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Taipei Game Show 2007現地レポート

Gamania Digital Entertainment CEO Albert Liu氏インタビュー
カジュアルゲームの成功で完全復活。今年は自社タイトルで勝負

2月7日収録



 台湾取材では、毎年恒例となっているGamania Digital EntertainmentのCEO Albert Liu氏インタビュー。今年もGamaniaはTaipei Game Showには早々と不参加を決め、Gamania社内は、ショウの盛り上がりをよそに、年末スケジュールで慌ただしい雰囲気だった。旧正月直前のこの時期は、Albert氏も忘年会等に出席するためにほとんど台湾にいないとのことだったが、無理をいってインタビューに応じていただいた。

 昨年Gamaniaは、「メイプルストーリー」や「BnB」、「カートライダー」といったNEXONのカジュアルタイトルを中心に大きくシェアを伸ばし、台湾オンラインゲーム市場はGamaniaとSoftworldの2強時代という新たな局面を迎えている。両社のカラー違いは鮮明で、Gamaniaはカジュアルゲーム、SoftworldはMMORPGにそれぞれ強みを持つ。共通項は、いずれも基本プレイ無料のアイテム課金によって運営されており、自社開発タイトルに力を注いでいるというところだ。

 Albert氏には、Gamaniaの最新のビジネス動向を通じて、台湾オンラインゲーム市場の新たなトレンドや展望を語っていただいた。


■ 4年ぶりに黒字化を果たしたガマニア。2006年は名実共に復活の年に

Gamania CEOのAlbert Liu氏。ここ数年は「Lineage」以降のタイトルが伸び悩み、苦しい時期が続いた同社だが、2006年は4年ぶりの黒字化を果たし、会心の笑みを見せてくれた
Gamaniaの新たなドル箱タイトルである「メイプルストーリー」。日本に比べ、台湾の変化は急激だ
編: 2006年は東京ゲームショウに出展し、多くの台湾タイトルを出しました。Albertさんにとってどのような1年になりましたか。

Albert氏: ガマニアにとって特別な1年でした。この間TGSでお会いしたときにお話しましたが、ガマニアの運営モデルは新しいステージに突入しました。2002年から海外に進出し、2003年、2004年、2005年と市場シェアや売り上げは上がりましたが、利益は上がっていませんでした。2006年は初めて黒字転換し、利益が上がったという点で、特別な年になりました。額はそれほど大きいわけではありませんが、やっと納得できる感じになってきました。

編: 売り上げは2005年から比較してどのくらい大きくなったのでしょうか。

Albert氏: 2005年は30億台湾ドル、2006年は38億台湾ドルです。

編: 2005年にインタビューさせていただいたときには「メイプルストーリー」が人気だとおっしゃっていました。2006年人気のタイトルは何でしたか。

Albert氏: 2006年に新たなタイトルは出していませんが「メイプルストーリー」が非常に成長しました。正式サービスは2005年ですが、2006年に爆発的な成長を遂げました。

編: 「メイプルストーリー」は日本でも人気ですが、日本での人気の秘密は何だと考えていますか。

Albert氏: 理由はさまざまで、運営会社の力にもよるのではないでしょうか。台湾での運営を踏まえた見方で申しますと、台湾市場では3Dや2DのMMORPGは類似したものが氾濫しており、差別化が難しいのです。「メイプルストーリー」は特別な点がいくつかあります。まず視覚的に横スクロールでシンプルなデザインです。マップとマップが繋がり、世界が繋がっていきます。さらに「メイプルストーリー」はカジュアルさを重視しており、遊び方もMMORPGというよりはアドベンチャーゲームという感じで、ユーザーは非常に短期間でうまく遊べるようになります。新鮮、簡単の2つのキーワードで成功したのではないでしょうか。

編: 「メイプルストーリー」のユーザー数はどれくらいいるのでしょうか。

Albert氏: トータル会員は500万人です。同時接続は現在12万人で、最大で18万人です。

編: 1月あたりの客単価はいくらぐらいですか。

Albert氏: 400~500台湾ドル(約1,600~2,000円)の間です。新しいアイテムが出ると変動があります。最近はペット系アイテムが人気です。先日実装された頭髪にパーマをかけるアイテムも人気がありました。

編: 現在ガマニアで人気のタイトルを教えてください。

Albert氏: 「Lineage」、「メイプルストーリー」、「BnB」、「カートライダー」で、その他は少し落ちます。同時接続者数は、「カートライダー」と「BnB」が7、8万人で、「Lineage」、「メイプルストーリー」は10万人以上です。

編: 日本にもアイテム課金でのビジネスモデルが増えてきています。こうした変化をどのように感じていますか。

Albert氏: 台湾の去年の状態に近いと思います。アイテム課金はどうやって課金するか、どれくらいお金を払うかをユーザーに委ねるものです。ユーザーの決定権が大きく、自由で受け入れやすいと思います。しかも市場のベースを広げられます。ただし運営側にとっては運営の難易度が上がり、チャレンジングになっていきます。なぜなら運営がユーザーの納得するようなサービスを提供できなければ1元も取ることができないからです。これまでの月額のビジネスモデルでは、ユーザーに画一的にパッケージ料金と月額料金を押し付け、そのモデルでしか遊べませんでした。これは大きな違いです。

編: Gamaniaの決済手段はGASHですが、GASHを買うための手段にはどんな方法が用意されているのですか?

Albert氏: プリペイドカードです。

編: クレジットカードやケータイを利用した決済方式は無いのでしょうか?

Albert氏: ありません。ユーザーはコンビニでGASHカードを買ってチャージします。


■ 微妙に温度差が生まれつつある海外メーカーとの関係

言葉を選びながら海外メーカーとの新しい関係について説明するAlbert氏。Gamaniaは韓国大手のNEXON、NC Soft、Gravityの3社といずれも関係を持つ唯一の台湾メーカーだ
2007年の大型タイトルである「ラグナロクオンライン II」。台湾ユーザーにどう評価されるのか注目される
編: 昨年NEXONがガマニアの株式を15%獲得しましたね。

Albert氏: なぜその情報を知っているのでしょうか(笑)? 台湾の記者は誰一人気づいていません。びっくりしましたよ。でも、答えもちゃんと持っています(笑)。

 NEXONとガマニアの提携は2年が経過しました。お互いのパフォーマンスや印象に、お互いが満足しています。ガマニアにとっても長期的な戦略的パートナーが欲しいです。彼らも長期的なパートナーが欲しいですし、ガマニアとの関係を深くしたいと感じてそうした行動をとったのではないかと考えています。お互いにメリットのあるところです。

 皆さんが心配しているのはネクソングループになるのではないかと思うかもしれませんが、答えはノーです。今回の取引はお互いの提携関係を深めるためのもので、経営権に影響はありません。

編: ユーザーにとってどのような影響があるのでしょうか。

Albert氏: 特にありません。企業の戦略的関係だけです。NEXONの答えはNEXONに委ねますが、NEXONにとって良いタイトルがあればガマニアに任せたほうが有利です。確かにこのような株の取得は商品の取得についても影響があるかもしれませんね。

編: ガマニアは自社開発タイトルを着々と進行中です。韓国で展開する際のパブリッシャーはNEXONということになるわけでしょうか。

Albert氏: そういう契約では無いです。今年の夏頃に自社開発タイトルを台湾でサービスして、しっかりとサービスをしてから次のステップにいきたいと考えています。

編: その一方で、ガマニアはNC Taiwanの株をNCSoftに売却しましたね。

Albert氏: NCSoftさんとは昔からの付き合いです。1年ほど前に決められたNCグループの戦略の中で、海外展開する子会社の持ち株比率を過半数にしようというものがありました。昔から仲の良いパートナーで、親密な関係でしたが、その立場から見て向こうのグループの戦略のサポートをしたいと思いますし、しなければいけないと思いました。

 外部から見ると2つの会社の関係が悪化したのではないかと考える人もいるかもしれませんが、今回の「Lineage」の契約では1年契約だったものを3年契約で更新しました。関係が悪くなっているわけではないのです。今後も新しいタイトルをNC Taiwanを通じガマニアが提供することもあり得ます。

編: 現在提供している「GuildWars」と「Lineage 2」の運営はどこが行なっているのでしょうか。

Albert氏: 現在はNC Taiwanです。しかし、ガマニアは依然NC Taiwanの株式を15%持っていますので、台湾での情報の行き来はしています。NCSoftのトップのキム・テクジンさんは今回の件で台湾まで来られて記者会見を行ない、両社の関係が今後ますます親密になっていく旨の共同発表を行ないました。

編: 2006年末に韓国Gravityが「RO2」のクローズドβテストを行ないました。この動きをどう見ていますか。

Albert氏: スケジュール通りに進行しているので、楽観的に捉えています。今回はクローズドβの時から台湾の運営チームがテストに参加していますが、期待よりは良いと思います。これから「RO2」を担当するチームはとてもモチベーションが高いです。

編: 台湾でのβテストの予定はいつでしょうか。

Albert氏: 夏頃ではないでしょうか。まだ調整中です。準備期間もちゃんと欲しいですし、夏休みというタイミングも重視しています。何より台湾では5月、6月の売り上げが芳しくありませんからね。夏休みの後半に正式サービス開始予定です。

編: ビジネスモデルはどういったモデルを考えていますか。

Albert氏: このゲームが開発されたときに、月額でもアイテムでも選べるようにしました。台湾はまだ最終決定に至っていません。ハイブリッド型も検討しています。もっともユーザーの納得あってのことですが、ハイブリッド型が実現できれば面白いものになると思います。

編: 今の予測ではどれくらいのユーザー数を期待しているのでしょうか。

Albert氏: それは言えません(笑)。あまり高く言うとうちのチームのプレッシャーになるし、低く言ってもモチベーションが下がります。ただ1つ言えるのは期待度が非常に高いということだけです。

編: Sony Online Entertainmentとの合弁会社であるSOGAの、現在の状況を教えてください。

Albert氏: SOEがSOGAの株式を100%買い戻しました。「EverQuest2」の運営はアメリカに移管し、従来の役割は終わりましたが、今後は別の面で提携していきたいと考えています。SOGAは台湾で立ち上がったときからガマニアと一緒にやっていましたから。

編: あのビルの中にSOGAは無いのでしょうか。

Albert氏: 同じ場所にあります。設立当初ガマニアグループから派遣した人は現在でもSOGAで仕事をしています。


■ Gamaniaが制作するオリジナルタイトルの現状。中国展開は事業再編中

自社タイトルに自信を見せるAlbert氏。大ヒットは望まず、海外進出のきっかけにしたい考えのようだ
Gamaniaの自社開発タイトルのひとつ「Bright Shadow」。ゲーム性よりむしろアイテムモールに新しさがあるが、日本ではどのように展開されるのか注目したい
編: 自社タイトルがいくつかありますが、開発状況はいかがですか。

Albert氏: 現在最終的な準備段階に入っています。夏あたりに多くのユーザーに遊んでいただけるようになると思います。βテストも今年の上半期中にはしたいと思います。

編: 「仙魔道」は開発にずいぶん時間がかかっているように見えます。

Albert氏: 「仙魔道」をユーザーに発表したときにユーザーに悪い意味ではありませんが強烈なアドバイスを頂いて、その改善のために時間がかかりました。うちの初めてのMMORPGですのでガッカリさせたくはないのです。

編: 今回本社で「Bright Shadow」の最新開発バージョンを初めて見せていただきました。とてもかわいらしいゲームですが、どのような期待をお持ちですか。

Albert氏: 「Bright Shadow」と「仙魔道」はうちの初めてのMMORPGです。期待するのは同接が何万人といった数字ではなく、どんなユーザーがこのゲームに入ってもガマニアのゲーム開発に対する努力や熱意を感じていただけるように期待し、努力しています。

編: 今後自社開発タイトルが増えていきますが、海外展開に向けての抱負を聞かせてください。

Albert氏: ステップバイステップですね。台湾でサービスして、台湾でユーザーの意見をフィードバックして、ゲームを大きくしていきます。それによってシステムの安定性、内容、ローカルの意見を現地で見てゲームの中に取り入れていきます。最初に予定していたスケジュールからは遅れますが、各地のスケジュールを取り入れてから出したいと思っています。ユーザーをお待たせしてしまうのは申し訳なく思いますが、最初の作品をユーザーにまず気に入ってもらいたいという思いがあります。

編: 海外展開の基本方針として運営を行なうのは現地パブリッシャなのか、現地子会社なのかどちらなのでしょうか。

Albert氏: 子会社のある地域はすべて子会社が運営します。子会社の無い地域は検討中です。子会社の無い地域は他のパブリッシャに任せるか、ジョイントベンチャーでやりたいです。単純にコンテンツをパブリッシャに任せるだけでは品質をコントロールできません。

編: 中でも中国市場は、日本企業も苦戦しているエリアですが、Gamaniaの中国展開は現在どうなっていますか?

Albert氏: ガマニアの中国における事業を整理し、ガマニアの弱点を洗い出しています。現地の会社と比べて、弊社は課金チャネル、PRの文化、ユーザーの理解、というところでローカルの運営会社より弱いところではないかと思います。しかし我々にもチャンスはあると思います。台湾が開発した商品は、中国で開発されたものより繊細で創意性があります。ガマニアの各地の子会社からマーケットに対する意見、アイデアを統合し、それをゲームに反映できることが1つのアドバンテージではないかと思います。

 現在ガマニアでは中国で戦略的パートナーを探そうとしています。我々の商品の開発、運営とサービスにおけるアドバンテージを活用できるようにしたいのです。中国ではマーケティングやチャネルにノウハウを持つ戦略的パートナーが望ましいです。中国には名のある運営企業がありますがその中の1つが我々のパートナーとしてWin-Winの関係になれば良いなと思います。

編: 例えば盛大や9YOUといった大手との連動を考えているのでしょうか。

Albert氏: その他、網易、網龍など名だたる運営会社はたくさんありますね。すべて接触して情報交換をしていますが、話し合いだけでまだ決まっていません。

編: 日本を含む海外のゲーム市場では、俗に次世代機と呼ばれるPS3、Wii、Xbox 360といったコンシューマ機に注目が集まりました。

Albert氏: チャンスとも思いますし、危機だとも思います。現在世界中で展開されているオンラインゲームは基本的にPCプラットフォームで、家庭的なエンターテインメントという位置づけでの展開はなされていません。一方、PS3など次世代のコンシューマ機のメーカーは家庭のエンターテインメントという位置づけを取っています。しかも、考え方が明確です。ネットワーク機能もそろっています。

 今後は次世代ゲーム機がオンラインのコンテンツを欲しがってくると思います。だから私はチャンスだと思うのです。危機だと思う点では、彼らも開発規模やリソースでは大きなものを持っていることです。もし彼らが全部開発を自社でやってこれまでのオンラインゲーム会社のコンテンツはいらないという方針を取れば我々も突破すべき難関になります。しかし、ゲーム市場全体から見て良い方向に歩んでいるのではないかと思っています。どんな戦略と連携がお互いにとってプラスになるかどうか、皆さんの知恵によって作られていくのではないでしょうか。

編: 次世代機は遊んでみましたか。

Albert氏: 先日Wiiを遊びました。クールです(笑)。1日ずっと遊んでいたら次の日は右手が上がらなくなりました(笑)。PS3はいろいろな機能が強化され、PS2から衰えた部分はないと思います。個人的に任天堂さんのWiiは楽しさをコアにして、PS3は技術をコアにしている印象を受けました。コンテンツはさておき、ハードに対する個人的な感想です。


■ 2007年の東京ゲームショウへの出展を計画、台湾地震では香港エリアに損害が

文字通り爆発的に笑うAlbert氏。この笑顔が一種Gamaniaのカラーになっている部分がある。台湾でのオフラインイベントでもたびたびこの笑顔が見られるようだ
編: 昨年設立された遊戯産業振興会についてお伺いします。これはどういった活動を行っているのでしょうか。

Albert氏: 団体と政府のコミュニケーションを頻繁に行なっています。台湾のオンラインゲーム業界は日本と違って若い業界です。業界のことをもっと政府に理解してもらい、社会に評価されるように政府からもサポートしてもらえるように働きかけています。

編: 今年の東京ゲームショウの日程が1日増えて国際トレードショウとしての側面が強まります。今年も出展するのでしょうか。

Albert氏: 現段階では東京ゲームショウにだけ出展するつもりです。

編: 今年はE3もかつての形式ではなくなります。ゲームショウビジネスをどのようにお考えですか。

Albert氏: E3は確かに規模が縮小されます。E3の将来はネガティブに見ています。東京ゲームショウは期待と不安が両方あります。ゲームと関連するコンテンツが入ることによって、他の分野からもゲームに興味のあるユーザーひきつけられるのではないかと期待しています。しかし、他のコンテンツも同時に出展されることによってゲームショウとしてのフォーカスがぼやけてしまうのではないかとも思います。新しいスタイルの演出の仕方が試せると思います。

編: ガマニアの2007年の事業戦略をお聞かせください。

Albert氏: 今年は自社製タイトルで勝負します。大量の会員数を獲得するのではなく、ある程度の成績を各国で取れて、しかもユーザーの満足を各国で得られるようにすることです。

編: 昨年、コミュニティプラットフォーム構想についてコメントし、詳細は来年話そうということになっていました。覚えていますか?

Albert氏: 今日の質問の中で最もドキッとした質問です。昨年確かに今年の2月には教えられるよと言いましたが、まだ話せないことになりました。今年の東京ゲームショウのときにでも話しましょう(笑)。開発が4カ月ほど遅れています。教えたくないのではなく、遅れているのです。他のオンラインゲーム会社でもそのようなものを作っていると思います。早く出してしまうとまねされてしまうので、ギリギリまで申し上げられません。

編: 台湾地震がありましたが、ガマニアではどのような影響があったのでしょうか。

Albert氏: 重大な影響がありました。台湾と香港の間の海底ケーブルが7つ切られました。台湾の中の回線が非常に混んでいて、島の外との連絡が断たれるなどしました。売り上げにも影響がありました。

編: 損害額はどれほどあったのでしょうか。

Albert氏: 把握しきれないですね。台湾での売り上げはあまり影響しませんでしたが、香港では地震の影響で売上高の20%ほどの損害がありました。使える回線が狭くなったため、ゲームに入れる人が少なくなってしまった影響です。

編: 台湾のRMTは現在どのような状況でしょうか。日本では社会問題化してきました。

Albert氏: 社会問題化している点では同じですが、最近はお互い納得できる結果になることが多くなりました。アイテム課金が増えて、アイテムをパブリッシング側が提供するものなのでRMTを利用する割合は下がってきています。しかし、無くなりはしないと思います。例えば2人のユーザーが外で取引をしてそこでトラブルになる、これはよくないことだと思います。取引自体が問題ではなくて、取引の過程において問題が起きることがある。そこを解決すべきではないかと思います。

編: トレード自体は問題ではないだろうと。

Albert氏: 交換したいという希望については第三者から見て制限する意味はないと思います。それが仕事になってしまったり、他の人のIDをとったり、パソコンをハッキングするなどは好ましくありません。私が携帯電話を申し込んで09-00000といった連番の番号で、良い番号だったとします。他の人にこの番号を売るのは問題ないのではないでしょうか。単なる取引であって犯罪ではない。これによって犯罪行為に結びつく可能性があるから問題であり、ルールが必要なのです。

編: それなら自社でやるのがもっともスマートではないかと思いますが。

Albert氏: 個人的な考えですが、会社としてどのようにルールを作っていくかはみんなの意見をまとめなければなりません。私個人としては、RMTが罪ではないと思っていますし、全体的に規範やルールがあったほうがいいと思っている。いえるのはこれだけです。


■ 最大のライバルはSoftworld。「『黄易 Online』は100点をあげたい」

何度も頷きつつSoftworldの「黄易 Online」を絶賛するAlbert氏。長けたセグメントで勝負し、市場全体の底上げを狙う。Albert氏のスタンスは非常に明快だ
CEOと開発本部長で評価が正反対の「黄易 Online」。賛否両論はあるが、台湾でもっとも人気の高いMMORPGであることは間違いない
「黄易 Online」のゲーム画面。このブリキ風ロボットは、なんと自動的に採集活動を行なってくれるメーカー公認の有料BOT。台湾のユーザーはこの道を選択したということだ
振り返ってみると、Albert Liu CEOとのインタビューも今回で5年目。台湾ウォッチャーとしてどこまで続けられるかチャレンジしていきたい
編: 台湾ゲーム市場全体について教えてください。2007年の台湾ゲーム市場はどのように変化していくと予測していますか?

Albert氏: ガマニアとSoftworldの2強が戦う構図がより明確化してきます。台湾産タイトルのサービスは市場最多の年になるでしょう。中国製のタイトルも大きくなると思います。革新的な運営モデルも出てきて、これが肝になると思います。我々にとってもSoftworldにとってもです。

編: 意識しているメーカーはやはりSoftworldでしょうか?

Albert氏: 意識している会社はSoftworldです。中でも「黄易 Online」は我々が予想していた以上に素晴らしい内容で、ライバルタイトルながら100点をあげたいです。1タイトルに絞りたくないのですが、「黄易」などSoftworldが出すすべての商品は気になります。おそらく彼らもガマニアの商品が気になっていると思います。

編: 台湾に来て、いろんな方とお話すると全員が「黄易」を口にし、絶賛することに驚いています。人気の秘密はなんだと思いますか?

Albert氏: 「黄易」は人の名前です。中国武侠系のタイトルで、SF小説が原作です。とにかくストーリー性がすごい。時空を行き来します。この15分間は中国の秦の始皇帝の時代、15分後は現代といった世界です。ユーザーに想像を膨らませます。元々小説でしたので、しっかりとしたストーリー性をゲームに反映すると非常に面白いです。

編: そうした優良タイトルに対して、ガマニアはどう対抗していくのでしょうか。

Albert氏: 我々のポリシーとしては他社と同じことをしたくありません。「黄易」の成功後は、彼らが獲得したセグメントをしっかり管理していってもらいたいと思います。ガマニアにとっていま一番ホットな商品は「カートライダー」ですね。かなりのリソースを投じました。お互いに長けているマーケットを攻めることで、どんどん市場を広げていくべきだと考えています。

 本当の戦い、本当の勝負はいかに自分のユーザーを満足させ、自分のゲームに戻ってきていただけるかです。同じゲーム会社が出したゲームをまた遊びたいという期待感を持たせるか、そこが勝負ではないでしょうか。私から見て我々の戦略は正しい道を歩いていると思います。先ほどCOOのWilliamから報告を受けたばかりですが、ガマニアの1日のトータルユニークユーザー数が初めて100万人を突破したとのことです。日ごとのアクティブでその数字ですので、トータルのアクティブ会員は300万人くらいではないかと思います。

編: 最近では日本でもオンラインゲームの開発力が整ってきて、海外で展開されるケースが増えてきました。この動きをどう捉えますか。

Albert氏: ポジティブに捉えています。日本の名だたるゲーム会社がオンラインゲームを開発しているのを見て、日本のオンラインゲームの商品は今後の世界のオンラインゲームの重要な供給源になるのではないでしょうか。日本の会社はこれまでは慎重だったと思います。日本の会社はまずは日本の市場に展開します。これまではオンラインゲームにリソースを投じることが遅れていました。日本の開発力、リソースが本気になって展開すれば本当に手強いです。日本の開発会社さんとは頻繁にコンタクトを取っています。お互いに何をしているか情報を持っておきたいです。

編: 基本戦略としてはそうした開発会社と手を組み、日本産のタイトルを台湾でサービスすることも考えているのでしょうか。

Albert氏: もちろんです。

編: 最近日本で登場したタイトルでどういったタイトルに期待していますか。

Albert氏: それは契約的に申し上げるのは難しいですね(笑)。

編: 私が代弁しますと、最近だと「三國志 Online」、「アミーゴ・アミーガ」、「コンチェルトゲート」、「ファミスタオンライン」などといった国産タイトルが生まれています。気に入ったタイトルがあれば教えてください。

Albert氏: 個人的な好みを言ってしまうと、「三國志 Online」です。コーエーの「三國志」を小さいときから遊んで大人になりましたからね。しかし、ビジネスとして考えた場合は、全面的に見る必要があります。僕の一存だけでは決められません。

編: 日本に向けて自社開発タイトルが複数出てきますが、抱負を聞かせてください。

Albert氏: 日本だけではなく各地のユーザーの満足を得られるようにしたいです。コンテンツを遊んでいただいたユーザーが他のユーザーにも面白さを伝えてもらえるようなものにしていきたいです。「EQ2」はコアな印象がありますが、ユーザーにとってはしっかりとコンテンツが確立されていて魅力的なタイトルです。

編: 私は世界的な水準で見て、日本のゲーマーの要求水準は非常に高いと思います。これをどう克服していくのでしょうか。

Albert氏: 日本のユーザーの目が肥えていることは確かだと思います。我々としてはしっかりしたものを作っていくだけです。

編: 最後に日本のユーザーに一言お願いします。

Albert氏: 日本市場に入ることにより、ガマニアのゲームを好きになって欲しいし、頂いた意見をどんどんゲームに反映させていきたいと思います。そしてガマニアのユーザーに満足していただければと思います。

編: ありがとうございました。

□Gamania Digital Entertainmentのホームページ
http://www.gamania.com/
□関連情報
【2月12日】Gamania集団研発長室研発長Alan Kuo氏インタビュー
カジュアルゲームの成功で勢いに乗る同社の新たなコンテンツ戦略
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070212/tgs_alan.htm
【2月11日】Gamania、3本の新作オリジナルタイトルレポート
アイテムモールに工夫のある「Bright Shadow」、そして「富貴達人」、「仙魔道」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070211/gamania.htm
【2006年9月29日】ガマニアCEO Albert Liu氏特別インタビュー
「RO II」獲得の経緯、日本展開の今後の方針などについて聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060929/tgs_gama.htm
【2006年2月18日】Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
カジュアルゲームに意欲、RMTは付加価値として検討
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060218/gamaceo.htm
【2005年2月26日】Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
2005年は自社タイトルの充実と、海外事業の拡充の年
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050226/tgs_alb.htm

(2007年2月13日)

[Reported by 中村聖司]



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