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★PCゲームレビュー★
■より楽しく、より快適に生まれ変わった「ザ・シムズ2」
シムはごはんを食べ、トイレに行き、お風呂も入らなくては身体が臭くなってしまうし、ゲームもしたいし、テレビも見たい、何よりも眠らなくては過労で倒れてしまう。また、シムは寂しがり屋でもある。友人を作ってあげなくてはならないし、そのうち異性の友人と恋をして、子供を作りたいと思うかもしれない。また、シムには出世欲もある。さまざまな欲求を持つシムを見守り、導くことで、彼らの人生の軌跡を見守っていくのだ。 前作「シムピープル」にハマった私の友人は同作を“介護ゲーム”と評した。シム達はトイレからお風呂、仕事での出世から、女の子を口説くことまで、プレーヤーに頼らないと、「幸福」にはなれなかった。 しかし、今作のシムは、実際にプレイを開始してすぐに気がついたのだが、かなり“自律”しているのである。特に指示を出していないのに、食事の後に食器を洗い始めるシムの姿は、前作をプレイした人なら感動に値する光景だろう。前作ではシムの姿を眺めて楽しむ、というのはシムの健康のためにも難しかったが、今作ではある程度シムを放置していても、利口に立ち回ってくれる。多くの家族のいる家を管理していこうと思うプレーヤーには、助かる要素であるし、何よりも初心者にプレイをオススメできるポイントである。 画面に展開するのは、アメリカのホームドラマのような光景だ。シム達は友人や恋人とおしゃべりや食事を楽しみ、激しくいちゃつく。親子の間では、宿題を手伝ってやったり、幼児に関しては、ミルクを上げてあげたり、話し方を教えてあげたりできる。 プレイを始めた瞬間、シム達の仕草の細かさ、展開する愛憎渦巻くドラマに、プレーヤーは驚かされることになるだろう。思わず赤面してしまうラブシーンも必見である。進化したAIによるシム達の人間くさく、賢い行動はより一層感情移入をさせられるに違いない。 さらに、今作では時間の概念が導入されている。ゲームの中でシムは成長し、老いていく。時間の概念はゲーム内でのシムが暮らす1日が、およそ人間の1年にあたる。ひとつの家の中で、シムは青春を謳歌し、結婚し、子供を産んで、やがて去っていく。新しく家族として加わる街の住人、産まれる子供や、孫たち。プレーヤーは刻一刻と変化していくシムの生き方を目にすることで、深い感慨に浸れる。ひとつの家の「歴史」が目の前で展開していく。プレーヤーはまさに、彼らの一生を“見守っていく”のである。 幼かった子供が恋に迷い、そして今や彼らの息子が同じようにさまざまな事態に直面する。街にたったひとりで訪れたシムが、ゲームを進めることで街一番の大家族の長となり、顔役になっていく。長いスパンでありながらも、小さな幸せを描く物語。そんな「家族史」が楽しめる作品である。 もちろん、すべてのプレーヤーが品行方正である必要はない。ちょっと浮気をそそのかし、一家のあわてふためく姿を意地悪に観察するというアプローチを変えた遊び方も可能だ。プレーヤー次第で変化していく「社会」。そのリアルな感触を楽しめるユニークな作品である。
■宇宙人に悲恋物語、用意された多彩なシナリオ 今作には、あらかじめ3つの街が用意されている。オリジナルの街を造り、住人を住まわせることも可能だが、特に初心者は街の住人を選択してプレイを進めるのが良いだろう。本作にはさまざまな“ルール”があり、ある程度用意されたシナリオに沿ってシム達と暮らしていくことで、それらを習得していくことができるのだ。 「プレリーザントビュー」、「ストレンジタウン」、「ベローナビル」。この3つが最初に選択できる街の名前である。「プレリーザントビュー」はさまざまな家庭がそれぞれのドラマを持った街。住人が多く生活し、かつ少人数の家庭もあって、初心者にオススメの街である。 「ストレンジタウン」は非常に奇妙な街だ。街はずれのクレーターにUFOが墜落している。この街は宇宙人がシムたちと共に生活している街なのである。何の生活の支障もなく緑色の肌を持った宇宙人一家が生活しているのが大変ユニークだ。マッドサイエンティストや、宇宙人を嫌いな軍人一家も存在していて、人間ドラマに華を添えている。 「ベローナビル」では、キャップ家と、モンティ家というふたつの裕福な家庭が対立している街。一番年若い二人、その名もキャップ・ジュリエットとモンティ・ロミオの恋を成就させるのが目的となる。恋はそれぞれの家ではぐくむことになるのだが、訪れた恋人にとってその家庭は針のむしろ。どうやって受け入れていくか、というところがポイントとなる。さらに可能であるならばふたつ家の関係も修復したい。シンプルだが、歯ごたえのあるシナリオとなるだろう。 前作のファンには、「この作品にシナリオなんて必要ないのではないか?」と思う人はいるかもしれない。自由にキャラクタを作り、そのキャラクタの人生を自分に投影して生活を楽しんでいく、というのが前作の大きなコンセプトだっただけに、筆者自身、最初はとまどった。しかし、各キャラクタに設定は用意されているが、実は、展開するストーリーに特別なものはない、ということに気がつかされたのである。 シム達はそれぞれ、小さな願望の「傾向」を設定されている。知的好奇心を満たすことが好きだったり、パーティーが好きだったり、それらの“性格”と、年齢や性別によって各キャラクタは配置されているが、ゲームの展開に特別な部分はない。各キャラクタのストーリー上の設定は、プレーヤーの創造力と感情移入を刺激するためのスパイスにしか過ぎない。 プレーヤーは彼らのストーリーが設定されていることでそれを足がかりにキャラクタを動かしていく。宇宙人一家が地域に受けいられていく姿を楽しんだり、仲違いする両家をハラハラしなから見守ったり……。ストーリーという特別な設定のおかげで彼らが画面で展開している以上のドラマがプレーヤーの頭の中で進行していくのだ。この感覚は、本シリーズに新しい楽しさを提示したと言っていいだろう。 セクシーな美女が二人で住んでいるカリエンテ姉妹や、浮気を夢見るフリーザント家の家長など、プレーヤーが自由に作れるキャラクタとは一線を画した“濃い”設定が多いのもシナリオの魅力だ。さまざまなキャラクタ、家族に挑戦することで、新しい楽しさがつぎつぎと発見できるはずである。
■人生と一家の歴史を見守るゲーム展開 用意されたキャラクタ達を楽しんでいるうちに、「自分の分身」でこの街にじっくり暮らしてみたいと、考えるプレーヤーは多いだろう。筆者は、基礎を覚えたらすぐにオリジナルキャラクタを作成し、彼が歩む生涯に夢中になってしまった。 筆者の場合は前作の知識があったから、すんなりと入り込めたのだが、オリジナルキャラクタを使用する場合、住居も新しいものを用意する必要がある。従来のキャラクタの家から家族を追い出して住むことも可能だが、ちょっと心苦しいし、何よりも初期キャラクタの所持金では大きな家に住むことができない。初心者は、まず他の家族をプレイしてみて、生活にはどんなものが必要か、そしてゲーム内で何ができるのかを見極めてから挑戦した方がいいだろう。 専用のツールで作成できるオリジナルキャラクタは、性別、肌の色から髪型、体型、年齢、メガネやヒゲなど目移りするほどに非常に多いものが用意されている。顎の形にまでこだわることすら可能なのである。さらに、星座を指定したり、人生の目標を指定することで、シムの性格が決定される。 筆者は「lian(らいあん)」という男性キャラクタを作成し、一人暮らしの独身男性として、「プレリーザントビュー」の一軒家に住まわせた。ところが、引っ越し一日目から困ったことになった。lianは街の新参者のため、知り合いがまったくいなかったのだ。一日誰にも会わなかったため、彼の友好のメーターは下がりまくり、lianはベッドで寂しさに泣きはじめてしまった。 プレーヤーとして何もしてやれず困っていたところ、lianはコンピュータに向かいチャットを開始、夜通しチャットを楽しむことでなんとか友好メーターを回復したが、朝には寝不足になってしまった。結局せっかく就いた仕事も二日目から出勤できず、筆者はプレイをあきらめ、もう一度最初から始めることにしたのであった。 このミスは、lianをいきなり仕事に就けてしまったために生じてしまう問題だった。引っ越し一日目は、じっくり家でlianを過ごさせると、彼を歓迎して街の住人が集まってくる。この機会を逃してしまったのだ。ゲームを終了するときセーブをしなければ状況は何度もやり直しができるので、事なきを得た。反対にセーブしてしまうと困った状況のまま保存されてしまうので、注意が必要である。 キャラクタの出会いは能動的に起こすことも可能だ。本作の大きな特徴としては、タクシーを呼ぶことで公園やプール、ゲームセンターなど「公共施設」にシムを連れていくことができる。ここで友人を作ればOKだ。休日に外出できるというだけでも、シムの世界に彩りが加わったと言える。しかもさまざまな施設で、その場所ならではのシムのリアクションも楽しめる。 また、サービスマンたちともコミュニケーションを取ることが可能になった。テレビの修理人やヘビーシッター、ピザの配達人とも友達になれる。一度知り合うことができれば、電話をかけて自宅に招待し、仲を深めていけるのである。中でも「メイドさんを口説ける」というのは、かなりグッとくるシチュエーションだ。 lianは最初に出会ったシムのなかで、赤毛のかわいい女の子アンジェラをガールフレンドに選んだ。仕事は望み通り科学キャリアに就いた。最初は「被験者」だが、出世していけば科学者にさえなれる職業だ。この職業で大事な能力は「倫理」と「掃除」と「料理」。らいあんは倫理の能力を伸ばすために望遠鏡を買い、暇さえあればのぞいていた。 そうすると、突然となりの家からオジサンが怒鳴り込んできた。筆者は最初なぜらいあんが怒られているのか理解できなかったのだが、昼間望遠鏡を覗くとlianは隣の家を観察してしまうようなのだ。昼間はチェス台で倫理の能力を鍛えるのが良いようだ。 今作のシムには「願望」というパラメーターがある。「アンジェラと話をする」、「望遠鏡を買う」など、さまざまな“小さな”願望を持っていて、これをかなえていくことでシムはどんどん幸福になっていく。次にどういうアクションを取ればいいのかあらかじめわかるのは大変ありがたい。
仕事のパラメーターにも「次のハードル」が設定されている。それをクリアして、気分良く勤め上げていればあっというまに出世していく。シムの小さな願いを叶え、能力をきちんと鍛えていけば、地位も上がっていく。出世へのハードルは前作よりずいぶん優しくなっているように感じた。
■夢の家を実現! 女性に特にオススメの建築モード シム達の生活を見守ると共に、「理想の生活を夢見る」という方向性も、本作の重要なファクターである。本作には非常に多くの家具アイテムが登場し、夢のような建築と、ライフスタイルを追求できる。 ソファー、壁紙、テレビ、テーブル、さらにはピンボール台や、水槽など、家具はどれもが繊細なモデリングによって作られており、リアリティーのある生活感を演出できる。「この部屋はリビングに、絨毯は暖色系を使って、ソファーはここに……」だれもが独り言を言いながら、家の建築に夢中になってしまうはずだ。特に女性は「理想の家」にこだわりがあるようで、語ると止まらなくなる人も多い。本作は、その空想を一歩進めた形で現実化することができるのである。 プレーヤーはシムの住んでいない家を自由にカスタマイズできる。建ててある家に好きな家具を置き、飾り立てることも、空き地に一本の柱を建てるところから始めることも可能なのだ。理想の家、理想の部屋、そして理想の生活。自分の思い通りの家を建てることができるというのは、多くの人の夢なのではないだろうか? 本作では、家に無制限にお金をつぎ込み、建てることができる。 無制限に建築が可能だと、ゲームが破綻してしまうのではないか? という疑問が浮かび上がってくるだろう。理想の家は、問題なく建てることができる。しかし、そこにシムを住まわせることは少し難しいのである。細部まで手をかけた家は当然、家自身の値段が高くなる。そのため、シムはその家を買えなくなってしまうのである。その家にシムを住まわせるためには、何世代もかけて蓄財する必要がある。いつか住むことを願う、まさに「夢の家」なのである。 すぐに住めないなら、家を造るのはつまらないのではないか? という感想を持つ人もいるかもしれないが、「建築と生活は別」というプレーヤーも多いとのこと。本作は、家の値段が上がるというデメリットでゲーム性を残しながら、理想の家を造るというポイントにとことんまでこだわれるようにデザインされているのである。 本作は初回限定の特典として「Sims Life」という小冊子がついている。家具のカタログとしての実用性だけではなく、使用例、さらに、インテリアデザイン誌風の洒落た装丁が遊び心を刺激してくれている。ぱらぱらとめくるだけで、思わずゲームを起動して、家を造りたくなってしまうだろう。 筆者は、本作の建築ツールは、今まであまりゲームに触れたことのない中高年のユーザーも強く魅了できると思っている。ゲームという部分は離れてしまうが、建築シミュレーションとして不動産関係の業者とのタイアップも可能なのではないだろうか? また、本作は「アメリカンライフ」を満喫できるが、残念ながら和室を作ることができない。今後、前作のようにユーザー自身がアイテムや家具を追加していくことも充分考えられるが、日本のEAが、公式の追加データとして、日本風の家具を作るという展開もあっては良いのではないだろうか? 意見のひとつとして、この場を借りてお願いしたいところだ。 (C)2004 Electronic Arts Inc. All Rights Reserved.
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2004年9月15日) [Reported by 勝田哲也]
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