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★PS2/GCゲームレビュー★

近年稀に見る良作アクションゲーム
「ビューティフル ジョー 2 ブラックフィルムの謎」

  • ジャンル:VFXアクション
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:6,980円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2/ゲームキューブ
  • 発売日:発売中(2004年12月6日)



 映画の中の世界、「ムービーランド」の秩序と平和を守るために立ち上がった正義のヒーロー、ジョーを操作して華麗なアクションを繰り広げる「ビューティフル ジョー」シリーズの最新作。ある時は特撮映画ようにスロー(スローモーション)やマックスピード(加速)、ズームといった特殊技「VFXアクション」を駆使して敵をなぎ倒したり、またある時にはトラップを抜け出す謎解きの要素も楽しむことができる。ステージ間に挿入される数々のムービーも、まるでアメコミを見ているかのようなユーモア満載の演出で、プレーヤーを大いに楽しませてくれる。

 その魅力的なキャラクタはゲームの世界をも飛び越え、テレビ東京系列にてアニメ番組が毎週放送されたり、大阪プロレスでは「ビューティフル ジョー」というリングネームで本物のレスラーが登場したりと、その活躍はとどまるところを知らない。

 それでは、前作「ビューティフル ジョー 新たなる希望」との比較を交えながら、本作品の魅力を探っていくことにしよう。


■ 前作からの魅力・面白さを確実に継承。徹底したゲームバランス調整と初心者思いの親切設計にも好感!

 前作から最も大きく変わった点は、主人公ジョーのガールフレンド、シルヴィア(囚われの身となっていたところをジョーに救われた)が新たにプレーヤーキャラとして使用可能になったことである。主人公ジョーとの違いは、パンチの代わりに銃を使用することと、通常の3倍のダメージを相手に与えることができる「リプレイ」というVFXアクションを備えていることの2点である。それ以外の体格や通常の移動速度、ジャンプの距離といった基本性能はジョーと全く同じなので、すぐに操作方法を覚えられるのが嬉しい。

 ゲーム開始時にどちらのキャラクタで始めるかを選択してからスタートするようになっているが、R2ボタンを押せばいつでも交代することが可能。交代する回数に制限はないので、プレーの自由度は非常に高い。しかも基本性能に差がないから、頻繁に交代を繰り返しても混乱を来すようなことが全くないのだ。基本操作を覚える段階でプレーヤーが戸惑わないよう、新キャラクタであるシルヴィアとジョーとの間にあえて大きな性能差をつけなかったことを筆者は高く評価したい。

 また筆者は当初、このシルヴィアに装備された「飛び道具」である銃を多用することで攻略が容易になり、ゲームの展開が大味になってしまうのではないかと少々危惧していたのだが、そのようなことは一切なかった。これは開発者が弾丸の飛ぶスピードを遅くしたり、必要以上に連射できないようにするなど、意識して調整をおこなったからだと推測される。

 華麗なアクションで敵を倒す、本シリーズの醍醐味とも言うべきVFXアクションについては、前作同様に最初から全種類を使用することはできず、ステージが進むごとに徐々に追加されていくようになっている。新たに使用可能になったものは、その都度チュートリアル画面で丁寧に使用法を説明してくれて、かつ何回でも操作して練習することが可能だ。前作をプレーしていない人やゲームの初心者に対する配慮が見て取れ、とても好感が持てた。

 また、VFXアクションを駆使してカッコよく敵を倒せば倒すほど「V-メダル」(お金)が増え、パワーアップアイテムが購入しやすくなるというシステムは今回も健在。プレーヤーが数々のVFXアクションを駆使して、華麗な動きで敵を仕留めるような攻略法を自然と考え出してしまうこのゲーム性は、いつもながら実に見事だ。

 ただ細かいツッコミをしてしまうと、比較的簡単に「V-メダル」を大量に獲得できる場所が存在するのはちょっと気になった。とある場所でほんの数匹の敵を倒しただけで、メダルを一度に獲得できる上限と思われる値にまで達してしまうほどの「稼ぎ場所」を筆者は確認している。この場所についての詳しい説明は省くが、さすがにこれはやり過ぎだったかもしれない。だが幸いなことに(?)、たとえそこで全アイテムを購入できたとしても、以後攻略が楽になって大味な展開になるとか、ゲームバランスが致命的に壊れるといったようなことはなかったので安心してほしい。

プレーヤーキャラとなったシルヴィア。銃を装備しているので、ジョーではできない遠距離攻撃が可能。VFXアクション「リプレイ」による3段攻撃も爽快感が高い
敵に囲まれた状態であっても、ボタンを押せばいつでもパートナーに交代可能。ボタンを一定時間押し続けるとコンビネーション技を出すこともできる
敵を倒す爽快感を引き出すさまざまなVFXアクション。親切なチュートリアル機能も付いているので、初心者にもたいへんわかりやすい


 さらに本作では、ステージクリア後のインターバルにおいて攻略のヒントを参照できるモードが新たに追加された。前作にも登場した伝説のヒーロー、ブルーが役に立つテクニックや謎解きのアドバイスなど、さまざまな情報を教えてくれる。各ステージをクリアするか、一定のプレー回数を越えるごとに表示されるメッセージが追加されていくようだ。上級者であれば特にお世話になることはないだろうが、特定の場所で詰まってしまい、先へ進めなくなったときには重宝することだろう。

 ヒントの中には、前作をプレーした人にとっては今さら聞くまでもないような基本操作に関する情報も含まれている。シリーズを通してセオリーとなっていることであってもあえて外さず、初心者にもできるだけ早くゲームの仕組みを理解してもらおう、と徹底的に配慮したことは大いに評価したい。

敵に囲まれた状態であっても、ボタンを押せばいつでもパートナーに交代可能。ボタンを一定時間押し続けるとコンビネーション技を出すこともできる


 筆者が全編を通してプレーした限りでは、どちらのキャラクタで進めても特に優劣の差はなく、プレーヤーの好みでどちらを選んでも構わないようにゲームバランスを調整しているように思えた。また、敵の強さや障害物を避けていくといった難易度も前作から大きく変わったという印象はなく、高過ぎず低過ぎずで丁度よい。おそらく開発段階でのテストプレーに相当な時間を割いたものと推察される。この絶妙なバランス調整は実に見事だ。

 ゲーム中にはどちらか一方のキャラクタを使用しないと先へ進めない場所がいくつか存在するが、だからと言って不条理なまでに意地悪なトリックが仕掛けてあるということは全くなかった。前作と同じように、謎解きの場面になるとゲームがスタートする前にヒントとなる箇所をズームアップして見せたり、解明に近づくと画面に大きな変化が現れることもあるので、プレーヤーに対して「この謎を解かないと先へ進めませんよ!」というメッセージを明確に伝えてくれる。この親切な配慮により、数時間も同じ場面で詰まってしまった、などということがなく、スムーズにゲームを進めることができてたいへん好感が持てた。

 また、こまめにデータをセーブできるようにしたところも高く評価したい。前作では正直言ってデータをセーブできるまでの間隔が長い(複数のステージをクリアしないとセーブポイントに到達できない)と感じていたが、本作では1ステージ(1章)ごとにセーブすることができるため、ちょっとした空き時間でも楽しむことができる。まとまった時間がなかなかとれない社会人でも、これなら不満はないだろう。

 アクションゲームには自信があるよという人は、ゲームの難易度を「ADULTS」にしてぜひ挑戦してみよう。序盤からかなり手ごたえのあるゲームが楽しめるハズだ。なお前作をプレーしたことがない人は、まずは初心者向けの「KIDS」を選び、VFXアクションの仕組みを理解してから挑戦することをおすすめする。

ヒントとなる箇所はズームアップで見せてくれる。プレーヤーに対する親切心が随所に込められいて実に心地よい



■ 見ているだけでも楽しいこだわりの演出。気分はまさにスーパーヒーロー!

 各ステージごとに、背景は恐竜時代や古代エジプト、日本や中国といったテーマに基づいてグラフィックが描かれている。よく見るとこれらの背景に合わせて、敵キャラクタのコスチュームが微妙に異なっていることがわかる。わざわざ派手なコスチュームを着込んで現れた敵が、ジョーたちに翻弄されて呆気なく倒されるのを見ているだけでも実に楽しい。

 前作同様、敵にやられたときには「OUCH!」の叫び声とともに「CUT!」の文字が並ぶ。映画の撮影を想起させるこのユニークな演出はもちろん、やられた(死んだ)という残酷なイメージをプレーヤーに一切与えることがない点でも特筆すべきアイデアだろう。

 ステージ間に挿入されるムービーの出来もこれまた素晴らしい。対ボス戦ではジョー、シルヴィアとボスたちによる華麗な「舌戦」が繰り広げられる。いかにも特撮ヒーローらしい勧善懲悪的な内容が中心だが、時には敵のボスキャラタまでもがギャグを連発して、プレーヤーを大いに笑わせてくれる。

 セリフはこれまでのシリーズ同様にすべて英語で、日本語は字幕による表記のみとなっている。やはりアメコミ調の世界観を出すためには、日本語に統一せずに英語で喋ったほうがカッコよさが引き立ち、見ていてとても面白い。字幕に表示される漢字にはすべてフリガナがついているので、子供向けの戦隊ヒーロー番組を意識したこの演出が、さらにまたいい味を出しているのだ。

 ボス戦終了後のナレーションも秀逸。「ジョーたちの運命や如何に!? 次回ビューティフル ジョー 2……」といった口調で次のステージの予告編を語る声優さんの渋い声が実にカッコよく、プレーヤーに対してさらなる挑戦意欲を煽ってくれる。ステージ間のストーリーのつながりもきちんと説明してくるので、プレーを中断してから長期間放置した後でも、すぐにゲームの目的を把握することができるからとても親切だ。

 ただ欲を言えば、一度クリアしたステージのシーンであれば、以後自由に見られる別モードを用意してくれればなおよかった。せっかくの出来がよいムービーだけに、かえって「出し惜しみ」しているように思えて仕方がないと思ったのは筆者だけであろうか? さらにエンディングまでプレーした人に対しては、すべてのムービーををつなぎ、1本の映画のように見て楽しめるようなモードも併せてほしかったところだ。

ボスが登場するシーンでは必ず名前が表示され、特撮ヒーローの怪獣・怪人が登場する場面を彷彿とさせる。やられたときの「CUT!」の文字
ボスを倒すと、「次回予告編」のムービーが流れ、以後のストーリー展開を教えてくれる。スクリーンの中にいるジョー、シルヴィアと直接会話しているシーンは本当におかしくて、もう笑わずにはいられないのだ



■ こっそり隠されたオマケステージの存在が発覚! テクニカルなステージがズラリと揃う「三十六房」

 本編とは別に、実は「三十六房」という名の別モードが存在する。その名の通り全36ステージで構成され、制限時間内に敵を全滅させたり、一定数以上のV-マークを獲得したりといった純粋なテクニック勝負で謎解きの要素は一切ない。難易度は総じて高く、特に後半のステージはかなり難解なものばかりなので、このモードはプレーヤーのレベルに応じて遊んでもらえばいいという、本編とは全く異なるコンセプトをもって作られているようだ。

 実はこのモード、なぜかマニュアルにはその存在すら明記されていない。最初のステージ(第1幕)をクリアした後に「36TH CHAMBER……」という表示がされるとプレイ可能になるようだ。筆者はゲームを始めた当初、「この表示は何の意味があるのだろう?」と不思議で仕方がなかったのだが、プレーを始めて数日後にセーブデータをロードした直後、選択画面において「THE 36TH CHAMBER」という表示が追加されていたことに初めて気が付いた(苦笑)。

 それにしてもマニュアルにあえて情報を載せなかったのはなぜなのだろうか? 何の前触れもなくいきなり出現させてプレーヤーを驚かせようという意図があったのかもしれないが、少なくとも筆者にはその必要性は感じられなかった。

 それからちょっと気になったのが、敵の出現パターンに似たようなものが多く、展開がやや単調に思えたこと。異なるステージに挑戦しても、同じ種類のキャラクタが同じ順番で出てくるパターンが繰り返されると、さすがに飽きがきてしまう。また攻撃パターンも本編のものとほぼ同じなので、この点についてはあまり新鮮味がなかったように思った。

 筆者としては難しいステージばかりでなく、本編の謎解きに詰まったときなどに「息抜き」としても利用できるような低難易度のステージを用意したり、あらかじめステージごとに目安となる難易度表示をするなど、本編同様の「親切設計」をもう少し採り入れてもよかったように思えた。

 とはいえ、本編のアクションゲームではいまひとつ歯ごたえが感じられない人には非常にありがたい存在だ。一度エンディングまで到達してしまった人に対して長く飽きずに遊んでもらうためにも、その存在自体はけっして否定されるようなものではない。

カンフー映画を彷彿とさせるステージでストイックなアクションゲームが展開される。障害物がこちらの攻撃を妨げたり、ライフが1個しかないステージも存在する。見た目以上に難しい



■ 「ロックマン」に続くロングシリーズ化を熱烈希望! 近年稀に見る良作アクションゲーム

 ゲームシステム、ストーリー、ビジュアルのいずれにおいても、前作までに創り上げた世界観をしっかりと継承し、かつその面白さを損ねることのない作品に見事に仕上がっている。シリーズものの続編だからと、大幅に操作方法を変更したり難易度を上昇させたりしたために、かえって本来の面白さを損ねてしまったタイトルがかつてどれほど存在したことだろうか……。本作は続編を作るならかくあるべし、というまさに「お手本」と言っていいだろう。

 繰り返しになるが、ただやみくもに敵を蹴ったり殴ったりするだけでなく、VFXアクションを駆使してプレーヤーが自然と魅せるプレーを追求できるようにしてしまうアイデアはまさに秀逸。「正義のヒーローになりきってとことん楽しんでください!」という開発者からのメッセージが、プレーする側にひしひしと伝わってくるのだ。

 難易度設定も適切で、かつ初心者にも親切設計だから、前作を遊んでいなくても心配する必要はまったくなし。機会があればぜひプレーして、この“VIEWTIFUL”な世界観を心ゆくまで堪能していただきたい。筆者としては、カプコンの誇る名作「ロックマン」に続く新しいアクションゲームの定番シリーズとして、今後も続編の発売に期待したい。

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□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「ビューティフル ジョー」のページ
http://www.v-joe.net/
□関連情報
【2004年11月08日】カプコンの“ビューティフル ジョー”
大阪プロレスで華麗にデビューを果たす!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041108/joe.htm
【2004年10月29日】Viewtiful Joe、なんとプロレスデビュー!?
「大阪プロレス」に11月~12月に登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041029/vj.htm
【2004年5月14日】スーパーヒーローパワーアップして再び見参
カプコンPS2「ビューティフル ジョー」
GC、PS2「ビューティフル ジョー2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040514/vj2.htm
【4月21日】カプコンが開発スタジオ「クローバースタジオ」を分社、設立
~新作「Viewtiful Joe 2」、「大神」などを順次リリース予定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040421/clover.htm
【3月31日】カプコン、開発の一部を子会社化。新設会社の名前は
「クローバースタジオ」、社長には稲葉敦志氏
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040331/capcom.htm
【2003年7月16日】GCゲームレビュー
「ビューティフル ジョー」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030716/vj.htm

(2005年2月25日)

[Reported by 鴫原盛之]


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