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ネッツジャパン、「墨香オンライン」運営者インタビュー
上田氏「モナーは広場におかれたボールのような存在」

11月2日収録

会場:Net Time Soft本社

 11月3日からオープンβテストをスタートした武侠MMORPG「墨香オンライン」。2ちゃんねるの人気AAをゲーム世界に登場させたり、オープンテストに合わせてGM体験ツアーをやるなど、一風変わった運営を行なっている。

 今回は、そうしたユニークな展開の仕掛け人であるネッツジャパンの上田浩氏と、韓国で「墨香オンライン」のプロジェクトマネージャーを務めるMichael Park氏、「Starcraft」の元女性プロゲーマーという異色の経歴を持つLee Eun Kyung氏の3名に話を伺った。

 また、今回、アドバイザー的な立場で「墨香オンライン」のプロジェクトに参加している2ちゃんねるの管理人 西村博之氏もインタビューに参加し、いくつかコメントを得ることができた。

 ゲームの内容と同様に極めてユニークな内容のインタビューとなっている。どれもこれも似たようなコンセプトのMMORPG市場に少々食傷気味、あるいは既存概念をぶち破るようなMMORPGを探しているゲームファンは、ぜひ一読いただきたい。


■ オープンβテストの目標ユーザー数は7万人、将来的には20万人規模に

「墨香オンライン」の日本展開の一切をプロデュースしている上田浩氏
編集部: 基本的な部分からお聞きしたいのですが、韓国での会員数と、同時接続者数を教えてください。

Michael Park氏: 会員数は累計で100万人、同時接続者数は5,000~7,000人ですね。韓国では好評を得ていますので、日本でもがんばっていきたいなと思っています。

編: その一方で上田さんが目標としている数字はどのくらいでしょうか。

上田浩氏: 日本では来年の3月までで、会員は7万人、オープンβテストには2万5千人を目指していますね。大きな話をすれば、来年いっぱいで会員数は20万人を目指したいです。

編: その7万人のユーザーの中で、2ちゃんねるを見たことがある、言い換えればある程度モナーを意識してゲームを始めるユーザーの割合はどのくらいと考えていますか?

上田氏: 全体の30%ぐらいだと考えています。残りの70%は、例えばいろんなゲームを積極的にプレイするコアゲーマー、さらに少しぐらいはやったことのあるようなライトゲーマーも含みます。必ずしもモナーをプレイの目的にする人がほとんど、とは思っていません。

西村博之氏: ビジネス的な視点から見て、会員数がどのくらいならば成功だと言えるんですか?

上田氏: アイテム課金制のモデルを取っているので、単純に会員数では判断できないところがあります。1人あたりのお客さんの支払金額を計算すると、月額課金よりもアイテム課金の方が利益率が高いというのはご存じだとは思います。

 ざっと計算すると、時々アイテムを買ってくれるユーザーが2万5千人ぐらいいてくれれば成功ですね。全体の20~30%のユーザーがアイテムを買ってくれればいいかなとという感じです。

西村氏: 韓国ではユーザーは平均1カ月でどのくらい使っているんでしょう?

Park氏: 平均すると1人あたり4,000円くらいです。


■ モナーを初めとした多彩な2ちゃんねる文化が登場、韓国とはまったく違った展開に注目

編: 次に日本での「墨香オンライン」のオープンテスト後の展開を教えてください。

上田氏: 「墨香オンライン」は、11月3日よりオープンβテストが開始されますが、今回ツアーに同行して頂いた西村博之さんの協力を得て、2ちゃんねるのキャラクタ「モナー」を出したりと、キャラクタビジネスを作品に取り入れようとしています。

プロダクトマネージャーのMichael Park氏。韓国での「墨香オンライン」のすべてを取り仕切っている
サービスプランニングを担当するLee Eun Kyung氏。「Starcraft」の女性プロゲーマーとして、トップ5に入る実力の持ち主である
インタビューで通訳を担当して頂いたRechel Ra氏。イベントやデザインなども企画しているという
 韓国では去年の9月から正式サービスしていて、韓国では、「墨香オンライン」を「武侠もののMMORPG」として扱われている作品ですが、なぜ日本で独自のキャラクタ性を前面に出したかといいますと、大前提として普通の韓国産ゲームを日本に持ってくる手法とは違ったことをしたかったんです。

 単にゲーム内のテキストを日本語にするというだけではなく、日本にあったセンスやカルチャーを持ってきたいという目的がありました。まずキャラクタの顔や立つ姿勢などひとつひとつに日本のマーケットを意識したものに変え、作り直していきました。

 「墨香オンライン」は「武侠もののMMORPG」としてある程度完成しきっているものですから、そこに大きく手を入れるのではなく、日本のユーザーにアピールするためには別の観点から大きな新しい仕掛けが必要だと思ったんです。

 MMORPGはお客さんにエンターテインメントを依存している不親切な側面があると思います。「モナー」のようなキャラクタを入れたのは、エキセントリックな驚きを狙っただけのものではなく、ある程度わかりやすい“共通言語”を取り入れることで、一定以上の娯楽を提供しようと思っているんです。

 また、キャラクタを広告宣伝のモデルにしようとも考えています。雑誌、アニメーションなどのキャラクタをゲーム内に登場させることで、広告媒体になるMMORPGというのもちょっと考えています。

 もちろん、「墨香オンライン」そのもののイメージづけもしていかなくてはいけないと思っています。原作である武侠小説「墨香」は日本ではほとんど知られていない。先ほどの共通言語の話にも通じますが、「この場所は、誰と戦った場所だ」、「この街はあれだ」といったシンパシーを感じるものをできるだけ多く提供したい。それは原作に忠実にマンガにしたり、小説にしたりするのも必要かもしれませんが、もっと多様性のあるものでもいいと思っています。色々な形で「墨香」をアピールしたいですね。

 また、韓国産MMORPGを日本にローカライズした作品は、往々にしてまじめなゲームが多い。そうしたゲームはコツコツ真面目に競うことばかりに躍起になってしまいます。もう少しそれを変えたい、というのが我々の目指している方向性です。

編: すでに確固たる世界観が確立する「墨香」という武侠世界の中で、モナーや広告型のキャラクタなどが、どういったストーリーを紡いでいくのかが、今ひとつ実感を持って伝わってきません。たとえば、モナーのパーティーがダンジョンをつき進むような世界なんでしょうか?

上田氏: 僕はまさにそれを想像しています。現在3チャンネルのサーバーを用意していますが、真ん中だけひらがなの「2ちゃんねる」になっていまして、それを隔離型のサーバーにしていこうと思っています。このサーバーは何でもありのエンターテイメントサーバーにして、モナーや色々なキャラクタの混在する世界にしようと思っています。

 現在、NPCとして登場しているモナーですが、将来的にはプレーヤーがモナーの恰好をできるようになります。白くてむくむくしたモナーの恰好をしたプレーヤーの集団が、鎧をつけた通常のキャラクタ達で構成されたパーティーに戦いを挑む、すごくシュールで気持ち悪い世界ですけど、そういった場面を想像しています。

編: プレーヤーがモナーの恰好をできるというのは斬新ですが、姿を変えられるだけではしばらくしたら飽きてしまうのではないかと思います。そのあたりに何か工夫はあるのでしょうか。

上田氏: その通りですね。現時点で言えるのは、モナー達、AA(アスキーアート)のキャラクタのラインナップは、どんどん追加していくつもりです。ただ、物量で飽きを回避できるとは思っていません。この点に関しては、システムとしても考えていかなくてはいけないと思っています。

編: モナーや広告型のキャラクタが登場し、「墨香オンライン」の世界観が変わってしまうことに関して、韓国運営側として、どのような感想をお持ちでしょうか。

Park氏: 私は非常に面白い挑戦だと思っています。最初は開発者から「武侠もの」なんだから、こんなキャラクタはあり得ない、といわれたんですよ(笑)。私達は、「武侠もの」は日本ではまだ知られていないジャンルであるし、モナーは日本で新しく展開するために必要なキャラクタだから、入れて欲しいと説得しました。

編: モナー達が韓国に逆輸入されることはあるのでしょうか?

Park氏: 可能性はあると思います。韓国では「マシマロ」というweb発のキャラクタがいて、真っ白でモナーに似たウサギのキャラクタですが、ぬいぐるみなどのキャラクタ商品にもなっています。モナーもそういった展開があるのではないかと思っています。

上田氏: ハラハラするけどそれも面白いな(笑)。


■ 人気小説「墨香」を題材とした、武侠ものMMORPGならではの要素とは

編: 韓国側から、「武侠モノ」ということで、アピールしたい部分はどういったところがあるでしょうか。

Park氏: 「墨香オンライン」は、まずゲーム性を大きくアピールしていきたいです。ゲームに触ってもらい、面白さを感じてもらって、最終的には原作そのものや「武侠」そのものにも興味を持ってもらいたいと思います。

上田氏: 原作は昔の中国で男達が剣で戦うといういわゆる武侠路線から、ドラゴンが出てくるようなファンタジー路線にもなっていくんです。世界観としては真逆なものに変化して、もう一回武侠に戻っていったりもする。世界観はリアル路線に戻っても、ファンタジー系の影響が残っていたりもするんです。

 「墨香」は必ずしもリアルな武侠ものといった世界ではなく、ゲームもまた次のアップデートではいきなりファンタジーが入ってくる可能性もある。まず、武侠でありファンタジー路線もある「墨香」の世界の雰囲気を早い段階で伝えなきゃいけないと思っています。

編: 韓国側の「墨香オンライン」の魅力とは何でしょうか?

Park氏: 「墨香オンライン」は単なるレベル上げ中心の作品ではなく、武功スキルを使って対人戦を繰り広げていく楽しさを持った作品です。五行の属性や、剣や槍の武器、さまざまなアイテムで自分だけのキャラクタを育成していけるところが魅力だと思っています。

編: ちなみに原作小説でも、運命のライバルのような相手と戦っていくような内容なのですか?

Park氏: 原作では1対1の戦いではなく、大きな組織である門派と門派が戦っているような展開になっていまます。8月に韓国で実装されたアップデートからは、30人で構成される門派システムを導入し、門派と門派の戦いが行なえるようになりました。1対1やチーム戦もできますが、門派でトーナメントに参加し、専用のフィールドで戦うことも可能になりました。

編: 1つ疑問に思ったのは、原作である小説はまだビジュアル化されていないとのことですが、鎧や武器などは作家さんが監修しているのでしょうか?

Kyung: ゲームオリジナルのストーリーなど、原作者の方には企画の方面で積極的に協力してもらっていますね。ビジュアルはまず、原作の舞台である昔の中国風のものからおこしていて、アイテムモールの企画、品揃えなどはNet Time Softに一任してもらっています。


■ ゲームに取り入れられるAAキャラクタの基準

2ちゃんねるの管理人として知られる西村博之氏。今回のインタビューでは、仲間である上田氏に対して鋭いツッコミも
編: 西村さんにお聞きしたいんですが、ファンタジー世界にモナーが入るということについて、どのような感想をお持ちでしょうか。

西村氏: 僕ですか(笑)。モナーをゲームの中に取り入れるという動きは、いずれ出るだろうなとは思っていましたね。ありがちなストーリー、ありがちな敵、ありがちなMMOではいつかみんな飽きるので、モナーのような「飛び道具」を出してくるのは時間の問題かなと。

編: 企画趣旨には素直に賛同できるという感じでしょうか。

西村氏: まあ、そうですね。

編: しぃとギコ猫が次のAAキャラクタとして発表されています。この飛び道具的な流れとして、バリエーションは何種類くらい考えていますか?

上田氏: 1カ月に2体を目標にしています。一体作れば模様替え、色替えもできますから、かなり多様性が生まれると判断しています。韓国のアイテムモールでは鎧や武器に属性や能力値アップなどの特性が付与されていますが、AAキャラクタ関係の装備の場合、例えばギコなら“ズサー”というお馴染みの滑るモーションをアイテムとして付加できる形で展開していこうとも思っています。

 アイテムを入手してAAキャラクタになれるだけでなく、動きも独自のものができるようになる。このキャラクタならこの動きだろう、というところまでしっかり盛り込む。そういうことを丁寧にやりたいなと。ギコなら“ズサー”ですが、しぃは箱に入ります。モナーが実はまだ決まってないんです。独自のポーズがなくてぼーっと立っていることが多くて。それ以降で出てきたAAはみんな激しい動きがあるんですけどね。

 セリフは色々考えていますが、NPCの時しかしゃべれないので、プレーヤーがモナーやギコになれたら、聞けなくなってしまうかもしれません。マニアックなセリフをきくなら今の内かもしれませんね(笑)。

編: AAの選定はどういったものなのでしょうか?

上田氏: 1つは普遍的なもの、モナー、ギコ、しぃ、僕の大好きなおにぎりワッショイ、ジサクジエン、たぶんモララーも入れます。8頭身はどうかな? 8頭身を入れたら>1さんも入れなくてはいけないですね(笑)。もう1つが新興AAで元気なものですね。ブーンとか、具体的な内容はまだ言えませんが。

 モナーを入れたときは、2ちゃんねるでもスレッドが立って、多くの人がゲームに参加してくれました。そういう少しあざといこともやっていきます。2ちゃんねる以外にも色々なキャラクタの交渉しているんですが、まだ色よい返事がいただけないですね。

編: キャラクタをゲームに登場させる以外で、プレーヤー間に共通言語を持たせる方法としてどのようなプランがあるのでしょうか?

上田氏: MMORPGの中で語られるストーリーは、NPCが語る長々としたセリフで表現されていると思います。今のMMORPGのスタイルにおいてにこの長いセリフは人の誘導にはならない。人を導くのはやはり“絵”だと思っているんです。

 今、共通言語を持たせる試みは、キャラクタです。次に考えているのは、街です。あくまで例えですが、新しい街として「渋谷」を登場させるかもしれません。現在、「墨香オンライン」の世界は昔の中国に沿った世界ですが、「渋谷」や「お菓子の国」、「NPCが全員AAの街」といった、人が何となく集まる説得力のある街を作りたいんです。

編: 1つ不安なのが、2ちゃんねるキャラクタを解禁するのは隔離サーバーとおっしゃっていましたよね。他のサーバーでは韓国と同じ、ある意味まともな「墨香オンライン」の世界が広がるのでしょうか。

上田氏: そういう構成にしているのは、もちろん韓国からの提案ということもありますが、私自身、少し日和っているというところもあります。いきなり全部を変えちゃうとみんな引いちゃうかなとも思いまして。直球じゃなくて変化球ばっかり投げていて良いのかな、ということを少しだけ恐れています。まずは隔離サーバーとしてスタートして人気具合を見て、他のサーバーにもと。オープンβの結果を見て、最終的には決まっていくのかなと思っています。


■ オリジナル要素を強くアピールしていく今後の展開、タイトルをクロスオーバーするアイデアも

編: 現在適用されているオリジナル要素を教えてください。

上田氏: まず、キャラクタが違います。キャラクタの顔立ちやプロポーション、立ち方などを日本のアニメ文化などを考えた上で修正していきます。この変更は韓国では適用されなくて、日本だけです。綺麗な女性NPCも日本オリジナルです。

 「墨香オンライン」はトライ&エラーを繰り返していく宿命のタイトルだと思うんです。もちろんこのタイトルでベストを尽くしますけれども、次のタイトル、次の次のタイトルでユーザーの求めるものを探る意味で色々なことをやっていきます。

編: 今後、マルチタイトル化するとして、ユーザーの管理はタイトルベースで行なっていくのですか?

上田氏: 現在、カジュアルゲームの「テイルズランナー」、海洋冒険MMORPG「エルドラド」が予定されていて、その間にテーブルゲームも入るかもしれません。そうなると4タイトルを運営することになるので、そのときには総合的なシステムが必要になるかもしれません。総合IDとタイトルIDの2重になる可能性は秘めています。

 本当は1つのIDでクロスオーバーするのが好きなんですよ。キャラクタを持って行けるくらいの勢いでやりたいんですけどね。「墨香オンライン」の中で稼いだお金が「テイルズランナー」に持っていけるとか、プレーヤーを優遇するための何かを与えてあげたいんですけどね。

 現場を抱えていると、ものを作るのに必死になってしまって、エンドユーザーレベルまでなかなか頭が回らなくなってしまう。ただ、ネッツジャパンは幸か不幸か現場を持っていないので、その辺はもう少し柔らかい視点でいけるかなと。

編: 年内正式サービス開始予定とのことですが、スケジュール通りにいくとすると、有料化まで2カ月ないわけですよね。正式サービス時の「墨香オンライン」の姿を教えてください。

上田氏: パブリシティーを含めて大きなメディアの露出をしていきます。web媒体は流れも速いところがあって、紙媒体に発売1カ月前に告知を出して、まずは名前を知ってもらおうと思っています。まだ僕が手伝うことになってから2カ月くらいしかたっていないので、仕掛けの部分ではまだ間に合ってない部分が多いんですよ。

 例えば原作をある程度守ったライトノベル、そして大きくアレンジを施したコミックやグラフィックノベルといった展開を働きかけています。これが実現するのは早くても年明けになると思います。来年の春くらいになるかと思うんですよ。漫画連載が始まるとしても3話分、5話分は作っておかなくてはならないので時間がかかってしまいますよね。色々なところからアイデアを借りつつ、展開していきたいと思っています。

編: ゲームの内容に関してはいかがでしょうか。

上田氏: 今の段階では正式サービス時にはあまり突飛ではない、比較的落ち着いた、オーソドックスな作りのMMORPGになっていると思います。AAのキャラクター達は入っていますが、武侠世界で中国を舞台にした韓国産MMORPGという基本的な世界観は守っていきます。ゲームで大事なことは間に合わせるのではなく、安定したサービスを提供することなので、無理強いをして何でもやってもらうということは今はやっていないんです。

編: 上田さんの覚悟をお聞きしたいのですが、この作品で「墨香」という1つのムーブメントを日本で起こそうというつもりはあるのですか?

上田氏: 僕は墨香というタイトルに縛られるつもりはありません。強いて言えば、MMOって面白いんだね、というムーブメントを起こしたいですね。それは、「墨香オンライン」だけでは難しいかもしれません。その可能性を感じてもらうためのファーストステップが「墨香オンライン」です。

 「墨香オンライン」は丁寧に作られた作品としてスタートします、でもそこにモナーが出てきて、2ちゃんねるに書いていたり笑いながら見ていた人に少しはやっていただいて、MMOの基本を体感して欲しい。そこでMMOに関しての意見が出てくると思いますけど、そのお客さんの要望に対して、良い意味で期待を裏切る形でアップデートを行なっていければと考えています。

 MMOをやっていて、以前からしている人はまた同じだなと思う、初心者は何をやって良いかわからない。僕はMMOに対してそんなイメージを持っています。そう思うお客さんの想いを少しだけ超えて、驚かせて、えー? なるほどね、とポンと手を打って欲しい。

ゲームに登場するモナー。今後プレーヤーがこの恰好をして走り回ることも可能になる
編: もともとのAAキャラクタをゲームに入れようという着想はどこから来ているんですか。

上田氏: 当然2ちゃんねらーの客層を取り入れたいという考えもありましたが、それよりは「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などで日本人が脈々と築き上げてきた上質のインタラクティブエンターテイメント、人を楽しませるというサービス。最後に魔王を倒したときにそれまでの冒険を思い出すようなストーリー性。

 それって実は目の前にぶら下がっているニンジンに引っ張られていたのにすぎないのに、お客さんはそんなことを考えず今までの冒険を思い出して感動する。それを僕は少しでもMMOに持っていきたいと思っているんです。

 そのアプローチのひとつがモナーであって、モナーに触れたときにお客さんが色々なことを思う、良い道しるべになってくれると思います。野原で遊べと言われてもとまどうけど、ボールが1個あれば蹴り始めたりするじゃないですか。モナーはそのボールとして機能してくれればいいんです。

編: 実際にゲーム画面で動いているモナーを見たら違和感があってびっくりしました。もう少し細身で、こぢんまりとしていて生意気なことを言っているようなイメージがあったんですが、こうした人それぞれの違和感も計算済みですか。

上田氏: そうですね。さらに、自分でモナーになれるとまた面白くなる。モナーの面白いところは顔に全く表情がない。あの顔だけですけど、僕には表情が見えるんです。あの顔にお客さんの想像力が乗っかって勝手に色々な顔になる。あの顔でPKしまくるのも僕はOKだと思っています。人によっての違和感は否定しませんし認めます。だけどその違和感すら今までのMMORPGにはなかったことですよね?

編: 確かに。モナーが独り言を言うのも面白いですね。

上田氏: モナーは「嘘を嘘と(ry」や「オマエモナー」といったセリフを喋ります。ギコとしぃはお互いを探し続けるという設定です。ただ、モナー達が喋るのはオープンβテスト中だけなんで、後はモナーを被ったプレーヤーがチャットでキャラクタなりのセリフをしゃべっていくと思いますね。

 さっきも言いましたけど、キャラクタに独自のモーションを入れていくのは結構楽しいと思うんですよ。たとえばおにぎりなら、1人だけではワッショイしないんですよ、3人集まってはじめてワッショイする。そういうことをやろうとしてるんです。

編: 対象年齢層は子供から大人までという感じでしょうか。

上田氏: それは目指しますけど、やはりコアユーザーとして設定しているのは高校生から30代までで、子供が遊ぶには少し毒が強すぎるかなとも思います。


■ 上田氏の考えるGMとしての役割、RMT、コミュニティーとは

編: 2ちゃんねるとのリレーションシップは?

上田氏: 実はあまりないんですAAキャラクタとリレーションシップをしているという感じですね。2ちゃんねるに広告は出しますけど、それだけであまりべったりとはしません。僕の中での礼儀なんです。

編: コミュニティーへの支援についてはいかがですか。

上田氏: SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)を導入していこうと思っています。BBSなどは考えていませんね。一番信用性が高いのはSNSだと僕は思うんですよ。門派で密談して欲しいんです。お客さんにも参加してみたいと思わせるようなモチベーションを与える、そんな風にしていければと思っています。

編: MMORPGというと最近はメーカー側で仕掛けるイベントがありますが、「墨香オンライン」ではどういったものが行なわれますか。

上田氏: 実はイベントの企画に関しては韓国のスタッフに任せっきりです。「モナーは誰にも渡さないぞ!」というAAにそっくりな企画も見せてもらって、僕はそれらについてまったく口を出すつもりはありません。イベントの企画よりもむしろ運用に回ろうかなと。

 僕がやるのはゲーム中のイベントが終わった後のアフターフォローですね。対戦大会が終わった後の友情をあおるための演出とかあるんですよ。SNSに誘導するのも良いし、そういったことをしっかりやらなくてはと思っています。GMが仕切ったイベントはやっていますけど、まだ(GM側の)スキルが足りないでしょうね。

 あと、GMはそんなにいらないだろうと個人的には少し思っています。GMはただの管理者ではなくて、ゲームの中の空気をかき混ぜる人、空気を演出する人というところまで役割としてはあるんじゃないですか。

 普段は見えなくなって動いていて不正をした人を捕まえるような秘密警察のようなGM、完全に表に出してみんなに愛されるGMもいる。横並びじゃなくて、キャラクタ付けがまず必要だと思うので、ユーザーサポートじゃなくて、エンターテイメントに導く存在もいて欲しいですよね。

編: ハドソンさんの「Master of Epic」では実際にイベントGMがいてロールプレイもしているようですが、そういったイメージに近いのでしょうか。

上田氏: ロールプレイに関して言えば否定も肯定もしないですね。表に出なくても存在感のある人もいると思いますし。今回のGM体験談で、僕が選考させていただいた課題文は多様性で選びました。個性のある人を選びましたね。

 いつもお客さんと一緒に遊んでいるけど、いざとなったら馬車馬のように働くGMや、姿は見えないけど人を助けてくれる人、自分からGMだって言っちゃう人……そんなGMがいたら面白いと思います。コミュニティーをうまく育てていくのはその意志がある人です。

 最終的にコミュニティーを作り出すのはそこにいる人たちですが、その人たちの気持ちをどれだけくみ取っていけるのか、GMの権利を力として行使しない人たちになって欲しいと思っています。

編: 最後にユーザーに対してメッセージを。

上田氏: 超面白い、というわけではなくて、ちょっと不思議なMMO、当たり前に慣れちゃった人に、ちょっと刺激のあるゲーム、毒かもしれないし甘すぎるかもしれないけど、刺激のあるエンターテインメントを提供できると思いますので、一度ならずとも二度三度やってもらえればとてもありがたいです。

編: ありがとうございました。

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□ネッツジャパンのホームページ
http://www.netts.jp/
□「墨香オンライン」のページ
http://www.darkstory.jp/
□関連情報
【11月3日】ネッツジャパン、「墨香オンライン」GM体験団ツアーを開催
武侠MMORPGに2ちゃんねる文化をミックスさせた異色作
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051103/netts_01.htm
【11月3日】ネッツジャパン、「墨香オンライン」GM体験ツアーレポート
タイトルの詳細と、行なわれたカリキュラムを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051103/nets_02.htm

(2005年11月4日)

[Reported by 中村聖司]



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