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Game Developers Conference 2007現地レポート

西川善司の3Dゲームファンのための「ソニー“Game3.0”」講座
GDC 2007特別編
Phill Harisson氏基調講演によって明らかにされた「Game3.0」の世界

サンフランシスコ市、モスコーニセンターで開催中のGDC 2007
3月5~9日開催

会場:Moscone Convention Center

■ 今世代のゲームは「Game3.0」となる

 Sony Computer World Wide Studiosのフィル・ハリソン氏は、「今世代のゲームは“Game3.0”になる」と切り出した。Game3.0とは、今回ハリソン氏が使い出した新しいキーワード。「ソニーのトレードマークや広告キーワードにするつもりはなく、あくまで“象徴的な言葉”として捉えて欲しい。ソニー以外の立場の人間が使ってもらっても差し支えはない(笑)」(ハリソン氏)

SCE Worldwide Studios フィル・ハリソン氏 Game3.0。SCEが目指す次世代ゲームテーマ


 これはコンピューティングワールドがWebという媒体を介してインターネットの世界で構築されていく現象やコンセプトを象徴した「Web2.0」をもじった言葉に他ならない。「Game1.0」は、ディスクやカートリッジに記録されたスタンドアローンなゲームを個人個人が自分なりに楽しんでいくゲームの世界だとハリソン氏は定義。これは任天堂のファミコンに始まり、ソニーのプレイステーションまでの世界がこれに対応するという。

 「Game2.0」は、ゲームそのものはディスクなどの固定媒体から提供され、これらをスタンドアローンで楽しんだり、あるいはネットワークに接続して第三者と共有してプレイできるゲームの世界だとしている。これは、マイクロソフト「Xbox」、ソニー「プレイステーション 2」などの先代までの世界がそうだったという。

 「Game3.0」は、ゲームそのものが動的なコンテンツとなり、ネットワークを媒介して提供されたり、あるいはネットワークでそのコンテンツそのものを相互にやりとりしたり、そのコンテンツについてコミュニティを形成していけるタイプのゲームを指す。これは今世代のゲーム機のゲームの世界であり、マイクロソフト「Xbox 360」、ソニー「プレイステーション 3」の世界がこれに当てはまるという。

具現化されつつあるWeb2.0 Game1.0/2.0/3.0の違い



■ PS3版3D「mixi」? “Home”はPS3初のSNS

PS3初のSNS「Home」
 ハリソン氏は「今日は、ソニーが考える“Game3.0”を、GDC 2007というゲーム開発者が集う舞台を借りてお披露目したいと思う」と述べ、新開発のソーシャルネットワークサービス(SNS)、「Home」を披露した。

 「Home」を起動すると、PS3のユーザーは、リアル系アバター(自分の分身キャラ)として「Home」世界に出現する。システム的には「ファイナルファンタジーXI」のようなMMORPGタイプのもので、全ての参加ユーザーが中央サーバーにアクセスして一同に介する仕組みをとる。

ゲームタイトルをプリントしたようなTシャツはスペシャルアイテム
 ユーザーの外見は、モンタージュ写真のように、何種類も用意された目・鼻・口といった顔のパーツを組み合わせて自分に似せたものを作り出すことができる。表現自体はハイパーリアル系のアプローチだが、コンセプト自体は任天堂「Wii」における「Mii」の作成に似通っている。ゲームに詳しいユーザーならばオンラインRPGのキャラクタメイキングを連想すればいい。

 ここで作成した顔は、「Home」にアクセスした他のPS3ユーザーにもそう見えるので「Home」世界での重要なアイデンティティとなる。カスタマイズは顔だけでなく背格好や体型、服装やアクセサリなどにまで及ぶ。新しい服飾品はオンライン提供されたり、あるいは新たなゲームタイトルを購入してプレイしたあと、「Home」側に自動的にインストールされたりすると言う。

キャラクタメイキング。WiiのMiiと違って超リアル系


 「Home」の世界は21世紀の現代世界をリアルタイム3Dグラフィックスで表現したようなビジュアルになっており、ジョイパッドを操作することで3人称視点で自在に世界を歩き回ることができる。視界に現われる全ての人間キャラクタは他のPS3ユーザーであり、予め登録された挨拶メッセージを送ったり、PS3に接続したUSBキーボードを活用してのリアルタイムチャットも楽しめる。

 また、別売のヘッドセットを用いてのオンラインチャットにも対応している。ジョイパッド操作により、手を振る、敬礼する、ダンスを踊る……などなど様々なジェスチャーアクションを送ることも可能。まあ、このあたりは、最新のオンラインRPGなどでは当たり前のように実装されている機能ではあるが、これまでこうしたタイプのゲームをプレイしたことがないユーザーにとっては楽しい経験になることだろう。

「Home」世界は3人称視点で歩き回れる
「Home」内にいるキャラクタは全て別のPS3ユーザーのアバター。話しかけることもできる
文字チャットの他、音声チャットも可能


 「Home」の世界は、現実世界の街を模倣しており、壁などには広告ポスターやビデオウォールが掲げられている。その内容は、実際に近日発売されるゲームタイトルの広告だったり、ゲームの予告編ムービーそのものだったりする。「Home」では、いわゆる「ゲーム内広告(Ingame Advertisement)システム」を実践しているわけだ。ロビーからは様々な施設へ歩いて行くこともできるが、「バーチャルPSP」と呼ばれる各アバターに与えられる標準ナビゲーションアイテムを活用し、任意の施設へワープジャンプすることも可能。

背景には「グランツーリスモ HD」のムービー広告が 「Home」世界の水先案内を勤めてくれるバーチャルPSP


 デモンストレーションでは、まず、「Game Space」と呼ばれるゲームセンターのような遊戯施設が紹介された。ここでも他アバターと会話が楽しめるが、それだけでなく、ここに置いてあるビリヤード、ボーリングといった様々な「ゲーム内ゲーム(Ingame Games)」をプレイできる。このゲームセンター内で知り合った他アバターをその場で誘って一緒にプレイできる。

 技術的に興味深いのは、各ゲーム内ゲームを、ローディングや画面切換などなしにシームレスにプレイできるという点。ビリアード台の近くに行くとその場でシームレスにビリアードゲームの操作になり、離れれば通常の移動モードになる。Game Spaceにはクラシックなアーケードゲーム筐体もおいてあり、筐体の近くに行けば、実際にそうしたビデオゲームを楽しむことができる。ここでもビデオゲーム画面から視界をずらせば、「Home」ワールドの世界に目を向けることができる。ここまで徹底したシームレスワールド表現は、本当に必要なのかどうかはわからないのだが、とにかく、「Home」開発チームの“Home世界”のリアリティ表現へのこだわりには鬼気迫るものが感じられる。

Game Spaceの様子
ビリアード、ボーリング、クラシックアーケードなどが楽しめる「Game Space」
クラシックアーケードタイトルもプレイ中、視線をずらせば「Home」世界の方に目を配ることもできる


 この他、「Home Theater」と呼ばれる、映画館施設もある。ここは、読んで字のごとく、映画館であり、最新映画の予告編が実際に劇場内の座席に座って視聴できたりする。ゲームの予告編、劇場映画作品の予告編はもちろん、ユーザーが制作した短編ムービーの公開も予定されている。これはYouTube的なユーザー映像作品の発信拠点として期待される。商業映像作品は当面はソニーピクチャーエンターテインメント(SPE)作品のものが多くなるが、他映画スタジオとの連携を強め、他スタジオ作品の公開も行なっていきたいとした。

Home Theaterの様子
「スパイダーマン 3」の予告編が上映されている様子を披露 Theater内でももちろんチャットが可能。映画についての雑談が盛り上がりそうだ



■ 「Home」の世界の住宅事情~友達を招いてホームパーティを!

 「Home」に参加した各アバターには「Basic Apartment」という居住スペースを持つことができる。

Basic Apartmentの様子


 自身の外見同様に、この部屋も自分なりにカスタマイズしてデコレーションすることができる。部屋の壁紙をゲームテーマに沿ったセットにしてみたり、ソファやテーブルといった家具を自分好みに配置したり、あるいはテレビやステレオといった家電製品を置くこともできる。

壁紙を自在に貼り替えることが可能
住居内には自由に家具を置くことができる。ゲーム内物理が働いているため、アバターがインタラクトすることも可能


 家具や家電製品はプリセットのモノが利用できるほか、こちらもゲームタイトルを購入してプレイしたりするきっかけで新しいものが追加されたりする。ステレオでは実際にPS3側に内蔵させたMP3音楽を演奏させたり、テレビにはMP4ムービーを再生して視聴できる。もちろん、この場合もシームレスに実行できる。額縁を壁に掛けて、メモリスティック内のJPG写真をインテリア的に飾るといったこともでき、実際のそのデモンストレーションが行なわれた。

額縁を導入。中身の映像は自前のモノが利用できる。今回のデモではGame3.0のスライドを表示していた


 この自分の部屋には、友達アバターを招待することもでき、部屋に設置したソファに座って会話を楽しむことも可能。現実世界で行なわれる社交行為は全て「Home」でも再現しようと言う心意気が感じられて感心させられる。興味深いのは、こうした家具は、物理シミュレーションがちゃんとリアルタイムに適用されているという点。そう、各アバターが部屋に置かれた家具にインタラクトすることができるのだ。

 実際に、ゲーム内に設置したソニー製液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」で映画の予告編ムービーを表示させたまま、階段から突き落とすというデモを行ない「Home内のソニー・ブラビアも、現実世界のブラビア同様壊れにくいんだ(笑)」というギャグが会場に爆笑を呼んだ。この爆笑はギャグそのものへの笑いというよりは、SNSに物理シミュレーションを持ち込んだテクノロジーのオーバーキルな使い方がゲーム開発者としての来場者達の琴線に触れたといった感じだろうか。

ブラビアを購入して設置 設置して映画の予告編を鑑賞してみる
ブラビアをあえて階段から落とす。物理シミュレーションに従って落下。こうした家具にも物理シミュレーションが効いている


 入手方法の詳細については触れられなかったが、おそらくアイテム課金的なシステムで入手可能になると思われる、より大きな居住スペース「Luxury Apartment」も紹介された。こちらは同じ居住ペースでも、複数階規模からなる広い豪邸となり、複数の他アバターを招待して、その庭やテラスでホームパーティを開催できる。オンラインゲーム内での誕生会や結婚式といったイベントの開催は今や珍しくないが、おそらく「Home」でもそうしたゲーム内ユーザーイベントが数多く開催されることになるのだろう。

Luxury Apartmentの様子 Luxury Apartmentで複数の友達を招待。ホームパーティ的な会合を開催することも可能


 住居やアバターのシステムには様々な機能拡張を行なっていく計画を明らかにしており、「各家でペットを飼えるようにしたい」(Harisson氏)と述べていたことから、そうしたことも将来的に行なえるようになるのかもしれない。


■ ポータルサイトを3D化して「Home」で見せる……という戦略

 居住スペースとは別に、各ユーザーには「Hall of Fame」と命名された、ゲームのプレイ遍歴を顧みられる部屋が与えられる。この部屋には、その時点までに各ユーザーがプレイした各ゲームの到達記録が、トロフィやポスターのような形で陳列される。例えばだが、エンディングまで到達したタイトルについてはそのゲームのボスキャラの彫像が飾られたり、レーシングゲームなどではベストラップのリプレイ映像がビデオウォールに貼り付けられたりする。もちろん、この部屋にも友人アバターを招待し、そうしたトロフィやゲームの到達記録などを肴にチャットすることもできる。「Hall of Fame」は、丁度、セーブデータ管理のシェルを、「Home」的なアプローチでインタラクティブな3Dシーンにまとめ上げた部屋といった感じだろうか。

Hall of Fameの様子
プレーヤーの実績が確認できる。友達アバターをここに招くこともできる


 この他、プレイステーション・プラットホームに賛同する各ゲームスタジオのオフィシャルプレイスポットの充実も計画されているという。これはイメージ的にはゲームスタジオや有名ゲームタイトルごとのポータルサイトを「Home」内で提供していこうという試み。現在、オフィシャルサイト、ポータルサイトといえばHTMLで書かれた2DベースなWebページ(ホームページ)だが、そうした情報ページを3D空間で表現して「Home」上に実装したプレイスペースとして提供していこうというわけだ。

スポーツをテーマにしたラウンジ 「EA」のロゴが見えるが、ここを選択すれば、EAのポータルサイトが「Home」で開くことになる


 ゲームスタジオ括り、ゲームタイトル括りだけでなく、ゲームテーマごとのポータルも考えられており、デモンストレーションでは、「スポーツ」がテーマのポータルスペースが示された。スポーツジム的なアスレチック複合施設の様相を呈したその空間では、各ゲームスタジオのスポーツゲームの広告や映像クリップが見られるだけでなく、3on3ミニバスケ、打ちっぱなしゴルフ、ボクササイズといったミニゲーム的なスポーツゲームも楽しめるようになっていた。

 これは、あくまで筆者の想像だが、レースゲームのポータルスペースであれば、近日発売されるレーシングゲームに登場する車種が見られたり、あるいは既発売ゲームにおけるスーパープレーヤーのベストラップの映像クリップが見られたり……といったものになるのだろう。「Home」は3D化したSNSなわけだが、どうせ3Dにしたのならば、Webサイトも3D化したら面白いのではないか……というような発想だ。

 「Home」は大規模βテストが2007年4月より実施され、本格サービス開始は世界同時に2007年秋と発表されていることから、日本での展開もあると見て間違いない。「Home」はPlaystation Networkから無償にて提供される予定で、ハードディスク上に保存され、PS3のホームメニュー画面のXMB(クロスメディアバー)上から随時実行が可能となっている。なお、「Home」上から「ゲーム内ゲーム」以外の別のゲームの起動も可能だとしており、「Home」内でインタラクトした任意のアバターと対戦ゲームをするための対戦ロビー/ゲームランチャーとしても活用できるとしている。Xbox 360と比較すると、どうしても弱かったオンラインゲームコミュニティの形成や、オンラインゲームプレイ支援のスタイルが、この「Home」の登場でやっと本格的なモノになってきた兆候を感じることができた。

【「Home」ムービー】
【下の画像をクリックするとダウンロードが始まります。】
【[WMV形式:32.1MB 2分31秒 ZIP圧縮]】



■ Game3.0、もう一つの形「Little Big Planet」

「LBP」においても、自キャラの外見をカスタマイズ可能。今回のデモでは同時4人プレイの様子が披露された
 Game3.0を具現化したもう一つのプロジェクトとして「Little Big Planet」(LBP)も紹介された。「LBP」は、一言でいえば、「What You See Is What You Get」(WYSIWYG)ならぬ「What You See Is What You Play」(WYSIWYP)を具現化したもの。ゲームステージメイキングとゲームプレイを同一フェーズでリアルタイム実行してしまうユニークなシステムを採用しており、言うなれば「作ったそばから遊べるゲーム制作ツール」という表現が一番的を射ていると思う。

 「LBP」のゲーム世界は、現実世界の家の裏庭のような世界。物理法則も働いている。この世界に自分の分身となる、小さな縫いぐるみのような自キャラが出現する。丁度このスケール感は「ピクミン」に近いイメージだ。

 自キャラは、このゲーム内世界に任意の障害物オブジェクトを配置したり、落書きをしたりして、ゲームステージを作り込んでいくことができる。煉瓦や木の板を重ね合わせて積み上げてドミノ倒しのような仕掛けを作ってみたり、歯車やバネ、板などを組み合わせて、工作感覚で簡単な機械仕掛けを構成してみたり、とアイディア次第で様々なトラップを作り込むことができる。

ステージ中の任意の位置にこうした仕掛けを作り出して配置ができる
サッカーボールを配置して、木を植えて、落書きもして……。こうしたステージ制作を2人同時プレイで実行することができる


 従来ゲームでよく見られる、スクリプト(トリガ)ベースのイベント駆動型の仕掛けも作れるが、それ以外に物理シミュレーションを根幹として、物理シミュレーションの結果として新しいゲーム展開になるという物理駆動なイベントを形成できるのが「LBP」の最大の特長。

積み重なった石煉瓦。そのままでは上れないので切り崩して斜面を作り出して登っていくことに


 ゲームステージは2次元的な縦ないしは横方向に展開していく作り込みが行なえ、ゲームプレイは配置された障害物にまつわる物理パズルをクリアしつつゴールを目指すという内容。例えば、標準ジャンプ能力では飛び越えられない立ち並んだ煉瓦ブロックに対して蜜柑をぶつけてドミノ倒しにしてから進んでいったり、天秤に鎖で繋がれた扉が自重で閉まっているとすると、その天秤の反対側の受け皿に扉より重い貝殻を載せて開けたり……といったようなゲームプレイが楽しめる。

全員で力を合わせて大きな貝殻を天秤に乗せて扉開閉の仕掛けを解除


 もちろん制作側が作り込んだゲームステージも多数提供されるはずだが、こうした仕掛け満載のステージをユーザー自身が、インタラクティブに楽しく作れるというのが「LBP」の面白さということになる。作り込んだステージは、「LBP」コミュニティのポータルサイトへアップロードすることができ、世界中の「LBP」ユーザーにプレイしてもらうことができる。計画上では、ユーザーメイドのステージはプレイ後に評価を受けることになり、プレイされた回数やその評価レーティングによりランキングされたりもする。「LBP」ユーザーは、プレーヤーをいかに楽しませられるかという部分で、他「LBP」ユーザーと競えることになり、非常にクリエイティブマインドが刺激される内容となっている。

 他プレーヤーと同時プレイも可能。逆に、他プレーヤーと手を繋いで背の低さをカバーしなければならない謎や、複数のプレーヤーで手分けして複数スイッチを入れなければならないトラップなどなど、協同プレイが必要になるステージを作り込むことも可能。物理シミュレーションが非常にゲームシステムに活かされている設計で、グラフィックスもグローバルイルミネーションを適用したような、かなりリアルな表現になっている。

 制作元は「Ragdoll Kunfu」というインディペンデント系のアマチュアゲームで名を馳せた開発者がソニーの支援を得て興した新興スタジオ、Media Molecule。デモ版のリリースは2007年秋を予定。ネットワークプレイやランキングシステムなどまでを実装したフルバージョンは2008年初頭のリリースを予定しているという。

【スクリーンショット】


【「Little Big Planet」ムービー】
【下の画像をクリックするとダウンロードが始まります。】
【[WMV形式:52.1MB 4分02秒 ZIP圧縮]】



■ Game3.0はPS3を成功に導けるのか?

 「LBP」は大変、ユニークなゲームであり、Game3.0コンセプトにマッチしたタイトルであることは間違いないのだが、技術的に凄い割にはゲームプレイで得られるカタルシスがあまり高くなさそうな点が気にかかる。ビジュアルやコンセプトは素晴らしかったものの、ゲーム性においてパンチ力が物足りなかった「LocoRoco」のような、「ゲーム開発者受けがよいタイトル」になってしまわないかがちょっと心配だ。「チャレンジング要素が地形トラップのみ」というのはやはりゲーム展開としては物足りない感じが否めず、最終的には敵キャラやボスキャラといったアクション要素や、やり込み要素を盛り込まないと「Game3.0」の要件を満たしていても「ゲーム」としてはもう1つ、ということになりかねない。

 「Home」も技術的には素晴らしいし、情報発信、情報取得、コミュニティ形成、ポータルサイト……といった今2DのWebでやっていることをPS3というハードウェアでリアルタイム3Dグラフィックスで行なってしまおうという発想はとんでもなく次世代的だが、これはゲームではないし、正直言って、PS3の購入動機にはなりにくい。むしろ「Home」は、既にPS3を購入したユーザーを他へ逃がさないタメのコンテンツ……という位置付けな気がする。

 「Wii」は新コントローラによるゲームプレイそのものの革新を目指し、「Xbox 360」は統合的なオンラインゲームプレイ環境の構築を実現し始めている。ソフトの充実度ではやや他の2プラットホームに劣るPS3としては、この「Game3.0」という新発想をスローガンにして、ゲームソフトの新しいスタイルやゲームとの新たな接し方を切り開いていき、「Game3.0体験はPS3でだけ」という実績を積み上げて巻き返しを図ろうと言う戦術自体に間違いはないと思う。やや厳しめな意見を述べてしまったが、今回の「Home」と「LBP」は、そのPS3というプラットフォームの進化の方向性を示す、その第1ステップ、序章であるということであれば、2007年以降のPS3のソフトウェアラインナップにはかなり期待が持てる。

 さて、それにしても、毎年、こうした基調講演では、日本スタジオの開発したタイトルがいくつか紹介されるものなのだが、今年は全く日本開発タイトルが紹介されなかった。PS3陣営がSCEA主導の人事に置き換わってから、PS3の欧米主導化現象が各方面で予測されていたが、それが今回現実味を帯びてきた格好だ。Game3.0もそうだが、それ以外の面でも、PS3陣営の展開は今年、2007年に大きく様変わりしそうだ。

この他、基調講演では、ヨーロッパで大人気を博したカラオケゲームソフト「Singstar」のPS3版のオンライン曲販売の仕組みや、自作プロモーションビデオをポータルへアップロードできる仕組みを紹介した


□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□プレイステーションのホームページ
http://www.playstation.jp/
□関連情報
【3月7日】サンフランシスコにてGame Developers Conference 2007が開催
史上最大規模での開催。任天堂とSCEのキーノートに期待
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070306/gdc2007.htm
【2006年3月22日】Game Developers Conference 2006がサンノゼにて開催
任天堂、SCEの基調講演と日本人セッションに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060322/gdc2006.htm
【2006年3月】Game Developers Conference 2006 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060324/gdclink.htm

(2007年3月9日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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