一般ユーザーとはちょっと違ったゲーマーが集う
台湾「光華商場」
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ガード下にある光華商場。非常に多くのアイテムが販売されている電脳街である |
アジアのゲーム市場に詳しい人に、「台湾で秋葉原みたいな場所はありますか?」 と、質問すると返ってくる答えが、この「電脳街」、台北の光華商場である。
電気街ではなく、電脳街。ガード下に造られたビルの中に、小さな店がぎっしりと詰まっているこの空間は、秋葉原のラジオ会館を思わせる“電脳”グッズの一大拠点。建物は2階建てになっており、2階部分で、PCゲームやコンシューマーゲームが売られている。
2階の店舗数はなんと50軒以上。これが50メートルほど奥行きのある、いわば百貨店の1フロア分の空間にぎっっしりと詰まっているといえばその混雑の感覚はわかってもらえるだろうか? 各店は店の外側にも商品を展示しており、通行人は足を止めてそれらを見る、常に人をよけて歩かなくてはいけない、猥雑とした世界だ。
■日本よりはるかに充実したPCゲーム市場
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50以上の店の名前が記載されたフロアマップ。ぐるりと回れる構造になっていて気に入った店で立ち止まって物色できる |
光華商場2階の主役は、あくまでもPC。PCパーツを販売している店がほとんどで、さらにビデオカメラやモニター、メディアが販売されており、しばらく歩かないとゲームを販売している店舗は見えてこない。
さらに、台湾ではゲームといえばPCゲームで、PS2やXboxはまだ普及していない。そのため、コンシューマゲームを扱っている店は非常に少なく、規模も小さい。この50軒中で4軒ほどしか見つけられなかった。
PCゲームを扱っているところはそれよりも多いが10軒ほど。人がすれ違える通路を確保して、その両脇にぎっしりとPCゲームを陳列する、という店舗が多かった。大きな店でも、1/3はアプリケーションソフト。ゲームソフトはまず米国産の中国語翻訳版、そして中国語説明書同梱版のゲームがほとんどをしめる。
PCゲームファンの筆者としては、翻訳版の充実がうらやましかった。「ターミネーター3」など、日本では翻訳販売されていないタイトルも多数。また「LOCK-ON」など、マニュアルも英語だが、販売代理店による、推薦の帯が添付された状態で発売されているタイトルも確認できた。PCゲームの量、種類は非常に多く、300本以上のタイトルが壁に陳列され、さらに20タイトルほどが店舗の中心で各20本以上平積みされている。日本でPCゲームを豊富に置いている大型量販店と比べても3倍以上の規模がある。
日本のゲームではコーエーの「三國志」シリーズの他は、「サクラ大戦3」を初めとしたセガのタイトルが翻訳された形で販売されていた。「鬼武者」のPC版も中国語に翻訳されたものがあった。ソフトの価格は1,100元(1元が3.5円くらい)ほどと、日本よりやすく、さらに値引きされた安売りソフトが大量にあった。そちらの価格は300元くらい。
店を訪れるのはほとんど20歳以上の若者。この光華商場に子供が訪れない理由の1つに20~30本ほど販売されているアダルトソフトの存在がある。日本のゲームのように、美少女キャラクタ中心のアドベンチャーゲームはなく、妖艶なポリゴン美女や、実写の女性が登場する麻雀ゲームばかりなのがユニークだった。ほとんどがアダルトだが、麻雀ゲームの数は非常に充実していて、台湾というお国柄を感じさせられた。
他に台湾のオリジナルソフトとしては99元のミニゲームが中心で、縦スクロールシューティングゲームなども見られたが、出来はけして良くなく、扱いも非常に小さい。前述した麻雀ゲームのインターフェイスも、ポリゴン美女のクオリティーもまだまだだ。ご褒美映像の主役はVCDでの取り込み映像というのが現状で、使われている技術は決して高度なものではない。台湾国内のオリジナルゲームはまだまだという印象を受けた。
オンラインゲームは、カウンターの近くに置かれており、他のゲームを買うついでに、オンラインゲームのプリペイドチケットを、というように手軽に購入できる配置になっている。「ラグナロクオンライン」や「テイルズウィーバー」、「クロスゲート」など種類は豊富で、1カ月無料で60元と非常に手ごろな価格ゲームを始められる「スターターキット」の販売が中心だった。
■嗜好品としての趣が強い光華商場でのコンシューマーゲーム
PCゲームが手軽に手に取り、パッケージをじっくり眺められる展示をしているのに比べ、コンシューマゲームを扱っている店は、ガラスケースの中に商品を展示。商品も数が少ない上に、行儀よく陳列されていて、ちょっと特殊な印象を受ける。日本で舶来品を扱ってる店のような、「高級感」があるのだ。
筆者が驚いたのは商品の内容。90パーセント以上が日本のパッケージそのままの、「並行輸入」の商品なのである。中国語に翻訳されているタイトルがあっても、その上に日本語の同じタイトルが展示されていたりする。価格は、1,700~2,000元、日本で新製品を買うのとほとんど変わらない値段である。輸入を独自に行うためか日本語版のソフトは高く、正式販売の中国語版の方が価格は安い。
また、中国語の説明書をつけただけで、それを明記したシールを張り付け、販売している商品も多かった。海外版をそのまま楽しむユーザーが多いせいか、PCゲーム売り場で見られた女性客の姿は全くなく、マニアックな印象がある空間である。「ちょっとそれを見せてよ」といった感じで、店員からパッケージを手渡され、訳知り顔でゲームを見ている客の姿は、「舶来品」を楽しんでいる空気である。
こういった空気は、マニアの集まる光華商場という特殊な場所であることはもちろん、日本と台湾における全く違うコンシューマとPCゲームの関係がある。日本でも状況は変わりつつあるが、台湾では子供がPCにさわるのを親が喜ぶという。それは、PCパーツを初めとした、台湾でのPCに携わる人の多さ、将来、子供が大きくなり、職業を選ぶときに、PCに対して抵抗感がない方がいいという、親の認識が下地になっているのだろう。
子供が積極的にふれる「コンピュータ」は、携帯ゲームではなくデスクトップPC。親がパーツを買ってきてPCを組み立てるのを見る、休日一緒にPCの部品を買いに行くという環境がある。こういった状況により、日本とは全く違うPC観が子供に芽生え、ゲームも手元にあるPCからという感覚が生まれてくるのだろう。また、ゲームでもいいから子供にPCにふれていてもらいたいという親の願望もあるという。
こういった世界に、「正式参入」してきたのが、PS2やXboxといったハード達である。ゲームのための専用機というのは、親にとっては“高価なおもちゃ”に見えてしまう。台湾にとってコンシューマゲームというのは、PCゲームとは違う、「新しい文化」なのである。
このまったく違う文化に、早くから注目し、かつ、「普通の人たちと全く違うゲームの魅力に気がついているぞ!」と自負している人たちがいる。その最先端の人たちがこの光華商場に集う、コンシューマゲームファンなのである。日本の高価な、しかし最先端のゲームを楽しみたい。PCゲームとはまったく違う楽しさを体験したい。そういうコアなゲームファン達が最先端の情報を求めてショップに集うのだ。
しかし、この光華商場のコンシューマ売り場における「マニアックな雰囲気」も変わりつつあるという。「SIREN」や「KUNOICHI」など、日本で発売するソフトとほぼ同じタイミングで中国語版も販売される。これら翻訳されたソフトは、並行輸入されているソフトより300元ほど安い。まだまだ数は少ないながらも、「日本語がわからないとゲームが楽しめない」という敷居の高さは解消されつつあり、平行輸入版で「人より早くプレイする」という感覚も減少しつつある。また、「太鼓の達人」が人気を集め新規ユーザーが増えたとのこと。さらに米国産にはなく、オンラインゲームとはひと味違った日本の「かわいいキャラクタ」は、女の子のユーザーを開拓しつつあるという。
Xboxの健闘も特徴的だ。PS2とGBAの売り場が大きな面積をしめる日本と違い、光華商場ではPS2とほぼ同じ大きさで商品が陳列されている。こちらはEAのスポーツゲームなど、PCユーザーが“なじめる”ラインナップが人気のようだ。さらに台湾ではXbox
LiveはPlayStation BBよりも先に実施される予定だ。「Counter Strike」や「Unreal Tournament」など台湾ユーザーが興味を持つであろうソフトも登場する。PCゲーム、オンラインゲームに親しんでいる台湾市場では、日本とはまったく異なる勢力図が展開するかもしれない。
【スクリーンショット】 |
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入り口にはXboxを初め、Softのオンラインゲーム「戀愛盒子」など、いろいろな広告が |
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建物の上には道路がある。入り口だけだとその広く雑多な空間は想像できない |
上下に分かれた入り口。一階は古本屋の他、コピーソフトや日本のアダルトソフトも……。 |
建物の裏口には祭壇がある。山の神様をまつっているようだ |
□Taipei Game Show 2004のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
(2004年2月7日)
[Reported by 勝田哲也]
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