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World Cyber Games 2004現地レポート日本代表4DimensioNインタビュー |
会場:Bill Graham Civic Auditorium
5日間に渡る日程をすべてこなして終幕した2004年のWorld Cyber Games。「Counter-Strike: Condition Zero(CSCZ)」の日本代表である4DimensioN(4DN)は国内では圧倒的な強さを誇ったにもかかわらず、決勝トーナメントへあと一歩というところで敗れてしまった。
「国内に敵はいない! 日本のCSプレーヤーは自分たち以外noob(初心者に対する蔑称のようなもの)だ」、「4DNは世界の強豪チームと十分互角に渡り合える!」など、国内CSコミュニティにおける過激な発言から何かと騒がれる4DNだが、その本意はどこにあるのだろう。全日程が終了した最終日、選手宿舎にてインタビューを行なった。基本的にインタビューの受け答えをしてくれたのはXrayN選手だ。
4DN おつかれさまでした。
編 WCGはこれで終了だけど、全体的な感想は?
4DN やっぱりサプライズの多い大会でした。まず、SKGamingが負けたことが一番の驚きですね。そして、MaveNの勝ちとTeam 3Dの優勝も驚きでした。Titansに関しては妥当な位置かなと思っています。特にMaveNの3位という結果はアジアのCS界にとって非常に大きな影響を及ぼすでしょう。
編 MaveNが3位に入賞できた要因は?
4DN やっぱりピストルラウンドの強さでしょうね。神がかっています。あと、トーナメントでドイツのALTERNATE aTTaXなど強豪に勝ち続けられたことも、チームの勢いが加速したという視点から考えると大きかったです。たしかにグループ分けでALTERNATE aTTaX以外に目立ったチームと当たらなかったり、SKGamingの選手が大会直前で入れ替わったりと要因はあるとはいえ、最終的にはSKGamingに勝って3位なわけですから、その実力は本物でしょう。4月ぐらいから練習試合をしていましたが、彼らの実力からすればCAL-Invite(CPL直下のアマチュアリーグで、CPLに出てくるようなクランがゴロゴロしている)などでもトップを取れるし世界でもいい成績を残せるとは考えていました。
編 それだけの結果を残せたのは周囲の環境としての要因も大きい?
4DN なんだかんだ言っても韓国はプロゲーマーの世界ですし、バックアップもありますからね。RTSが全盛の韓国ではFPSは肩身が狭いところですが、どうやら韓国ではCSCZが流行っているようで、やっとCSに流れがきたという状況です。CSCZが発売された直後にも300万円の賞金がかかった大会もありましたし、インターネットカフェが主催する大会が桁違いの数で開かれています。これはアメリカでも同様で、アメリカだと週に1~2回ぐらいの頻度で5-10万円の賞金のかかった大会から、数百万単位の賞金がかかったCPLのような大会まで、ありとあらゆる大会が頻繁に行なわれています。
編 日本の状況を考えると年に3回ぐらいしか、賞金つきというか大きな大会がないし、サポートもないという状況で苦しかったということ?
4DN そうですね。日本だと法律上の問題があって、賞金付きの大会をやる場合には参加費が取れません。それが日本で大会自体の数が増えない原因なんですね。アメリカではそういった問題もなく、賞金の額が桁違いな大会が頻繁に開かれるので、遠征してでも勝ってやろうというモチベーションを一気に上げるんです。実際、日本でCSが強くなったとしても、周囲から注目されるのがせいぜいでメリットみたいなものはあまりありません。でもやっぱり、アメリカ、韓国、特に中国はそのメリットが顕著で、中国のトップクランは大学初任給の1.5倍ぐらいの収入を得ています。それだけのメリットがあるので、あれだけの人がCSをやっているわけですよ。日本では本当に何もメリットがない。好きなだけで続けるのにはもう限界があります。
編 日本では世界に通用するレベルのFPSプレーヤーは育たない?
4DN そうです。AceGamer(CPLやWCGといった世界大会の日本予選運営を行なっている運営チーム)もがんばっているとは思うんですが、いかんせん場を提供するだけでは(世界を目指すような)プレーヤーはどうにも増えないんじゃないんでしょうか。参加プレーヤー自体は増えているにせよ、賞品欲しさという面と、大会をやることで普段会えない人たちに会えるという馴れ合い的な面が強いとおもいます。「2位か3位でいいや」なんて言っている間は、アメリカに行ったらCAL-Intermediateに出てくるようなクランにもボコボコにされるでしょう。
4DN やっぱり経験です。経験から生まれる土壇場での勝負強さ、緊張に負けない粘り強さがぜんぜん足りない。やっぱり、日本国内の「勝って当たり前」という状況でそういった経験はできません。自分たちより強い、格上の相手とやるときってやっぱり緊張しますよね。そういう経験が少なすぎました。本当に緊張できる試合がほしいですね。
編 mibrやRIVALといった海外チームともっと戦うことができたらもっと強くなれる?
4DN それができるんだったら、4DNは世界で十分に渡り合えるチームになっていたと思います。それだけの自信はあります。でも、どうしたって場数が足りない。KeNNyとENZAがうちらの中では一番、世界レベルの試合経験が多いですが、それにしたって両手の指に余る数です。日本のクランを馬鹿にするわけじゃないんですが、どうしたってそれだけの実力差があるというのは事実です。
でも、日本のクランが悪いといってるわけじゃない。強くても何のメリットのない日本でやっている以上、その状況は仕方がないと思っている面もあります。むしろ、ここまでやってしまった自分たちがある意味異常といっても過言ではないでしょう。たまに「なんでこんなに真剣にCSをやっているんだろう」って思うことがあります。
編 それだけ必死にやるようになったのは、日本国内ではなく世界というレベルに視点を合わせたから?
4DN 俺(XrayN)がこのチームを作ったとき、お金が欲しかったわけではなくて、単純に勝ちたいと思ったんです。ただ、やっていくうちに「就職どうしよう」とかそういう悩みが出てきますよね。そうなるとやっぱりお金が必要で、なんとか賞金でそれをまかないたいという方向にいくんです。だからこそ参加できる大会(本番の試合)がもっとほしい。日本の場合、企業も動いてくれないし、お金が動かないのが一番つらいです。
編 日本の環境の悪さが一番の問題?
4DN プレーヤーに問題はないと思います。世界レベルのチームがいないのには憤りを感じますけどね。そういう状況では「日本にいること自体が時間の無駄かも」と考えることもあります。法律面の問題なんかもあって日本で舞台が整わない以上、僕らは世界に出るしかないわけですけど、そのためにはお金が必要、でもそんな額は個人がホイホイ出せるわけじゃない。じゃあスポンサーについてもらうかと思っても、個人チームにスポンサーとしてついてくれる企業は今のところ国内に存在しない。そこでThe ENDです。だからここで解散という話が出てきているんです。海外で4DNぐらいの実力があったら平気でスポンサーがついている。それぐらいの実力は確実に持っているのにもかかわらず、スポンサーがいない。日本の状況は本当に絶望的。
この状況を変えられるのはスポンサーの存在だけなんですよ。国内が盛り上がっているならそこまでスポンサーが必要とは言わない。だけど、国内のCSシーンがまだ一部の人のものだけという現況を変えるきっかけとしてこそスポンサーがほしいんです。結局2年前にDeadlyDriveが世界に行って、経験して、言っていたこととぜんぜん変わっていないのだから、状況は2年前からほとんど変わっていないと考えていいでしょうね。
ただ、現状スポンサーに対するメリットとして、ゲーム上の表示名に名前を入れたり名前入りの服を着たりということぐらいしか思い浮かばないという引け目はあります。それでもマウスやマウスパッド、キーボードぐらいだったら国内向けでもメリットはあるような気はするんですけどね。
4DN いえ、4DNは解散してCPL2004 Winterにはおそらく出ません。
編 CSを続けたいと思っているメンバーは?
4DN 僕(ENZA)は今年いっぱいだけど、XrayNとPenz、Paranoiac、KeNNyの4人は周囲の状況が求めるものになれば続ける意思はあるでしょうね。ただ、その追い求めている状況っていうのは、今の日本では夢物語なので、まず続けないと思います。
編 4DNという存在がなくなるとして、後に続く意思のある日本のCSプレーヤーがいたとしたら、何か伝えたいことはある?
4DN 下を見ないで上を見続けてほしいですね。あと、海外のチームと連絡を取るためにも英語が堪能なプレーヤーは最低ひとりはほしい。その上で、ブートキャンプ(大会直前の1カ月を現地で過ごして、同じように集まってくるCSチームと共同で強化合宿を行なうこと)をしないで勝てると考えないでほしい。むしろ「世界を目指さないほうがいい」と言いたいです。日本予選で優勝して賞品と賞金をもらって旅行気分で行くならぜんぜんかまわないと思うんですが、本気で勝ちに行くなら馬鹿を見るだけだからやめろといいたい。10年後ぐらいならば話は別だと思いますけど。正直、今は「やらなければよかった」という思いが強いです。
あえて言うならば「もっと情報を得てそれを使いこなすこと」。日本のCSプレーヤーは射撃能力は海外に負けているとは思っていません。ただそれだけじゃダメで、マップ内での動き方、グレネードの投げ方、メンバー同士のカバーのやり方、情報をメンバーに的確に伝える能力、射撃能力以外の面があまりに足りない。うちのメンバーで一番しゃべらない、知らないのPenzでさえ、他の日本のチームに入ったらその知識量は群を抜いてトップでしょう。やっぱりデモを死ぬほどみて、そこから情報を吸収するしかありません。
今解散するのは、やっぱり引き際として一番賢い選択だと思っているからです。一応のけりはついたし、ENZAは今年いっぱいだし、KeNNyはCSにつかれきっているし、僕(XrayN)とPenzは就職もあるし、Pranoiacには学校がある。CSというゲームは世界レベルの実力を持ったチームを維持するのがすごく大変で、5人が5人がんばれるかという問題もあるし、スポンサーの問題もある。周りのサポートがないと本当にどうしようもない。
編 個人レベルでできることは全部やった?
4DN そうですね、自分でバイトしてお金溜め込んだりとかしましたしね。ブートキャンプ自体にホテル・飛行機などもろもろの費用を考えれば1回1週間やるのに約100万ぐらいはかかるんですね。でも、あのブートキャンプで得たものは恐ろしいほど大きかった。あれは、日本でCSを10年続けても絶対に得られない経験だった。Pre-CPL前からCPLまでの1週間は最高でした。4DNの全てと言っても過言じゃない。本気で試合をしたいなら、日本にいないで、海外に行って海外のクランでやったほうがいい。日本でもう夢は見られないと断言したいぐらいです。それぐらい、ブートキャンプでの経験と日本での経験に差がありました。
編 今後ほかのFPSに移ることは考えている?
4DN 一応みんな「Unreal Tournament 2004(UT2k4)」を買いましたけど、世界を目指すかどうかはまだはっきりわかりません。自分に「UT2k4」の才能があると思ったら、多分本気でやって自分ひとりで海外へ行っているでしょうね。ひとりのほうが正直海外とは勝負しやすいです。でも、チームで入ると心強いというメリットはあります。戦っていてひとりじゃないっていうのは大きいです。デメリットもいっぱいありますけどね。ケンカはするし、だれか体調不良だと練習できないし、やる気がないやつがいればチームのモチベーションが一気にダウンするし。
編 メンバーのつながりはほかのクランより強い?
4DN そりゃ当たり前。むちゃくちゃ長い時間、もうすぐ1年になるのかな、一緒にやっていますから。一時期はみんな一緒の家に住んでた時期だってありましたしね。
編 最後に聞くけど、4DNにいてよかった?
4DN はい(全員一致で)。普通に生きているのと違う人生経験ができたと思っています。英語だってうまくなったし、世界で戦うという貴重な経験ができたと思います。世界を目指すという目標なしにダラッとCSをやっていたら本当にどうしようもないことになっていました。正直、ここまで続いたこと、このメンツでCSができたことに対してメンバーには感謝したいです。
編 長い間おつかれさまでした。
4DN おつかれさまでした。
4DNにはなんとか今冬のCPL 2004 Winterまでがんばってほしいとは思うが、世界で戦うための金銭的なサポートは、世界の強豪チームたちと比べると、徒手空拳のナイナイ状態だ。そんな状態で参加したとしても、また悔しい思いをして帰ってくる可能性のほうが高いだろう。誰よりも負けず嫌いで、誰よりもがんばっている4DNのメンバーに、期待だけをかけて「がんばれ」というのは、勝てないことを正面から非難することよりも酷というものだ。今はとにかく、1年に渡って活躍を続けてきた4DNのメンバーにおつかれさまといいたい。
□World Cyber Games 2004のホームページ
http://www.worldcybergames.com/
□World Cyber Games 2004日本公式サイトのホームページ
http://www.worldcybergames.jp/2004/
□関連情報
【10月12日】「Counter-Strike: Condition Zero」トーナメント
王者SKGaming、3位入賞すらならず! 韓国代表MaveNが大金星!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041012/wcg5.htm
【10月10日】日本代表レポート hanbei選手、FPS種目では初の決勝Tへ進出
期待を背負ったCSCZ代表の4DNは、予選リーグで惜しくも敗北
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041010/wcg3.htm
(2004年10月12日)
[Reported by Tyokuta@ukeru.jp]
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