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会場:Net Time Soft本社、ほか
実際、両社ともびっくりするほど新しい会社で、ネッツジャパンは今年8月、親会社であるNet Time Softも2004年9月に設立されたばかりである。ただ、Net Time Softに関してはまったくの新会社というわけではなく、前身は「コルム」シリーズや「コルムオンライン」の開発元として知られるesofnet。以前はデベロッパーとしての活動がメインだったが、今後はパブリッシャーとしても活動を行なっていく。
ネッツジャパンは、その日本子会社として年末から来年にかけて、「墨香オンライン」を皮切りに、駆けっこをモチーフにしたカジュアルオンラインゲーム「Tales Runner」、海洋冒険MMORPG「ELDORADO」の3タイトルを順次リリースしていく方針。これから本格的な活動が期待されるオンラインゲームパブリッシャーである。 ■ 独自のアレンジを加えた韓国産武侠MMORPG「墨香オンライン」日本語版
ゲームのモチーフとなっているのは、韓国人作家ジョン・ドンゾ氏の武侠小説「墨香」で、もともとはインターネット小説として誕生し、人気に乗じて書籍化された単行本は全20冊。これまでに累計300万部という大ヒットを記録し、韓国では圧倒的な知名度を誇る武侠ファンタジーとして認知されている。 “墨香”とは、常に黒衣を纏うことから付けられた主人公の俗称で、小説では彼(彼女)を中心に時空や性別すら超えた物語が展開されていくが、ゲームでは彼は登場しない。プレーヤーは、墨香の魂を受け継ぐものとして、武功の極意を悟るため、試練の旅へと向かうことになる。以上が「墨香オンライン」の簡単なバックグラウンドストーリーだ。 ゲームエンジンは、「コルムオンライン」のエンジンをベースに改良を施したものを採用しており、「コルムオンライン」と比較すると、視点がフルインタラクティブになっており、他のMMORPGと同様に広大な野外フィールドが存在するところが大きな違いといえる。その一方で、インターフェイスやプレイスタイルは似通った部分も多い。 そういう意味ではグラフィックス的な面やシステム面での新しさはないが、リッチな3D表現を使わない分、処理が軽く、ノートPCでも楽々動きそうである。メインストリームを狙うには力不足だが、武侠をテーマにしたカジュアルオンラインゲームとしては、おもしろい位置にいるタイトルといえる。 ただ、「墨香オンライン」で注目したいのは、ゲーム内容よりむしろ日本展開におけるカルチャライズにある。2ちゃんねるの全面協力によるAA(アスキーアート)キャラクタ“モナー”をポリゴンモデル化してゲームに取り入れるなどのアイデアはその一端だが、GM希望者をツアーに招待したり、既存NPCの顔を含むポリゴンモデル、モーションの差し替え、アイテムモールの作り直しなど、アクロバティックな企画がごろごろしている。 仕掛け人は、「墨香オンライン」のプロデュースを務めるフリープランナーの上田浩氏。本人の意向により名は伏せるが、上田氏は過去、複数のゲーム会社を渡り歩き、様々なプロジェクトに関わってきた異色の企画マンで、自分の仕事は「既成概念をぶちこわすこと」と公言して憚らない。モナーの導入については、日本人にとっての共通言語の導入という。詳しい話は追ってインタビュー記事でお伝えしたい。
また、上田氏は2ちゃんねるの運営スタッフのひとりでもあり、“モナー”が平然と登場するのはそうした背景もある。ちなみに、今回のツアーには、2ちゃんねる代表の“ひろゆき”こと西村博之氏も招待者のひとりとして参加している。
■ すっかりGM気分を満喫したGM体験団ツアー
GM教育では、テーブルトークRPGの司会進行役というゲームマスターの語源から入り、ゲームマスターの業務概要、そして各社のゲームマスターの業務内容の紹介と続いていった。結論としては、ゲームマスターになるために重要なのは会社の研究と自分にあったゲーム選びであると、必ずしも自社の宣伝ではなく、純粋にゲームマスター養成を目的とした一般向けのセミナーを簡略化させたような内容だった。聞くところによれば、ゲームマスターの要請は確実な市場ニーズがあることから、Net Time Softではこうしたセミナーをビジネス化することも検討しているという。 GMツール体験は、既成のキャラクタにGM機能をかぶせる形でひとりずつ実施された。参加者は、GMツールの機能うんぬん以前に、キャラクタのパラメータを自由にいじれる権限に興味津々だったようで、レベルや所持金を上限まで上げてみたり、エリア移動を行なったりなど、思い思いの機能を使って、GMの全能ぶりを楽しんでいた。参加者の中にはGM経験者もおり、韓国産MMORPGの中では比較的高機能なGMツールだということだ。 翌日2日目には、開発元であるEYAインタラクティブの社内見学とデータセンターを訪問した。EYAインタラクティブは、初めて耳にするメーカーだが、それもそのはずNet Time Softと同様に、esofnetから分社化した新しいメーカーだ。社内は、1フロアに20名程度が勤務する比較的こぢんまりとした構成で、「墨香オンライン」の開発と、ネットワークゲームエンジンの開発を主業務にしている。 GM体験ツアーの締めくくりとして「墨香オンライン」のゲームサーバーを置くhanaro telecomを訪問した。ツアーらしく、まずは会議室で「墨香オンライン」で採用されているサーバー構造の概要紹介が行なわれた後、簡単な防塵グッズを身につけた上でサーバー管理ルームへと移動した。「墨香オンライン」は、100台弱のサーバーで構成されており、たまたまオープンβテスト開始直後の12時過ぎに訪れたこともあり、サーバー全台のランプが激しく点灯していた。
オープンβテストまでは韓国を拠点に日本展開が行なわれるということだが、上田氏によれば最終的にはサーバーやGMなど、あらゆるリソースを日本に移していきたいという。「墨香オンライン」の日本運営は、まだ始まったばかりだが、ゲームのみならず、オンラインゲーム文化史的な側面からも大いに注目したいタイトルだ。
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□ネッツジャパンのホームページ (2005年11月3日) [Reported by 中村聖司]
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