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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人200台湾ドル(約800円) 2月18日の旧正月入りを目前に控えたこの時期は、サラリーマンには年に1度のボーナスが支給され、懐も温かい。時期的には、ちょうど日本の年末商戦に相当し、SCE AsiaやMicrosoft Taiwanといったプラットフォーマーは、毎年この時期だけで年間売上の数割を売り上げる。Taipei Game Showに出展していればかなりの売り上げを達成できていたはずだが、それだけにTaipei Game Showでは本当のゲームファンにリーチ出来ないという戦略的な判断から、あえて出展を見送ったことは大きな英断だと思う。
ゲームメディアとしては出展を見送られると取材対象がなくなるので、それはそれで困るのだが、この時期は先述したように台湾全土に各種販促素材やイベント企画を提供し、スタッフ総出で、ハードとソフトを売りまくっている。そこで今回は、台北市に点在するゲームショップを丸1日かけて周り、台湾コンシューマビジネスの現場を探ってみた。
■ クリーンな売り場に生まれ変わりつつある光華商場。正規ビジネスに忍び寄る中古品の問題
光華商場に赴くのは2005年以来だったが、びっくりしたことに光華商場が丸ごとなくなっていた。光華商場は、ガード下に2階建ての小規模の店舗が50メートルほどの長さでびっしり埋め尽くされたエリアだったが、そのガード自体がなくなって、舗装道路に変貌していた。あまりの変貌ぶりに場所を間違えたかと思ったほどだ。 話を聞いてみると、実際にはなくなったわけではなく、老朽化に伴いガードが取り壊され、やむなく退去に至ったとのこと。現在、すぐ側の空き地に新しい入居先となる中層のビルが建設中で、もともと入居していた店舗群は、駐車場として利用されていた空間に建設されたプレハブに移っていた。プレハブは5棟あり、縦が短くなった分、幅が厚くなった。全体の規模としてはほとんど変化していないようだ。 ここには、SCEの公認店が1軒と、そうではない店が数店舗ほど点在していた。数年前までは存在していたPCゲーム系のショップは、オンラインゲーム、コンビニ流通、アイテム課金化という3つの流れに対応しきれず、ほとんど姿を消していた。台湾でゲームショップといえば、コンシューマゲームの店を指すといっても過言ではない状況になっている。 さて、SCEの公認店になるための条件は、海賊版、輸入版の取り扱いは厳禁、ただし、中古品の売買までは規制しないというもの。公認店になれば、販促物の提供や試遊台の貸し出しなどを優先的に受けられるなどのメリットがある。PS3の試遊台の有無によって集客力に雲泥の差があり、公認店になることは、一種のステータスとなっている感がある。台湾には現在ゲームショップと認定しうる店が400店舗ほどあるというが、そのうちSCE Asiaの公認店は1割ほど。ほとんどが台北に集中し、実態としてはまだまだ販売網は十分とは言い難いようだ。 ここの公認店は「普雷伊(プレイ)」という台湾全土にチェーン店を持つゲームショップ。ここには、PS2、PS3、PSP、Xbox 360、ニンテンドーDSのハードとソフト、そしてゲーム雑誌が置かれていた。日本語の雑誌やチラシも置かれており、「ガンダム無双」のチラシまであり、パッと見た目は日本のショップと見まがうほどだ。 唯一の違いは、ショップの中央に堂々と中古品が売られているところ。価格は500~700台湾ドル(約2,000円~2,800円)と、新品が1,500~2000台湾ドル(6,000円~8,000円)なのに比べると手頃感がある。中古品の存在は日本のゲームメーカーや台湾におけるパブリッシャーであるSCE Asiaとしては頭の痛い問題だが、常に並行輸入品による値崩れのリスクを抱えるショップ側としては、ここを規制されてしまってはもはやビジネスとして成り立たないという事情もあるようだ。
これは、出荷しすぎてしまったメーカー、安易に大量発注してしまった卸業者、値を下げる日本のショップ、並行輸入する業者、それを買う台湾ゲームファンといった様々な要因が絡んだ複雑な問題だ。いずれにしても、日本や欧米で発注しすぎて売れ残った結果、値が暴落したゲームソフトが、アジアの正規ビジネスに抜き差しならぬ影響を及ぼしていることだけは間違いないようだ。
■ 台湾ゲーマーのトレンドスポット「台北地下街」。ハードを持ち寄って遊ぶのが台湾流
ゲームショップは5店舗ほどあり、店先にはPS3やXbox 360といった最新プラットフォームの試遊台が置かれ、それぞれユーザーが群がる姿が目に付いた。中にはPS3の試遊台が5台もあるような大型店舗もあり、SCE Asiaとして特に力を入れているエリアであることを伺わせる。 訪れた10日は、ちょうど「鉄拳5」のゲーム大会を開催していた。1日中絶え間なく行なうというスタイルではなく、30分に1回の間隔で、コンパニオンがマイクでPS3の特徴を紹介しながら1ブロックずつ消化していくという内容で、一種の客寄せとして大会が行なわれていた。優勝者にはPS3本体をプレゼントするというなかなか太っ腹なイベントだが、台湾では圧倒的なブランド力を持つソニーグループのハイエンドゲーム機にしてなお、手弁当感覚のイベントが行なわれていることに驚かされた。 お客の中にはTaipei Game Showで配布された紙袋や即売会で購入したゲームソフトが入った袋などを手に抱えている人もいて、東京ゲームショウにおける秋葉原に相当する、帰りにちょっと覗いていくスポットになっているような感覚を受けた。 台北地下街で一番カルチャーショックを受けたのが、ゲームファン同士がゲーム機を店に持ち寄ってその場で楽しむという遊びの文化だ。ゲームショップには、あらかじめラックとテレビ、テーブル、イスなどが用意してあり、ゲームファンは自分の好きなハードを持ち寄り、同じプラットフォームのユーザー同士で固まって、思い思いのゲームをプレイする。 こうした動きは、日本でもミニ四駆やラジコン、トレカ、メンコ、ビー玉といった遊びにおいて、売り場の側で遊ぶという文化は確かに存在したが、PSPやDSならまだなるほどと頷けるものの、PS2やニンテンドーゲームキューブを持ってきてケーブルを指して遊びまくるという文化は、さすがに日本にはない。 台湾のゲームファン達は、単にゲーム機を持ち寄って遊ぶだけでなく、店先で紙に対戦表を書いて対戦大会までやっており、しっかりしきり役までいる。その後ろではPSPユーザーの群れが壁際にしゃがみ込み、「モンスターハンター」、「リッジレーサーズ」など思い思いのゲームを楽しんでいる。ユーザー層は小学生から高校生ぐらいまでの10代が中心。ともあれ、ゲームという遊びの根源的な楽しさをわかりやすい形で描いたような光景だと思った。 一方、ショップ側はというと、この文化を黙認するどころか、人が人を呼ぶ客寄せの機能のひとつとして奨励している部分があり、ショップの店員は、コンシューマゲームのイロハを知り尽くしたご意見番として重宝されている。ちょうど10数年前の日本で見られた模型好きの子供と、模型店のオヤジのような関係が、21世紀の台湾の中心地において、最新テクノロジーを投入したコンシューマゲームで成立しているところに、大きな感動を覚えた。
今後、こうした文化がどのような変化を遂げながら市場として成熟していくのかは想像も付かないが、台湾のゲームファンは極めて遊びにどん欲であり、クオリティの高いゲームを好み、そして自らも積極的に楽しもうという強い意欲を持っている。台湾は人口比で日本の1/5ほどだが、ゲーム以外にメジャーな遊びがない。その意味では、特にコンシューマゲーム市場において、まだまだ大きな潜在需要を抱えているという印象を持った。数年後が本当に楽しみな分野だ。
■ まだまだ行ってきた、台北市のゲーム関連ショップ 今回は、光華商場と台北地下街のほかにも、さまざまな店に行ってきた。 以下では写真を中心に紹介していきたい。
□Sony Computer Entertainment のホームページ (2007年2月12日) [Reported by 中村聖司]
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