|
Taipei Game Show 2005現地レポート
Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー |
会場:遠東世紀廣場A棟
台湾取材における毎年恒例の取材先となっているGamania CEO Albert Liu氏。新年早々、台湾プレスに「EQ II 東方版」を公開し、一方、大手としては異例なことにTaipei Game Showをグループ全体で見送るなど、実務、政治の両面で活発な活動を行なっている。Albert氏に対するインタビューも今年で3回目になる。
今年は本社のCEO室に通され、待つこと5分。大柄な体を俊敏に動かし、大急ぎの体で表れたAlbert氏は、こちらを確認するやいなや、がっしり手を握って「よく来てくれた。1年に1度しか会わないのに、すっかり親友になった気がする」と、中国式の挨拶で迎えてくれた。
常に自分のペースを崩さず、想定外のパフォーマンスで、相手を自分のペースに引き込むのは、Albert氏が得意中の得意とするところで、インタビュー中もCEO室の棚に飾ったドラえもんグッズやスポーン、ガンダムのフィギュアといった“小道具ネタ”が次々と飛び出し、また内容的にも興味の尽きないインタビューとなった。
CEOのコレクション一覧。机の後ろに飾られているドラえもんは、誕生日が同じ(9月3日)ことから熱心に集め出したという。横の棚に飾られているフィギュアはスポーンとガンダム。現地の友人に買って送ってもらうのだという |
■ 「リネージュ」、「リネージュII」、「シールオンライン」の3本柱が好調
とにかくよく笑う。人を楽しませ、そして自分も楽しむことが何よりも好きなのだという |
Albert: Gamaniaにとって2004年は刺激的な年だった。台湾の市場だけみればそんなに大きな変化はなかったが、中国の市場にかなり大きな変化があった。中国の会社は大きくなり、どんどん能力も伸びてきている。韓国の「リネージュII」は韓国国内だけではなく、台湾や日本市場も大きな影響を受けた。日本のオンラインゲーム市場もだんだん層が厚くなってきている。
編: Gamania全体としては規模は拡大傾向だと?
Albert: Gamania全体では30%。そのうち日本では200%、香港では300%の成長を達成した。中国ではまだ競争が激しく、成長というレベルには至っていない。ただし、全体的にいえばGamaniaグループは2004年で大きな成長ができたという実感がある。
編: 昨年は、「パンヤ」や「シールオンライン」といったタイトルのパブリッシングも始めたようですが、こちらの調子はどうでしょうか?
Albert: どちらも大変いい成績を上げている。「パンヤ」は有効会員3~4万人、「シールオンライン」は10数万のユーザーを獲得している。これらのタイトルのおかげで去年下半期、台湾の市場調査会社によればGamaniaの台湾での市場占有率が6割を占めたという報告を受けた。
編: 以前お伺いしたときには「9割だ」とおっしゃっていましたが、シェアが落ちたというのはやはりSoft-Worldなどのライバル他社の市場占有率が上がってきたということでしょうか?
Albert: そうだ。一番ひどい時には5割以下になったこともあった。9割というのは一昨年の資料だ。これからは6割くらいで維持していけると考えている。
編: Soft-Worldは、「信長の野望Online」を台湾で展開したり、日本のメーカーと提携して自社開発タイトルの進出を狙ったりと、日本での活動が活発化してきています。台湾のトップシェアタイトルも昨年から「ラグナロクオンライン」になったと伺いました。このSoft-Worldの急成長についてどのようにお考えでしょうか?
Albert: Soft-Worldの成長に関しては我々としても真剣に受け止めている。Gamaniaとしては、これからはパブリッシングだけでなく、オリジナルタイトルの展開も考えている。オリジナルタイトルは台湾だけではなく、日本、中国、韓国のユーザーの要望を満たすような品質を持った作品にしていくつもりだ。すこし時間はかかるが、日本や韓国のようなクオリティにこだわりを持ったユーザーにも満足してもらえる作品を作っていきたい。
Soft-Worldは中国地域のユーザーの要望に応えた作品を作っているが、クオリティという点からみれば私達の方がより高い作品を作れると確信している。日本や韓国に対してはこれからのオリジナルタイトルを投入していくので、今後の展開に関しては比較的楽観的なビジョンを持っている。これから私達は他社と比べても絶対にいいタイトルを出していけると自負している。
編: 昨年リリースした「リネージュII」の状況はいかがですか?
Albert: 同時アクセスは7万人、有効会員数は20~25万人とまずまずの成績だ。ただ、この数字には満足しておらず、もっといい数字が出せると思っている。目標としては同時アクセスで10万人以上を狙っている。
編: ちなみに「リネージュI」の方の状況はいかがでしょうか?
Albert: 「リネージュI」は「リネージュII」をリリースしてからさらに成長した。現在の同時アクセスは14万から15万。この数字は最盛期から少し落ちたが、これは「リネージュII」が影響したのではなくて、「リネージュI」のバージョンアップがしばらく行なわれなかったのが原因だ。長期的にみれば順調な成長を見込んでいる。
編: とすると現状、Gamaniaの収益の柱となっているのは「リネージュI」と「リネージュII」の2タイトルなのでしょうか?
Albert: 「リネージュI」、「リネージュII」さらに「シールオンライン」の3つのタイトルが大きな収益をあげている。
編: 昨年のお話では「これからはゲームポータルに力を入れていく」というお話でしたが、進展はいかがですか?
Albert: 正直に言って「Gamania.com」は失敗した(笑)。私達はこの失敗はちゃんと認めている。最初このプランを実施しようと思ったのは、Gamaniaの1日のページビューが350万という実績があったからだ。これだけのユーザーがいれば、ポータルサイトの経営は難しくないと思っていたのだが、実際運営してみると、ユーザーはGamaniaのページから直接ゲームのタイトルにいってしまい、ポータルで遊んだり、ユーザー同士でチャットを楽しむという習慣が根付かなかった。
Gamaniaはゲームの運営に関しては実績があるが、ポータルサイト運営のノウハウはあまりなかった。結果からみるとこのプランは失敗という評価になってしまうだろう。しかし、この経験から台湾ユーザーのカジュアルゲームの需要が結構あるのではないかという手応えを得ることができた。実際「パンヤ」はユーザーから好評を得ている。
編: なるほど、今現在CEOがもっとも力を入れているビジネスは何でしょうか?
Albert: 2つあって、ひとつめは日本、韓国、中国の市場の成長、ふたつめは自社タイトルの開発だ。
編: いまだ苦戦しているという中国市場についてですが、現在はどのような戦略で動いているのでしょうか?
Albert: 現在中国市場に関しては台北のチームがリードして進めている。現在のチームは運営のノウハウや仕事に対しての態度に関してすばらしいものを持っているが、中国では勝手が違った。中国は大きな市場であるが、実際は10~15の異なる市場の集合体だった。今までのGamaniaはこういった細部に関して手を回せない部分があった。これからはその当地の会社と一部の業務を提携していくことを考えている。
編: 現在の日本でのGamaniaの状況に関してはどのように考えていますか?
Albert: 日本のGamaniaはこれからもっともっとよくなっていく。現在の日本のオンラインゲームの把握も進んでいるし、昨年は200%の成長があった。今年はさらに成長できるのではないかと思っている。
■ 課金システムとリアルマネートレードについて
アイテム課金とRMTについて台湾メーカーらしい考え方を披露 |
Albert: アイテム課金は市場のトレンドのひとつととらえている。これは日本だけではなく、韓国、中国、台湾でも活発化している動きだ。アイテム課金は課金システムの革命ではないかと考えている。最初プレーヤーはパッケージゲームに対してその箱の中の内容に関してお金を払っていた。次にオンラインゲームでは、プレイ時間に対してお金を払う。アイテム課金はひとつのゲームの“遊び方”に対して、料金の払方を決定できるシステムだ。以前より多様に、細かいプレイスタイルを追求できる方式だととらえている。
編: なるほど、CEOにとってアイテム課金は今後の主流になる課金システムであり、自社タイトルにも積極的に採用していくということでしょうか?
Albert: そうなると信じている。Gamaniaはアジア各地にある会社としては唯一のアイテム課金のノウハウのある会社であり、このノウハウはGamaniaの大事な財産だととらえている。
編: アイテム課金のゲームをプレイして1月に10万円分以上のアイテムを買ってしまうなど、一人のユーザーが大量にお金を使ってしまうという恐れがあることについてはどう思われますか?
Albert: それはアイテム課金そのものの問題ではなく、それを利用した運営側に問題があると思うし、私としてもそういった事態には賛成できない。アイテム購入に関してはある程度の制限を設けるという方法で対応していくつもりだ。お金を消費しすぎるということは、Gamaniaとしても望まない状況だ。
アイテム課金は「ユーザーが体験したいゲーム性を選択する」システムだととらえている。ユーザーは通常のプレイに加えて、違ったゲーム性を楽しむためにアイテムを購入するのだ。しかし、10万円分ものアイテムを購入してもアイテムはとても使い切れないし、そうしたプレイスタイルは歓迎できない。各アカウントにあわせて上限を設定するようにしている。
編: 日本では大きな問題になっているものにRMT(リアルマネートレード)がありますが、Gamaniaとしてはどのように考えていますか?
Albert: RMTは今やアジア全体で問題になっている。アイテム課金は、ある程度この問題に対応できるのではないかと考えている。RMTはGamaniaでは歓迎できない行為だが、会社としてはユーザーに直接関与することはできない。アイテム課金のシステムで、将来的には対処していきたいと考えている。
編: 考え方としては、RMTをくい止めるための手段のひとつとしてアイテム課金が効果的だと?
Albert: ストレートな言い方をすれば、アイテム課金はRMTへの対策として取り入れたいシステムではなく、“ボーナス”として考えている。プレーヤーはアイテム課金で新しいゲーム性を楽しむことができる。RMTの抑止はあくまで副次的要素だ。
編: 日本ではRMTは大きな問題に発展しつつあり、各メーカーも対応に乗り出しています。Gamaniaでは具体的な対策は行なっているのでしょうか?
Albert: 正直に言えばGamaniaにはRMTへの対策はない。いろいろなプランを考えたのだが、ユーザーにとってのいい方法が検討できなかった。私からみれば他のメーカーもあまりよい対策ができているとは言い切れない。格上会社の立場は十分理解できるが、RMTの対策を強めるよりも、もっとユーザーとの対話に力を入れていくべきだと考えている。コミュニティーを強めすぎるとこれはこれで問題になることもあり、難しいところではある。
GamaniaにとってはRMTは禁止はできないけれども、推奨できる問題ではないと考えている。Gamaniaではアイテム課金のシステムを進めていくことでRMT問題に対応していこうと思っている。
編: RMTに関しては、日本では「絶対にダメ」というのがメーカーとユーザーの総意です。一方、韓国ではほとんど黙認状態です。取り締まりも行われておらず、ユーザーのほうでも「やってもいいじゃないか」という空気があります。この点、台湾ではどうでしょうか?
Albert: 台湾は韓国とは違う。台湾では、ゲーム内のアイテムに関して、メーカーは保管をしているだけで、所有権はユーザーに帰属するという判例が存在する。アイテムデータはユーザーにとっては“動産”であって、メーカーは保管はするが、どう使うかはユーザーの自由だ。
編: 台湾はアイテムの所有権を国が認めているのですか?
Albert: 行政命令だ。とはいえ、たとえばゲームのサービスを停止したときメーカーがユーザーにアイテムの賠償責任を負うかというと、そこはまた少し複雑だ。Gamaniaのゲームをプレイするときにはユーザーは使用契約を受諾する必要がある。そこにはアイテムデータの所有権は運営会社にあるという一文があり、ユーザーはここに同意をしている。
しかし、台湾の判例ではアイテムデータはユーザーの動産とするというものがあって、ゲームの使用契約と判例があわない部分もある。実際の状況は法律での判断が行われた時点よりずっと進んでいるし、複雑になってきている。実際の部分は判例だけでは判定できない部分もあって、現状RMTに関しては、Gamaniaとしては「賛成ではないが、反対はできない」という姿勢だ。
ゲームは人を楽しませるためのもので、あくまで私はユーザーの意志を尊重したい。会社としてはアイテムデータは会社のものだという契約をしているが、どんなゲームにもユーザーは自由にアイテムを譲渡、ゲーム内での売買取引をする権利があると思う。そのアイテムの交換に実際の金銭が関与しているかどうかは会社としてはどうしても調べられない部分がある。現在はRMTの取り締まりに関してはGamaniaは消極的にならざるを得ない。
日本で例があるかはわからないが、台湾や中国では携帯電話の縁起がいい番号は電話会社がオークションにかけて高値で取り引きされる。電話そのものの機能は通常のものとまったく変わらないが、縁起がいい番号というだけで台湾のユーザーはそれに高いお金を出す。会社だけではなく、ネット上でユーザー同士が取引をすることもある。たとえば中国圏では8888という数字は、「どんどんうまくいく、お金持ちになる」という意味があってとても人気があり、高価で取り引きされている。
このようにユーザーならではの独特の価値観でお金を出して何かを求めるというのは台湾ではよくあることだ。ただし、オンラインゲームというまだ新しいものに対してはユーザーは厳しい態度でみている。韓国や中国の場合は関してはRMTに対してある程度「慣れて」きて、反対の声は少なくなってきている。私自身はRMTの是非よりも、他のユーザーをだますような詐欺行為など、法律に違反するようなユーザー間の行為を取り締まることの方が大事だと考えている。
■ 今後の抱負とゲームショウのありかたについて
PSPの話になると「自分はもう持ってるよ」と取り出して見せてくれた。日本の発売日に入手したという。入っていたゲームは「ピポサル アカデミ~ア」 |
Albert: 台湾のコンソールゲーム市場はこれからどんどん成長していくだろう。現在の台湾のユーザーは海賊版のゲームではなく、正式に販売されているゲームをプレイするようになってきている。Gamaniaとしてもこの市場に進出することは考えている。その時には日本のメーカーと提携して進めていくという方法もあるだろう。
編: コンソールゲーム市場への参入はいつに?
Albert: Gamaniaは現在市場の変化を観察しているところだ。今後2~3年以内にコンソールゲーム市場への具体的な戦略を示すことになるだろう。コンソールゲームの中国語圏市場は他と比べるとまだ遅れていて大きいとはいえない。まだいつ頃参入するかはっきりしたことは言えない。
編: 今回の台湾ゲームショウではSCEHがPSPを発表しましたが、これに対しての感想をお聞かせください。
Albert: PSPは台湾で非常に人気を博すだろう。ソフトによっては売り上げは見えない部分があるが、本体はいい売り上げが期待できる。ソニーは台湾では絶対に成功するだろう。実は私は日本で発売されたとき友人に頼んで一台購入してもらっている。「みんなのゴルフ」がお気に入りで、今は「ピポサルアカデミ~ア」をプレイしている。
編: Gamaniaは今年Taipei Game Showへの出展を見送りましたが、この理由は何でしょうか?
Albert: 対外的に言えるのは、2005年の上半期に発表できる新タイトルをリリースすることが確定できない、ということまでだ。
話はかわるが、私は日本の東京ゲームショウは、非常によくできたゲームショウであると思っている。私は東京ゲームショウでゲームを見るのを楽しみにしている。これからどんなゲームが発売されるかわかりやすいし、ショッピングのようにゆったりとゲームを見ることができる。台湾のイベントは非常に騒がしいし、ものを投げたりもする。もし万がいち子供たちが怪我をしてしまったらと考えることもある。
編: なるほど。東京ゲームショウへは毎年行かれているのですか?
Albert: 毎年視察目的で行っている。来年はどんなゲームがはやるか、他メーカーの戦略はどうか? おもしろいもの、新しいものにふれることができれば個人的にもとても興奮する。
編: 昨年のゲームショウで一番強く印象に残ったものは何でしょうか?
Albert: 去年はあるひとつのタイトルに心動かされたという部分よりも、オンラインゲームメーカーの出展数が例年より多くなったというのが印象に残った。スクウェア・エニックスなど各社がオンラインタイトルを出展していたし、日本のオンラインゲーム市場もここまで成長したのかという感慨を覚えた。日本市場に参入していたことは正解だったという確信も得られた。
編: 2005年のGamaniaはどんな年になるでしょうか?
Albert: 2005年はGamaniaにとって大事な年となる。Gamaniaの歴史を振り返ってみると、2000年から2003年は急激な成長をとげた。1999年はこの3年間の準備の年だった。2005年はちょうど次の成長のための準備の年となる。現在はどんどん会社のパワーを集中させている時期だ。海外市場も去年よりいい成績が出せることを確信している。開発による新タイトルも大いに期待している。このインタビューの後にお見せする「仙魔道」を見てもらえればこの期待する気持ちをわかってもらえると思っている。
編: 自社開発タイトルの展開についてもう少し詳しく教えてください。
Albert: 今年の秋に大型のMMORPGタイトル「仙魔道」のスタートを予定している。さらにもうひとつのタイトルを2006年初頭にリリースする。こちらもMMORPGだ。SOEと提携した「EQII 東方版」も今年の第2四半期にリリース予定だ。このタイトルには、日本、アメリカ、台湾のスタッフを集めて開発を行なっている。「EQII 東方版」は2月20日に初めて画面を公開したところ、メディアやユーザーから大変なよい反応を得ている。
編: 自社開発タイトルに関して、自信のほどは?
Albert: 感情の面からいえば、もちろん自社タイトルは愛している。しかし、「仙魔道」はGamaniaという会社が本当に初めて作ったタイトルで、世界の大作と渡り合う競争力を持った作品だというところまで行っているとはいえない。ただし、Gamaniaもいい品質のオンラインゲームを作ることができるメーカーであるという印象は持ってもらえるだろう。世界での競争力を持った作品は第2タイトルで達成できると考えている。
これからGamaniaはゲームの開発に対して真剣な態度で、ユーザーの意見を重視して取り組んでいる。すべてが最高水準であるといえない部分もあるが、決して悪いタイトルではない。2005年のGamaniaにはぜひ期待してほしい。
編: ありがとうございました。
□Taipei Game Show 2005のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□Gamania Digital Entertainmentのホームページ
http://www.gamania.com/
(2005年2月26日)
[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
GAME Watchホームページ |