★PCゲームレビュー★
ストーリーと感触を受け継ぐシリーズ最新作
ミストIV:リヴェレーション |
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「ミスト ウル コンプリートクロニクル」に続いて、「ミストIV:リヴェレーション」の日本語版が発売された。アドベンチャーゲームファンである筆者にとって、まさにうれしい悲鳴を上げたくなるような状況である。
「ウル」が「ミスト」シリーズにおける外伝的位置づけにあるのに対し、本作は前作「ミストIII」から10年後という、シリーズのストーリーを受け継ぐ作品となっている。Windows、Macintoshのどちらでも遊べるハイブリッド仕様となっているところや、プリレンダによる疑似3Dグラフィックスを使用するで生まれるゲームの感触などでも、シリーズの続編であることを実感させられる。
もちろん本作がミストシリーズ初挑戦というユーザーでも、プレイには何の支障もない。本作はシリーズが持つ「ミスト」ならではの不思議な世界観と感触をたっぷり堪能できる作品となっている。プレイをした人の多くは、シリーズをさかのぼって挑戦したくなってしまうこと請け合いである。
■「ミスト」ならではの独特の手触りが嬉しい
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プリレンダで描かれた美しいミストの世界 |
本作は今までのシリーズの伝統を受け継ぐプリレンダーの疑似3Dグラフィックスによる映像表現を採用している。リアルタイムレンダリングではできないような緻密な表現が可能になる一方で、インタラクティブ性には乏しくなる。
コンピュータの能力がまだ低く、リアルタイムで高度なグラフィックスを表現できなかった時代に、見た目の質を上げる、開発者の知恵として生み出された技術だ。このため、フィールドの移動などはキャラクタの位置に合わせてリアルタイムに変化するのではなく、ひとつの絵から、次の絵へ“切り替わる”という独特のゲーム性を持つことになる。
「ウル」ではPCのハード性能の向上によって可能になったフル3Dのグラフィックスにより、フルインタラクティブなゲーム性を実現していた。そのグラフィックスを生み出したハードの進化とCG技術の進歩はプリレンダという技術を完全に過去のものにしたと、筆者は思っていた。
しかし、違ったのである。本作「ミストIV:リヴェレーション」では3Dグラフィックスとプリレンダを巧みに混ぜて世界を表現している。そのグラフィックはため息が出るほどに美しく、精緻である。そしてあらかじめ収録された映像ならではのタイミングや、フルインタラクティブではない独特のもどかしさもうまくゲーム性に取り込んでいることを実感させられた。
イーシャやアトラスといった登場人物達は今回も実写で登場する。彼らはCGで表現された世界を動き回り、プレーヤーに話しかけてくる。かつてサターンやPSの時代、「ミスト」に影響を受けてこのCGと実写の役者の融合という手法を取り入れたゲームがいくつか生まれたが、その頃を思い出してしまった。実際の役者はブルースクリーンの前で演技し、画像をはめ込んでいるのだが、合成の精度は格段に上がっていて過去の作品とは比べものにならない。しかし、画面に完全にマッチしていない違和感も微妙に残されていて、その感覚が逆にゲームの世界に非常にあっている。これが本作ならではの幻想性を強めてくれている。
幻想的な雰囲気、そして不思議なゲーム性を持ったパズル、異世界を探索する楽しさをたっぷり持った作品である。プレーヤーはこの世界の緻密さに驚かされ、魅了されていくだろう。さらに魅力的な異世界を表現していながら、根底にアトラス一家の愛憎劇というちょっとドロドロした人間関係が描かれているところがまた興味深い。
本作でプレーヤーは、かつて“時代”を支配しようとしたために父アトラスに本の世界に閉じこめられたアクナーとシーラスという2人の兄弟の足取りを追うこととなる。プレーヤーが訪れる異世界は荒涼とした、硬質の美しさのある場所だが、彼らの怨嗟の声がその世界の雰囲気に独特のスパイスを加わえている。異世界から必死に脱出をしようとする彼らの叫びが、まるでプレーヤー自身がこの世界に捕らわれ、脱出の道を探しているかのような錯覚を生むのである。パズルを解き、幻想的な世界を探索する楽しさとともに、アトラスの家族達の行く末も気になる作品である。
余談になるが、昔、セガが「RAMPO」という実写とCGを融合させたゲームを作っている。CGの中をザラザラの質感の実写キャラクタが動くといったものだったが、逆にその雰囲気が原作である江戸川乱歩作品に通じる不安な雰囲気を作り出していて、作者はお気に入りだった。シリーズ最新作である「ミストIV:リヴェレーション」では、格段の技術の進歩により、この技術の未来の姿を提示している。シリーズが持ち続けている独特の違和感をきちんと残しているスタッフの演出には、作者はとても好感を持った。この作品に影響を受けた不思議な雰囲気を持つ作品がもっともっと登場してほしいと思う。
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CG世界にいる実写のキャラクタ。独特の違和感がゲームの雰囲気を盛り上げる。左より、アトラス、イーシャ、シーラスである |
■スタッフのこだわりが隅々まで感じさせられる世界、歯ごたえのある謎
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さまざまな場面で登場するパズル。今作の謎はちょっと難しい |
本作では手のアイコンをマウスによって画面内で滑らせ、アイコンが反応したところをクリックしていくことでゲームを進めるというオーソドックスなシステムを採用している。移動できる場所もまた手のアイコンが教えてくれる。前述したように本作は収録された映像のつなぎ合わせによる表現方式を採っており、ひとつの場所から次の場所に動くごとに絵が切り替わるようになっている。この「絵」はほとんどの場面で360゜をカバーしており、マウスドラッグで自由に見回すことができる。見回してみることで、世界がどこまでも細かく作られていることがわかり、スタッフの情熱に感心させられることだろう。
ただ、このアイコンの変化を見逃さないようにするというゲーム性は、その変化に気がつかないだけでハマってしまう可能性があり、注意が必要だ。ゲームが詰まってしまった場合は、ゆっくりと周りを見回し、移動できるフィールドで周りを見回すことで解法が見えてくる。本作は一刻も早いクリアを目指して集中してプレイをするよりも、スタッフのこの世界に対するこだわりを楽しみながら、じっくり取り組むというプレイスタイルに向いているタイトルだ。
ゲームの謎のバランスに関しては、筆者はずいぶん手強く感じた。ゲームがスタートした瞬間、アトラスに映像機械の電波のチューニングを頼まれるのだが、ここでもうパズルの仕組みに手間取ってしまった。この後も、かなり序盤から複雑なパズルが登場し、ちょっと戸惑うことも多かった。
世界観へのこだわりが、ゲームの難易度を増しているという印象も受けた。ゲームの中にはさまざまなヒントがちりばめられている。アトラスの手記だったり、イーシャが落としたペンダントからのメッセージだったり、壁の絵だったり……これらが、いつどこで役にたつかわからない場合がある。このときに便利なのが「カメラ」である。本作ではカメラボタンを押すことで写真が撮れる。ヒントはこれで撮影しておけば、いつでもそれを見ることができる。こまめに撮影をしておく癖をつけておくの重要なポイントだ。
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最初にアトラスに依頼される電波のチューニング。コツがつかめず、かなり難しかった |
ゲームの仲のテキストも日本語化されている。重要なヒントが隠されているほか、ストーリーにも注目したい |
世界観を活かしたさまざまなオブジェクトにはそれぞれきちんと意味づけがされている |
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カーソルを持っていくことで手のアイコンが変化する。見逃さないようにしたい |
ヘイヴンに住む動物たち。非常に奇妙な、異世界の動物たちである |
カメラ機能により、ヒントの書かれた本などをいつでも見ることが可能になった |
■異世界への旅、垣間見える怨念
ゲームは「トマーナ」という世界からスタートする。プレイヤーを招いた友人アトラスとその妻キャサリン、そして娘イーシャが生活する場所だ。豊かな水や温かな日差し、アトラスとイーシャの幸せそうな会話など、この世界は非常に平和な雰囲気がある。
しかし、アトラスには不安がある。かつて世界を支配しようとしたアトラスの二人の息子アクナーとシーラスが封じられた世界から脱出してしまったらしいというのだ。アトラスはプレーヤーに挨拶もそこそこに出ていってしまい、プレーヤーはまずこのトマーナの世界の動力を復旧させるためにこの世界を探索することになる。
トマーナではイーシャが何度もプレーヤーの前に現れる。彼女の言葉の端々からは、この世界での幸せな生活が伺える。ただし、アトラス達と暮らしているはずの妻キャサリンはいま外に出ているようで姿は見えない。息子達を封じたことで心を痛め、アトラスとの仲がうまくいっていないような雰囲気もある。
パズルを解き、無事に動力を回復させたと思ったのもつかの間、プレーヤーは事故に巻き込まれ、気を失ってしまう。そして、ある部屋でイーシャのペンダントが落ちているのを見る。手に取るとひとつの情景が浮かび上がる。イーシャが追われている! 誰が? どうして? ペンダントは残留する想いに反応して情景を浮かび上がらせる機能があり、プレーヤーはそれによってイーシャの足取りを追跡する事になる。やがてプレーヤーの前に現れる2つの接続書。アクナーとシーラスを封じたヘイヴンとスパイアに通じる本である。この2つの世界のどちらかにイーシャはいるのだろうか?
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アトラス達が平和な生活を送っているトマーナ。アトラスは研究に没頭しているようである |
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突然のトラブルにより、失神してしまい、気がつくと夜に。一体何があったのか? |
イーシャのネックレスによる映像。彼女を追う者は誰だろう |
二つの接続書。イーシャはこのどちらかの世界に逃げたのだろうか |
スパイアは暗い夜の世界。緑色の光を放つ不思議な石と、白く輝く水晶によって世界はぼんやりと照らし出されている。非常に陰鬱な光景で、ここに閉じこめられていたシーラスに同情したくなってしまう。ペンダントはさまざまな場所でシーラスの想いを再生する。彼は必死にこの世界からの脱出の方法を探していた。その原動力はこの世界に閉じこめたアトラスへの復讐心だ。
この世界は奇妙な法則による機械が存在するらしい。緑色に輝く石は浮遊する性質があり、水晶により生み出された電力を供給することでこの浮遊する石の高さを自由に変えることができるのだ。この性質を利用した巨大な機械がどこかに隠されていて、その秘密を解き明かすことで、この世界から脱出する方法が明らかになるようだ。
移動できる場所を探し、隠されたパズルを解き明かしていくことで、プレーヤーの前に次々と大がかりな仕掛けが現れる。この暗い世界で、復讐を誓いひたすら実験を繰り返したであろうシーラスの痕跡も見ることができる。謎を解き明かし、先に進むことでの爽快感が、まるでシーラスの後を追って復讐への道を開いているようで、複雑な感情が生まれるところも面白いところだ。
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荒涼としたスパイア。シーラスは必死になってこの世界からの脱出を試みていたようだ |
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この世界独特の技術により浮遊する船。乗り込むには工夫が必要だ |
ネックレスにより蘇るシーラスの足取り。彼を動かすのは父への復讐心だ |
大がかりな機械が次々と現れる。謎を解き明かすことでシーラスに追いつけるだろうか |
ヘイヴンは多くの生き物が暮らすジャングルに包まれた世界。しかし、人の姿はなく、生命にあふれているだけにより一層の孤独感が生まれる。この世界に閉じこめられたアクナーは狩人として一流の腕を持っていたらしく、彼が住居としていた難破船には、罠や槍などの狩猟道具が数多く置かれている。
槍が打ち込まれた巨大な獣の骨もあり、この孤独の世界の中でアクナーがどんな生き方をしていたかが伺える。それは背筋が寒くなるような、殺伐とした生活だっただろう。プレーヤーは最初アクナーの住居であった難破船にはいるためのパズルに挑戦する。スパイアでの石と電気のパズルとはまったく違う、今にも朽ちそうな木とロープと鉄球がきちんと機械として機能するところがおもしろい。
やがてアクナーの痕跡はジャングルの奧へと続いていく。この世界の冒頭ではイーシャのイメージも見ることができる。この世界にイーシャはいるのだろうか、そうなると、イーシャを追う男の影は、アクナーなのだろうか? ゲームはまだ続いていく。筆者はじっくりと、彼らの行動の結末を見届けたいと思う。
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ヘイヴンにも人の気配はないが、生き物はたくさんいる。アクナーはここで狩猟により日々の糧を得ていたようだ |
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粗暴なイメージのあるアクナーだが、極めて緻密に生態系を研究している |
アクナーの足取りはジャングルへ。植物相もまた地球とは大きく異なる |
ジャングルの奧にある建物何が待ち受けているのだろうか |
Myst(R)IV Revelation (C)2004UbisoftEntertainment. All Rights Reserved.Ubisoft,ubi.com, and theUbisoft logo are trademarks ofUbisoftEntertainment in the U.S. and/or other countries. D'ni(tm), Cyan(R), and Myst(R)are trademarks of Cyan, Inc. and Cyan Worlds, Inc. under license toUbisoftEntertainment. Myst Revelation.
【ミストIV:リヴェレーション】
- CPU: Pentium III 700MHz以上(Pentium 4 以上推奨)
- メモリ:128MB以上(512MB以上推奨)
- HDD:3.5GB以上
- ビデオカード:VRAM32MB以上(VRAM32MB以上推奨)
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□livedoor GAMESのホームページ
http://games.livedoor.com/
□メディアクエストのホームページ
http://www.kids-station.com/game/
□「Myst IV: Revelation」のページ
http://games.livedoor.com/pkg/myst_iv/
□関連情報
【1月18日】livedoor GAMES、新作タイトル発表会を開催
「Myst」シリーズ最新作「Myst IV Revelation」を3月25日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050118/myst4.htm
【2004年8月12日】本日到着! DEMO & PATCH
「Myst IV: Revelation」Playable Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040812/demo0812.htm
【2004年5月15日】Ubi Softブースレポート アクションアドベンチャー編
バイオレンス路線の「Prince of Persia 2」、原点回帰の「Myst IV」ほか
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040515/e3ubi2.htm
【2003年11月12日】「Uru: Ages Beyond Myst」Playable Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031112/demo1112.htm
(2005年4月11日)
[Reported by 勝田哲也]
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