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★PS2/GCゲームレビュー★

「サクセスモード」を中心にさらに再検証してみました
「実況パワフルプロ野球12」

  • ジャンル:プロ野球+育成シミュレーション
  • 発売元:コナミ株式会社
  • 価格:7,329円
  • プラットフォーム:プレイステーション2、ニンテンドーゲームキューブ
  • 発売日:発売中(7月14日)



 7月14日に発売され、今年も順調にセールスを伸ばしているコナミの定番野球ゲーム、「パワプロ」シリーズの最新作。操作方法をわかりやすく教えてくれる「野球教室」モードをはじめ、オリジナルの応援曲を作成したり、さらにはネットワークを利用した通信対戦やオリジナル選手のデータ交換などが行なえるシステムも新たに搭載している。

 去る7月15日に掲載したレビュー記事に続き今回が二度目の掲載となるが、以前よりもよりプレイ時間を長くとったうえで、前回は十分にフォローしきれなかったところを改めて検証している。特に本シリーズの名物である「サクセス」モードについては、各シナリオを繰り返しプレイして数々のイベントを消化し、前回の記事では推測にとどまっていた箇所をさらに掘り下げたうえで検証を行なった。


■ 基本システムに見る「パワプロ」の醍醐味……野球ゲーム本来の駆け引き・面白さをとことん追求

 操作方法については、前作「実況パワフルプロ野球11」から変化がないことは前回のレビューでも指摘したとおりだ。今回はもう一度おさらいの意味も含めて本作品ならではの特徴を紹介するとともに、筆者独自の主観による前作とのプレイ感覚の違いについてもまとめていくことにしよう。

 まずバッティングにおいては、カーソルを広げた状態でミートを重視するか、または小さくして空振りしやすくなるリスクを負いつつ「強振」をして長打を狙うのかを状況に応じて使い分ける戦略性は今回も健在。「強振」はミートカーソルが小さくなり、さらにボールを捕らえるタイミングがよりシビアになるというリスクがあるが、その分通常よりも打球が飛ぶのでホームランが出やすくなる。

 ピッチングではストレートにカーブやスライダー、チェンジアップなどの変化球を織り交ぜ、緩急をつけて相手を抑えていくところに楽しさがある。低めよりも高めの球のほうが打たれやすく、また低めのコースはコントロールがズレてボール球になりやすいというシステムも実にユニークだ。

 守備では際どい打球に対してダイビングやジャンプを使ってキャッチすることもできる。ランナーが出ると内野手が自動的にゲッツー(ダブルプレー)シフトを敷いたり、また送球時はボタンを押すタイミングによってボールのスピードが変化するのも大きな特徴だ。

 筆者が繰り返しプレイしているうちにまず気が付いたのは、バッティングにおいて打球を引っ張るためには前作よりも早いタイミングで打つことが必要になったということ。特に速球を引っ張る際はかなり早いタイミングで振らなければいけないので、特に初心者は慣れるまでに多少の時間を要するだろう。

 ピッチャーの投球フォームが、ワインドアップ時とセットポジションとではそれぞれ大きく異なっているのも特筆すべき点だ。ワインドアップではボールをリリースするまでの時間が各ピッチャーごとにバラバラで、また変則的な投げ方をする選手も少なからず存在するため、それぞれタイミングを合わせて打つのが意外に難しい。しかしランナーが出てセットポジションに変わると、途端にどのピッチャーでもタイミングがとりやすくなるから面白い。好投手を攻略するうえでは、たとえ足の遅い選手であってもまず出塁させることが重要なポイントになってくるのは間違いない。

 守備の操作に関しては、以前よりもやや難しくなったというのが筆者の印象。これはボールをキャッチした瞬間の体勢によって、直後の送球の良し悪しにより大きな影響を及ぼすからだ。選手個々の能力差ばかりでなく、体の向きや助走の有無、あるいはボタンを押すタイミングなどによって送球が早くなったり遅くなったりするので、たとえシリーズ経験者であってもこの感覚に慣れるまでには相応の時間を要するはず。  さらには盗塁やヒットエンドラン、あるいはバントや牽制球などといった一連の操作をマスターすれば、攻守両面においてさまざまな駆け引きを楽しむことができる。二頭身のコミカルなキャラクタからは想像もつかないほどに作り込まれた、「パワプロ」の完成された面白さは今回も健在である。

同じ投手でも、ワインドアップとセットポジションとではフォームおよびリリースまでの時間がガラリと変わる。攻略および演出の両面において注目してほしいポイント
守備では捕球後の野手の動きに注目! ボタンを押すタイミングや体勢によって、さまざまな送球のモーションを見せてくれるのだ



■ 本当に初心者には厳しいのか? 「サクセス」モード再検証

 前回の記事において、「サクセス」モードは初心者にとって厳しいものになるだろうと筆者は指摘したが、具体的にどのような根拠をもってこの考えに至ったのか、改めて検証していくことにしよう。なお、今回は全シナリオを順番にローテーションでプレイしながら、野手および投手を合計10人育成を行なったうえでの結果から本記事を作成している(※途中でゲームオーバーになった分の一回を含めると、合計11人分をプレイした勘定になる)。

 今回新たに導入された“街作りシステム”の特徴は、映画館やバッティングセンター、デパートなどの各施設でアルバイトを続けていくと徐々に規模が大きくなり、報酬額もアップしていくことである。一度クリアした後でも、街のデータは次回プレイ時にそのまま継続されるので、繰り返しプレイすればするほどお金が貯まりやすくなるというメリットがある。

 しかし、アルバイトをせずにしばらく放置していると、その施設がつぶれてなくなってしまうことがある。当然つぶれない程度にアルバイトを実行したいところなのだが、実はこのとき野球の練習よりも多くの体力を消耗してしまうという大きなデメリットがあるのだ。特に「奇跡を起こせ! プロテスト編」においては、ある程度の資金がないと試合に出て経験を積むことすらできなくなるので、街の施設をつぶさず、なおかつ相応の能力を持った選手を作るためには、体力の配分を考えるのが非常に難しいように筆者は思えた。

 また、ゲーム中に施設がつぶれる予兆を示すメッセージが一切表示されないため、どのくらいの頻度でアルバイトをすればいいのかがわかりにくいのも筆者は不満に思えた。例えばつぶれそうな施設がある場合には、親友の矢部くんが「○丁目の○○がつぶれそうでやんす!」などと教えてくれるようなメッセージが挿入されるといった配慮があってもよかったのではないだろうか。「絶体絶命! 社会人助っ人編」のシナリオで相応の結果を残せば街の景気が良くなるという配慮をしてはいるものの、だからと言ってわざわざそれだけのためにこのシナリオをプレイするのかと考えると、正直ちょっと厳しいものがある。

 つぶれた後の空き地にできた工事現場でアルバイトをすれば再び施設が出来上がるものの、どんな施設が建つのかは完成するまでまったくわからない。すでに別の場所に存在する施設と同じものになってしまうケースもあるし、さらに運が悪いとコンビニやバッティングセンターなど、彼女とのデートの際には利用できない施設が増えてしまうこともあるのだ。野球の練習以外にも、アルバイトの回数および体力の配分、さらには各施設の特徴などを把握するために多くの時間が必要になることが、初心者には難しいと思われる最大の理由であると筆者は考える次第だ。

アルバイトを繰り返すと街の規模が拡大して報酬がアップするものの、しばらく放っておくとつぶれてしまうところが難しい
攻略上とても重宝する温泉が、ある日突然つぶれてしまうと痛い……


 その他、細かいところで気になったのは、最初からプレイできるシナリオの「はばたけ! 野球アカデミー編」の最後に登場するイベント(試合)の難易度がかなり高いこと。相手チームの能力が単純に高いだけでなく、こちらの投球を的確にミートしてくるので抑えるのが相当に難しい。しかも相手にリードを許した状態からプレイすることが多いので、逆転して勝つのはかなりたいへんなのだ。最初のシナリオではあまり強いチームが出ないようにしておき、後から出現するシナリオになるほど難しくなるようにしたほうが、プレーヤーにとってはわかりやすくてよかったのではないだろうか。

 「奇跡を起こせ! プロテスト編」においては、仲間の部員を捜索する際に以前自分が育てたオリジナル選手が助っ人として登場することがある。このシステム自体は本当に嬉しいのだが、出現する確率がひじょうに低いのがちょっと残念だった。また、お金を払って練習効率の高いグラウンドを借りると、一部のメニューが実行できなくなる場合があるのも正直疑問だ。普段練習をしている“河川敷”よりは明らかに環境がいいグラウンドを借りたはずなのに、練習メニューがいきなり制限されてしまうのはちょっとわかりにくいように思えた。

グラウンドを借りると、なぜか練習メニューが限定されてしまうことがある。チームメートの捜索時も、複数の候補者中から誰が選ばれるのかがランダムになっている点もちょっとややこしい


 街作りなどのシステムが難しいという印象は残念ながら今回も拭えなかったが、これ以外のところで初心者向けに配慮をしたと思われるところにいくつか気付いたので、以下にその内容を列記しよう。

 まず第一に、ピッチャーの育成においてすべての変化球を自由に選んで習得できるようになったことが挙げられる。過去の作品ではドロップやナックルなど、特殊な球種はある特定のイベントを発生させないとマスターできなかったため、この配慮は実に嬉しい(筆者も過去に苦戦した記憶が少なからずある)。

 練習中に怪我をしたり、交通事故に遭って入院を余儀なくされてしまうイベントがまれに発生するのも過去のシリーズと同様だが、怪我が治った後のリカバリーがこれまでのシリーズよりもぐっと易しくなったという印象を受けた。事実、筆者は「交通事故で骨折、入院……」という最悪のイベントに10回中2回も遭遇してしまったが(笑)、退院後に出遅れた分を挽回して、いずれも最終的にはクリアすることに成功している。以前は一度大きな怪我をしてしまうと、回復後にいくら頑張ってもクリアできる見込みがないほど厳しい状況に追い込まれるケースが少なくなかっただけに、このメリットは極めて大きいはずだ。

 それから試合に負けてしまっても、以前よりも多くの経験値がもらえるようになっているようだ。また監督やスカウトの評価ポイントが下がることもあまりないので、この点でもクリアをしやすくなるように調整を図ったものと思われる。冒頭にも書いたように、11回のプレイ中10回もクリアすることに成功した主たる要因はここにもありそうだ。

 ちなみに唯一クリアに失敗したのは、「絶体絶命! 社会人助っ人編」において借金をすべて返済することができなかったときである。これは明らかにミッションを達成することができなかったための結果であり、ゲームオーバーとなっても100%納得がいくものであった。

   前回の記事では街作りのシステム理解に集中するあまり、どのシナリオも比較的クリアしやすくなっていることにまったく気付くことができなかったが、このような配慮がされていたことは改めて評価しておきたい。今回は野球以外の要素がいろいろと絡んでくるため、初めのうちは誰しもが苦労するだろうが、選手の能力を極限にまで高めようなどとストイックにならなければ、比較的オリジナル選手は作りやすくなっている、というのが現時点での筆者の結論である。

「事故りんぼ」となっても、ご覧の通りクリアすることに成功している。次回以降のゲーム中には助っ人として登場することもあるので、出来栄えに不満足な点が残っても構わずにどんどんクリアすべし!



■ 適当にいじっているだけでもとにかく楽しい! オリジナル応援曲の作成

 「サウンド&応援曲」モードにおいては、オリジナルの応援テーマ曲を作って遊ぶことができる機能が搭載されている。作成した曲は好きな選手の応援曲として設定することが可能で、以後打席に立つごとにオリジナル曲が演奏されるようになるのだ。前回の記事では単にこの機能があることをを紹介しただけであったが、今回は筆者が実際に3曲ほど作成してその使い勝手などを試してみた。

 まず気がついたのは、リズムパートの太鼓の音色と「かっ飛ばせ~!」などの掛け声がとにかくカッコいいこと。また、これらの入力はあらかじめ用意された数種類のパターンの中から選ぶだけで瞬時に一小節分の設定ができてしまうという優れもの。たとえ楽譜や作曲に関する知識がなくても、これなら簡単にリズムパートが作れるはずだ。

 また、あらかじめ用意されたサンプル曲をロードして、これをちょっといじるだけでも簡単にオリジナル曲が作れるので、ただ適当にリズムまたは音符を変えて遊んでいるだけでも十分に楽しめるはずだ。

   実を言うと、筆者はPC用のシーケンスソフトを使った作曲を趣味のひとつとしているので、本モードの登場はまさに願ったりかなったりであった。ゲーム機のパッド用に操作が簡略化されているので、慣れればものの15分ほどで簡単に1曲分の入力ができるのもこれまた嬉しい。音符や太鼓のリズムを適当に並べて演奏しているだけでも、とにかく楽しくてしかたがないのだ。

 ただ欲を言えば、サンプル曲をもっと多く収録していればさらに面白くなったように思われるが、このシステム自体には文句のつけようがまったくない。次回以降のシリーズ作品においても、ぜひ継続して搭載してほしいモードである。

サンプル曲やリズムだけが入力されただけのテンプレートがあらかじめ用意されているので簡単に曲が作れる。掛け声もバリエーションが豊富で楽しい



 以上、前回よりも多くのプレイ時間を割いて再度記事を書いてみたが、いかがだっただろうか。

 筆者は毎年「パワプロ」シリーズをプレイするにあたり、「サクセス」モードで育成した選手のみでオリジナルチームを作り、その後「ペナント」モードに参戦して優勝することを目標にしてプレイしている。今回は街作りシステムなどの導入により育成にかなりの手間がかかるものと当初は覚悟してプレイしたが、実はクリアしやすく調整されていたことがわかったのはまさに朗報であった。読者諸氏におかれても、単にゲームの難易度が上昇しただけではないことを本記事を通してご理解いただければ幸いだ。

 前回の記事の繰り返しになるが、「パワプロ」初心者はまず「野球教室」モードを繰り返し練習して、操作方法をひと通りマスターしてから実戦に入ることをオススメする。その後はオリジナル応援曲の作曲をはじめ、今回は詳しく取り上げなかったが「ホームラン競争」や「マイライフ」、「チャンピオン大会」などの各種ゲームモードにも挑戦して、本作品の面白さを心ゆくまで堪能していただきたい。

(C) 2005 KONAMI
(社)日本野球機構承認 NPB BIS プロ野球公式記録使用 フランチャイズ13球場公認 (社)全国野球振興会公認
ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2004年プロ野球ペナントシーズン中のデータを基に制作しています。

□コナミのホームページ
http://www.konami.co.jp/
□「パワプロ」総合サイト「パワプロ通信」
http://www.konami.jp/gs/game/pawa/
□製品情報
http://www.konami.jp/gs/game/pawa/12/
□関連情報
【7月15日】★PS2/GCゲームレビュー★ 「実況パワフルプロ野球12」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050715/pawa.htm
【7月8日】欽ちゃん、「パワプロ12」に参戦!
「茨城GG」がサクセスモードに登場!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050708/pawa.htm
【7月5日】コナミ、「実況パワフルプロ野球12」
球場試遊イベントを東京ドームで開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050705/pawa.htm

(2005年8月25日)

[Reported by 鴫原盛之]



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