【特別インタビュー】

　株式会社ナムコが12月16日にPSP (プレイステーション・ポータブル) に向けて発売する「ことばのパズル もじぴったん大辞典(以下もじぴったん)」。業務用、家庭用と続く「もじぴったん」の最新作がPSPに投入されることになったそのいきさつをお伺いできる機会を得た。そのPart2をお届けしよう。

　当日は、同タイトルのプロデューサーを務める中村氏と、ゲームデザイナーで元・円周率暗記ギネス記録保持者という肩書きをもつ後藤氏にお話をうかがうことができた。さらに、その場には中村氏が手に入れたという、PSPの実機までが登場。実際に仕上がった「もじぴったん」を遊びながらのインタビューとなった。(文中敬称略)

■ 1人用とは違う楽しみのある「対戦ぴったん」

――今回、初めてCPUと対戦できるようになりましたね。

中村　前作のアンケートなどを見ていると、対戦はあまり遊ばれていないんじゃないかな、といった感じの回答が結構あって……「対戦」モードは、実は1人用モードと似てはいますが、ルールが違うので、遊び方も違うし、面白さも全然違う……作り手として2つの違うゲームを作っているというぐらい異なった感覚なのですが、それがうまく伝わってないなって思って。

――なるほど。

中村　CPUと対戦ができれば、1人でも対戦モードで遊べることになるわけです。これを遊んでもらって「人と対戦したい」と思ってくれれば、仲のいい人とチョット遊ぶ、という流れにつなげられるかなと。

――そうですね。アーケードやPS2版にありましたけど、対戦はまた全然違う……陣取りの面白さもある。パネルを見ながら、「こう取ったら、こう変わっていく」という、1人用のモードで遊ぶものとは考え方が全然違いますね。CPUと対戦できるようになって思ったことは、逆に今まで入ってなかったのが不思議なぐらいで……やっぱり、“作るのが大変なのかな?”と。

中村　そうかもしれないですね。一番苦労したのは、キャラに個性をつけたところです。“たべるくん”だったら食べ物に関しての用語はよく知っているけれど、他のことは知らないし、“えりこちゃん”っていう自然、動物、植物の名前はよく知ってるキャラを作ったり。

後藤　人によって言葉の偏りがあって、自分が対戦していても、「あっ、コイツこういう言葉には強いんだ」という……。それが「もじぴったん」の対戦の面白さの1つだと思うんです。CPU対戦でもそれを表現したいということで、前後の言葉に“これは動物的”、“これは植物的”、といったパラメータ付けをしたり、弱く設定するキャラがあまり難しい言葉を知っていると不自然なので。

　レベルは、幼稚園でも知っている言葉、小学生、高校生、大学生、社会人なら知っている言葉と5段階に分けて付けました。そういった違いをパラメータで設定していくことで、なるべく人間っぽい思考をするように、内的な部分にかなり時間をかけています。

中村　10万語の言葉それぞれに「これはどれぐらい難しい」という、パラメータをつける必要があったわけです。元々、2人で遊んだあとに表示していた「性格診断」などに使うために「食べ物」や「ファッション」といったジャンルを判別するためのデータベースを持っていたんですが、それに加えて今度は、言葉の難しさというようなパラメータを10万語前後に付けたというわけです。

　これは本当に「そこまでやるの?」というぐらい苦労している部分ですね。内的要素なのでユーザーの方々に伝わるかどうかは微妙な苦労ですが。

――1つ新しいことをやろうとすると、そのぶん「それ×10万語」の苦労がかかることになるわけですね。

後藤　しかも100冊の辞典に入る言葉には、それぞれフラグを立てないと……細かく。1つの言葉にパラメータが100あまり付加されているわけですから。

――平凡な質問で恐縮ですが、それは大変なことじゃないですか?

後藤　10万語の言葉と、漢字と、意味を表示するだけでも大変ですが、そういったパラメータも、結局ゲームに絡んでくることになるので、そういった意味では、単純に10万語になったということではないんですよ。

　ただ、辞書はまだまだ改善の余地があって……。今回10万オーバーの言葉を入れましたが、終わった後も、「これが入ってなかった」という言葉もたくさんあって……一生かかっても辞書は完成しないと思います。

中村　前に出したのが2年前ですが、2年前になかった言葉が増えてるじゃないですか。

後藤　変な外来語がたくさん増えましたよ。「あいていー（IT)」とか。2年前は「せれぶ(セレブ)」もなかった。最近は、普通に使ってますが。

――逆に、「もじぴったん」で言葉を覚えるというか、教わることがあるのでは、と思うこともあります。普段気軽に使っているけれど、本当の意味を知らなかったりする言葉も相当ありそうです。

中村　よくありますよ。このゲームを作っていて、「これ間違ってるよ」と僕が後藤君に言うと、「えっ?」と辞書を開いてみたら僕が間違ってたりして……恥ずかしいー(笑)。

――単なる辞書に載ってないレベルの言葉もあるじゃないですか。

後藤　流行語でなくても、例えば「かつかれー」とか辞書には載ってない。「かつ」と「かれー」は載ってますけれども。一般的になった「はんばーぐかれー(ハンバーグカレー)」などは、「もじぴったん」の辞書には入れなくてはいけないので、「なんとか」カレーと付く言葉は、実際にカレー屋に行ったときにチェックしたりしています。「納豆カレー」は一般のお店のメニューにはないから入れない、とか。入れたくても商品名だからダメということもありますね。

――そうですね。商品名は意外と浮かんできやすい言葉ですが、ゲームの中には入れにくいですよね。

後藤　商品名でも、「ぷらもでる(プラモデル)」とか「ほつちきす(ホッチキス)」とか、普通の辞書にも入っているようなものは、入ってるものもあります。

――あとは、勝手に略して使っている言葉とか。

後藤　そうですね。若者言葉はわりと入れてありますよ。「こぴる（コピる）」とか。ネットで100件以上は検索でヒットして、なんとなく浸透しているようであったら入れてます。本当にごく一部でしか使ってないような言葉は入れてません。

中村　そういう意味では時間が経つと新しい言葉が生まれてくるんだったら、次は入れておかないとな、ということはきっとあると思いますね。

――それだけでも違うゲームになりますね。

■ さらに広がる? 「もじぴったん」の未来

――今まで「もじぴったん」を遊んでいて思ったことなんですが、リプレイは大変なんでしょうか?

中村　技術的に言えばそんなに苦ではないかもしれません。

後藤　それは一生懸命解いたデータを残しておきたいということですか?

――私だけかもしれませんが、自分が解いて終わった瞬間にパァーっともじくんたちが飛び散る演出と一緒に、自分の頭の中もパァーっとなって、せっかく解いた手順を忘れちゃうことが多いんですよね。馬鹿な話で申し訳ないんですけど。

後藤　そういう意見はありましたよ、他にも。

――そのあと、改めて同じステージを遊ぼうとしても解法が思い浮かばなかったりするんですよ。

後藤　対戦していてもCPUと対戦しているときにもすごい名勝負を残して置きたいなっていうときがありましたよ。

中村　なるほど。

――クリアにすごく苦労した面とか、周りから見たらたいしたことがなくても、ポンと閃きが浮かんで解けたときや、適当に置いたらクリアできちゃった、というときに、「しまったー」って思うんですよね。クリアできてすごくうれしい。でも、それを取っておく機能があったらいいなと。

中村　なるほど。

――解けなくて、何度挑戦しても解けなかったのに、ある日、電車の中でポロッとできたときとか。同じステージを3カ月ぐらい挑戦してたことがあるんです。クリアできなくて別のステージを遊んで、たまたま忘れた頃にポロッって急に解けると、とてもうれしいですよね。それをまた見たいな、というときがあるんです。それと、リプレイを自分が見て笑える、という楽しみもあるのではないかなと。それを人に見せたり。

中村　なるほど。例えば、超絶的なプレーをしたデータをみんなに見てもらえると。

後藤　「こつこつパズル」でいえば、制限時間がないので厳しいかもしれませんね。うまくやれば……。解いた順だけでもいいなら、なんとかなるかもしれない。それだけわかればいいんですよね。

――将棋の棋譜に近いようなものでもいいなと思うこともありますが。

中村　それで、例えば人が解いたデータを見ても、「俺はもう1個言葉を作れるぞ」というときもありますよね。「ここはもう1つ連鎖を伸ばせるな」とか。いろいろみんなで考えられる。なるほど……これは次の課題にしましょうか。

――課題を増やしてしまうのは申し訳ないですし、リプレイなんて見ない、という方もいらっしゃると思うんですが、PSPならネットにメモリースティックに保存したデータを配信したりといったこともできますし。

中村　ネットで広げられるのは面白いですよね。PCと繋げられるのはやっぱり大きいですね。それはある意味、PS2との比較でいえば、現状その部分はちょっと違う形に持っていけると思います。

-----もし、PSPで次に何かを作る話があったら何を作りたいですか?

中村　それは、難しい質問ですが、もう1回PSPで何かやってみたいことはあります。ハードの立ち上げ時にはない、本当の意味での、じっくり煮詰めたものを。「こういう使い方もあった」、みたいなものができればいいですね。

後藤　辞書は「もじぴったん」以外にも活用していきたいですね。なんだかんだ言っても「言葉」のゲームはナムコでしか手がけていませんから。もうちょっとこれを「もじぴったん」だけではなく、いろいろ広げていきたいと常々思ってますね。

中村　そういった意味から言うと、ちょっと新しい切り口のものが欲しいなって感じはあります。それを期待されてるところもあるんじゃないでしょうか。今はまだ終わったばかりですから……。

――最後に、「もじぴったん大辞典」に興味のある方々に一言お願いします。

中村　作っていて思うことなんですが、長く遊んでほしいですね。解けなかった面もふと思い出して遊んでもらって「おおっ解けた!」といった面白さもありますし。CPU対戦も遊ぶたびに状況が変わるし、「なんだ、こいつこんな言葉作ってきやがって」といったことが必ずあると思いますし。辞書の厚みみたいなものがゲームを長く遊ぶ点に繋がってくると思います。

　発売の時に並んで買ってくれるお客さんにとってはもちろん、もうちょっと時間が経ってから買ってくれるお客さんにも、“なんかもう1本買っておこうかな”ってタイトルになってくれるといいですよね。

後藤　全面クリアは時間がかかると思いますけど。辞典を集めて欲しいなと思います。ただ、前作までのプレーヤーの方にも、無限ブロックとか、新しい条件が増えてますし、楽しんでもらえると思います。全体的な難易度としては誰でも楽しめるようにしてありますので。

――お2人ともありがとうございました。

(C) 2001 2002 2004 NAMCO LTD.
※画面は開発中のものです。

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□関連情報
【12月11日】【特別インタビュー】
ナムコ、「ことばのパズル もじぴったん大辞典」
開発スタッフに聞く(Part1)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041211/moji.htm
【11月26日】ナムコ、PSP用「ことばのパズル もじぴったん大辞典」
ステージ数は400以上!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041126/moji.htm
【11月2日】ナムコ、PSP用「ことばのパズル もじぴったん大辞典」
ある意味ネタバレ? 「ワードサーチ機能」など紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041102/moji.htm
【10月25日】ナムコ、PSP用「ことばのパズル もじぴったん大辞典」
「辞典コレクション」を紹介
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【10月25日】ナムコ、無料おためし版「ことばのパズル もじぴったん」で、
「塊魂」とコラボ! アンケートで新型PS2も当たる
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【9月24日】ナムコ、PSP用「ことばのパズル もじぴったん大辞典」
TGS2004でも公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040924/moji.htm
【9月21日】SCEJ、「PSビジネスブリーフィング」開催。PSPの実機を公開!!
ただし発売日は公開せず
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040921/scej1.htm
【7月2日】ナムコ、PS2「ことばのパズル もじぴったん」、
Best化につきPS2BB、Shockwaveの体験版公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040702/moji.htm

(2004年12月12日)

[Reported by 佐伯憲司]

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