今後も開発が続いていくと思うのですが、シリーズとの絡みはいかがでしょうか? 長谷川氏: あるともないとも言えます。初期の段階でCOプロデューサーの板垣とコンセンサスを取ってPCで進化させていこうとしたときに、やはり「DOA」の冠がついている以上、「DOA」の世界に軸足を置いて開発していかねばならない。これから先「DOA」がシリーズ化の中でどこかで繋がってたりしたら面白いよねと。同じ世界にいるのだからそういったことをやっていければいいかなと。あくまで構想ですけどね。 編: 今後、完成に向けて開発を進めていくわけですが、中国市場での展開にあたって、意識していることや注意していることはどのあたりでしょうか。 長谷川氏: ユーザーのプレイスタイルが日本のオンラインユーザーと違うのです。中国市場で大事にされるのは入り口と結果です。もちろんプロセスも大事ですが、そこが日本のユーザーと大きく異なるところだと聞いています。たとえばアドベンチャーゲームで開かない扉があるとします。その扉をあけるにはカギをとったり謎を解かねばなりません。日本のユーザーはそういったプロセスは慣れていますが、中国のユーザーさんはそういったところでつまづいてしまうとゲームを辞めてしまう方が多いようです。また初めから攻略本を片手にゴールまで一気に目指す方も多いとか(笑)。 そういったプレイスタイルに直接結びつけたゲーム設計にはしませんが、少なからず盛大さんからのアドバイスや、これからのテストを行なう上で、しっかりと意識し、ゲーム内に加味していこうと考えています。 編: 最後にユーザーさんに一言メッセージをお願いします。 長谷川氏: 「格闘ゲームのもう1つの進化」を軸に開発しています。ゲームの捉え方、見方、入り方は時代が変われば変わってきます。「DOA」というコンテンツもPCオンライン化したり、モバイル化したりと様々なチャレンジを行なっております。その中で「DOA ONLINE」は既存のオンラインゲームに対する見方、価値観が変わるものとして位置づけ、今後のオンライン市場に大きな影響を与えるタイトルとして制作していますので、ご期待ください。 編: ありがとうございました。 (C)TECMO,LTD. 2007
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2007年7月19日) [Reported by 中村聖司]
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