|
会場:ネクソン本社
NCsoftやWebzenなど他の韓国大手と比べて、俗に“無料ゲーム”と呼ばれるアイテム課金制のコンテンツの比率が高いのが特徴で、昨年2005年にはついに全社的な方針として全コンテンツをアイテム課金制へ移行した。現在ではネクソンのゲームコンテンツは、基本的に無料でプレイを開始することができる。日本はおろか、韓国でも類を見ない思い切った方向転換である。 こうした大胆な施策が行なえるのも本国韓国での際だった成功があるからこそで、2005年の韓国の連結売上高は2,177億ウォン(約217億円)にも達する(日本単体の売り上げは未公表)。これはオンラインゲーム市場としては、日本では未踏の数字であり、しかも事業の主体がアイテム課金ビジネスでこの数字というところに凄みがある。 具体的な数字を挙げて比較するとその凄さがよくわかる。日欧米亜の4地域で展開するスクウェア・エニックスのオンラインゲーム事業が約138億(全体では733億円、2005年3月期)、韓国産の月額課金制タイトルとしてはもっとも大きな成功を収めた「ラグナロクオンライン」を擁し、マルチタイトル展開を行なっているガンホー・オンライン・エンターテイメントが約56億(2005年12月期)であり、日本市場ではメジャーなアイテム課金制タイトル「スカッとゴルフ パンヤ」を展開するゲームポットは約12億円(2005年12月期)に過ぎない。 ネクソンでは、2006年は日本や中国、北米等を含めたグループ全体で2,600億ウォン(約260億円)の売り上げを見込む。今回は、日本の代表取締役社長に加えて、韓国本社のCEOも兼務するDavid K.Lee氏に、日本を含めた世界戦略について話を伺ってみた。
■ ワールドワイドでの動き、ネクソン人気の原動力
David: いえいえ、成功ばかりでもないですよ。結構長く海外事業をやっていますので、開発も含めて色々失敗をしていますね。日本でも合弁会社として'99年から配信しているし、アメリカが一番早くて'97年から、中国がライセンスとして入ったのが2002年。それぞれインフラが整っていない状況でオンライン事業やっていた上、コンテンツもそれほどローカライズせずにもってきていたというのが当時の状況だったので、そうした失敗を通じて開発側も経営側もいい勉強になったと思います。 ローカライズといっても言葉の翻訳だけでなく、ゲームの内容も現地化しないといけない。運営もそうです。今も完璧とはいえないかもしれませんが、他社と比べると多くのノウハウは持っていると思います。もうひとつは無料ゲーム、アイテム課金の力だと思います。オンラインゲームに慣れていないマーケットではニーズ作りから始めないといけない。マーケット育成ですが、一番いいのは「とりあえずやってみてください」です。それは日本でもある程度の効果があるし、中国台湾でも良い反応があったと思います。そういった弊社のカジュアルゲームの戦略が市場のニーズにあったのではないかと思っています。 編: ネクソンさんは、アイテム課金タイトルを各地域で展開していますが、各地域の客単価はどれくらいなんでしょうか? David: 単価については申し上げられませんが、日本が一番高いです。台湾、シンガポール、アメリカは、韓国と同じくらいですかね。一番低い中国が日本の4分の1ぐらいでしょうかね。一番高い日本と比較すると、それ以外は7割くらいですね。 編: 韓国ではネクソンの「カートライダー」をはじめ、アイテム課金制のカジュアルゲームが大流行している感がありますが、こうした光景をどのように見ていますか? David: 韓国の場合、カジュアルゲームがゲームという枠を超えて、ウェブサービスと重なっている場合がありますよね。最近では「カートライダー」もゲームだけでなくソーシャルネットワーキングサービスとしての側面もあると思います。他社はゲームだけをやっていますが、弊社の場合は次のステップとして、それを超えてコミュニティに関する部分をプラットフォームとして作り上げるというのが課題かなと思いますね。 たとえば「カートライダー」なら、商品のサイクルとしては数年間を、次のタイトルを開発しながら維持運営していくわけですが、この間、ユーザーに対してWebサイトを通じてコミュニティ活動や充実したコンテンツを提供しなければいけない。また、「カートライダー」だけでなく、他のゲームと繋ぐプラットフォームをどうやって作っていくか、さらにはどうやって現金化していくかにも注力しています。 編: ネクソンさんは「メイプルストーリー」、「BnB」、「カートライダー」と、カジュアルゲーム界のトップを常に走り続けている印象を持っています。その業界の旗手として、今後のカジュアルゲームやアイテム課金ビジネスはどうなっていくと考えていますか? David: アイテム課金ビジネスとしては、「メイプルストーリー」では様々な努力をしてきています。たとえば日本でやっているビジネスモデルである、ただのアバターのアイテムではなく、付加機能の付いたアイテムの販売など、新しいシステムは色々あると思います。 また、ゲームの中で課金をしていないユーザーをどう課金させるかも課題だと思うんですよね。Webのビジネスを見ますと、Web見ているユーザーが直接お金を払っていなくても儲かるビジネスモデルはありますよね。ネクソンは無料ゲームも多いし、そこそこのユーザー数もいるし、ゲームポータルということで単なるポータルよりは集客力があると思うんですよ。それをどうやって現金化するかということが課題ですよね。 編: いまの発言はビジネス的な、メーカー寄りな内容ですが、ユーザーから見ますと、アイテム課金タイトルというのは、アバターからはじまって、装備品を買ったり、経験値アップアイテムなど、いわゆる時間をお金で買うような考え方も生まれてきました。そういうレベルでの次の1手とは何なんだろうと? David: いろんなことを2年間やってきましたので、ユーザーからみるとアイテム課金でなにか革新的なアイデアがあるかといえば、うーん、ちょっとすぐには思いつかないですね。「メイプルストーリー」のビジネスモデルについては、自慢話になりますが、他社も真似しています。確かに次の段階に移らないといけないですよね。そのなかで今課金していないユーザーをいかに課金に導いていくかというところが課題ですね。 編: なるほど、むしろ課金決済の拡充だと? David: 課金システムは常に研究しなければいけないし、選択肢を増やし続けなければいけないのは事実ですね。日本では、プリペイドカードやウェブマネーやコンビニが発達していて、そんなに不便ではないと思います。携帯を通じての課金も必要かなと思っています。 でも日本は世界でもかなり利便性の高い地域なんですよ。アメリカが一番大変ですね。クレジットカードがなければ何もできないという状況です。向こうではPaypalというシステムを使っているんですが、クレジットカードか振込みという状況です。ユーザー層は無料ゲームが多いので中学生高校生のユーザー層がそれなりに多いんですが、もちろん彼らはクレジットカードをもってないユーザー層なのでプリペイドカードかそれにかわる課金システムが必要になります。アジアでは割と充実しているのですがアメリカでは問題がありますね。
■ ビジネスモデルについて「月額課金制のほうが不安定感がある」
David: いえ、堅調に伸びています。いきなり上がったわけではなくて、ズーッと順調というか地味というか。もう2年以上も続いているゲームで、こうして右肩上がりの成長を維持しているゲームも珍しいと思いますが、日本のマーケットがだんだんオンラインゲームに慣れてきたなという感触はありますね。 「テイルズウィーバー」も昨年、運営開始から1年半経ってから無料化へ移行しましたが、ベータテストのときよりも無料化以降のほうが同時接続者が多いんですよ。ということはやはりその間に市場それ自体が拡大している。それによって自然に「メイプル」も伸びていますし、「テイルズ」も「マビノギ」も割と順調ですね。 編: つまり、「メイプル」の成功の要因は、市場の拡大が一番大きいと? David: いえ、それだけでは無いです。「メイプル」は韓国でも成功していますし、台湾でも人気があるのですが、このゲームはかなり頻繁にアップデートしているんです。他のゲームより結構頻繁にアップデートがあります。これがユーザーが入ってくる理由だと思います。その理由でユーザー数を維持しながら、新規ユーザーも入ってきていると思うんですよ。 ここ最近ですと、私が知る限り「ラグナロクオンライン」は伸びていない。「リネージュ」も昨年上半期は伸びましたが、下半期からは安定してきています。しかし、「メイプル」はずっと伸びていますね。 編: 昨年は上場を果たしたガンホーやゲームポットといったメーカーが目立ってて、どちらかというとネクソンは静かに見えたんですが、着実に成長していたということですね。 David: そうですね。売り上げも昨年から2倍に伸びましたし、まだまだ弊社の持っているゲームタイトルもいくつかあるし、今後はガンホーさんやゲームポットさんよりは楽な展開になるかと思います。 編: 昨年、すべてのコンテンツがアイテム課金化へ移行しましたが、これはシナリオ通りなんですか? David: はい。弊社の戦略として方向がそうなりました。韓国ではサービスされている「風の王国」や「闇の伝説」といった結構前からやっていたMMORPGもすべて無料化しましたし、現在韓国でオープンベータをしているMMORPG「ZerA」も基本的には無料で、アイテム課金制を検討しています。 弊社ならではの事業展開だと思いますし、マーケティング的にもやりやすい。パッケージゲームだと始めるのに抵抗感がありますが、無料だとユーザーが手軽にゲームの中に入ってこれます。その一部だけが課金ユーザーになったとしても十分ビジネスになると思っています。 編: 月額課金の場合ですと、基本的に継続的な課金モデルで会員数に応じてある程度売り上げが予測できる。しかし、アイテム課金の場合、毎月毎月ユーザーに能動的にアイテムを買ってもらう必要がありますよね。こうした点でアイテム課金はリスキーなビジネスではないかと思うのですが。 David: おっしゃるとおりですね。経験されてない方が見るとそういうリスクを感じられるかと思いますが、我々は長いアイテム課金ビジネスの中で、ユーザーがいくら払うか、どんなアイテムを入れればどのような反応があるのかといったデータは大体見えてきており、定額のビジネスモデルとほとんど変わらない売り上げ予測がたてられます。 むしろ韓国で問題になっているのは、月額課金モデルのゲームを有料化した場合に、どれくらいのユーザーが残るか残らないのかわからないことです。そちらのほうがリスクが高いように思います。アイテム課金モデルのゲームなら、有料化してもいきなりユーザーが半分とか2割になるようなことはないですからね。 アイテム課金モデルのゲームなら、βテスト期間の同時接続者数によって、何年でいくらの売り上げが見込めるという予測ができる。ただ、日本とかアメリカ、中国で展開するとなると、韓国とは違った展開になることもありますから一概に言えなくなります。たとえば日本では「パンヤ」が韓国より成功していますね。そういう面では見えない部分があるんですが、ある程度市場が見えてくればこれくらいは売れるといった分析はできます。
■ ゲームポータル「DO!NEXON」の今後の展開について
David: 正直なところ期待を下回っていますね。経験が足りないということもありますし、MMOやカジュアルゲームと、ゲームポータルのビジネスの違いという点も痛感しています。 編: ハンゲームなどのライバルの存在も大きかったのでしょうか? David: 確かにハンゲームさんがファーストムーブで、ウチがそうではないというところは大きかったと思いますが、我々が持っているユーザーが、まだゲームポータルのユーザーとして活用できていないところが最大の要因です。既存のユーザーでもネクソンのゲームポータルサイトで何ができるか認識しているユーザーは100%とはとても思えないし、半分いるかどうかもわからない。マーケティングも足りないし、形としても色々改善していかなければいけない。ハンゲームは韓国でも日本でも経験があるので、弊社よりも優れてる部分はあると思いますね。 編: 「メイプル」だけでも100万人以上の登録ユーザーがいますよね。ゲームポータルのビジネスは、その既存ユーザーの誘導が第一なのか、それとも新規ユーザーの獲得なのか、ターゲットはどのあたりになるんでしょう? David: 両方ともなんですけど、期待するのは新規ユーザーです。日本ではゲームというイメージがどうしてもテレビゲーム機という意味合いが強くて、ある程度の抵抗感はあるようですね。たとえば、「メイプル」をやるとしても、新規ユーザーは、150MBのクライアントをダウンロードしなければいけないし、ゲームの中に入ってもある程度の時間を使わないとゲームとしての楽しみを見つけられないかもしれない。もうちょっと気軽に、初めて30分くらいでオンラインゲームはどういうものであるかというのを認識させる手段としては非常に有効ではないかと思ったんですが、もっとがんばらないといけない。 編: 現在の日本のやり方というのは韓国のやり方と同じなんでしょうか。 David: 似ているものも多いです。たとえば、ActiveXをインストールしなければいけません。それからこれは私も非常に反省していて、ダメな部分ですが、ゲームごとにロビーがあります。解りやすく言うと、パチンコだとパチンコのロビーがあるのですが、これはパチンコをするユーザーしか見えない。パチスロやマージャンそれぞれのユーザーが独立しているわけですね。これは本来共通であるべきで、どのロビーにいても全ユーザーが見えるべきだと思っています。さらに、自分がマージャンをやりたいとすれば、マージャンというフィルターをかければ、マージャンの部屋だけを見られるようなシステムにしたほうがいい。そういう意味では、韓国のデザインをあまり深く考えずに入れてしまったという反省があります。 編: 日本のゲームポータル展開について、それ以外になにかアイデアがあれば教えてください David: 今後、どんどん日本にはカジュアルゲームが入ってきますが、ゲームをやる動機付けをもう少し強めたいなと。ゲームをやって楽しめることが大前提ですが、それに加えて新たなモチベーションとなるものも必要だと思います。 たとえばこのゲームをしたらこのゲームでメリットをもらえるという形の展開方法を考えることもできるし、それはハンゲームではできないことです。たとえば新しいカジュアルゲームと「メイプル」が結びつくとか、「カートライダー」や他のカジュアルゲームが入ってくると、そういう風にちょっとゲームとゲームが独立した商品というだけでなくてネクソン全体としてひとつのサービスになるように整理しないといけないなと考えています。 編: それはネクソンだからできるというタイトルごとの結びつきということですが、それはジャンルは問わず、レースとアクションでも何らかのコラボレーションが可能ではないかと? David: 可能ですね、最近でやってる中では韓国でも「BnB」と「カートライダー」の連携なんですけれどもそうしたことも色々できるかと思います。
■ 「BnB」撤退、カジュアルゲームの展開は慎重
David: ちょっとタイミングが早かったということです。まだ日本の一般ユーザーがオンラインのカジュアルゲームに慣れていないという時期に「BnB」を出したので、反応があまりよくありませんでした。後に「カートライダー」も控えていますし、ちょっとサービスを続けるのもたいへんだし、開発のサポートを要求するのも難しいので、楽しんでいるユーザーには大変申し訳ないんですけれどもいったん終了ということにしました。 編: 今後「カートライダー」が控えているということですが、「BnB」から派生したのが「カートライダー」ですし、「BnB」を止めるというのはちょっとしたデメリットになるのではないですか? David: 「カートライダー」をプレイするのに「BnB」が必要かといえばそうではないんですよね。「カートライダー」が盛り上がれば、またそこから逆に「BnB」が日本に来ればいいことだし、あるいは同時に提供するのもひとつかも知れません。 それよりもMMORPGになると弊社はある程度の自信があるんですよ。今は5つのタイトルをやっていますし、どんなタイトルをもってきてもある程度は成功させるような環境を作るのはできます。しかしカジュアルゲームは課題が多いかなと思いますね。 今の状況で「カートライダー」が入ってきても予測ができない。韓国でヒットしてるタイトルではあるし、中国でも人気あるんですが、そういうタイトルを軽く日本に持ってきて失敗するのが怖いんですね。ハンゲームの「フリースタイル」の例を見てもまだ日本は難しいなという感じです。 編: なるほど、私の中では「メイプルストーリー」はあくまでカジュアルゲームのカテゴリなんですが、実はMMORPGという認識ですか? David: ちょうど中間の存在だと思いますよ。仮に「メイプル」をカジュアルゲームとして考えたとしても、やはり同時接続を見ると他の国より遙かに低い。カジュアルゲームが盛んなら、3、4倍は伸びてもいいんですよ。そういう数字を見ると、簡単にカジュアルゲームを持ってくると、韓国や台湾、中国で慣れている人からするとがっかりする結果になるんじゃないかと思いますね。 編: 私の中では、ネクソンというと“カジュアルゲームの旗手”という認識を昔も今も持ち続けているのですが、そのトップのDavidさんが日本のカジュアルゲーム展開に対して苦手意識を持っているというのは意外ですね。 David: 苦手というか慎重というか、どういう風にマーケティングするか、ユーザーとのきっかけをつくるか。他社のカジュアルゲームを見れば、マーケットとしては韓国と近いものはあると思いますが、実際にどういう風に展開するかというところが悩みですね。 時期の問題もあると思うんですよ。2年前と日本のオンラインマーケットはだいぶ変わってきたと思うし、それはゲームだけではないんですよね。オンラインサービス全体の認識は変わってきてると思うし、今後も変わり続けると思うし、そういう意味ではあせる必要は無い。弊社としては慎重にタイミングを考えてるというところです。 編: 日本のカジュアルゲームといえば「スカッとゴルフ パンヤ」が人気ですが、この成功についてどう見ていますか。 David: ゴルフというジャンルが人気の要因だと思いますね。というのは1人でも遊べるということがひとつ。それから競争ではなく共同というところで、もちろんある程度の競争はありますけども、負けても一緒にやって楽しいというところ。そういう誰と勝ち負けより自分との戦いというか、非常にジャンル的には日本の市場と合ってますよね。 それにくらべてハンゲームの「フリースタイル」は絵柄もアメリカ的だし、勝ち負けもはっきりしているし、そういうジャンルよりはパンヤのほうがよかったんじゃないかと思いますね。 編: パンヤの成功はすんなり納得できると? David: そうですね。「パンヤ」の日本での成功から得た教訓を、カジュアルゲームの開発陣にしっかり伝えていかないといけないと思います。たぶん、中国のほうは競争ゲームに関しては韓国のように抵抗がなくて、台湾は若干違いますね。日本はだいぶ違います。アメリカでは勉強しているんですけれども、アメリカはどちらかといえば韓国、中国よりかなといったところです。 編: かたやMMORPGに関しては、毎日のように新作が発表されつつあるような状態ですが、こうした状況をどうご覧になっていますか。 David: いいことだと思います。韓国でもこれだけオンラインゲームが成功したのは、そこまでのタイトルが出てきてユーザーの認知度が上がったからだと思うんですよね。コンテンツとしてはいろいろ宿題があったとしても、全体としてマーケットが盛り上がるというのはウェルカムな展開ですね。これでユーザー数が伸びない展開になると困ったことになるのですが、マーケットが全体が拡大する方向だと、いろんなプレーヤーが入ってきて皆さんのオンラインゲームに対する認知度があがれば、それはそれでいい結果に繋がると思うんですよ。
■ オンラインゲーム時代だからこそコンシューマ市場への参入を
David: 逆にそれはいい機会だとおもうんですよね。オンラインゲームと連携可能なモバイルゲームや携帯電話のゲームもすでにありますから。 弊社のほうでなぜこれまでコンシューマ市場に展開しなかったかというと、ネクソンのノウハウはやはりオンラインゲームに限定されていたからです。我々がPS2のタイトルを開発してスクウェア・エニックスさんなどの大手と競争ができるかといえば、できるかもしれないんですけど莫大な費用が必要になってくる。ゲーム機のオンライン機能が強化されれば、凄く面白くなると思うんですよ。 Xboxの場合はハードディスクがついているし、PS3もついてくると思うのですが、そうしますとパッチの提供やクライアントのダウンロードができるということになる。PCとコンソールとの連動も考えられるし、いままでオンラインゲームを触れたことの無かったユーザーにもそういう機会が与えられると思うし、それがひとつのポイントです。 2つ目はオンラインとコンソールではやはりユーザー層が若干違うと思うんですよ。ですから、PSPなりニンテンドーDSなりXboxやPS3でオンラインゲームユーザーが求めるニーズがすべて解決できるかといえば、それは違うと思うんですよね。やはりコミュニティ活動が必要ですし、チャットもしたい。あるいはWebサイトが必要だと。そういう意味ではコンソールだけでは解決できないことも多いのではないかと思います。 編: どちらにしても最終的にはPCにくるぞ、ということですか(笑) David: そういうことも考えられますし(笑)、我々が逆にそちらにいくということも考えられる。市場の拡大に貢献できるということができるとすれば、ネクソンには抵抗感はないですよ。今後もまだオンラインゲームに慣れてからPCに来ることも考えられるし、弊社のほうで携帯電話向けのゲームや新しいコンソール向けコンテンツを作るということも考えられる。それはそれで面白い話になるのではないかと思います。 編: 確かにネクソンのラインナップを見ていくと、DSに映してプレイしても楽しいんじゃないかというタイトルはありますよね。 David: そうですね。正直なところそこは検討はしていますね。モバイルでは昨年韓国でインテリジョンという会社を買収したので、「風の王国」はじめ、モバイルゲームで「風の王国」に入って、PCオンラインゲームで連携するというシステムを内部でやっていますので、上半期には韓国で出てくると思います。その辺では面白い展開があると思います。 編: ではまず携帯プラットフォームに進出して、機会があればコンシューマにということですね。 David: そうですね。それはまだ経験が無いので慎重といえば慎重なんですが、やっとXbox 360やニンテンドーDSのWiFiコネクションの活用例を見て、興味を覚えている段階です。 編: 韓国のメーカーさんに話を聞きますと、我々PCで育ったメーカーだからあくまでPCで勝負していきたいという意見が大半なんですが、ネクソンはその垣根が無いような感じですね。 David: もちろんベースはPCなんですね。しかし、実際にゲームを開発してる人たちはコンソールを割と熱心にプレイしている人が多いので、彼らのロマンも大事にしたい。負けてもいいから挑戦したいという意思は強いですね。そのためには新しいミッションをあげないといけない。今まではビジネスモデルとして見えてなかったので、止めてたんですよね。でも今からは面白くなると思います。 編: 将来的な話なりますが、仮にコンシューマ市場に参入するとして、どのようなサービスを提供したいですか。 David: まずは、既存タイトルから派生したタイトルから入ると思います。まったく新しいタイトルになるとそこはまた負担があるし、難しいと思うので。 モバイルゲームのように弊社のコンテンツとある程度関係があるものになるかとは思います。韓国の開発とも相談しないといけませんから、現時点でどうなるかは断言できませんけど。開発チームはニンテンドーDSやXbox 360を非常に関心をもって見ているし、PS3がどうなるかも楽しみです。
■ 新規タイトルの展開は慎重に、まずはゲームポータルから
David: まず日本は、ありきたりの答えですがより質の高いものにしたいと思います。「マビノギ」も「テイルズ」も無料化してユーザーもかなり戻ってきたし、そこまで3つのタイトルがニーズがあるのは弊社だけなのでそこはしっかりしていかなくてはいけない。それからまだ日本に入ってきていないタイトルがあるので、その準備をしていきたい。カジュアルゲームの戦略も見直した上で実行しなくてはいけない。ポータルの動きを日本市場にあわせて準備をしないといけないというのが日本の大まかな動きですね。 韓国だと、カジュアルゲームの人気が高いのでそれぞれのゲームを通じて集めたユーザーをいかにプラットフォームとして活用できるか。さらに進化するコミュニティ的なサービスを展開できるかというところが課題になります。最終的には中国、アメリカ、台湾、東南アジアといった海外展開も広げていく。中長期的に見ると携帯とかコンシューマへの展開もあるし、オフラインでの事業もあるかなと思います。 グッズ展開などは、日本やアメリカ市場が特に重要になってきます。韓国ではまだ事業として期待はできないので、日米が中心になってくる。しかし、それも結局オンラインゲームが成功しないとどうしようもないですからね。 編: 新規コンテンツとしてはまずは「カートライダー」ということになりますか? David: 「カートライダー」もあるし「ルニア戦記」もあるし、「ZERA」もある。また、自社タイトルだけでなく、パブリッシャーとしての立場から何社かとは話し合っています。そのほかにも、ゲームポータル向けにWebのほうでもFLASHを使ったゲームも必要になるでしょう。ジャンルにこだわらず様々なゲームの展開を検討していますよ。 編: 年度内に「カートライダー」、「ルニア戦記」、「ZERA」の3本ですか? David: とは言い切れません。次期タイトルは確かにその3つになりますが、タイミング的には他の国の事情もあるので何もいえないところなんですね。「ZERA」と「ルニア戦記」は始めたばかりですし、韓国の経過を見ながらということですね。 編: 「カートライダー」は正式サービスが韓国では始まってとても人気は高いですが、すぐ日本へという感じではなさそうですね。 David: 慎重ですね。やろうとしたら技術的にはいつでも可能だとは思います。ただ、マーケティング的なところで慎重に展開しないと貴重なタイトルなので無駄にはしたくないという気持ちがあるんですよ。成功しないとやる意味がないので、半年くらい我慢したらもっと成功するとわかっていたら待ちますね。 編: そんな待っていたらムーブメントが終わってしまうんじゃないんですか? 他のもっと優れたゲームが出てきたら、ユーザーは当然そちらに流れますよね? David: 言ってしまえば、そこまで自信があるといえばあるということなんです。実際やってみたら「カートライダー」は素晴らしいゲームだと思うはずです。色々非難もあるんですが、キーボードでプレイするオンラインカジュアルゲームとしては最高だと思います。実際されたことがあるかはわからないんですけど、本当面白いんですね。 編: 確かに韓国のネットカフェでは、若い男性だけじゃなくてOLさんとかも普通にやってましたね。 David: ええ、割合からみると女性が4割もやってます。これってありえない数字なんですよ。オンラインゲームでいうと。オンラインゲームで2割以上こえるとカジュアルっぽくなってるなという感じがするんですけど、3割になるとみんなでやってるというかんじがします。けど、4割というのはね。 編: 日本では、カジュアルなレースゲームといえばなんといっても任天堂の「マリオカート」シリーズです。「マリオカートDS」は、WiFi機能を利用してオンラインプレイ可能という形がすでにあり、ミリオンセラーを超えるなど人気も高い。そういう環境下にあっても、まだDavidさんの自信は揺るぎませんか。 David: 揺るぎませんね。「マリオカート」は4,800円、DSが1万5,000円ですか。ゲームをやるためにはそれだけのお金を使わなければなりません。それに対して我々は無料でサービスを提供します。このアドバンテージがある限り、自信は揺るぎません。もし「マリオカート」が無料でできるとすれば、今のさらに数倍のユーザーがやることになって、それは怖いですけどね(笑) それから、「カートライダー」と「マリオカート」のプレイスタイルは違うんですよ。実際やってみればわかることなんですが、「マリオカート」は素晴らしいし、とても面白いゲームですが、「カートライダー」はまた違うんですよね。 編: どういった点が違うのですか? David: スピード感というか、カートゲームなのに実際スピードゲームやってるという感覚です。セガさんの「デイトナ」シリーズのようなスピード感ですね。キーボードでプレイしますから、若干感覚的に異なる部分はありますが、そういう面白さがあると思いますよね。カジュアルゲームならではの面白さと、レーシングをやっている感覚、これらは「マリオカート」では感じられない楽しさがあるんです。 逆に日本のメーカーにそこまでやっていたら怖いと思います。仮にアイテム課金制の無料ゲームを作ったら本当にそれは大変なことになると思うし、我々としてはそれを一番怖れている。「マリオカート」に関して言えば、それほどの初期費用がかかるにもかかわらずミリオンセラーになったということで、やりたいのにやってないというニーズが結構あると思いましたね。 編: 大作MMORPGとして開発が進められている「ZERA」を期待している日本のユーザーも多いと思います。同作の展開についてはどう考えていますか? David: 韓国でオープンベータが始まったばかりで、これからゲームシステムや内容を充実させていく段階です。それをすっかり準備した上で、さらに日本向けにシステムを作り直さないといけない部分も出てくるでしょうから、今年中にいけるかどうかといったところでしょうか。できるだけ近いうちに日本でも展開ができるようにがんばりたいと思います。 編: 日本向けの改良というのはローカライズは当然ですが、それ以外にはどのようなことを行なうのですか? David: 細かい部分については、韓国の開発担当と日本の担当と話し合わないといけないんですが、どのゲームでもやっていることです。一番いい例は「メイプル」です。「メイプル」の場合はビジネスモデル自体を日本独自にしました。「ZERA」も韓国で安定して成功してから、十分に議論した上で検討していかなければならないなと思いますね。 編: 今年のネクソンは、既存タイトルのさらなる充実、ゲームポータルの拡充、「カートライダー」の展開といったあたりになるのでしょうか。 David: 各タイトルのリリース時期に関しては、現時点では何ともいえませんね。日本では夏頃までにWebから変えていきたいと思います。あとはまだ確定していません。 編: 最後にゲームファンに対して一言お願いします David: 充実したゲームサービスができるように、日本でのオンラインゲーム市場、特にカジュアルゲームの発展に期待しています。ユーザーも期待していると思うし、がっかりさせないようにがんばっていきたいと思いますので宜しくお願いします。
□ネクソンのホームページ (2006年3月16日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|