|
「Age of Empires III」に関しては、Game Developers Conferenceのテクノロジーデモ、E3のプレイアブル出展、そして先週公開された体験版といったナマのデータにより、ある程度の理解に達していたつもりだったが、今回話を聞いてみると、ホームシティのシステムがガラリと変貌していて、一種、初公開の新作のような気分でインタビューすることができた。 最終的に採用されたデッキシステムは、これまで文明特性という形で設定されていた各勢力ごとの個性化を、数万通りにまで細分化し、自分だけの国、自分好みの国を作り上げることができるという、一種RPG的なシステムだ。カードは、ゲームをプレイするたびに新しく取得できる。これにより、マルチプレイに継続的な楽しさが生まれるだけでなく、練習モードに過ぎなかったスカミッシュモードにもスポットライトが当てられるというなかなか画期的なシステムだ。今回のインタビューでは、Shelley氏の提案に従い、ホームシティの最終仕様から話を進めてもらった。 ちなみに日本のゲームファンとしては、非常に気になるであろう日本語版については、日本での公式アナウンスは「発売を前向きに検討します」という状態。日本語版の発売はまず間違いないが、RTSでは常識外れのローカライズ量に、発売時期の発表に関して慎重にならざるを得ないようだ。 ■ 14回の試行錯誤から生まれたカードシステム
編: なるほど、E3バージョンに比べ、ガラリとシステムが変わったわけですね。このデッキはシングルプレイ、マルチプレイで共通ですか? Shelley氏: デッキはマルチプレイ用、シングルプレイは別な物を使用します。シングルプレイで育てたものをマルチプレイで使うことはできません。カードは1回のゲームで20枚までしか使えないので、どのカードを組み合わせるか考えなければなりません。 編: この物資や新テクノロジーをカード化するというシステムはどういった発想から生まれたのでしょうか? Shelley氏: まずホームシティーという観点から考え始めました。そしてニューワールド(戦場マップ)に物資を送るという展開を考えていきました。このアイデアは史実に基づくものです。今見ていただいているカードシステムは、14回の試行錯誤を繰り返して生まれたもので、ようやく満足のいくものができました。 編: 没になったアイデアにはどんな物がありますか? Shelley氏: カードという概念は長いことありませんでした。ユニットは単純に1回目で2つ、2回目で4つというように増えていくという構造でした。建物も個別にクリックすることで独自の情報を管理するというもので、そこから何度もテストを繰り返していったのです。 では、実際にデッキを作っていきましょう。カードのデッキには自由に名前を付けることができます。騎兵隊やネイティブアメリカン、といったようにデッキの方向性を示す名前を付けると管理しやすいでしょう。 編: このシステムだと、例えばイングランドを選んでもプレーヤーによって無数のイングランドがあるということでしょうか? Shelley氏: その通りです。ゲームを進めれば20種類のカードはすぐ集まりますから、複数のデッキを作ることができます。カードの配列をどう区分けしていくかはゲームの楽しみです。 編: いままでの「Age of Empires」シリーズでは“騎馬が強い文明”、“海軍が強い文明”など文明特性によって方向性が決まっていましたが、それを自由化にしたのはどうしてでしょうか? Shelley氏: 最初から固定されたゲームの流れにはめられるのではなく、もっと多様なゲームの構成を戦略的に組み上げていく面白さを出したかったのです。 編: このデッキを選ぶ展開はマルチプレイでも同じでしょうか? カードの総数は何枚ぐらいでしょうか? Shelley氏: マルチプレイでも同じです。カードの種類は100以上ですね。 編: カードは文明によって変わってくるのでしょうか? Shelley氏: 共通のものも多いですが、文明独自のカードもあります。たとえばこの「ウーロン」という部隊カードはドイツだけのものです。「チームカード」もドイツだけですね。イングランドには「熱気球」というカードもあります。8つの文明がそれぞれ独自性を持って展開するように独自のカードを入れています。もちろん、これを選択しないということもできます。 編: これらのカードはどうやって取得していくのでしょうか? Shelley氏: まず経験値ですね。ゲームを終了する時のホームシティのレベルによって新しいカードが増えていきます。RPGでゲームを繰り返すごとに経験値が上がり、レベルが上がっていくように、カードがどんどん増えていくのです。これはマルチプレイでも同じです。 編: 「Age of Empires III」にはI~IVまでの時代があるようですが、例えばIの時代に20枚のうちの10枚のカードを置くといったプレイもできるのでしょうか? Shelley氏: どの時代にカードを割り振るかはプレーヤーの自由です。これがプレーヤーにとって重要な戦略の1つになります。一般的に時代が近代に近づくほどカードが大きな効果を持ちます。ですから、最後の時代まで行くと仮定すれば、ピラミッド型のデッキ構成が有利になるでしょう。 いくつかのカードは繰り返し使うことができますが、一度しか使用できないものもあります。実はここには表示されていませんが、AgeVという時代もあります。この時代になると一回使用したカードが復活し、もう一度使えるようになります。 編: 1on1のマルチプレイの場合、短期決戦を目指してIの時代にカードをたくさんつぎ込むのがセオリーになりそうですね。 Shelley氏: ゲームの展開によりますが、最初にカードを集約するという戦術も考えられるし、逆に均等に割り振るとか、後半に集中すると言うこともできます。今回は本当に革新的なシステムができたと思います。本作は「AoE」の続編ですが、全く新しい経験をする、ということが目標でした。 編: ちなみにこのデッキはキャンペーンでも使用できますか?
Shelley氏: シングルプレーヤーキャンペーンでは全く違う文明をプレイするため独自のデッキが用意されます。カードに関しては、シングルプレーヤーキャンペーン、シングルプレーヤースカーミッシュ、マルチプレーヤーでそれぞれ別個に集める必要があります。 ■ 史実にフィクションを組み入れて表現されるシナリオと歴史上人物 編: シングルプレーヤースカーミッシュやマルチプレーヤーでは、1プレイにどのくらいの時間がかかるでしょうか?
編: 過去のシリーズより少し長いような気もしますね? Bruce氏: ああ、この時間は私の場合です(笑)。私はいつもCPUの設定をもっとも強くしてプレイしているので結構攻め込まれますし、長い時間がかかりがちです。プレイする人や難易度によってもっと短くなるでしょう。 編: つい先日、体験版が公開されて、さっそく私もプレイしたのですが、AIがかなり優秀な印象を受けました。人間的とまではいかないものの、複雑なシステムによくついていってますね。AIで新しい試みなどがあれば教えてください。 Shelley氏: 色々新しい機能も盛り込みました。ゲーム自体も複雑になり、アメリカ先住民や他国への交易などの要素が入り、AIもキャラクター性を持っています。例えばフランスならばナポレオンという観点からゲームが展開されます。 プレイをしているときにAIが「おまえはしくじったからもう負けるよ」とか「おまえは年を取りすぎた」といったように舌戦を仕掛けてくることもあります。このコミュニケーションはマルチプレイで実際の人間を相手にしているかのような感じられます。また、AIの味方もいて、こちらがコマンドを出すということも可能になっています。 AIの担当だけで4~5人のスタッフがいて、完成度を高めてくれました。AIには絶対的な完成はないのですが、現段階では満足のいくものができました。AIはなるべく人間的に対応するようにしています。ただ、AIは絶対に裏切りません。 編: キャンペーンでは2つのシナリオをプレイできましたが、キャンペーンを通じてどのようなゲーム体験、歴史体験ができるのでしょうか? Shelley氏: シングルプレーヤーキャンペーンでは24のシナリオが用意されています。新世界の発見、スペインの海賊との戦いから始まり、ACT IIではジョージ・ワシントンと出会い、アメリカ開拓時代や7年戦争と呼ばれる世界戦争を体験し、ACT IIIではアメリカ西部での鉄道建設や、中南米の地域で革命に参加するようなシナリオもあります。南米の革命家と対話をすることもできるのです。 編: これらは史実に従ったシナリオなのでしょうか? Shelley氏: 歴史を題材にし、史実も織り込んでいますが、完全にフィクションです。今までのゲームの経験から、史実に基づいただけのものよりも史実の要素を取り入れたフィクションの方が方が受けが良かったのです。 ほとんどのシナリオは史実に脚色を加えています。なぜならばプレイをして面白くなければならないからです。例えばジョージ・ワシントンが「今フランス人が攻めてきたから何とかしろ」などと言ってきたり、「援軍を呼んでくるからここで持ちこたえろ」と命令を出してきたりします。 編: そういった脚色は北米の人は理解してくれるのでしょうか? Shelley氏: その時代に実際に生きているかのように感じられる作品はアメリカでは人気があります。ワシントンを馬鹿にしているようなことは決してありません。アメリカ開拓時代に参加し、役割をこなすようなプレイをして、プレーヤーが実際の歴史に興味を持ち、史実を調べようなきっかけになってくれるといいですね。 編: キャンペーンで特にここは見て欲しい、というような所はありますか? Shelley氏: やはりストーリーの壮大さですね。私はアメリカの先住民とヨーロッパの移民のぶつかり合いは、宇宙人を発見したのと匹敵するような大きな事だと思っているんです。先住民などの色々な民族がいて、色々な文化がある。どのような文明をたどってきたかということを見て欲しい。それが醍醐味だと思います。 編: 私はデモをプレイをして交易所を軸としたゲーム展開が非常に新鮮に感じたのですが、これはどういったアイデアから生まれたのでしょうか? Shelley氏: 交易という要素をゲームの中で継続的に、そしてさらに大きく展開したいと考えていました。交易所は戦略的に新しい要素になると思います。 編: アメリカの歴史の上で物流というのは重視されているのでしょうか?
Shelley氏: アメリカの開拓時期では毛皮の流通が経済で重要でした。フランス人は毛皮の取り引きのためだけにアメリカに来たりもしています。我々の目的は面白いゲームを作ることですから、色々な要素を入れていきたいと思っています。 ■ 幅広い年齢層にアピールできる「AoE III」の魅力 編: 物流という点では、アメリカの鉄道ならばピストルを持った強盗団が絡んでくるようなイメージがありますが、このゲームではそういった要素がないようですね?
編: ええ。壊れた馬車に積載されたトレジャーをアウトローがを守っているところなど、こういったディテールに対するこだわりが非常に気に入りました。 Shelley氏: 池に浮かんだ木の上には亀がいて、時々水に飛び込んだりもします。こういう部分はとても子供に受けが良いですね。マップを自分で作って池に鴨を配置したりもできます。見ているキャラクタに干渉はできませんが、眺めて楽しむことができます。実際の世界にいるような疑似体験ができるのです。欧米の多くのゲームが闇や暗さを現わしているのとは対照的な表現をしています。 編: 確かに“明るい”ゲームではありますね。北米のゲームとしては極めて健全性の高いゲームだと思います。 Shelley氏: 歴史をテーマにしたゲームの中でまず明るさを演出したいということはこだわっています。ゲームの趣旨にはいろいろありますが、我々のゲームが全世界でよく支持されたのは、前提として健全性があったからだと思います。親が子供に与えるゲームとして評価を受けたと思います。反面、ハードコアのゲーマー達が高いレベルでゲームを楽しむと言うこともまた可能になっています。 編: 今回の対象の年齢層はどこに設定しているのでしょうか? Shelley氏: 特に設定していませんが、ハードコアプレーヤーはオピニオンメーカーであるのでどうしても注目しなくてはいけませんが、私達のゲームは基本的にはカジュアルプレーヤーと呼ばれる層に向けて提供されています。 編: まだ文字の読めない子供や、ゲームの知識はなくても歴史が好きなお年寄りにも魅力のあるゲームのように思えます。日本では全年齢にアピールしたゲーム作りを目指している作品も多く、「AoE III」にもそういった野心が伺えますが、いかがですか? Shelley氏: 我々のゲームはすでに世界で1,600万本売れています。日本でもPCゲームとしては好評を得ました。幅広い年齢層に受け入れられることは、まさに私達の目指すところです。大人だけ、子供だけといったように考えていません。 編: 今回、ずばり何万本の販売を目標としているのでしょうか? Shelley氏: 私達のチームはセールスじゃないので(笑)。実は私達のチームは年末までに何本売れるか賭をしているんです。年末までに全世界で95万本ぐらいかなと見ています。ただ、これはあくまで年末までの数字で、最終的にはもっと高い目標を設定しています。 編: 次に、マルチプレイについて教えてください。「AoE III」のマルチプレイはどのような内容になるのでしょうか? Shelley氏: 私達はまずマッチメイキングサイトESOを全面的に作り直しました。ラダーやゲームリストなど、ハードコアゲーマーに対してもっと魅力的な要素を取り入れています。ハードコアゲーマーにとってつっこんだゲームを楽しんでもらいたいと思います。 編: ESOはすべてブラウザ上で操作できるのでしょうか? ESOの再設計で特に意識した部分はどこでしょうか? Shelley氏: すべて操作できます。マルチプレーヤーでESOをクリックするとすぐにつながり、チャットもできますし、全世界のプレーヤーのランキングを見ることもできます。 ESO1はカジュアルゲーマー向けにデザインし、ESO2ではハードコアゲーマーにフォーカスを当てています。ESO1は我々も間違いだったと思っています。ESO1ではハードコアゲーマーは満足してもらえなかったし、カジュアルゲーマーにも不評でした。 編: 新しい機能としては、どんなものがありますか? Shelley氏: ランキングのラダー機能や、ほかにも例えば、フランス人同士でプレイしたいと考えているプレーヤーに応えるためのソートシステムなど、ハードコアゲーマーからのフィードバックを反映して作っています。 編: E3では「AoE III」では1on1のマルチプレイがメインストリームになるだろうとおっしゃっていましたが? Shelley氏: 実際に一番多くプレイされるスタイルはそうなると思います。我々はもちろん、2on2や4on4も想定してテストを行なっています。個人的には4on4が一番楽しいですね。ただ、それをプレーヤーに強制するわけではありません。1人のプレーヤーがどんどんスコアを上げていくという楽しさもありますし、個々のプレーヤーにとっての個人の楽しみを追求していってもらいたいですね。 編: 日本ではまだ発売が決まらず、やきもきするユーザーも多いのですが、彼らに熱いメッセージをお願いします。 Shelley氏: もうすぐ出ます。ハードコアプレーヤーにとっては彼らの趣味に合う、満足のいく内容に仕上がっていると思います。「AoE I」と「AoE II」を気に入っていただいた方なら必ず気に入っていただけます。ご期待ください。
編: ありがとうございました。
□マイクロソフトのホームページ (2005年9月15日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|