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「信長の野望 革新」プロデューサーインタビュー
ファンの要望に応えに応えたシリーズ最新作

4月収録

会場:コーエー本社

 コーエーの数あるラインナップの中でももっとも長い歴史と伝統を持つ「信長の野望」シリーズ。「三國志」シリーズと並んで、同社のイメージを体現する戦略タイトルである。そのシリーズ最新作「信長の野望 革新」が2005年6月に発売される。今回は、発売に先立ち、開発チームのスタッフにゲームの内容について話を伺った。

 「信長の野望 革新」でプロデューサーを務める阿野 越雄氏は、主に「三國志」シリーズを担当してきた“「三國志」畑”のプロデューサーで、「信長」シリーズはシリーズ第8弾「信長の野望 烈風伝」以来になるという。確かに箱庭内政システムは「烈風伝」に通じるところがあるし、画面切り替えのない合戦シーンもここ最近の「三國志」シリーズを彷彿とさせる。


■ リアルタイム制と1枚マップを採用した「革新」のコンセプト

「信長の野望 革新」でプロデューサーを務めるソフトウエア事業部ソフトウエア1部マネージャー、阿野 越雄氏
編集部: まず今回の「信長の野望 革新」の基本的なゲームコンセプトを教えてください。

阿野氏: 全国を1枚のマップで再現し、そこですべての戦略を行なうというのがスタート地点です。ここに箱庭要素を入れて、さらに今作ならではの要素として、内政や合戦、外交などがリアルタイムに展開していきます。

編: 基本仕様を見る限りでは「烈風伝」のフル3D版というイメージがあるのですが?

阿野氏: 一見するとそうですよね。しかし中身は違いますよ。一番違うのはリアルタイムにゲームが展開するという部分ですね。ゲームは月の切り替わりなどもなく、操作をしている間中時間は流れていきます。ただ、じっくり考えられないということはなく、コマンドを選択する時はゲームの進行が止まります。ここで考えをめぐらせることができます。

 ゲームの中で3Dが仕様として活かされているかというと、きちんと活きているんですが、わかりにくい部分もあるかもしれません。土地の高低差による行軍スピードなどは違ってきます。

編: 今までの作品だと季節ごとや月ごとに内政画面にかえって、ここで戦略を進行していく。この画面こそが「信長の野望」シリーズのメイン画面という印象があったのですが、今作ではこの画面がないわけですか?

阿野氏: そういう画面は今回ないですね、内政をはじめすべて3Dマップ上で行なっていくというイメージです

編: とすると、ゲームの展開もかなりスピーディーになりそうですね

阿野氏: スピーディーと言えばそうですが、建物などを建造するには時間が必要になりますし、プレイ全体としては結構時間がかかると思いますよ。

編: ゲームの時間的スケールとしては、1カ月は現実の時間でどれぐらいにあたるのでしょうか?

阿野氏: マシンのスペックで変わってくるので一概には言えないのですが、1カ月が30秒くらいですね。実際にはゲームを止めて考える場面も多いので、早すぎるといったことはないと思います。例えば「烈風伝」で畑を作ろうとした時に数ターンかかったのですが、それをリアルタイム上の時間で置き換える、といった表現をしています。武将に内政を命じると、命令を実行した後に戻ってくる、ここでユーザーさんはゲームを止めて次の命令を出すと思うんですよね。ターンの切れ目がないぶん、武将たちの行動によってゲームのリズムが生まれてきます。

 手持ちの武将全部に命令を出し終えてしまうと、プレーヤーは画面を見て結果を待つというプレイになります。ただ、この時に敵に攻められることがある。武将は全部出払っているということも十分あるので、武将に今やっていることを中断させてもどす、ということもしなくてはなりません。

編: 武将に何かさせるために城下に派遣しますよね。この時間というのはどのくらいかかるものなのでしょうか?

阿野氏: 城下に移動する時間はあまりかかりません。ただ、そこから建物を建てたりする時間がかかりますね。国内ですと建物を建てる時間くらいしかかからないのですが、外交となると移動にそれなりの時間がかかります。

 内政の仕方にもよるんですけど、プレーヤーはだいたい1カ月に1回くらいのスパンでコマンドを入れてプレイしていくといった感じになると思います。建物の建造に関してはスタックができるので、長い時間をかけていろいろな施設を建てるという方法もとれます。

 リアルタイム制という手法は、開発当初は違う表現も考えていたのですが、同時にいろいろな戦略を行ないたいという基本コンセプトを実現させるための手法として採用しました。

阿野氏: 今までにありそうでなかったタイプのゲームになったと思います。完全なリアルタイムストラテジーではなく、今までの「信長の野望」とも違うゲームになりました。それでいながら、初心者やシリーズのファンも遊びやすいゲームを目指しています。コマンドなど全体の感触は大きく変えていませんので、すんなりとプレイできると思います。

編: ゲームの進行中、敵国のAIもプレーヤーと同じようにさまざまな行動をしているのでしょうか?

阿野氏: 基本的にプレーヤーがゲームを動かしている時間に、同じように動いています。ユーザーのコマンドに反応するのではなく、時間の経過によって動いています。もちろん、AIも周りの状況を見ながら自分なりの戦略は練っています。

編: AIは性格分けなどされているのでしょうか?

阿野氏: どの技術を優先するか、といったところで個性が見えるようにしています。

編: 今作では難易度は設定できるのでしょうか?

阿野氏: できます。初級は初心者でも勝てるぐらいに、上級はかなりの手応えになるようにしたいと思っています。

編: 今回は全国を1枚の3Dマップで表現していますが、画面の視点変更はできますか?

阿野氏: 回転は自由にできますが、拡大縮小は大きくはできないですね。カメラをめいっぱい寄せて、兵士1人1人の戦いぶりを見る、というところまではできませんが、合戦の雰囲気をリアルに感じてもらえるくらいには近づけます。カメラを引けば、1国がまるまる見えるくらいまで見ることができます。カメラを斜めにすればもう少し遠くの範囲まで見ることができますね。

編: カメラは例えば武将を追って、常に武将とその軍団が中心になるような視点は用意されていますか?

阿野氏: そういう視点はないですね。視点はマウスかキーボートでプレーヤーの手で動かします。ショートカットも用意されています。自分が所有している城ならば、瞬時に視点を移動させることができます。

 戦場に直接視点をとばすことはできませんが、近くの城にとばして、そこから移動させることはできます。また、小地図を使うことでカメラの素早い移動は可能です。


■ “戦法”が重要な要素となる「革新」の合戦
簡潔な表現で質問に答える阿野氏

編: 今回は「合戦場」といったイメージのマップやエリアは用意されていますか?

阿野氏: 特定のそういった場所はありません。むしろ“どこでも戦場になる”というのが本作の特徴です。

編: 公開されている画面を見ますと、険しい山脈もありますが、これは無理に行軍して踏破したりすることは可能ですか?

阿野氏: 入れないです、越えることはできません。地形をうまく使って戦ってもらいたいですね。

編: その戦いについてですが、今回の合戦はどのような内容になるのでしょうか?

阿野氏: 基本的な内容は、部隊と部隊がぶつかってどちらかが倒れるまで戦い合うというものですが、兵力によっては途中で退却することもあります。また、合戦の前に部隊の基本方針を指定しておけます。退却を許可にするか、不可にするかというように、必ずしも全滅するまで戦うのではなく、敵兵力の消耗や足止めをさせるために、退却を視野に入れて敵部隊にぶつけるという戦法もあるわけです。

編: 部隊にあらかじめ与えられる方針というのは、他にはどんなものがあるのでしょうか。

阿野氏: 進軍中に敵が近くにいたら攻撃するか、しないか、他に“戦法”の発動をAIに任せるか、自分で指示するかも選択できます。

編: 部隊の進軍に関して、細かく通過点を指示していくつかの中継点を通過させる、といった設定の仕方は可能ですか?

阿野氏: 部隊は目的地を左クリックし指定することで、そちらに移動します。中継点は1カ所指定できますね。

編: 戦いというのは兵数や士気、兵科で決まってしまうものでしょうか?

阿野氏: それに加え戦法と技術が影響してきます。より大きいのは技術かもしれませんね。ユーザーのインタラクティブな介入によって戦闘の結果が大きく変わるという要素は戦法で表現しています。戦法は発動するタイミングが重要です。

 戦法は基本的なものが18種類用意されています。それ以外にも特定の武将が使える特別なものがあります。この戦法は足軽の時しか使用できないというように、戦法は兵科によって限定されますが、“計略”に関してはいずれの兵科でも使用できます。

編: こういった戦法や計略は、今までの「信長の野望」シリーズや「三國志」シリーズとはどのような違いがあるでしょうか?

阿野氏: 戦法に関しては「三國志IX」の“兵法”と似ている印象を受けるかもしれませんが、“連鎖”と“発動”というところがまったく違います。「三國志IX」の兵法はプレーヤーの意志で好きなタイミングで出すことができませんでした。今回は“闘志”というポイントを溜めることでユーザーが任意に発動できます。

 連鎖の仕組みも違いますね。「三國志IX」では兵法を複数持っていれば一定の確率で連鎖が発動しました。今作では3つまで戦法を持てるのですが、一番必要な闘志の値の大きい戦法を発動させると、連鎖する可能性があります。3つの戦法のうち一番闘志が低い戦法を使っていると連鎖は起きないのですが、大きなものを使うとその下の戦法が連鎖する可能性があるわけです。闘志を充分に溜めて連鎖を狙うか、小出しに必要闘志の少ない戦法を連発するかで大きく戦いの展開は異なってきます。

編: 使用する戦法は合戦の前に、ユーザーが任意に設定しておくわけですか?

阿野氏: 出陣の時に決めます。戦法は各武将が持っていて、出陣する武将が持っていれば、選択することができます。武将は1部隊に最大3人まで投入でき、兵科が対応すれば戦法は使用可能になります。戦法の数は武将の数に対応しているので連鎖させるためには最低でも二人は必要ですね。

編: 武将の数によって部隊の兵士の人数は変わってくるのでしょうか?

阿野氏: 変わりません。兵をたくさん持っていて多くの部隊を投入したければ、1部隊に1人の武将で受け持たせるほうが数を投入できますね。多くの戦法を使える1部隊を投入するか複数の部隊で取り囲むか、それはユーザーの選択です。


■ 新要素「町並み内政」によって美しく町並みが作れる内政システム

編: 次に内政についてお聞きします。今回箱庭による内政システムを導入していますが、設置できる施設のバリエーションは何種類ぐらいありますか?

阿野氏: 今回は内政を考えながら楽しく行なってもらいたいというコンセプトで「町並み内政」というシステムを導入しました。町並みの周りに施設を建てていくことで内政を行ないます。まず、更地に「町並み」という中央ポイントを建てます。この町並みは7種類あります。この町並みによって周りに建てられる施設が決まってくるのですが、施設の種類自体は全部で27種類です。

 町並みを建てると周り8マスにさまざまな施設を建設することができます。決められた場所の中で、きちんと考えて町並を置かなければ、8マスすべて確保できない場合があります。さらに「水田」は川、湖の周辺、「漁戸」は海岸の隣接のみ建設できるといった特徴もあるので、8マスという立地条件だけにこだわらず、施設の設置を考えて町並を置く必要もあります。

編: なるほど、「烈風伝」は城の周りにさまざまな施設が設置できましたが、今回は「町並」がその役割を担うんですね。

阿野氏: 「町並」は施設と同様に地形が「平地」の場所に建設できますが、その上限は国によって異なります。

編: 国中を施設で埋め尽くしたりもできそうですか?

阿野氏: 上限がありますし、自由に町を作れるかというと少し難しい部分もありますね。敵国をとった場合には、すでに何カ所か開発は行なわれている。これを更地にして自分の思った方向に開発しようとすると膨大な時間がかかってしまいます。ある程度は今までのものを利用して開発する、という形になると思います。

 CPUもそれなりに最善を尽くした開発を行なっていますので、自分の戦略に合わない場所を修正していくという流れになります。やりこめる要素ではありますが、これをやらないとゲームが進まないということではありません。プレーヤーによって取り組み方が変わってくるでしょうね。

編: 町並みを完全に破壊することは可能ですか?

阿野氏: 周りの施設は破壊できますが、町並そのものは「全壊状態」として残り、完全に破壊することは出来ません。壊れた施設は「工匠館」という施設があれば徐々に改修されます。

編: 町を守るために“櫓”や“罠”といった施設があるとのことですが、他にはどんなものがあるのでしょうか。

阿野氏: 厳密に“施設”だと櫓と鉄砲櫓の2つです。罠というのは実は施設と違いまして、普通の施設に罠をしかけることによって効果を発揮します。外見上は施設に見えるのだけれども、施設としての機能がない代わりに敵部隊にダメージを与えるといったことができます。

編: “支城”は施設とは違うものなのでしょうか?

阿野氏: 支城は普通の施設と異なり、本城や港と同様に武将や兵が入れる拠点のひとつです。防衛拠点として建てるか、他の国へ攻め込むための足がかりですね。戦略上重要な場所には支城を築けるようにしてあります。城には自動的に名前もつきます。

 支城は、防衛拠点としての要素としては役割はもちろん、他国を攻める時の足がかりとしてはかなり重要な要素となっています。支城を置くことで敵との距離が近くなるので、支城から出撃することで、士気の低下も抑えられますし、支城を拠点とした攻城戦というシチュエーションも起きます。

編: 「信長の野望」、「三國志」の両シリーズは、各作品ごとに守りと攻めの有利不利がはっきりしている印象を受けますが、今作のバランスはどうでしょうか?

阿野氏: 基本的には守り側が有利ですね。城の防御力も高いですし、同じ兵力ならば防御側が有利です。

編: なるほど。ただ、技術を紹介する画面で大筒がありましたが、これがあると攻城戦がかなりラクになりそうですね。

阿野氏: 大筒は獲得するのが大変なので効果はそれなりに大きくしてあります。ただし、初期の大筒は城門破壊に関しては非常に役立ちますが、城門を破壊しても兵力を0にしないと拠点は制圧できないので大筒だけで制圧するのは難しいです。

編: 今作では鉄甲船を攻城戦に使うことは可能ですか?

阿野氏: 拠点には本城、支城、港の3種類があります。港は当然として支城には海から直接攻撃できるところがいくつもあります。


■ 能力値と技術の適性で表現される「革新」の武将

編: 次に技術に関する質問をさせていただきます。技術に関してどういったものがあるか、どういった効果があるかについては1部が明らかになっていますが、具体的にどうやって上げていくかについて教えていただけますか?

阿野氏: まずは技術は8系統にわかれています。これも人ありきというところで、8系統の技術に対して武将はそれぞれ適性を持っています。S、A、B、C、Dというランクにわかれていて、前提としてこの適性を持った武将が3人必要になります。さらに技術に対応した施設である“学舎”を数多くそろえ、資金があれば技術を上げることができます。

 上の技術になるほど学舎がさらに必要になって、武将の適性も高いものが要求されていきます。例えば、適性C以上の武将が3人必要、という感じですね。Sの適性を持つ武将はなかなかいないので、Sの適性を持った武将を3人そろえるというのは相当難しいですね。先ほどの大砲は、A以上の適性を持つ武将が3人必要となります。

編: 技術適性はいまひとつ具体的なイメージが湧きませんが、例えば加藤清正は築城の技術適性が高いといった考え方でいいのでしょうか? 戦闘方面の技術が高い武将というのは想像できるのですが、内政面でのSというのはどのようなイメージになるのでしょう?

阿野氏: 清正のゲームでの適性がSだったかは確認しないといけませんが、考え方としてはその通りです。内政面で高い適性を持つ武将というのは、基本線としては政治力の高い武将ですね。

編: 今回の武将は基本の能力値に加えて、技術の適性で表現されるのですね。能力値は何種類あるのでしょうか?

阿野氏: 統率、武勇、知略、政治の4つですね。

編: 登場する武将は何人でしょうか?

阿野氏: 最大で1,000人以上になります。武将のイラストも1人1人違うものを用意しており、有名な武将はいちから描き起こしています。

編: 基本的に武将を多く抱えればそれだけ有利になるという感じでしょうか?

阿野氏: コマンドは全部武将が行なうので、人数がいればさまざまなことができますね。しかし、今回は「俸禄」というルールがありまして、この俸禄は基本的には能力と仕官期間で計算されるのですが、あまり武将を抱えるとこれが払えなくなってしまいます。今作ではこのウェイトが大きくなっていますね。後半大きな勢力を持てれば問題ないですが、序盤に武将を多く抱えてしまうとかなり苦しくなってしまいますね。

編: シナリオによっては、織田信長が優秀な武将を数多く抱えている場合もありそうですが、ゲームバランス的に大丈夫ですか?

阿野氏: スタート時はやりくりできるように作っています。しかし、これまでのように優秀な武将を見つけたらすぐ誰でもいいから雇用していこう、というプレイをすると気がつくと赤字になってしまいますね。他の国に攻め込んだり、市(金銭収入のある施設)を立てて資金を確保しなくてはいけません。

編: ちなみにSの適性を持った武将が3人必要な技術というのはどんなものがあるのでしょうか?

阿野氏: 戦闘系の技術では、戦法の効果を上げたり、連鎖する確率を上昇させるものがあって、戦闘が非常に有利になります。大筒などの兵器系も技術が高いと効果が上がります。初期の大筒は城門などを打ち壊す能力はありますが、部隊にはあまり効果がありません。技術が高くなると砲弾が爆発するようになりダメージも高くなります。

編: 敵が持っている技術を奪うことができるのでしょうか?

阿野氏: 奪うのではなく、“仲良くして交換しましょう”という感じです。同盟中の勢力の技術を学ぶことができます。交渉を行なって時間をかけて覚えるのです。同盟は交渉だけではなくて、要請も行なうことができます。今回の同盟は従来にも増して重要といえます。


■ 人材や文化人といった存在が重要な役割を持つ外交システム

編: 外交で交渉というのは新しい要素ですね。

阿野氏: 他には停戦というのが外交の新しい要素です。何カ月間は戦争をしないという約束ができます。いままでは朝廷や幕府の力でやっていたものですが、今回は国同士で行なうことができるようになりました。

 同盟の条件として姫や配下武将を差し出す場合もあります。姫であれば姫であれば、武将に嫁がせることでプラスの効果が生まれます。武将に関しても何らかの恩恵がありますね。

編: 停戦交渉で相手勢力から武将を差し出させるということはできますか?

阿野氏: 同盟のときだけですね。そもそも停戦はなかなか成功しません。ですが、僧侶を伴って停戦交渉を行なうと成功確率が100パーセントになります。僧侶は“文化人”と呼ばれ、外交に大きく関係します。僧侶が城下町を訪れると1季節(3カ月)とどまってくれるので、このチャンスをうまく活用したいですね。

 文化人には僧侶、南蛮人、公家、茶人の4種類があって、箱庭内政の町並と密接に関係しています。対応する町並みを建てることで来訪するようになります。自分の国の“傾向”が重要なのです。


■ 時を超えて武将が集結する架空シナリオ

編: 気になるシナリオについてお聞きしたいと思います。今回、史実シナリオが4本と、架空シナリオが1本とのことですが、史実シナリオはどんなものでしょうか?

阿野氏: 最初のシナリオが信長が尾張を統一した段階ですね。時期的には1555年。次のシナリオが1561年、川中島直前ですね。3つめのシナリオが1570年で信長が包囲網を結成されている時期です。4つめは1582年、本能寺直前です。

 架空シナリオには北条早雲や真田幸村といった非常に多くの武将が一堂に会するようになっています。このシナリオには年齢という概念がなく、古い武将も若い武将も最初から登場しています。羽柴家とか、真田家とか、大名達がもっとも広くわかれた状態で存在しています。奥州では伊達政宗が最初から登場しますよ。

編: こういった史実から離れたファンタジー的ともいえる架空シナリオが本編にいきなり導入されるケースは珍しいですね。

阿野氏: 架空シナリオは「三國志VIII」のPS2版から取り入れた要素ですね。それ以降の「三國志IX」と「三國志X」のパワーアップキットにも収録されています。英雄が集結するシナリオはユーザーからの評価も高いですね。

編: 意外とこの架空シナリオは、賛否両論ありつつもユーザーに1番遊ばれるかもしれませんね。

阿野氏: 史実シナリオの1や2もそうなのですが、勢力図が細かくわかれていると遊びやすいという部分がありますね。大きな勢力でいきなり遊ぶのは情報量も大きなものになりますから大変な部分もある。敵にまわして遊ぶことは面白いとは思いますが、小さな勢力がわかれて存在している方が最初は遊びやすいでしょうね。

編: 「信長の野望 革新」には全国モードの他に地方モードというものも収録されているそうですが、地方は何種類収録されていますか?

阿野氏: 6種類ですね。九州、四国と中国地方、蝦夷と東北、関東、中部、近畿にわかれています。

編: この地方モードは、例えば九州マップを統一したら全国マップに繋がるのでしょうか?

阿野氏: 地方マップを統一したらそこでゲームは終わります。地方マップは「プレイする時間がとれない」というユーザーの声が最近特に多くなってきために導入しました。手軽に遊べるゲームモードとして用意しています。

編: 地方モードならではのシナリオやアレンジは行なわれていますか?

阿野氏: 特別な味付け、というのは今のところ行なっていません。ただ、細かいルールに関しては今後多少アレンジする可能性があります。特に技術に関しては適性を持つ武将を十分に確保することが難しいので、短期間でなおかつとりやすく調整をするかもしれません。


■ 天下わけ目の決戦を目指して盛り上がっていくゲーム展開
インタビュー後、「あ、『信長』っておもしろいじゃん」と言ってもらえるゲームにしたいと語っていたのが印象的だった

編: 現在の開発状況はパーセンテージでいうとどのくらいなのでしょうか?

阿野氏: 8割以上進んでいます。後の2割は、ブラッシュアップですね。仕様的に気になるところはいくらでもありますので。

編: 本作の開発期間はどのくらいになりましたか?

阿野氏: 作業に入ってからは1年弱ですね。

編: 「三國志」シリーズを手がけている阿野さんが、正確には2作目ですが、「信長の野望」のプロデュースを行なうわけですが、ターゲットとしているユーザー層を教えてください。

阿野氏: シリーズ通して変わっていないですね。下は中学生から幅広い層を対象にしています。ただ、シリーズを重ねるにつれて少しずつ中心の層は上がっている感じです。現在コアになっている層は26~35才くらいですね。「最近の信長は難しそうで……」というユーザーさんにもプレイしてほしいということで、今までのシリーズとは少し印象の違う新しい感触を持った作品を目指して作っています。

編: 「信長の野望 革新」は今までのシリーズの中でも1番スピーディーな展開を楽しめる作品となりそうですね。

阿野氏: そうですね、合戦が別画面にならないという時点で早いですし、ちょっと大変ですけど同じ時間で複数の武将を管理することもできます。

編: 全国モードのクリア想定時間はどのくらいでしょうか?

阿野氏: 私自身はやりこみ型のプレーヤーなので、相当な時間がかかってしまいました。内政をじっくりやるのが好きなんですよ。国をとると今までの町を全部壊して1から作っていくようなタイプなんです。だから異様に時間がかかってしまって、一般的なプレイの参考にならない。1日ちょっとずつプレイしながら、2週間くらいかかったという感じでしょうか。

 国が大きくなってくると、やることが多くなって、私は少し疲れちゃうタイプなんです。いかに疲れず最後まで楽しくプレイできるか、という部分を今作では監督してみました。早い人が集中してプレイすれば2、3日で1つのシナリオをクリアできると思います。開発のスタッフで2日でやったという人もいますね。相当集中してプレイしていたようですが。急いで統一を目指せば20時間弱ぐらいではないでしょうか。

 あと、ゲームのバランスにもよると思います。まだ調整中ですが、最終的には上級は手応えたっぷりのものにします。初級は初心者の人がプレイした時に遊び方がわかって、そう簡単には負けないというバランスにしたいですね。

 ただ、初級でもゲームが進んでいくとCPUが今までやらなかった行動を徐々にしていくというようにもしていきたいとも考えています。上級に関してはCPUも勝つための行動をしてきます。

編: 後半プレイが疲れてしまうというのは多くのユーザーが経験することだと思います。どうやって対処していくのでしょう?

阿野氏: 疲れるというのは私が年だというのもありますけどね(笑)。ゲームが進んでいくと、ユーザーと同じようにCPUが大きな勢力を持つようになっていきます。これを倒すにはものすごいエネルギーが必要になってくる。基本的にはどこかで必ず一大決戦が行なわれるようになります。この戦いを制することができれば、勢力バランスは一気に崩れる。

 それは序盤の小競り合いの戦争から2国対2国、3対3というようにどんどんスケールが大きくなっていくので、常に緊張感のある戦いが展開されます。一大決戦に勝利すればあとは天下統一まで一直線ですね。

 この必ず起こる最大の決戦で勝つということに対しては、ものすごいエネルギーが必要になります。そのくらい手応えがあるものにしたいと思っています。ここを盛り上げることで、プレーヤーには達成感や満足感を感じてほしいですね。

 よくRPGでも、最後のボスキャラと戦う時には準備を含めると1、2時間かかる場合もあるじゃないですか。さらに長い戦闘で、ずっと集中しなくちゃいけない。ああいう感触を持たせたいですね。

編: 今回はリアルタイム制を導入しましたが、今後の「信長の野望」、「三國志」シリーズでターン制に戻るということはあり得ますか?

阿野氏: 充分あると思います。プロデューサーによって、何を表現したいかによって変わってくるでしょうね。

 ユーザーもターン制が好きだったり、リアルタイム制が好きだったり、いろいろだと思うんですよ。みんなが同じ1つの方向性を求める、というのはないんです。どういう手法をとるかというのは、まずどんなゲームにしたいか、というものがあってその結果ルールを採用するということですよね。現状ではすべての人に受け入れられる「信長の野望」を作るというのは、なかなか難しいかなとも思いますね。

編: では最後に「信長の野望」ファンに向けてメッセージをお願いします。

阿野氏: ファンはもちろん、初心者も幅広い層の方にプレイをしていただきたいですね。そのためにできる限りのことをしています。初心者の方にはゲームを覚えてもらえるように、遊んでいってルールを覚えればちゃんと勝てるような、最終的には上級に挑めるようなところまでいってもらえればと。とにかく是非一度プレイしてほしいですね。

編: ありがとうございました。

□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「信長の野望・革新」のページ
http://www.gamecity.ne.jp/kakushin/
□関連情報
【4月28日】コーエー、「信長の野望 革新」の最新情報を公開
リアルタイムで展開する合戦システムを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050428/kaku_3.htm
【4月22日】コーエー、「信長の野望 革新」の最新情報を公開
鉄甲船や馬上筒など技術革新システムを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050422/kaku_2.htm
【4月15日】 コーエー、「信長の野望 革新」の発売時期を6月に決定
「ニッポンを変える。」最新画面を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050415/kakushin.htm
【4月1日】コーエー、WIN「信長の野望・革新」
日本全国1枚マップなどのゲームシステムを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050401/nobu.htm
【3月25日】コーエー、歴史シミュレーションシリーズの新作
WIN「信長の野望・革新」2005年夏発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050325/nobu.htm

(2005年5月●日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]


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