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★ニンテンドーDSゲームレビュー★
精力的な新作リリースを続ける「ニンテンドーDS」。そのラインナップの中でも、ハード発表当初から注目されていた「パックピクス」がついに市場に姿を現した。おそらくは世界中で最も単純な「形」を持ったアイドルキャラクタ、パックマン。DSの中にそれを描けば、とたんに命を持って動き出す。今までのゲームハードでは成し得なかった、DSならではの形のアクションゲーム、プレイしてみての手応えをお伝えしよう。 ■ 自分の描いたものが動く。この図形認識は至極、気持ちヨイ! TVCMでは、安藤美姫ちゃんが美しいトレースでパックマンを描き、それがそのまま追いかけてくるという構図になっているが、実際のゲームでは、もっといいかげんな形のパックマンでも十分認識してくれる。まぁるくなく、多少いびつな形のものでもOK。最初に口にあたるVの字の部分を描き、くるっと囲むように一筆書きの要領でパックマンを描くというルールさえ守っていれば、きちんと線が閉じた形になっていなくても、かなりの確率で自分が描いた図形がパックマンとして認識され、アグアグとゴーストを追いかけだす。笑えるのは、描いた図形~パックマンが、そのままの形で動き始めるという点だ。いびつな形のパックマンが、きちんと口を動かして走る様は、なかなかにおかしい。上画面はフルーツターゲットなどが出現するルートになっているのだが、ここに入るとそのままの形が通路サイズに縮小されるのもまた楽しいのである。 描き方が悪いとパックマンとして動き出さないだけでなく、描いた跡が少しの間残ってしまい、次に描くジャマになるようになっている。一種のペナルティというわけだ。時折、自分の思った方向でなく、別方向に進む、おかしなパックマンが出来上がることもあるが、それは自分の描き方が悪かったと素直に納得しよう。どうやら口に当たる部分の角度が重要なようで、あまり平べったい形(と描いた自分では思っているもの)は認識されにくいようだ。
ゲームは、そうして描いたパックマンをコントロールし、画面上のゴーストを食べていくというアクションゲーム。各ステージ・規定数のゴーストを食べればクリアという、単純な面クリアタイプのゲームである。パックマンのコントロールもタッチペンで行なうのだが、行きたい方向に向けた壁をパックマンの前に描くという直感的な操作なので、数回のプレイですぐにマスターできるだろう。 描いたパックマンは基本的に無敵なので、とにかくゴーストを追い詰めて、食べていけばよい。パックマンは停止することはないので、画面からフレームアウトしないようにコントロールしよう。フレームアウトすると1ミス扱いになり、ステージに設定されている数のパックマンを使い果たしてしまうとゲームオーバーとなるのだが、ほとんどこのパターンでゲームオーバーになることはないはず。タイムアウトでゲームオーバーとなることのほうが多いのではないだろうか。 遊びだすと、とにかくいろんなパックマンを描いてみたくなる。大きいのや小さいの、長いの、ひらべったいの……。この、描くことがとにかく楽しく、それが動き出すという魅力にすっかりとりつかれてしまう。自分の持っているモノが魔法のペンに思えてくるような、そんな楽しさがそこにはあるのだ。
■ ステージを重ねると、さらに描けるモノが増える はじめはパックマンだけを描いていくのだが、4ステージごとに矢、バクダンと、描けるものが増えていく。矢は描くことでその方向に一直線に飛び、爆弾は丸を描いてそこから導火線を延ばし、火に届かせることで爆発する。できるだけ単純な形で、動きの違うものを表現できるかということがきちんと考えられていて、どちらもパックマン同様に描くのが楽しくなるオブジェクトだ。 線を描く途中にゴーストがいたり、ヨゴレ(敵の出すペンキのようなヨゴレ)があると絵が完結しなくなってしまう。ちょこまかと動く敵の隙間をぬうように、目的の絵を描くのは、実はなかなか難しい。ゴーストも何種類かいて、動きの素早いヤツ、ワープするヤツ、番号順に倒さないと復活するヤツ等々。これらが入り乱れて登場したりすると、けっこうパニックを起こしたりもする。単純なようで、けっこう手強いゲームなのだ。いくつかのステージをクリアすると、大型のボスも登場。ボスは単純に食べればいいというわけでなく、ボスより大きなパックマンを描く必要があったり、矢で外殻を壊してやっつける必要があったりと、違った戦略が必要となるようになっている。倒し方についてはノーヒントなのだが、新しいオブジェクトを使用したり、直前のステージで使った動きを利用したり、というパターンで構成されているので、少し考えれば、迷うことなく倒せるだろう。 ステージ自体にも、先に進むほどにいろんな仕掛けが用意されている。スイッチなどの仕掛けは、うまく作動させてゴーストを食べる必要がある。アーマーを張っているゴーストにバクダンでダメージを与えて、アーマーをはがしてから食べる。上の画面にあるスイッチを矢を使って作動させてから、上の通路にパックマンを導く。そういった複合技も先のステージでは必要になってくる。描き方によって微妙に動きが狂ってしまったりといったイライラを感じながら、一生懸命に絵を描くようになったら、すでにこのゲームにハマってしまった証拠と言えるだろう。焦れば焦るほどにでき上がる、いびつな形のパックマン。それでもけなげにゴーストを追いかけるその姿は、なんとも愛おしい。
■ 気持ちよさから焦り、そしてその先に残るゲーム要素とは
各面は上下の計2画面の固定構成になっているため、バリエーションをつけていくうちにパズル要素が生まれるのはいたしかたないところではあるのだが、先のステージになるにつれ、パックマンを描き、敵を追いかけるという要素でなく、パズル要素のほうがメインを占めるようになってくる。上手に矢を飛ばすことができれば、そのステージはOK、という感じに、パックマンを描かない(もちろん最終的には描かなければゴーストが食べられないのだが)ことがメインのステージが増えてくる。「パックマンを描いて動かす」ということが気持ちよさだったはずなのに、気がつくとそれがどこかに消えてしまっているのである。
また、画面上には3体までパックマンを描けるのだが、実際に多くのパックマンを描くことは少ない。1体のパックマンで連続でゴーストを食べたほうが得点が高く、2体以上を操作するメリットがあまりないからだ。せいぜい上の通路にフルーツを食べに行くパックマンを別に描くことがあるくらいだろう。実際、先のステージになるとゴーストや仕掛けにジャマされてしまい、複数のパックマンを操作することが難しくなってくることも理由に挙げられると思う。
■ 描いたものが動き出す、その「可能性」は充分堪能できる 振り返るなら、結局このゲームの魅力は「パックマンを描く」ということに集約されている。自分の描いたパックマンが動き出し、それを操作するという魅力は、今までのゲーム機にない、非常に大きなものと言える。しかしそれ以上のメッセージが「パックピクス」にはまだ埋め込まれていなかったと言わざるを得ないだろう。 けれど、それはこのゲームが面白くない……というわけではない。例えば巨大なスクリーンを床に置き、その上をTVCFよろしく自分の足でパックマンを描くというものに変化させればどうだろう。アトラクションとしてこの上なく楽しいものが仕上がるのではないかと思う。みんなでワイワイ騒げる、わかりやすい楽しさは、十分に持っている作品でないかと思うのだ。実際、たぶん一番面白いのは、いろんな人の描くパックマン(のようなもの)をいろいろ見比べてみることだろう。 しかし、1人プレイを主として考えなくてはいけないゲーム機では、それだけではまだ物足りないだろう。描いたパックマンをどんどんと動かし、アクションさせる楽しさがもう少し欲しかった。ゲームとしてのボリュームもまだまだ十分ではない。上手なプレーヤーなら1日もあれば全ステージをクリアしてしまうだろう。ボリュームがすべてではないといっても、大きなやりこみ要素もないため、描く楽しさに飽きてしまうと、熱心にプレイするというのはちょっと難しいかもしれない。
「パックピクス」のパックマンは、ゲームスクリーン上にタッチペンで描かれた魔法のパックマン。ペンと魔法の世界を生み出すところまでDSはやって来た。それは遊びの新提案としては十分すぎる価値を持っていると思う。その魔法を、世間をあっと驚かす、大魔法にまで育て上げるには、もう少し時間がかかるのかもしれない。
□ナムコのホームページ (2005年3月10日) [Reported by 山本直人]
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