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東京ゲームショウ2006レポート

ガマニアCEO Albert Liu氏特別インタビュー
「RO II」獲得の経緯、日本展開の今後の方針などについて聞く

9月22日~24日開催(22日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ



 ガマニアデジタルエンターテインメントは、東京ゲームショウに4年ぶりのカムバックを果たした。規模は縮小化されたが、出展することそのものが目的だった4年前と異なり、今年は日本の主要オンラインゲームパブリッシャーの一社として、「仙魔道」、「Bright Shadow」、「ネット de すごろく す~ぱぁ★リッチ」(旧称:「富貴達人」)といった新作の自社開発タイトルを中心に堂々の出展を果たした。

 台湾と日本の代表を兼務するCEOのAlbert Liu氏も来日し、TGS期間中、台湾メディアに向けてTGSへの出展をアピールしたり、国内各誌とのインタビューを行なうなど、日本に子会社を置くメリットを最大限に活かした活動を行なっていた。

 Albert Liu氏とのインタビューは、2003年以来、台湾取材のたびに年1回ペースで行なってきたが、日本で行なうのは今回が初めてだ。2006年2月以降の台湾本社での動向もふまえつつ、東京ゲームショウ出展の経緯と、今後の戦略について話を伺ってみた。


■ 東京ゲームショウ出展の経緯と台湾Gamaniaのビジネスについて

相変わらず元気な姿を見せてくれたガマニアデジタルエンターテインメントCEO Albert Liu氏
ガマニアデジタルエンターテインメントCOO 浅井清氏
編: 日本でお会いするのはガマニア創業以来ですね。東京ゲームショウでは初めてお会いしました。

Albert: いつも台湾でお会いしますね。日本には3カ月に1回くらいは来ています。TGSには毎年訪れていますよ。

編: 今年のTGSはいかがですか。

Albert: オンラインゲームが元気ですね。忙しくてまだPS3などは見られてないですが。

編: 東京ゲームショウは2002年以来、4年ぶりの出展となりますが、出展の目的を教えてください。

Albert: ガマニアがここ何年か日本でオンラインゲームサービスを提供して、ユーザーさんとのコミュニケーションから頂いたご要望や、私たちのユーザーさんへの理解に基づいて開発した商品をはじめて公にできる機会だと捉えています。今回日本はもちろんですが、とりわけアジア地域へのアピールの場所として考えています。ガマニアは国際的なショーにはTGSにしか出展しないことに決めました。

編: 今年のTaipei Game ShowやChina Joyに出展しなかったのは、TGSに出展するためだったのでしょうか。

Albert: そのとおりです。

編: なぜTGSを重視するのでしょうか?

Albert: 世界のゲーム関係者が一番多く集まるのがTGSではないかと思っています。ゲームを公開する場としても、会場としてもパーフェクトな場所だと思います。来年からアニメとも同時に出展されると聞きましたが、それは残念です。E3も来年から縮小されますよね。TGSはゲームのフェスティバルですので、やはりゲームのカラーを明確に打ち出せるフェスティバルにして欲しいです。他のコンテンツが入ってくることによりゲームがぼやけてしまうのではないかと懸念しています。

編: TGSはアジアのみならず、欧米のメディアも数多く訪れます。そろそろ北米や欧州も視野に入れてきたということでしょうか。

Albert: 今はまったくそのつもりはありません。アジアのマーケットに専念したいです。具体的には日本、韓国、台湾、中国、香港です。これがファーストステップです。次が東南アジアです。

編: 今回のTGSを通じて、Albertさんが日本のユーザーに呼びかけることはあるのでしょうか。

Albert: イベントとしては用意していませんが、一緒にゲームをプレイしながらユーザーに訴えかけたいと思います。

浅井氏: 今年はステージイベントにはあまり力入れていないのです。あくまでゲームコンテンツを見ていただくことがメインになっています。

編: 2月に台湾の本社でインタビューさせて頂きました。あれからガマニアのビジネスはどのような進展がありましたか?

Albert: 実は2月に来て頂いたころに大きな転換がありました。中村さんが来た時に、我々のコンテンツの状況について話しましたよね、あの時は「メイプルストーリー」が成長しはじめる段階でした。ちょうど2月から成長し始めて、今は「Lineage」と同じ規模のコンテンツに成長しました。これがこの半年の一番大きな変化です。それぞれ月間売り上げが1億台湾ドル(約350億円)です。面白いのは「Lineage」の売り上げは落ちていません。これを維持しつつ、「メイプルストーリー」が上がってきたのです。ガマニアは「メイプルストーリー」を通じて新たなユーザー層を開拓できたのだと思っています。

編: それはどういったユーザー層なのでしょうか。

Albert: 既存のユーザー層よりもっと年齢の低い、小学生と中学生の間の層です。

編: 「メイプルストーリー」の客単価を教えてください。

Albert: 500台湾ドル(1,750円)ほどです。

編: 登録会員数、同時接続者は何人でしょうか。

Albert: 登録会員数は100万ちょっとですが、あまり気にしたことはないです。重要なのはアクティブユーザーで、こちらはおよそ70万人います。同時接続者数は13万人です。「Lineage」と「メイプルストーリー」この2大タイトルが収益の中心となっています。

編: しかし、今回の出展に関しては自社開発タイトルばかりを発表されました。

Albert: 自社製タイトルでありながらも、規模が大きいものと小さいものがあります。初めて大規模な自社タイトルを運営することになるのですが、売り上げ的には私にプレッシャーを与えていません(笑)。最も大きなプレッシャーなのは利用していただくユーザーの満足度です。10人が遊んでも10人から100点を貰いたいです。商品に「完璧」はありませんが、我々の運営姿勢、開発姿勢にはユーザーから満点を貰いたいです。その10人を満足させられれば、最初は少なくても11人、12人とどんどん増えていくと思います。

編: なるほど。ガマニアはこれまで他社タイトルのパブリッシングが主な事業でしたが、今後は自社開発タイトルをメインにする考えはあるのでしょうか?

Albert: 私たちはサービスプロバイダーですから、自社か他社か、それを意識してサービスをわけることはしません。楽しいサービスをユーザーさんに提供することが使命です。それが自社開発であっても、パブリッシングしているものであってもユーザーから見れば、ガマニアが提供しているものとして一緒なのです。自社開発のタイトルについては、ユーザーさんからの意見を迅速に反映することができると思いますので、その点ではメリットだと思います。

編: パブリッシングタイトルとしては、最近の大きなトピックとしてはGravityから「ラグナロクオンライン II」を獲得しましたね。

Albert: ハハハ。情報が早いですね(笑)。

編: 来年2月に聞くつもりだったんですが(笑)、個人的には今年のガマニア最大のトピックと言えると思います。獲得した理由を教えてください。

Albert: 「RO II」は、台湾のゲームユーザーにとって期待度の高いタイトルです。ビジネス的に考えてもユーザーの期待に応えられる多様なゲームを獲得したいと考えていました。今年台湾のガマニアのオンラインゲーム市場のシェアは50%を超えています。来年は70%が目標です。目標を達成するためには多様性のあるゲームが我々には必要だという考えからです。

編: 2月の台湾取材ではSoft Worldにも訪問しましたが、「World of Warcraft」が大ヒットし、やはりシェアは5割を超えるという話でした。両社を足すと軽く100%を超えそうなんですが(笑)

Albert: ハハハ。実は台湾ではガマニアとSoft Worldの2強が戦っている状況です。第3位は結構離れています。

編: 2月の時点では客観的に見てSoft Worldが優勢でしたが、「メイプルストーリー」で追いつき、「RO 2」で逆転するということでしょうか。

Albert: ハハハ。戦略的な考えではそうです。しかしそれは中村さんの見方ですので、私は何も言っていませんよ(笑)。

編: TGSでSoft Worldの方に会って少し話しましたが、「RO 2」は是非取りたかったそうです。しかし契約金が非常に高額であきらめたとのことでした。

Albert: 全体的なシミュレーションや投資の回収率を精査しました。その結果、同時接続者数を2万人から3万人ほど獲得できれば、収支のバランスを取ることは可能だと判断しました。そして、我々はこの数が実現可能だと判断したわけです。シミュレーションは月額課金とアイテム課金の両方で採っています。

編: ガマニアとしては「Lineage」に勝るとも劣らない過去最大級のタイトルになりますが、どのような運営を行なっていくのでしょうか?

Albert: 確かに「RO 2」は来年のガマニアの重要なコンテンツです。まだ、具体的な運営方針が決まっているわけではありませんが、確実に言えることは大きなリソースを投じて慎重に運営を行なっていくつもりです。

編: 日本ではスクウェア・エニックスが「Ever Quest II」の自社運営を諦めるというニュースがありました。台湾での状況を教えてください。

Albert: まったく同じ状況です。「EQ 2」をやめたことはSOEと何回もコミュニケーションをとって決めたことですが、今でもSOEとは良い関係です。また合弁会社であるSOGAとの関係はフレンドリーな関係ではありますが、資本的な話は色々としています。

編: SOEとの合弁会社であるSOGAは今後どうなるのでしょうか?

Albert: 個人的にはSOGAを設立した目的は「EQ 2」のアジアでの運営をサポートする役割です。しかし、台湾では運営を止めたので、役割の再調整は必要だと思います。具体的にどう調整するかは話し合いの真っ最中ですので詳しくは話せません。

編: 今度発表される「EQ 2」のアドベンチャーパックは台湾のスタジオで開発されたと聞きました。

Albert: 開発を行なったのは事実ですが、台湾では運営を止めたので、リリースされることはありません。


■ 日本法人の今後の展開について

笑顔を絶やさないAlbert氏だが、自社に対する発言は意外とシビアな見方をしている
編: 日本のガマニアの代表としてお話を伺いたいのですが、台湾では2大タイトルを中心に堅調なビジネスを展開していますが、日本はいかがでしょうか。

Albert: 日本の運営状況はここ数年ずっと成長し続けています。毎年前年の100%の成長を遂げています。昨年は270%の成長を遂げました。我々が日本で持っているコンテンツにAクラスのものはありませんが、我々の運営チームはAクラスのクオリティでユーザーさんに接していると思います。その積み重ねでユーザーさんへの満足、市場理解は高まっていくと思います。今後、Aクラスのサービスを提供するときにAクラスの会社になると思います。特に「ホーリービースト」や「飛天 online」は非常に日本ユーザー向けのタイトルになっていますので、ユーザーさんにも受け入れてもらえると思います。

編: 今回出展されているタイトルの中で、Aクラスのタイトルはどれですか?

浅井氏: 全部です。全部(笑)。

Albert: 私共の「ホーリービースト」や「飛天online」は私の子供たちのようなものですから精一杯サービスしたいと思っています。でもマーケットから見てAクラスかどうかは別の話です。同時接続者数ではAクラスにはなれないかもしれません。我々が目標としているのは、日本で韓国のものでなくてもAクラスのタイトルを作ることです。今は「ホーリービースト」はプレオープンβ中ですので、次にRPGで出すのは「Bright Shadow」です。このタイトルは実は開発初期から日本の開発スタッフから意見を取り入れました。特に韓国からの意見、日本からの意見を入れた開発になっています。本当にマーケットから見てもAクラスのコンテンツが出てくるように努力していきたいと思います。

編: 昨年の270%成長の原動力は何でしょうか。

Albert: 日本の運営チームはユーザーさんへの理解、運営の柔軟性がすごく高いです。それが原動力だと思います。成長の一番の要因ではないでしょうか。

編: 現在の主要なビジネスは何になるのでしょうか?。

Albert: 単純にゲームの運営だけです。「飛天online」、「巨商伝」、「エターナルカオス」の3タイトルで、それぞれ同じくらいの成功を収めています。規模としては同接でそれぞれ数千ぐらいです。

浅井氏: 弊社の場合、アイテム課金の貢献が大きく、2004年に「巨商伝」をアイテム課金でスタートして、2005年に「エターナルカオス」をアイテム課金にシフトしました。しかし、私たちはアイテム課金を重視したというより、ユーザーさんのニーズに合ったフレキシブルなサービスモデルにできたのかなと考えています。

編: 収益の中心になったのはアイテム課金のMMORPGということですが、その傾向は今後も続くのでしょうか?

浅井氏: ガマニアジャパンはいち早くアイテム課金モデルを採用しましたが、あくまでユーザーさんに楽しんでいたく課金モデルを追求していますので、その中でアイテム課金が軸になっていくと思います。

編: 客単価はいくらぐらいでしょうか。

浅井氏: 平均だと5,000円~6,000円です。高いタイトルだと月1万円近くいっているものもあります。

編: 今後の展開についてはいかがでしょうか?

浅井氏: 今後展開される「す~ぱぁ★リッチ」に関しては、アイテム課金というよりも、1プレイいくらという従量制を予定しています。正確にはあらかじめゲーム内マネーを買っていただいて、ユーザーさんにはそれを消費して遊んでいただく形になります。勝ったユーザーは他のプレーヤーが賭けた分を取ることができるので、無料でプレイし続けられる。そういったビジネスモデルを考えています。ですから、すべてがすべてアイテム課金ではないです。基本的には基本無料で敷居を低くし、多くのユーザーさんに遊んで頂ければと思います。

編: 日本でゲームポータルビジネスがより一層盛んになってきています。ガマニアではポータルビジネスを何かお考えでしょうか。

Albert: 今は特にその予定はないです。ゲームポータルの運営とゲームをサービスすることは違うものです。ゲームポータルの運営は別のプロフェッショナルの知識やスキルが必要です。日本のガマニアはゲームのサービスに専念するべきです。そのためにより多くのリソースを投入していきたいと思います。ゲームポータルがどんどん出てくることは理解していますし、それに関して嬉しいと思います。私たちのコンテンツを提供することによりそれぞれのゲームポータルの充実に寄与できればと考えています。

編: 日本でも変わらないのでしょうか。日本は、ポータルビジネスを展開しているように見えます。

浅井氏: よくそういう風に言われるのですが、ガマニアジャパンでは課金プラットフォームという言い方をしていまして、ゲームポータルとは違う認識です。課金の部分を通じてオンラインゲームのユーザーさんを囲っているわけではないのですが、GASHを通じて様々なゲームのユーザーさんを融合させていく概念です。ですから、他のポータルさんと組むことも十分に考えています。

編: 確かに現状では課金プラットフォームという側面が強いですね。その反面、エンドユーザーからはコミュニティが弱いという話を聞きます。

Albert: オンラインゲームパブリッシャーの経営イコールゲームポータルではないと思います。ガマニアのコミュニティ、たとえばここにプラットフォームはありますが、ここにコミュニティはないです。私たちの問題はどうやってここを経営するかです。実は戦略として用意しています。来年2月に取材するときにお話できると思います。今はトップシークレットです(笑)。

編: コミュニティが弱いという部分について日本ではどのように考えていますか。

浅井氏: MMORPG自体がコミュニティという要素が含まれているサービスなので、そこにコミュニティが確実にできているとは思います。もっとも、コミュニティにはもうひとつ意味があると思うのですが、ゲーム外のコミュニティに関しては、Albertが言ったことと重複しますが、ガマニア本社で準備を進めており、最終的には日本でも取り込んでいくことになると思います。

編: つまり、現在台湾本社で開発しているものを日本でも取り入れていくのでしょうか。

浅井氏: そうですね。その可能性は十分にあります。いずれにしてもコミュニティサービスとしてのゲームポータルを今からガマニアが立ち上げようとは考えていないです。それより今のマーケットのタイミングは競争が激しくなっていながらも拡大している時期だと捉えています。そういう時期であればあるほど、ポータルとしてユーザーを囲い込んでいくよりも、より良質なコンテンツをいかにきちんとした形でユーザーさんに届けていくかだと思います。どちらかにフォーカスしなければ全部やろうとするのは無理だと思います。ガマニアジャパンは1つのコンテンツのサービスを、今年から来年にかけて新規のタイトルを投入しながら力を入れていこうという考え方です。

Albert: 私も同じ気持ちです。

編: 新しいコミュニティサービスは、Webを使ったサービスが主体となっていますが、ガマニアで提供されるサービスはどのようなものになるのでしょうか。

Albert: Webではありません。アプリケーションの形になるかと思います。

編: ビジネスモデルはどうなるのでしょうか。

Albert: 今お話するのはちょっと難しいですね。勘弁してください(笑)。

編: 最後にユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。

Albert: ガマニアグループにとって日本市場は最も重要なマーケットです。4年前に日本に進出してから今日までこの戦略は変わったことがありません。日本のユーザーに楽しんでもらいたいし、認めてもらいたいです。それまで努力していきたいと思います。もっともっと努力して楽しさを日本のユーザーに提供したいと思います。Aクラスのサービス会社になりたいと思います。

編: がんばってください。ありがとうございました。

□ガマニアのホームページ
http://www.gamania.co.jp/
□関連情報
【2月18日】Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
カジュアルゲームに意欲、RMTは付加価値として検討
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060218/gamaceo.htm
【9月24日】ガマニアブースレポート オリジナルタイトルを強くアピール
日台のスタッフの協力により新しいゲームを生み出す
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060924/gamania.htm
【9月21日】オンラインゲームファーストインプレッション「ホーリービースト」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060921/holyb.htm
【3月17日】ガマニア、「新作プレスカンファレンス」を開催
「飛天online」ほか、4本の新作オンラインタイトルを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060317/gamania.htm

(2006年9月29日)

[Reported by 中村聖司]



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