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会場:ガンホー本社
最初に挨拶を行なったのは木谷会長。「私は色々な取材を受けるのですが、ここ数カ月色々な方から、ECO面白いね、といわれます。従来のオンラインゲーム以上に広い層に受け入れられる作品だと思っています」と語った。 続いて、森下社長からECOの新情報が語られた。まず説明が行なわれたのは「ECOの基本概念」。今回、森下社長の口から、初めて“パラレルワールド”の存在が明かされた。バックグラウンドストーリーとしては、現在エミルと呼ばれている「人間」は、かつて高度に文明を発展させることに成功したのだが、地球の資源枯渇問題を克服することができなかった。そこで人類は宇宙や地中から資源を確保するべく、天と地にのびる移動手段を開発する。 しかしこの技術は、タイタニアとドミニオンという2つの種族の住む、パラレルワールドに繋がってしまう。天高くそびえる塔はタイタニアに、地深く潜る回廊はドミニオンに繋がり、その混乱は高度な文明を発展させていた人類の文明を崩壊させてしまう。混乱から立ち直った人類は、他種族との共に生きることを選択、アクロニア大陸は3つの種族が暮らす世界となる。 「通常のファンタジー作品は、大陸から海といった具合に、世界を横に広げていくことで発展していきました。ECOでもエミルの世界であるアクロニア大陸はそうやって広がっていきますが、タイタニア、ドミニオンといったパラレルワールドも全く別なマップとして広がっていきます」と森下社長は語った。3つの世界を移動する交通手段が、ECOでの重要なキーワードになりそうだ。 続いて公開されたのは、ECOの現在12種類ある職業の2次職。現在は2次職への転職条件はまだ明らかにされていない。それぞれの2次職にはもうひとつずつ枠が存在している。12の職業がさらに分岐するのだろうか、各職業のスキルといった情報の詳細や、2次職のイメージイラストはTGSで発表されるという。 ゲーム内ではまだ稼働していないシアターの役割も明らかになった。森下社長によれば、このシアターは、「憑依」や「マリオネット」などに並ぶ、ECOならではの新要素であり、ガンホーが目指す総合エンターテイメント計画の一環を担う存在だという。この劇場で、映像コンテンツのストリーミングサービスを行なっていこうというのである。 このシアターは木谷会長が提案して実現したものだという。木谷会長の構想によれば、シアターはシネコンのような存在として、定員があり、中にいるユーザーが一定数になったらシアターの入り口を閉め、他のユーザーはシアターが開くのを待つことになる。ゲーム内で映像を見る楽しさだけでなく、待っている時間も楽しめるようにしていきたいという。 「たとえば、『ギャラクシーエンジェル』の新作アニメをここで一番最初に流すとか、カンファレンスの模様を流すのも面白いのではないか、現実社会と同じような流れを盛り込んで、現実に近い施設を作っていくと、大勢の人がゲームの世界に住んでみたいとなってくると思う。グッズもECOの世界のアイテムを現実に身につけてみたい、と思えるような物を出していきたい。国産のタイトルで、ガンホー、ヘッドロック、ブロッコリーでアイデアを出し合って、やろうと思えばすぐできるのが大きな利点だ」と木谷会長は語った。 ユーザー達はシアターの席に座りながら映像を見て、他のユーザーと会話を楽しむこともできる。また、映画館での上映前のCMのような、シアターを使った新しいビジネスモデルを提案したいという。森下社長は、「ECOの中にはオンラインゲームとしてまだどこも実現していないような要素を多数盛り込む事を計画していて、現在は1/3も実現できていない」という。今後もまだまだ隠し球がありそうだ。 次に語られたのが、オープンβテストに参加しているユーザーの傾向である。現在ECOの運営には、非常に多くのユーザーからの声が寄せられていて、その数はガンホーが手がけるオンラインゲームタイトルの中で一番の数となっているという。要望はとても細かい物も多く、内容はゲームの不具合や改善要求、職業間のバランスなど、具体的なものが多数を占めるそうだ。 ユーザーの傾向としては、レベル1~10までのキャラクタが全体の70%近くを占め、11~20が26パーセント、21~30が4.6%、31レベル以上は0.2%である。職業は、ウァテス、スカウト、マーチャント、ソードマンが人気で、種族としてはエミルが47%、タイタニア、ドミニオンは女性キャラクタを選ぶプレーヤーが多いのに対して、エミルは男性キャラクタが多い。 ビジネス展開としては、インターネットカフェとの連動、モバイルコンテンツとのゲーム内連動、さらに攻略本、アンソロジーコミック、そして絵本といった展開が予定されている。 木谷会長からは、今後発売するECO関連商品が公開された。これらの商品はまず、買ったお客さんが身につけて、他のお客さんに宣伝をしてくれる、というコンセプトで制作されているとのこと。まずひとつ目は、キャラクタのイラストがプリントされたタオル。このタオルはマイクロファイバーという特殊な繊維でできており、キャラクタのイラストが色鮮やかにプリントされている。
次に、エミル、タイタニア、ドミニオンをイメージしたTシャツ。エミル、ドミニオンはそれぞれ各種賊の特徴である羽がプリントされており、エミルの場合はECOの案内役である男の子エミル君の肩に止まっているネコのようなキャラクタの姿がプリントされている。さらにまだ開発中であるが、くまのぬいぐるみの姿をしたマリオネット、タイニーがかぶっている帽子(熊の耳付き)が紹介された。ブロッコリーはまずはこういった目立つアイテムを展開してから、携帯電話のストラップなど身につける商品を展開していく予定だ。
■ 今後のマーチャンダイズ、シアター展開。森下社長、木谷会長インタビュー Q. マーチャンダイズの大まかなスケジュールを教えてください。 木谷会長: ストラップといった細かいものは、もう少しユーザーが増えてきてから、年末を考えています。そこからユーザーの傾向や人数を考えて、来年の春にということですね。グッズ以外、例えばパーティーゲームはユーザーが多くなってから、コレクション性の高い物は、ゲームと連動すればありかな、とも思います。 現在のTシャツやタオルは、数百個、多くて千個といった規模で、正直1万といった単位ではまだ作れない。これは次の段階ですね。年末では何千個単位で、マスにアピールするか、それとも違うかはもう少し様子を見ないとわかりません。 グッズは感情移入をしてくれないと買ってくれない。大きな数を売るには、「課金ユーザーがどれくらいいるのか」が目安になります。それがわかると、だいぶ違いますね。今の時点だと、店頭を作るためのグッズであって、11~12月あたりで、そういった店頭を作っていきたいとおもいます。 森下社長: まだプロモーション的にはコアユーザーや、オンラインゲームを遊んでいる人たちが中心です。東京ゲームショウなどで、もっと一般層に浸透させるようにしていきたいですね。 Q. ゲームにあまり興味を持っていない人たちを取り込むために、どんな戦略を進めていきますか? 森下社長: インターネットでソーシャルネットワークサービス(SNS)といったコミュニティーに参加している人、私達は“チャットユーザー”と呼んでいますが、こういった人たちに向けてもアピールしていきたいと思います。今まではゲームファン、アニメファンを中心のターゲットにしていましたが、さらに広げていこうと思っています。 世界観を楽しんだり、みんなで協力をして何かをしたり、というのはSNSではできない一歩進んだコミュニケーションだと思っています。こういった部分を提案していきたいですね。 Q. 先ほどシアターでブロッコリーのアニメなどを流す、といったお話がありましたが、グッズなども現実との連動といったアイデアがあるとのことですが、ゲームの中に現実の要素を持ち込むと、ゲーム内の世界観が壊れてしまうおそれがあると思います。どういったバランスにしていくのですか? 木谷会長: 最初はシャレの範囲内にしていこうと思っています(笑)。ただ、僕はオンラインゲームは「街」と同じで、街の中で歩いていたら映画の広告を見て中に入ってみるなど、イベントのひとつとしていきたい。映画は現実世界の非現実であって、それが逆転してはいけない。住人の人たちが、「ゲームの世界を壊すからいらない」といえば、それはなしにするべきだとも思っています。 提供してみて受けるかどうかを試してみる。それは仮想空間だからこそできることだとも考えています。 森下社長: まずは親和性のある企画をしていきます。生放送をしてみたり、ECOのファンとの関連性のあるものをしていきたいですね。ゲーム内でユーザーさん達が作った劇を放送するといった使い方もできると思います。 Q. シアターに関しては、例えば有料コンテンツを配信するような構想まで考えているのでしょうか? 森下社長: ゲーム内でのストリーミング配信というのは前例がありません。ただ将来的には、追加したお金を払うと映像を見れるというサービスも受け入れられるかもしれません。 木谷会長: 最初は5分くらいのPVのようなコンテンツでお客をどんどん入れ替える方がいいと思います。僕はやっぱり、オンラインゲームという言葉の「ゲーム」という部分に縛られすぎているのではないかと思います。オンラインコミュニティーであり、オンラインワールドであると思うんです。 ゲームと考えると何でそこまでやらないといけないの、と思いますが、もちろんゲーム性はあるべきとは思いますが、ただ住んでいる人もいる。そうじゃないと何十万人も常にずっといるということは難しいと思います。 森下社長: シアターだけじゃなく、ゲーム内で現実のアイテムを買うのも可能かなあと。ゲームの中で現実のものを買って、さらにゲーム内にも特典のあるアイテムが届くとか、そういう課金もできるかと、あくまで将来的な構想ですよ(笑)。「ECOに最適グラフィックボード」といった商品をゲーム内で販売することも可能かなと思います。 Q. ECOを海外展開する際に、このシアターの構想は障害になりませんか? 森下社長: 著作権などの問題もありますから、海外ではこの機能を使うか使わないかは、海外での国々において変えられるようにしていきます。こちらで流しても大丈夫というものは積極的に渡していきますが、ビジネス的なものは、海外によって事情が異なっていきます。 オンラインゲームの将来的なビジネスとしては、ブロードバンドならではのeコマースや、音楽配信、映像配信、例えばゲームのBGMをお気に入りの曲に変えたりもできると思います。ただ、まず現在はマーケットを作っていく段階であり、そのテストとしてのシアターですね。
ゲーム内でのストリーミング映像配信というのは、他のMMORPGでは実現しなかった要素である。例えばゲームショウでしか見れなかったPVをゲーム内でいつでも見ることができて、仲間と情報を交換したり、ボス攻略などGMが撮影した映像を見たり、ECOの豊富な衣装とアクションを組み合わせたユニークな寸劇など、見てみたい映像はたくさんある。シアターは非常に魅力的な場所となるのは間違いない。 大陸の秘密、騎士団達の動き、他種族との関係、そして滅びてしまった先史文明の遺産、キカイ。筆者はECOの世界観の部分に大きく期待を寄せている。こういった世界やストーリーの情報の一部は東京ゲームショウで明らかになり、今後実装されていくという。一見こういったゲームを掘り下げる方向性と、ゲームをプラットフォームにした新しいビジネスモデルの提案というのは、相反するようにも思える。ECOを始める人は、「ゲーム」に魅力を感じたからで、「物を買ったり、音楽が聴きたいから」という理由で、ゲームを選択するからではない。 ゲームはまず、良質なゲームであるからこそ多くのユーザーを獲得できる。19万人という登録会員数はECOの将来性に魅力を感じたからこその数であろう。ユーザーとスタッフの努力によって、この19万が今後、大きく増加する可能性は大きい。 ゲームという枠、そしてゲームの住人という視点を持つ「お客」を相手にしたビジネスというのは、現在「アイテム課金」があるが、今回提示された「現実とのリンク」はまたまったく違う価値観を生み出す可能性もある。メーカーがユーザー像を把握した上でビジネスを提案する。それが、オンラインゲームというリアルタイムでダイレクトな市場で展開するのは、非常に面白い部分ではないだろうか。どうなっていくか予想ができない部分もあるが、今後も期待していきたい。 (c)2005 BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年9月6日) [Reported by 勝田哲也]
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