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会場:幕張メッセ
その一方で、同社は先月M&Aにより、ソフトバンクグループに実質買収されるという激変に見舞われた。新人事にはCEOが共同体制になるだけでなく、会長の変更も含まれ、Gravity成功の立役者である金会長の動向について注目が集まった。今回は渦中の人であるGravity会長金正律氏に、「ラグナロクオンライン2」の開発状況、そしてGravityの今後、そして会長自身の今後の身の振り方について話を伺ってきた。 ■ 前作のコアメンバーが制作する「ラグナロクオンライン2」 編集者(以下、編): 東京ゲームショウ初日に「ラグナロクオンライン2」を見せていただきました。キャラクタまわりの演出に非常に凝っていて、前作の強みを活かしたゲームだと感じました。
「ラグナロクオンライン2」らしいゲーム観を作っていくことが今後の開発のポイントとなると思います。「ラグナロクオンライン2」に関しても私達は“ワンソース マルチユース戦略”を適用していくべく、こちらも準備中です。昨日の発表会ではおかげさまで皆さんに非常にご好評をいただき、うれしく思っています。 編: 現在までの手応えとしていかがでしょうか。 金会長: 思っていた以上の反応を日本国内に限らず、韓国、さらに他の国の方からもいただきました。ただし、実際に具体的なゲームの様子をお見せできるのは年内に予定しているβサービスになります。 編: 「ラグナロクオンライン2」の開発状況と、現在、何人ぐらいで開発してるのかを教えてください。 金会長: 完全に自社開発で進めていますが、メインの開発者は60~70名の規模となっています。 編: ワールドワイドで見ても大規模な開発人数ではないかと思いますが? 金会長: 全世界が注目している中で私達は「ラグナロクオンライン2」の開発を進めています。この作品は大作になることを目指していますので、ゲームのシナリオも全体の構想しているストーリーは、本にすると何冊ものボリュームになるほどのシナリオを1つ1つ開発をしています。 予想図としてはとても大きなものを想定しておりますので、時間も人もそれだけ大規模になってしまいました。これからも開発の状況に合わせて、人員の補充や開発規模の拡大は考えられます。 編: 「ラグナロクオンライン」ファンが気になっているのは、「ラグナロクオンライン2」に前作スタッフがいったい何人関わっているのだろうか、というあたりではないかと思いますが? 金会長: 「ラグナロクオンライン2」の主となる開発者、企画のメイン担当、グラフィック、クライアントプログラマーなどは前作を担当していたコアメンバーが務めています。コアメンバーがそのまま最初から今作の開発を手がけているのです。 日本でも3年以上前にGravityを離れたキム・ハッキュ氏の話がよく報道されています中には彼がほとんど1人で作り上げたといった報道もありますが、事実ではありません。彼は確かに「ラグナロクオンライン」の初期の開発に携わったメンバーですが、彼はクライアントプログラマーのひとりとして開発に携わったというのが本当のところなんです。 ゲームはひとりで作れるものではありません。もちろんプログラマーや開発者のアイデアや気持ちが入るものではありますが、「ラグナロクオンライン2」は、前作の初期から企画を担当していた者や、グラフィックを担当していた者がそのままスタートさせています。オンラインゲームはプログラム、企画、シナリオなどが1つになって生まれてくるコンテンツです。1人の優れた人材が1つのゲームを生み出すものではないと思っています。 編: 要するに「ラグナロクオンライン」を開発したコアメンバーは今でもGravityに在籍していて、そして現在は「ラグナロクオンライン2」を作っているということでしょうか。
金会長: はい、まさにそのとおりです。 ■ 「ラグナロクオンライン2」のパブリッシング、今後の展開は? 編: 気になるのは、パブリッシャーの選定ですが、パブリッシャーの選定基準というのは、どのあたりになるでしょうか?
資本力は高いけれども技術力がない、マーケティング力はあるけど資本力が不足している、など色々な企業がありました。それに信用度のない企業とは、他の3つをいくら満たしていても一緒に仕事をするのは難しい。その複合的な要素を考えてパートナーを選定し、成功を収めてきました。 ただ、「ラグナロクオンライン2」に関しては今後新たな選択基準が必要になってくると思います。この新たな選択基準は、新たな経営陣の意志決定によるところになるでしょう。 編: 金会長の個人的な考えとしては、ガンホーが「ラグナロクオンライン2」のパブリッシャーになるというプランはありでしょうか? 金会長: これは会長ではなく個人としての考えですが、ガンホーさんは基準を満たしているのか、ということに関しては、私は充分満たしていると思います。実際にゲームをパブリッシングするかどうかではなくて、基準を満たす充分な企業である、ということです。 編: その最終的な決定は、金会長ではなく、会長の意志を継ぐ新たな経営陣が決めると言うことでしょうか? 金会長: その通りです。 編: ビジネスモデルについてお聞きしたいと思います。韓国ではアイテム課金が主流になっていますが、「ラグナロクオンライン2」はどのようなプランを考えていますか。 金会長: 前作に近い形の収益モデルを基本的には考えています。つまり、アイテム課金ではなく、月額課金ですね。ただし、実際に具体的なビジネスモデルが決定されるタイミングは、年を越えてからになると考えています。 編: 「ラグナロクオンライン2」のサービスの対象となるエリアは、韓国や日本以外で、どのくらいの範囲を考えていますか? 金会長: 前作と同じように全世界を考えています。「ラグナロクオンライン2」では、開発時からゲームの背景やコンセプトを全世界でサービスをするということを前提に制作してきました。ただいきなり全世界というわけにはいきません。まずは韓国、日本、台湾といったところになるでしょう。 編: 日本、韓国、台湾の他に、新しく重要視している国、地域はありますか? 金会長: これまでの経験から、やはり主な市場は東南アジア地域になるでしょう。「ラグナロクオンライン」をパブリッシングしていく中で、思っていた以上に良い市場の可能性があると考えているのは南米地域です。ブラジル、メキシコといった地域では好評をいただいていて、今後の可能性も高い地域だと考えています。 北米はもともと市場規模が大きい地域ですが、インフラが韓国を100とするならば、15位の段階だと考えています。アメリカだと地域によってはモデムを使ってネットにつないでいるところもありますから、今後の展開によっては伸びが期待できる市場です。 編: 前作は北米、ヨーロッパで苦戦しましたが、「ラグナロクオンライン2」ではどうなるでしょう? 金会長: 前作の苦戦の要因のひとつは、地域のインフラの整備が整っていなかったということを考えています。南米で展開した際には、同時接続者数が2万を超える人気を集めました。
我々は北米に支社を持っていて、現在も20~30名の社員が「ラグナロクオンライン」を展開するために努力を続けています。やはりインフラの整備の状況が整ってきた時に機会が来る、今はその状況を待っている段階です。 ■ Gravityの今後、そして金会長の今後
金会長: 今回の発表に関しては、韓国を拠点にする企業としてゲームに対しては市場から十分な評価を受けることができました。ただし、資本市場からは十分な評価を得ることができませんでした。 私達が韓国の企業として世界企業になるというより、世界企業となるための発展として、今回の発表があったと思いますし、Gravityが世界に踏み出す第一歩になると思います。 編: 金会長は今後どうなさっていくのでしょうか。 金会長: 現時点で私自身はこれから何をしなくてはならないか、何をしたいかについては、何も考えていないというのが正直なところです。ただこれからもGravityの発展のためにサポートしていくと言うことは、今も、そして明日も続けていきます。私にとってGravityは、最初5人のスタッフからスタートしまして、500~600名の企業まで育て上げた、非常に愛着のある企業ですから。 「ラグナロクオンライン」にも強い愛情を持っていて、これからもなくなっていくことはありません。Gravityの発展のためのサポートし、努力をしていくことは今後も続いていきます。そうはいっても来年上旬以降には、私も日本には非常に縁のがあると思っていますし、日本に愛情を持っていますので、何か新しいことをやることになれば、日本に関係があるところで、何かやっていきたいと思っています。 編: それは新しい会社を作って、新しいゲーム事業をはじめるということですか? 金会長: いままで25年以上ゲームに携わってきました。他のことはできないんじゃないでしょうか(笑)。このままゲームに始まり、ゲームに終わるのじゃないのかとも思います。とはいえ私はゲームが好きですし、ゲームに関わる仕事をしたいと思う気持ちも持っています。 どういう形でもGravityをサポートする気持ちは変わりませんし、仮にゲーム事業を立ち上げる時には、私とGravityが良い関わりが持てるようにしていきたいです。個人的には日本を基盤にした新たなスタートの可能性もあるのではないかと考えます。 編: 最後に日本のゲームファンへメッセージをお願いします。 金会長: 日本で「ラグナロクオンライン」がNo.1タイトルになった要因は、日本のユーザーがこのタイトルを本当に好きになってくれて、ゲームを楽しんでくれたから、ここにつきると思っています。 日本のユーザーの愛情が、世界で成功する要因にもなりました。そういう意味で、日本のユーザーには本当に感謝しています。今後日本のユーザーに対して何かしてあげられることがないかと考えていまして、それは私の宿題になると思います。 編: ありがとうございました。
□Gravityのホームページ(日本語) (2005年9月17日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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