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ネッツジャパン、「墨香オンライン」GM体験ツアーレポート
タイトルの詳細と、行なわれたカリキュラムを紹介

11月3日収録

会場:Net Time Soft本社

 株式会社ネッツジャパンと韓国Net Time Softは11月1日~11月4日までMMORPG「墨香オンライン」のGM(ゲームマスター)体験ツアーを開催した。このイベントではゲームに関する課題を与えられた論文により選定された、GMに興味を持つユーザーをソウルに招き、観光と共に実際のGMとはどんな仕事をするのかを体験してもらおうという非常にユニークな試みであった。

 筆者はメディアとしてこのツアーに参加し、体験会に同席した。本稿では、「墨香オンライン」というのはどんな作品であるかを紹介すると共に、体験会の様子をレポートしたい。


■ 五行の属性と5つの武器、自由度の高いシステムで自分だけの侠客を育成

 「墨香オンライン」は韓国EYA INTERACTIVEが開発し、2004年9月よりNet Time Softが韓国でサービスを開始しているMMORPGである。日本ではネッツジャパンが運営を行ない、2005年11月3日よりオープンβテストが開始された。

剣、刀、拳、槍、弓、暗器、さらに五行の力を使い、プレーヤーは理想の侠客を育成を育成していく
案内役の少女は、日本のユーザーに向けて表情をかわいらしくアレンジしている。胸も少し大きめにしたという
見ているだけでとても和むモナー。街の中で彼だけが歩いているNPCである
韓国の公式ページのアイテムモール価格はすべてウォンであり、日本円に換算すると約1/10になる。札は消費型アイテムである
  「墨香オンライン」は韓国で大きな人気を誇るジョン・ドンゾ氏の武侠小説「墨香」を原作としている。「墨香」は「Dark Story」と副題が付いていて、かなりハードで重いストーリー展開をする。小説の舞台設定は武術により大きな力を持つ集団「門派」が争いを繰り広げている古の中国。「墨香」は門派のひとつに暗殺者として育てられ、戦士として戦い続けていくのである。

 元々は2001年頃にweb小説としてスタートしたこの小説は、新聞でも連載されるようになり、現在では20巻という大きなボリュームを持つストーリーとなった。その発行部数は累計300万部という大ヒット小説となっている。20巻の間にストーリーは、武術の達人達が争う「武侠小説」から仙道などが取り入れられたり、ある時はドラゴンやオークなどが登場するなどが登場するファンタジー世界での冒険譚になったり、墨香自身もあるストーリーでは女性になったりとダイナミックな展開をしている。

 「墨香オンライン」のストーリーは、原作からさらに飛躍した展開になっている。世界を支配しようとする「魔王」を追い、次元移動をした墨香は体も魂もバラバラに引き裂かれ、魔王がその手を伸ばしつつある中原世界にばらまかれてしまう。プレーヤーは墨香の意志を受け継ぐ存在として、中原を支配しようとする魔王に戦いを挑んでいくのである。ゲームの世界には、墨香はすでに存在していないのである。中原で冒険をするすべてのプレーヤーが、墨香の意志を受け継ぐ、いわば墨香の分身なのだ。

 「墨香オンライン」は魔王に支配されようとしている古代中国、中原を舞台にしたMMORPGである。プレーヤーは墨香の意志を受け継ぐ武術の達人「侠客」として魔王の手下であるモンスターや悪人と戦い、時には他の武人と競い合い、門派の一員として他の門派とも戦っていく。

 本作の特徴としてもっとも大きなものは、 キャラクタに「クラス」の概念がないところだろう。プレーヤーは火、水、木、土、金の「五行」から2つの属性を選択、さらに剣、刀、拳、槍、弓、そして暗器(針や手裏剣といった暗殺道具)から武器を選び、キャラクタを鍛えていく。「火と土の属性が得意な槍使い」といったように、様々なタイプのキャラクタを育成することが出来るのである。

 各属性はスキルによって性格を明確にしていく。木属性は回復に優れ、火属性は範囲攻撃の力を持ち、土属性は防御能力に秀で、金属性は相手を麻痺させる電撃攻撃をし、水属性は足を速くするなど移動能力に関するスキルを持つ。また属性と、使用武器によってモンスターとの相性も存在する。属性が合えば楽な敵も、逆の属性となると強敵になってしまう場合もある。

 プレーヤーは1人のキャラクタにメインとサブの2つの属性を付与することができる。モンスターとの相性で有効なダメージが与えられない場合などはパーティーを組んで敵を倒すというプレイが有効だ。パーティーメンバーと共に戦うことで、自分にない能力を補ってもらえる。さらにパーティーの時には協力して発動できる「陣法」という特殊なスキルも存在する。パーティープレイが推奨されるゲームシステムとなっているのである。

 属性、武器の選択はPvPでさらに重要になってくる。本作には決闘システムともいうべき「比武」というシステムが取り入れられており、相手に挑戦をし、了承が得られると空間に光のラインが引かれ特殊な“場”ができあがり、そこで戦いを行なうことが可能となる。この比武はパーティー対パーティーも可能となっている。侠客同士が戦う原作小説の雰囲気を出しているシステムだ。

 韓国では2005年の8月に大規模アップデートが行なわれ、30人規模のギルド「門派」による戦いが可能になった。闘技場が登場し、ここで大規模なPvPが実施され、定期的にトーナメントなども開催されるのである。この他にも上級者向けマップ「万里の長城」なども追加されている。これらの要素は高レベル向けの仕様が多いため、日本での導入時期はまだ未定である。

 「墨香オンライン」は韓国産MMORPGの中では少しバランスがきつめのゲームになっている。レベル5から死亡すると経験値が下がるペナルティーがつき、パーティーによって弱点を補って戦っていく必要もあるということで、レベルが上がりづらいという声もあるようだ。正式サービスから一年が経過した韓国でも、レベルキャップは99に設定しているが、最高レベルのプレーヤーでもレベル70位とのことである。

 日本では、ゲームバランスに関しては現在調整中である。クローズドβテストでは属性の存在をアピールするため、属性によるモンスターの影響力をアップさせていたのだが、これを調整したという。低レベル時にはレベルが上がりやすいように調整も行なわれているという。

 「墨香オンライン」は韓国ではアイテム課金制で運営されている。アイテムは武器や鎧、さらには経験値取得が一定時間アップする消費型アイテムなど様々な種類がある。経験値をアップさせるお札は3時間で約300円、能力値をアップさせる鎧が約2,000円といったところ。鎧にはレベル制限がなく、初心者がこの鎧をつければそこそこ強くはなれるが、五行のスキルや武器の熟練度も必要であり、お金を出したからといって最強キャラクタになれるというわけではない。日本では12月中旬頃に正式サービスを予定しているが、販売されるアイテムの種類や値段はまだ未定だ。

 日本での「墨香オンライン」の展開としては、やはり「モナー」の存在がはずせないだろう。硬派な武侠ものをテーマとしている本作の世界観にとっては極めて異質な存在である。今回、キャラクタの是非はおいておいて、多少筆者の視点からゲーム内のNPCという側面からこのモナーに関して少し気がついた点を上げておきたい。

 極めてのほほんと、白いもこもこした大きな猫が、てくてくと街を歩く。この「歩く」という行動に注目したい。モナーはどこに行くんだろうとついて行ってみたり、記念写真を撮ろうとしたとき、ぷいっと横を向かれてしまいあわてたり、遊園地のぬいぐるみを前にしたように思わずはしゃいでしまう。モナーという存在が街でどう動くのか、ということをきちんと提案し、こだわって登場させているのが伝わってくる。オープンβテストではこのモナーはいくつかのセリフをしゃべるという。セリフの内容は「嘘を嘘と(ry」といったいかにもモナーがしゃべりそうなセリフであり、プレーヤーの間で話題になることは間違いないだろう。

 「墨香オンライン」に関しては、モナーなどのキャラクタを取り入れたことで異なる価値観が混在する印象を受ける。しかし、運営側だけではなく、開発側もモナーを登場させるための新しいプログラムを作り出したりと、きちんと企画と開発が緊密な協力体制を取っているのが確かに感じられるのだ。その体制で、日本市場を意識したキャラクタのアレンジ、バランス調整などを行なっている。日本向けにオリジナルアイテムだけを提供するだけではなく、さまざまなポイントを日本向けにカスタマイズしたMMORPGなのである。本作をプレイして、日本向けアレンジとはどういったものか、というベクトルで楽しんでみるのも面白そうである。

古代中国を舞台に展開する「墨香オンライン」。どの属性が育成に有利なのか、パーティーで喜ばれる組み合わせは? 勝つための技は? クローズドβテスト時には対戦大会も開催された。PvPが大きな要素だけに、GMによるイベントも楽しみなところだ。


■ これから求められるGM像とは? ユーザーが初めて体験するGMという仕事

 GM体験会は「墨香オンライン」でシステムやローカライズを担当するNet Time Softの黄圭完氏が、招待されたユーザーに対し、「ゲームマスターのあり方とこれから」というテーマで簡単な講義をすることから始まった。

体験会では講師の他、ナビゲーターも務めた黄圭完氏
テストプレイをするユーザー。スタッフと活発な意見交換も行なっていた
ユーザーが一度はやってみたいと夢見る、最大レベルまで上げたキャラクタでのプレイ
GMツールを体験。自由にレベルを上げたり、街中にモンスターを呼び出したり……普段ではできない体験である
 最初にまず、ゲームマスターの仕事として、黄氏は、イベントを企画、実行し、ゲームを監視し、開発と連携していくこと、といった概要を説明した。ユーザーの間に仲裁に入り、トラブルを回避されることも時には求められるが、近年は実施しない傾向もあるという。

 次には会社によってGMに対して求めること、仕事の方針が違うことを説明。経営とユーザーを切り離しマニュアルに従った対応をする会社、GMに技術者としての能力も兼ね備えていることを要求する会社、ユーザーをもてなすホストとしてユーザーを喜ばせるGMを求める会社といったタイプを提示した。自分がどういった方針のGMになりたいかで会社を選ぶべきであるべきと黄氏は語った。

 そして、韓国ではすでにGM同士のコミュニティーも生まれており、また人材を求める会社も多いこと。責任能力を別にすれば、現在はユーザーとGMをわけるものはほとんどない。しかし、今後は自らプロフェッショナルとして自覚し、どういったGM像を目指すかで層でない人たちと明確に別れていく時代が来ると結んだ。

 この意見ははNet Time Softが「コルムオンライン」のGMを育成するときに作成した資料をまとめたものだ。今後Net Time Soft、そしてネッツジャパンは実績に伴うこういった意見や資料からGM育成のためのカリキュラムを制作していくという。今回のGM体験ツアーは、このカリキュラムのテスト、という側面もあるようだ。

 次にユーザー達はオープンβテストが開始直前の「墨香オンライン」の日本サーバーで不具合を発見するためのテストプレイを行なった。他のプレーヤーがまったくいない環境でのプレイは新鮮な体験だったようだ。オープンβテストのフィールドは、クローズドβテストの時とはスタートの街の位置が変更されていて、大きさも広くなっていた。多くのユーザーを受け入れやすくなっており、街から出る場所もわかりやすくなっている。この構成は、クローズドβテストの意見を参考に、日本オリジナルのマップに変えたということだ。

 レベルも上げのバランスも調整された。以前のバージョンではレベル5程度でモンスターと戦う時にも回復薬が欠かせなかったが、このバージョンではだいぶ楽だという。しかしそれでも1体倒すごとに回復しなくてはならず、無理をすればすぐ倒されてしまう。序盤からこの緊張感のある戦闘は、改めて「他のゲームより戦闘が厳しい」という本作のバランスを実感させられた。

 テストプレイの合間にGMツール体験として、ユーザー達は業務の具体的な説明と共に実際にそのツールを使用し、GMのキャラクタを好きな場所に出現させたり、姿を消したり、街中にモンスターを呼ぶ、といった機能を体験した。

 GMというのはこういう事ができるのか! と驚いていたユーザー達だったが、ほとんどの体験者が、自分が使って今使っているキャラクタを最強レベルにして、テストプレイでそのキャラクタを使ってとても楽しそうにプレイしていたのが印象的だった。まさに、1ユーザーの究極の夢とも言えるかもしれない。

 「GMってこういう事をしているんだ」、「本来はすごく秘密のツールのはずなのに教えてもらってうれしかった」、「モンスターを街中に出すのが楽しかった」こういった感想の他に、「きちんとGMという仕事を分析して体系的にしようとしているところを評価したい、新しいGM像を模索していることも驚きだった」という意見も。GMという存在を内側から見ることで、認識が少し変わった、というユーザーもいた。

 本来、GMがどんなことができるか、ということはプレーヤーにとって興味深い点だろう。1ユーザーにこれだけオープンな形で自分たちの仕事を説明した今回の試みは、GM教育、雇用のためのシステムとしても、かなり思い切った試みだと筆者は思った。「内情をこうやってオープンにするのは、日本でできるのかな」と、思う反面、GMの仕事にふれ、興奮を隠しきれないユーザー達を見ていると、「多くの人を対象に、説明会をすることで人材を呼び込むだけでなく、ユーザーにGMという仕事を理解してもらうためにはいいかもしれない」とも思う。

 Net Time Softが韓国で、ネッツジャパンが日本で、「GM育成」という視点から、どんな展開をしていくかも注目したいところである。

イベントでGMが着ていた衣装を着用 GMツールで街中にモナーを大量に出現させる こちらはかなり強いモンスター。実際にはどんなマップで遭遇できるのだろうか?

(COPYRIGHT 2005 NETTS JAPAN CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
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□ネッツジャパンのホームページ
http://www.netts.jp/
□「墨香オンライン」のページ
http://www.darkstory.jp/
□「墨香オンライン」のページ(韓国)
http://darkstoryonline.hanafos.com/
□関連情報
【10月31日】ネッツジャパン、MMORPG「墨香オンライン」
「ギコ」、「しぃ」の登場するサンプルムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051031/bokkou.htm
【9月28日】ネッツジャパン、MMORPG「墨香オンライン」
クローズドβテスターの応募者を対象にしたプレゼントを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050928/bokkou.htm
【9月20日】ネッツジャパン、MMORPG「墨香オンライン」
2ちゃんねるの協力で「モナー」がゲームに登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050920/bokkou.htm
【9月6日】ネッツジャパン、韓国の武侠小説が原作のMMORPG
「墨香オンライン」クローズドβテスターの募集を開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050906/bokkou.htm

(2005年11月3日)

[Reported by 勝田哲也]



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