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会場:サイバック 福岡西通り店
エヌ・シー・ジャパンが九州・福岡のネットカフェ、「サイバック 福岡西通り店」で開催した対戦大会「バーリトゥードトーナメント2005」。九州地方を中心に、南は沖縄から、北は福島まで全国で展開するチェーン店をオンラインにつなぎ、各店舗の代表者達が戦いを繰り広げた。筆者達はメインの会場から今回のイベントを観戦した。
今回のイベントでは、「福岡西通り店」からは4チームが出場した。すべて抽選で選ばれているため、ほとんどが初対面。簡単な挨拶をしてそそくさと席に座り自分のモニターを熱心に見る人、積極的に話しかけチームの結束を計る人など、4チームの表情はさまざまだった。 その中で積極的に皆と話をして、結束を図っていたのは「サイバック天神店Aチーム」。5人のうち2~3人には面識があったようで、そのメンバーを中心に笑顔も出るような明るい雰囲気でチーム構成をしていた。
天神店Aチームは、1回戦で「夢空間水戸チーム」と戦った。初戦だけにメンバーのパーティー組み、オンライン上での会場移動などにも手間取ってしまったようだった。その混乱はスタート開始時にまで響き、スタート時のチームの足並みがばらばらだった。対する水戸チームは的確にターゲットを絞り、体力の低いマジックユーザーを速攻で撃破。倒されたプレーヤーはぽかんと画面を見つめ、「何もできんかった」とつぶやいていた。 強さが際だったのは、天神店Bチームと戦った「サイベックス 沖縄店チーム」だ。戦士中心の攻撃を重視したチームで、天神Bチームはどんどん突き崩されていく。ギャラリーからも、「こいつら強すぎ!」という声があがっていた。とにかく、ひとりが目標を決めると全員がそのターゲットに突進し、あっという間に倒してしまうのだ。 西通り店Bチームは、攻守ともにバランスの良い「ビッグワンカフェ 鹿沼店チーム」に破れてしまう。こちらもかなりのスピードで決着がついた。結局、会場の4チームはすべて1回戦で敗退してしまった。 筆者が注目したのは沖縄と茂原のチームであった。茂原は接近攻撃型、魔法号劇型、回復型とバランスよく職業を配置した構成のパーティーで、それぞれが高いスキルを持って戦っているように見えた。沖縄は戦士中心で走り回って敵を倒すタイプ。ひとりのバックアップを残して4人で一斉に襲いかかる戦闘スタイルだ。
会場の意見として多かったのが、「ソードシンガー」、「ブレードダンサー」への評価だ。シンガーは味方の防御力を、ダンサーは攻撃力をます能力を持つが、それぞれはエルフとダークエルフの戦士から派生する職業。そこそこ高い防御力を持ち、素早い動きが可能だ。敗退したチームのメンバーは口々に、「今度はもっと接近戦系を増やす」といっていた。 福岡のプレーヤー達の多くはバランス型よりも、前衛偏重型のプレイスタイルが今回ルールに向いていると判断したようだ。その評価は、Bブロックの勝者を決める沖縄店vs茂原店で裏付けられた。バランスよく職業を配置した茂原店は、あっという間に沖縄店の戦士達に切り伏せられてしまったのだ。 こういったバランスになっているのは、キャラクタの装備している武器や防具にもよることが多いように感じた。今回のルールでは特に重戦士の防御力の強さが際だっていたのである。トーナメントに出場するキャラクタはレベル75で、最高の能力を持つAグレードの武器防具を身につける。特に防具はそろえることで「セットアイテム」として、さらなる力を発揮する。 魔法使いがひとりを足止めするよりも、数人の戦士が迫ってくる方が圧倒的に有利なのだ。また、マウスだけで移動と視点変更をするというシステムならではの不利な部分も見えたと思う。焦っていると正確な操作はしにくくなる。視点を動かすためにも、移動先をポイントするためにもマウスを動かす必要があるこのシステムは、緊急時に逃げるのが難しく感じた。攻城戦などでは足を止め、ラインを作って「砲台」となる魔法使いや弓戦士は、限られた空間で戦うこのルールでは、そのポテンシャルを発揮できていないようだ。各職業ごとのバランスは今までとは違うものをユーザーが求めてくるかもしれない。 決勝戦は沖縄店と、西通り店Bを破ったビッグワンカフェ鹿沼店で行なわれた。彼らの戦いを見守ってきた会場スタッフによると、鹿沼店のメンバーは、試合ごとにメンバーを戦士中心にシフトさせ、どんどん戦いを洗練させたものになってきていたという。 戦士団同士の戦いは、鹿沼店の勝利という結果に終わった。同じ戦法を取った両陣営の勝敗をわけたのは、ターゲットの取り方である。より素早く正確に対象に対する攻撃を集中させる手腕が巧みだったのだ。鹿沼店はほとんどメンバーを倒されなかった、圧勝といえる。 勝利者インタビューは携帯電話を使う形で行なわれた。鹿沼店の代表者は女性の方で、「はじめて『ソードシンガー』を使ってみたのだが使いこなせるとは思いませんでした、まだ優勝の実感がないです。メンバーのターゲットへの指示がうまく、そのおかげで勝つことができました」とのこと。
3位には敗者復活戦を勝ち残り、茂原店と箱崎店の3つどもえの戦いを制した西通り店
Aチームが入賞を果たした。箱崎店が一斉に茂原店に襲いかかるのを見て、ターゲットリーダーが箱崎店のメンバーを狙う、という作戦がうまくいったのである。会場チーム初めての勝利に、会場中が大きく盛り上がった。
■ 「戦わない生き残り術」、個人技が光った無差別PvP戦 続いて行なわれた「無差別PvP戦」では、140名のプレーヤーが一堂に会し、生き残りを賭けた戦いを繰り広げた。 出場するキャラクタはトーナメントと同じレベル75のジョブレベルを持ち、装備品所持品も同じだ。すべてのキャラクタが開始時間までにコロシアム内に入場し、スタートの合図を待つ。開始すればすべてのプレーヤーが敵だ。一定時間が経過した後は会場を狭くする壁が出現、もし壁に遮られ闘技場から出てしまったらその時点で失格になる。 筆者は西通り店Aチームのリーダーのプレイを見ることにした。先に行われたトーナメントの敗者復活戦では他チームの代表者とバトルロイヤルを行ない、見事生き残りを果たしたのである。その戦いぶりをぜひ見ておきたかったのだ。同じように考えていた人は多かったようで、大会の選に漏れたユーザーは彼の試遊台の後ろに集まっていた。
PvP大会が始まった。筆者が驚かされたのは彼の戦い方だった。なんと、“戦っていない”のである。彼が使ったキャラクタはダークエルフの足の速い戦士「アビスウォーカー」。そのキャラクタの機動力を活かし、縦横無尽に戦うのかと思えば、彼は短いダッシュと停止を繰り返す。足を止め、周りを見回す方が多かったのである。 感心させられたのはその距離の取り方である。他の人が攻撃を行なうと便乗する人が多く、激しい団子状態になる。彼はその近くでいかにも攻撃を行なうかのように停止して、冷静に見守るのだ。もし他のキャラクタが攻撃をしてきたらその機動力で逃げる。フィールドは仕切によって空間が限られているが、縁にはいかず、円を描くように逃げる。追いかけていたプレーヤーは他のプレーヤーに絡まれて消えていく。攻撃を行なうときも決して深追いはしない、一撃を与えては去っていく。決して熱くならず、冷静に他プレーヤーとつかず離れずの距離を保つ。 戦いはかなりの長丁場になった。運営側は戦いを激化させるため、フィールドを狭くする仕掛けを発動、数分ごとにフィールドが狭くなっていった。筆者が見ていたプレーヤーはほんのちょっとの油断で、数人から集中攻撃を受けてしまい、残念ながら敗退してしまった。見回すと会場でも生き残っているのは数人。全員が戦うより逃げることを重視していた。 逃げが中心となる展開でも順調に敵を倒していたのがダークアベンジャーのプレーヤー達だ。自身が逃げながらもパンサーに攻撃をさせ、攻撃が成功したと見るやそのキャラクタに肉薄、ペットともに連続攻撃を浴びせる。戦術として逃げを選んでいるプレーヤー達の中でこの利点は特に大きく見えた。 会場で一番長く生き残り、かつ雰囲気を盛り上げるプレーヤーがいた。彼の逃げ方はさらに大胆だった。なんと対戦場の中心地点でほとんど静止ほんのちょっとの距離を動いては静止するという行動を繰り返していた。その行動が人目を引かないのか、誰からも絡まれない。彼自身は重戦士だった、ということも大きいのかもしれない。彼に攻撃をしても、中心地点で目立つ攻撃プレーヤーは他の人から集中攻撃を受けて倒されていく。「逃げろ俺、逃げろ俺」と自分に言い聞かせながら、それでもキャラクタは短い距離をゆっくり歩くだけという彼の戦術は非常に面白かった。 しかし、彼の健闘むなしく、会場では生き残ったプレーヤーはいなくなってしまった。残ったのは5人のプレーヤー。ほとんどがパンサーを従えたダークアベンジャーだったところに、ルールの上でのバランスを考えさせられた。対戦時間は50分を超え、戦う場所はどんどん狭くなり、ほとんど移動もできない。ここでまた面白い現象が出現した、まるで「3すくみ」のように、誰も自分から手を出さず、お互いを牽制していたのだ。 まさに、「動いた方が負け」という結果になった。手を出したプレーヤーが他のメンバーから集中攻撃を受けたのだ。勝ったのはここでもビッグワンカフェ鹿沼店からの出場者だった。 無差別PvPでは会場の皆がうまいプレーヤーの個人技を堪能するという非常に面白い光景が出現した。生き残るプレーヤーはもちろん高いスキルを感じるのだが、それ以上に「運がいいなあ」という感想を生じさせる。周りの人が激しく戦っている中、すました顔をしながら、しかし、どきどきしながら場所取りを中心に生き残り戦術を展開、時に攻撃をしてギャラリーを引きつける。しかし決して深追いをしないところがまた玄人っぽさを感じさせられるのだ。ギャラリーの雰囲気を感じて自身も興奮しながらも自分を抑えて戦っているプレーヤー達の姿はかっこよかった。 ただ、これが本当に「戦い」なのかというところには、やはり疑問が浮かぶ。結局自ら攻撃せず、ひたすら逃げ続けることが勝利者の道というのは、ゲームのルールをうまく使っている面はあるとしても、「ちょっと違うんじゃないのかな」とも思う部分もあった。バトルロイヤルという戦い方に関しては、自らが傷つかず、目立たずというのは、現実的な作戦ではあるが、ゲームならではの味付けも欲しい。ルール部分等での制作、運営側のアプローチに期待したいところだ。 トーナメント大会に関しては、参加メンバーをギルドや応募者で固めるのではなく、全員当日の抽選で行なったというところに注目したい。このため、チーム参加に限るPvPと違って、即席のパーティーによる連帯感は、どこか暖かい。たとえミスをしても責任を追及するよりも、ちょっぴりあきらめの入った「仕方ないよねえ」という雰囲気になる。「真剣に勝ちたい!」というプレーヤーも多いかもしれないが、手軽に参加ができ、その場所でパーティーを組み、勝った場合はお互い讃え合える。 会場で観戦者達に話しかけたところ、「僕が出場してたら勝てたのになあ」とか、「俺達のギルドはイベントで5vs5マッチとかよくやりますけど、他の人たちは慣れてないかもしれませんね」という声も聞かれた。来場者のは多くは素人ではない、ほとんどの人が「リネージュII」プレーヤーであり、やりこんでいる。
確かに今回は戦い方がまだまだ手慣れていないな、という印象も受けたが、地方でも多くのプレーヤーが集まり、抽選でパーティーが組まれ、それでそこそこ戦える、というのは「リネージュII」ならではかな、とも思った。日本において「リネージュII」はPvP経験者の層の厚さという意味で他のMMORPGの追随を許さないところがある。PvPを中心とした今回のバーリトゥードトーナメント2005は、「リネージュII」の魅力が発揮されてたイベントだったと感じた。
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ (2005年8月8日) [Reported by 勝田哲也]
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