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会場:サイバック西通り店
今回はイベントの仕掛け人であるNCJビジネスクリエイションチームマネージャの前田幸佑氏に、イベント開催の経緯から、前田氏が推進しているネットカフェビジネスの実態と今後の展望について話を伺った。
■ 「リネージュII バーリトゥードトーナメント 2005」開催の経緯
前田幸佑氏: NCJは、オンラインゲームを配信する会社として、在宅ユーザー向けにサービスを提供していると見られがちなのですが、我々のチームが力を入れているのはリアルへの誘導という部分です。その格好の場としてネットカフェへの展開に力を注いでいます。 ネットカフェというリアルの場にユーザーを誘導し、そこでコミュニティを作ってもらう。そこで生まれたコミュニティによってユーザーがどんどんと広がっていくということを考えています。「リネージュII バーリトゥードトーナメント 2005」はその一環として企画したものです。 コミュニティの接点となるのはやはりゲームをプレイすることそのものですが、「リネージュII」はPvP要素が充実していますから、グループ戦のイベントを企画することでリアルで連携を採りつつ、これをきっかけにコミュニティが広がっていけばいいなと。 編: こうした対戦イベントは、クラン単位やギルド単位で募集をかけることが一般的だと思いますが、わざわざ個人単位にしたのは何か理由があるのですか? 前田氏: 今回はイベント専用のテストサーバーを特別に用意して、その中で特殊なキャラクタを使って対戦するという方式を取り入れています。ギルド単位で募集をかけるとすればどうしてもサーバー別ということになりますが、現状はまだサーバー間に人数や熟成度の点で隔たりがあります。ですから、今回はギルド、サーバーに関係なく、全員専用サーバーでその場のパーティーを組んでいただくことにしました。 編: こうしたPvPイベントは何回目で、今後も定期的に開催していくつもりなのでしょうか? 前田氏: この規模のPvPオフラインイベントは初です。それだけに今回は「テストマーケティング」と位置づけており、参加者やユーザーの反応を見てから、今後の展開を検討していきたいと考えています。現時点で具体的なプランはまだありません。 編: なるほど。先ほど開会式が終わり、今まさにPvPトーナメントの第1回戦が行われている段階ですが、ここまででどのような手応えを感じてしますか? 前田氏: 今回は、PvPが大きなテーマになっていますが、それ以外に、レベル75、Aグレード装備といったプレミアム性、それから総額100万円という賞金、リネージュガールとの撮影会など、様々な特典を用意しています。夏休みまっただ中の日曜日ということもあり、楽しんでいただけるのではないかと思っています。ただ、私は責任者としてこれで満足しているわけではありません。 編: というと? 前田氏: たとえば、開催地の選択ですね。福岡をメイン会場に、全国14店舗で開催することになりましたが、これはベストだったのかどうか。結果を見てから、今後の展開に役立てていきたいと考えています。 編: ゲームイベントというと東京がメイン開催地というイメージが強いですが、それだけに福岡で開催というのはちょっとした驚きがありました。サイバックグループでやるというのは規定事項だったのですか? 前田氏: いえ、そういうわけではないのですが、数年前からサイバックさんとは、「リネージュ」のイベント等をやってきた経緯がありますし、ハコとして考えても全国でここがベストだという判断からです。 あとはオペレーションの部分でも、スタッフがイベント運営に慣れているということもあります。まあ今日見ていた限りでは100%の運営というわけではなかったですけども、全員がイベントを経験してきているので、ある程度委ねる形でお願いしました。 編: 個人的には当日抽選というアイデアは素晴らしいと思いました。 前田氏: ありがとうございます。現場のライブ感といいますか、運営側と参加者の一体感のようなものを作りたいと考えていたので、実際にやってみて特に問題も発生せず、良かったと思います。実際には、事前にグループまで組んでおくというのが参加者にとってはいいのでしょうが、運営面を考えると、実はなかなか難しいところがあって、当日抽選という形にさせていただきました。
■ ネットカフェを媒体と見立てたマーケティング活動
前田氏: まず前提として、我々はネットカフェをひとつの媒体だと捉えています。雑誌やウェブメディアと一緒で、どれだけ露出を図れるか、言ってみれば家電量販店における陳列競争みたいな感じで、各店舗におけるシェアの拡大をひとつの目標にして営業活動を続けております。 韓国ですと、PC房での盛り上がりが、オンラインゲームブームに火を付けたということもありますので、じっくり取り組んでいくべき分野だと思っています。実際、ネットカフェへの誘導を計ったことでユーザー数は目に見えて増えてきています。そこで生まれたコミュニティをきっかけに、他のゲームから「リネージュII」への乗り換えなどが発生すれば、我々としては目的を達成したことになります。 編: 「リネージュII」全ユーザーの中のネットカフェ率というのはどのぐらいなのでしょう? 前田氏: もちろんデータは持っていますが公開はできません。目安としては半分まではいきませんが、数割を占めています。 編: 仮に3割ぐらいだとしましょう。この数字というのはNCさんとして満足できる数字なのでしょうか? 前田氏: 難しい質問ですが、基本的に我々はその割合を上げていきたいと考えています。 編: NCJの基本方針として、在宅ユーザーよりもネットカフェユーザーを重視していきたいと? 前田氏: 誤解のないようにいっておきますが、在宅ユーザーはいらないということではありません。先ほども言いましたが、ネットカフェでのプレイは、リアルコミュニティーのきっかけになるという点で、重視しているということです。また、なんといっても、ネットカフェを見渡してみて、「リネージュII」をプレイしている人が多かったら、その人も「リネージュII」をプレイする、あるいはしてみたくなると思うんです。そういった盛り上がり感を伝えるのはネットカフェを置いて他にないと思っています。 ネットカフェにおけるオンラインゲームというのは、もっともポピュラーな利用スタイルのひとつになっています。ユーザーさんは、常に次のオンラインゲームを探し求めてネットカフェにやってきています。そうしたユーザーさんにアプローチしていこうというのが我々のビジネスです。 編: ネットカフェに対する働きかけを強めているオンラインゲームメーカーは、NCJさんだけではありませんが、シェアとしては現在何位ぐらいなのでしょう? 前田氏: 1位だと思います。総合的にシェアを計測するデータがないので断言はできないのですが、公認店舗だとどの店舗でもプレイ時間は「リネージュII」がトップになっています。 編: 業界トップという認識は、「リネージュ」と「リネージュII」の2タイトルを足してということですか? 前田氏: 違います。「リネージュII」単体です。「リネージュII」がほとんどの店舗において1位であるということです。2番手がガンホーさんの「ラグナロクオンライン」か、弊社の「リネージュ」かというところですね。 編: それは実際のMMORPGのシェアとはずいぶん異なる順位だと思いますが、逆に言えばそれだけ力を入れているということですか。 前田氏: そうですね。これは東京、大阪、北海道、九州など各地域で、すべてそうですから。 編: 「リネージュII」のゲームデザインは必ずしもネットカフェ向きというわけでもないですよね。 前田氏: しかし、「リネージュII」ではレイドにしても攻城戦にしても、味方との綿密な連携が必要不可欠になります。声を掛け合うことが重要になってきます。もちろんチャットでも良いわけですが、ディレイも発生しますし、横並びでプレイする人たちが出てきても何の不思議もないと思いますよ。今回のイベントはそれを証明する場でもあると考えています。 編: FPSなどのジャンルでは、クランメンバーで定期的にネットカフェに集まって声をかけつつ練習を行なうという光景は珍しくなくなってきましたが、MMORPGにおいてもそのアプローチは成立しうると? 前田氏: そうですね。対人戦である以上、操作性の違いだけで、ネットカフェで横並びでやることのメリットはあると考えています。 編: NCJと契約しているネットカフェの数はどのぐらいなのでしょうか? 前田氏: オフィシャルの数字で「リネージュII」は1,400店舗です。 編: NCJのほうで確認しているネットカフェの店舗数というのは、全国でどのぐらいになるのでしょう? 前田氏: 2,500から3,000ぐらいだと見ています。 編: 全国のネットカフェの約半分というのは、多いと言えるのでしょうか? 前田氏: 圧倒的に多いですね。先ほども言いましたが業界1位ですから。しかも、これは弊社が設定する条件を満たしたネットカフェだけの数字です。たとえば、「リネージュII」だったら対応スペックのPCの導入が前提になります。それから回線の品質、固定IPの取得も必要になってきます。そうした条件をクリアした上での数字ですから、多いと言っていいと思いますよ。 編: セガ・ロジスティクスサービスが「ASTROCROSS BB」というアーケード向けのオンラインゲーム筐体を開発しており、NCJさんもコンテンツを提供していますが、ネットカフェ担当者としてどのような感想をお持ちですか? 前田氏: ユーザー目線で考えると、20分300円というのは料金的に少し高いですね。体感機というくくりで豪華なサウンド、振動機能といった付加価値の部分であの値段設定になったようですが、我々としてはそれに付いていくしかないです。 編: これまでコンテンツの提供先というのはネットカフェに限られていた訳ですが、今後はアミューズメントスポットにまで広がっていくということに関してはいかがですか? 前田氏: ゲームセンターも媒体のひとつですから、媒体が広がるという意味ではプラスに考えています。
■ ビジネスクリエイションチームマネージャー兼現役のネットカフェ営業マン
前田氏: 基本的に人口に比例してネットカフェがあり、利用者がいるという形で、特にどの地域で流行しているということはないと思います。だから今回福岡で開催するにあたって、福岡より多くの利用者を抱える東京や大阪のネットカフェ事業者さんから文句を言われたりしました(笑) 今回はテストマーケティングですから、ハコも大きく、オペレーションも慣れたところということで、必ずしも東京や大阪でなくてもよかったわけです。もちろん、今後はバランスを取っていかなければなりませんが。 編: テストマーケティングについてもう少し詳しく教えて頂けますか。 前田氏: ネットカフェでPvPイベントが成立するか否かのテストです。 編: 仮に今回のイベントが好評だったら全国展開といいますか、東京、大阪でもやっていくと? 前田氏: そうなります。ただ、店舗数や参加者数が増えるに連れて、どうしてもオペレーションが煩雑になりますから、イベントの運営効率を考えた上で検討していかなければならないと思いますね。 編: しかし、オペレーションの煩雑さを加味しても、複数店舗での同時開催は維持していきたいと? 前田氏: そうですね。地域ごとにやることで、巨人阪神戦みたいな楽しみ方もできますし、対抗意識が生まれることで全力で戦おうという気にもなります。このスタイルは継続させていきたいですね。 編: なるほど。そうなると、今後のイベント展開のあり方としては、やはりPvPが主体と言うことになってくるのでしょうか? 前田氏: PvPもそうですが、他のアプローチもあると思います。たとえば、攻城戦でもいいでしょうし、オーバーエンチャント(アイテム強化)をもっと本格的にやってもおもしろいかもしれません。 編: ちょっと厳しい質問ですが、今回福岡で、次回東京、大阪で開催したとします。主催店舗と衛星店舗を結び、数百名が同時参加するという形になると思いますが、何回やろうが漏れるエリアが出てくると思います。イベントの内容が充実すればするほど、全国のユーザーからすると不満のタネになるのではないですか? たとえば、イベント中だけ専用サーバーも一般公開するようなプランなどは? 前田氏: ええ、わかります。ただですね、専用サーバーも、サーバーなのです。当然キャパシティがありますから、サーバーダウンさせてしまうようなことになるとイベントそのものが続けられなくなってしまいますので、その辺は慎重にやらせて頂いています。 編: 今後の抱負について聞かせてください。 前田氏: NCJは日本で一番のオンラインゲームメーカーを目指していきますし、それはネットカフェにおいても変わりません。今後も積極的な営業活動を続けていきたいと考えています。 編: ネットカフェへの営業というのはどのように行なっているのですか? 前田氏: 我々は他社のように代理店は一切通さず、直接やっています。具体的にいうと、私が全国に回っています。 編: 全国というと、文字通り47都道府県ですか。 前田氏: さすがに47には届きませんが、ほとんど行ってます。なぜそんな手間の掛かることをしているのかというと、やはり直接行った方が話が早いんです。代理店を通してしまうと、細かい部分でメーカーの意向が伝わりにくいところがありますし、オペレーションにディレイも生じてしまう。 また、実際に店舗に行くことで、どのように展開するのがベストなのかがわかる。実際に一緒にプレイして、会話を行なうことで、ユーザーの趣向などもわかりますし、学べることも多いです。 編: 今後力を入れていきたいエリアというのはありますか。 前田氏: うーん。東北でしょうか。東北は仙台のみでまだまだ営業活動が足りない地域ですから。 編: 今後も足で稼ぐ営業は続けていかれると? 前田氏: もちろんです。事業者さんと仲良く慣れますし、経営コンサルティング的なアドバイスもできます。ネットカフェはフランチャイズ化が進む一方で、個人経営も多いです。個人経営のネットカフェさんはどうしても大手さんに追いやられてしまうような部分が強いのですが、中立な立場でコンサルティングすることで元気になってもらえればと。 編: メーカーとして答えにくい質問かもしれませんが、韓国や中国ではコンテンツメーカーばかりが美味しい思いをして、ネットカフェが食えない、というような話を耳にします。日本ではそういったことはないのでしょうか? 前田氏: あくまで私見ですが、ないと思ってます。もちろん、ロイヤリティとしてお金は頂くわけですが、NCJではそれで赤字になることはないように現段階では完全成果型を取り入れています。契約したからひと月いくらではなく、これだけプレイしたからいくらというものですね。 編: 韓国や中国で1社の全タイトルでひと月いくらという抱き合わせビジネスが一般的なのに比べると良心的ですね。 前田氏: ええ、完全成果型は日本だけではないでしょうか。日本では短い時間でプレイするユーザーさんも多いので、従量で頂くというのが合っていると思います。 編: ネットカフェチームの最終目標は何でしょう? 前田氏: それは普及率100%ですよ(笑)。全国すべてのネットカフェ、そしてすべての台に「リネージュII」を置いて頂く。店舗内の普及率というのも重要で、昔は1台だけということもありました。しかしこれでは実効が薄いんです。 編: 店舗内の普及率ということを考えると、ラインナップの限られるNCJさんは不利ではないですか? 前田氏: 確かにその部分はありますが、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるではなくて、ラインナップが限られる今だからこそNCJブランドというものを確立させていきたいと考えています。数も重要ですが、最終的に勝つのはクオリティだと思います。 編: なるほど。NCJさんと同じく、ネットカフェに力を入れているガンホーやNHN Japanといったメーカーは、現在マルチタイトル化を急ピッチで進めていますが、特に意識したり、危機感のようなものは感じていないと? 前田氏: やはり同業他社として動きには注目していますが、危機感は感じていません。まずはブランドを確立していくということですね。 編: 最後にネットカフェユーザーに向けてメッセージをお願いします。 前田氏: 我々は「ネットカフェでのプレイは楽しい」といって頂けるように努力を重ねています。常時アンケートを行ない、目を通しておりますので、何でも良いので意見を寄せて頂ければ、可能な限り反映させて頂きます。 編: ありがとうございました。
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ (2005年8月12日) [Reported by中村聖司]
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