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World Cyber Games 2004現地レポート日本代表レポート hanbei選手、FPS種目では初の決勝Tへ進出 |
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会場:Bill Graham Civic Auditorium
アメリカはカリフォルニア州、サンフランシスコにて現在開催されている「World Cyber Games」も2日目が経過。日本から乗り込んだ選手団は昨日から予選を開始しており、3日目となる9日が終了し、日本選手の結果がすべて確定した。本稿では日本選手の動向と、彼らの周囲のWCGがどういうものだったかという部分にも触れておきたい。
大会1日目、会場に到着した選手達はBYOCエリアに直行し早速練習を開始した。BYOCとは、“Bring Your Own PC”の頭文字を取ったもので、会場に自分のPCを持ち込みLAN環境で遊ぼうという企画。CPLを初めとしたPCゲーム大会ではおなじみのイベントになってきたが、World Cyber Gamesでは初めての実施となる。そのためか会場は100席に満たない規模で、1,000席規模で行なわれるCPLのBYOCと比べれば規模は微々たるものと言ってもいいだろう。
そのせいか、BYOCに参加していた人々の多くはトーナメントに参加する選手達でしめられていた。事前にBYOCに参加して、同じようにBYOCに参加している他国の選手と練習試合を行ない、本番前最後の仕上げを行なおうというわけだ。「Counter-Strike: Condition Zero」の日本代表である4dimensioNを初めとして、「Unreal Tournament 2004(UT2k4)」の選手達もBYOCに参加して最後の調整を始めていた。基本的に日本人同士で調整を行なっていた「UT2k4」の選手に対して、4dimensioNはハンガリー代表の[xDk]やブラジル代表のmibrなどと集中的にプレイしていた。特にCSCZに関しては、どの国も事前のブートキャンプ(事前合宿)が行なえなかったこともあり、BYOCに選手がいることがわかると互いに積極的に声をかけて練習試合を申し込んでいた。ちなみにブラジル代表のmibrと引き分けに持ち込む練習試合もあり、調整は順調に進んでいる印象を受けた。
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セッティングを開始する4dimensioNの選手達。途中スポンサーの関係という理由でせっかく借りたCRTモニターをLCDモニターに変更することを強要されるというトラブルもあったようだ | 会場の片隅ではひっそりとNVIDIAが技術デモを行なっていた。これは水冷クーラーを使ってPentium 4 3.2GHzを3.8GHzへとクロックアップしたPC |
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「スカッとゴルフ パンヤ」は3コースをフルに戦い、その結果で順位を確定する形でゲームが進行していく。最初のコースは“ウィズウィズ”、天空に浮かぶ島をの上に造られた形のコースで、障害物も多い難コースだ。多くの選手達はスコアを落とさないよう丁寧なプレイを心がけるコースなのだが、このコースを得意としているれいんまん選手はここで勝負をかけた。しかし、れいんまん選手はのちに本人でさえ「なんであんなショットを打ったのかわからない」とコメントするほど大きく崩れてしまったのだ。OB4打を含むボギーの連発でなんと-9と大叩きしてしまった。
しかし、驚かされたのはここからだ。れいんまん選手はこのあとの“ウィンドヒル”と“ブルーウォーター”で「これが“ウィズウィズ”でできていれば!」と思わず口をついてしまうほどの素晴らしいプレイを見せた。特に“ブルーウォーター”でのプレイは凄まじく、1ホールめはあわやチップインイーグル(ラインには乗っていた)というところから始まり、4、7、12、13ホールと立て続けにイーグルを叩きだしたほか、30~40ヤードクラスの超ロングパッドを片っ端からねじ込むスーパープレイ。大きく右へカーブした15ホールでは強引にカーブをショートカットして打ち、なんとアルバトロスまで決めたのだ。他にも障害物を避けるためにボールを曲げて打つ場面以外、ベストタイミングの「パンヤ」ショットを連発するという集中力を見せ、最終的には自己ベストタイの-23というとてつもない数値をたたき出した。
パンヤはもともと選手達の実力が「バーディは当たり前」というレベルで拮抗しており、相手のミスを期待するか、“ウィズウィズ”のような「自分が得意で他人が苦手」というコースで勝負をかけるしか他プレーヤーに先んじる方法はない。勝負のかけ方は間違っていなかったのだが、結果としてこれが勝負を分けた形となった。
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真剣そのものの表情と、たぐいまれなる集中力でスーパーショットを量産するれいんまん選手。キャラこそかわいい物の、集中力を競い合うという部分でパンヤは非常に緊張感を強いられる種目だと言える |
昨年はWCG史上最年少であるkikuji選手が参加するなど何かと話題に事欠かなかった「Unreal Tournament 2003」だが、今年は種目を「UT2k4」へと変更して行なわれ、初日のvovovoxxx選手の予選リーグから日本チームの試合はスタートした。
結局、vovovoxxx選手はアメリカ予選の1位と3位の選手(世界的にみてアメリカは「Unreal Tournament」のレベルが高い)と同じリーグということで、苦戦を強いられてしまった。シンガポールの選手には26-3と大きく差をつけて勝つことができたのだが、アメリカの2選手にはスタート時点からシールドを初めとしたアイテムコントロールを握られてしまい、思うようにアイテムを取れないvovovoxxx選手は、その持ち前のアグレッシブなプレイスタイルを見せることもできずに試合運びは一方的に。大会初日にてvovovoxxx選手の予選敗退が決まることとなってしまった。
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アメリカ予選1位のstryfe_us選手とvovovoxxx選手 | 試合中は緊張感のある表情を見せるvovovoxxx選手。試合以外の時に見せる気さくな顔との違いにびっくりさせられる |
試合後に感想を聞いてみると、「頭がまっしろだった」とのことで、やはり世界大会というこれまでとはまったく違ったプレッシャーに晒された結果、実力が出し切れなかったようだ。筆者の目から見てみても日本予選で見せた動きから明らかに鈍くなっている印象を受けた。今回世界大会という大きな舞台を経験したことだし、来年以降一回り大きくなって、気を取り直してがんばって欲しいところだ。
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fumio選手はゲーム中も意外に表情が変わらない。冷静そうな印象を受けるが、本人によると目の前の画面が何を意味しているのか理解できなくなるほど緊張していたそうだ | やはり世界大会という緊張感故か、毎試合弾が当たらなかったと嘆いていたfumio選手。アイテムコントロールはがんばれていただけに、経験の浅さが惜しまれる |
また、日本での自分のマシンスペックが低く、マシン側のボトルネックに悩まされているhanbei選手だが、会場のマシンの高性能具合にはいたく感動していた。後で「当たったという感覚がなかったのに、当たっていることが多かった」という位に、大会のマシンはhanbei選手の実力を引き出していたようだ。こういったe-Sportsの大会においては、マシンが勝つための要素として重要な位置を占めていることを改めて実感させられた。
hanbei選手は最終的にスペイン、スイス、リトアニアの選手を立て続けに破り、最後に戦ったアメリカ予選2位のx6CombatCarl選手には負けたものの、順当に予選リーグを通過したのだった。しかし、冷静に考えてみればFPSで日本人選手が予選リーグを通過するのは初めてであり、昨年いい結果を残せなかったhanbei選手にしてみればうれしい結果と言えるだろう。
そして決勝リーグ。hanbei選手の相手はポルトガルの[H]Hypno選手だ。今回の戦いの舞台となったマップDM-Rankinは、+100のスーパーシールドが袋小路の奧にあり、仮にスーパーシールドを取ったとしても入り口を相手にふさがれてしまうと一気に不利になってしまう。そのため、今回スタート当初からhanbei選手は+100のスーパーシールドをあえて取らずに、+50のシールドを安定してコントロールすることで有利でゲームが進んでいく戦術をとった。しかし、やはり50のシールド差は大きく、弾を当てることはできているものの、なかなか敵を倒すことができずにジワリジワリと差が開き始めてしまった。さらにhanbei選手には、敵と撃ち合い互いに疲弊した際に、もう一歩踏み込んで敵を追撃せずに、装備と体力回復に努める傾向がある。そのため、毎回あと一歩のところまで追い込んでいるにもかかわらず、ポイントがゲットできないという場面がよく見られた。
試合の最後の方になってくると、hanbei選手も緊張が切れてきたのか動きが単調になってきた。そのため、コンボと呼ばれる特殊攻撃でせっかくとったシールドをいきなり消滅させられてしまうという場面がよく見られた。最終的には5-10というスコアで負けてしまったhanbei選手だが、もっと前へとアグレッシブに戦っていれば勝てていたと感じられただけに惜しい試合であった。
ただ、今回のWCGでhanbei選手が得た大きなものとして、世界大会でのねばり強さが挙げられる。予選でもそうだったが、決勝リーグの試合では敵に1桁まで体力を減らされたにもかかわらず、そこからフル装備まで回復できていることがかなり多かった。やはり世界大会ともなるとがむしゃらに相手を攻め立てるだけでは勝てない。やはり相手に流れが来ている時期をいかにしのぎきるかも重要なわけだ。昨年までのhanbei選手はそういった点がまだ世界レベルではなかったのだが、今年はそういった勝つために必要なことが身についてきているようだ。来年のWCGでもぜひhanbei選手の活躍を期待したい。
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こちらは世界大会2度目ということで、余裕の表情やコメントを寄せてくれたhanbei選手。スタッフの女の子が、hanbei選手に興味があるのか、何度か覗きにくる一幕も | 高性能なマシンというツールを得て、マップ内を華麗に移動するhanbei選手。彼の動きはヨーロッパやアメリカでは見かけない特殊なタイプのようで、相手の選手もかなりとまどっているようだった |
「Counter-Strike: Condition Zero」は、今回もっとも好成績が期待されていたタイトルであった。日本代表の4dimensioNは現在の日本CS界を振り返ってみても間違いなく最強のチームであり、現状これ以上のチームを作り上げることは難しいといえるほどのメンバーだ。そして、今夏に行なわれた「CPL2004 Summer」においても実績こそ残すことはできなかったものの、国内大会で見せつけたぶっちぎりの実力差、CPLに先んじて渡米してのブートキャンプ(強化合宿)、ブートキャンプにおける海外強豪チーム達との練習試合によって得られた高い評価など、これまでの日本代表とはひと味違うレベルで世界と渡り合って来ていたからだ。それだけに予選リーグ突破は当然、問題は決勝リーグでどこまでいけるかという視点で彼らの状況は語られていた。
そんな期待を裏切らず、4dimensioNは一回戦目のフィリピン代表対PTT(iNX)戦を19-5という大差で撃破し、次のGBR戦への十分な期待を持たせてくれた。この対フィリピン戦で、4dimensioNの動きは非常に安定していた。4dimensioNは2つある爆弾設置ポイントのうちのひとつを、射撃能力の高いKenny選手ひとりに任せきることで、他の4人のメンバーが流動的に敵に対処できる配置をとっていた。これはあまり日本では見られない配置ではあるが、フリーに動ける人数を増やすことで状況に的確に対応できる配置だ。しかし、そんじょそこらのチームではなかなか使いにくい作戦で、互いの位置を肌感覚で察知できるまでに練習を行なった4dimensioNならではと言えるだろう。
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試合中の4dimensioNの選手達。左からparanoiac、XrayN、KeNNy、enza、Pen'Zの5選手。普段はおどけている彼らも試合に望むときは真剣な表情を見せる |
前半5-7で折り返した4dimensioNは後半スタートのピストルラウンドを先取し、一気に5ラウンドを先取して圧倒的に有利な展開へと状況は動くかに見えた。しかし、そこはGBRもただでは取られない。6ラウンド目から一気に3ラウンド取り返され、10-10と互角のスコアに。その後もenza選手が1on1でぎりぎりの戦いに勝利するなど、見せ場もあったのだが後半戦の最終スコアは6-6、総計11-13で日本代表チームが「Counter-Strike: Condition Zero」で決勝トーナメントに出られないことが確定した。
4dimensioNは全体的に見ると、追いかける、もしくは互角の試合展開となった場合、その強さを十二分に発揮して敵チームを倒すのだが、ギリギリのスコアで競っている場合、もしくは追いかけられる側になってくると意外なもろさを見せる。これは、日本では集中的に相手ができる同等レベルの日本人チームがおらず互角の試合が国内でできていないということと、チームの性格的に周りの雰囲気に左右されやすく、またそれを跳ね返すだけの精神力に欠けるというのが原因としては大きいだろう。CPLを経験したとはいえ、大きな世界大会での経験が少ないため、世界大会という異様なプレッシャーの中で傾き始めた試合を引っ張り戻すねばり強さを養う機会に恵まれなかったのも確かだ。帰国して2カ月後にはCPL冬季大会の日本予選も開始される。4dimensioNの選手達は今回の敗戦にめげずに、CPLでまたその勇姿を見せて欲しいものだ。
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GBRとの試合が終了した直後、大きく肩を落とす4dimensioNの選手達。彼らがこれまでやってきた練習や費やしてきた年月を考えると、ショックなのは無理もない。それでも、試合後に相手選手と握手をして、一言二言交わして戻ってくるというのは、スポーツマンシップという面から見ても立派だろう |
(2004年10月10日)
[Reported by Tyokuta@ukeru.jp]
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