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【Game Developers Conference 2004】レポート

「星のカービィ」のディレクターである桜井政博氏
ゲームの面白さについて語る

3月24日(現地時間) 開催

会場:San Jose McEnery Convention Center

「星のカービィ」シリーズや「大乱闘スマッシュブラザーズ」などのディレクターである桜井政博氏。現在はフリーのゲームデザイナーとして活躍中
 「ゲーム性(Game Playability)」とは、ゲームの面白さを表した言葉だ。つまり、楽しいと感じるゲームはゲーム性が高く、つまらないと感じるゲームはゲーム性が低い、ということになる。

 しかし、グラフィックがきれい、かっこいい、といったゲームについては、ゲーム性はどうなのか。また、ゲームのチュートリアル部分が面白かった場合にはどうなのか。つまり、ゲームの面白さ(ゲーム性)とは、一概には言えないものである。

 しかし、今回桜井政博氏が「Game Developers Conference 2004」のカンファレンスセッションでゲーム性について解説するにあたって、「リスクとリターン」というものに置き換えて、かなりわかりやすく解説してくれた。ここでは、そのセッションの内容について紹介していこう。


■ ゲームの面白さは「リスクとリターン」で説明できる

ゲームの面白さは「リスクとリターン」によって説明できるという
 桜井氏は、ゲームの楽しさである「ゲーム性」について、「リスクとリターン」という言葉に置き換えた。ここで言う「リスク」とは、ゲームをプレーしているときに、プレーヤーが感じる脅威のことを指しており、平易には、ゲーム中に怖い、危険だと感じることをあらわす。また「リターン」は、脅威のあるものを排除することを示す。つまり、ゲーム中に敵をやっつけたり、やっつけるに至る過程を表す。そして、この「リスクとリターン」を突き詰めることで、ゲームの面白さを説明できる、と桜井氏は説明する。

 そして桜井氏は、いろいろなゲームを例に、リスクとリターンの考えに基づいて“どこが面白いのか”という説明を行なった。まず、シューティングゲームの場合として例に挙げたのが、「スペースインベーダー」だ。

 まず、インベーダーと砲台の位置が離れている場合には、いくら砲台からビームを打ってもインベーダーに当たらない。これは「リスクはないがリターンもない」といった状態となる。それに対し、砲台とインベーダーの距離が狭くなった場合には、距離が離れている場合よりもリスクが増大している(つまり、インベーダーの攻撃にやられる可能性が高い)ことになる。ただ、逆にインベーダーを撃破できる可能性も増えているため、リターンも増大している。砲台がインベーダーに近づくほどリスクもリターンも増大する。つまり、リスクを冒してリターンを得る、というのがゲームの本質となるわけだ。

 とはいえ、プレーヤー側はただ単純にリスクを冒してリターンを得ようとするばかりではない。リスクを少なくする工夫をして最大限のリターンを得る、ということを目指すのが普通だ。これは「攻略(Strategy)」ということになる。

 たとえば、インベーダーは常に動いているため、リスクのゾーン(インベーダーの攻撃が砲台に当たるゾーン)はインベーダーの移動方向の反対側に斜めにずれた範囲となる。そして、インベーダーを追いかけるように攻撃する場合には、砲台がリスクゾーンに入るにもかかわらず、インベーダーを撃破できない。それに対し、インベーダーから追いかけられるように攻撃する場合には、砲台がリスクゾーンに入らないにもかかわらず、インベーダーを撃破できる可能性がある。これこそが攻略である。

 スペースインベーダーにおいて、砲台の中心と砲台の端までの距離が、ゲームバランスを決定するキモとなっている。また、リスクを変えるシステムが用意されているということが、ゲームバランスを調整するキモになるが、スペースインベーダーにはそのすべも用意されている。26年前のゲームであるにもかかわらず、こういったゲームバランスを実現しているスペースインベーダーすごい、と桜井氏は指摘する。ゲームを作る側が、リスクとリターンをきちんと考えながら作るということこそ、ゲーム制作において非常に重要となるわけだ。

 桜井氏は、スペースインベーダーにおける特有の仕様について説明した。それは、いわゆる「名古屋打ち」だ。スペースインベーダーでは、インベーダーが最も下まで攻め入ったら、その時点で砲台が何基残っていようともゲームオーバーとなる。しかし、その1段手前においては、インベーダーの攻撃が砲台をすり抜け、砲台が“無敵”の状態となる。

 つまり、このゲームにおいて最大のリスクが生ずるときに、逆に砲台が無敵になるという最大のリターンが発生するわけだ。もちろんこれは、読者の皆さんもご存じかと思うが、スペースインベーダーの仕様ではなくバグによって発生したものだ。つまり、制作者は意図していなかったことである。とはいえ、最大のリスクと最大のリターンが表裏一体で存在しているという部分は、もはや芸術としか言いようがないと桜井氏は指摘した。

インベーダーと砲台の距離が離れていると、リスクが低いがリターンも得られない 距離が縮まると、リスクが高まるがリターンが得られる可能性が出てくる リスクを冒してリターンを得る、というのがゲームの本質だ
インベーダーが左に移動している場合には、このようなリスクゾーンができる インベーダーを追いかける方向から攻撃する場合は、やられるリスクはあるがインベーダーを撃破できない それに対し、インベーダーに追いかけられる方向で攻撃すると、リスクゾーンに入らないにもかかわらずインベーダーを撃破できる。これが攻略だ
砲台の中心から端までの距離は、単なるデザインではなく、ここにゲームバランスのキモが隠されている スペースインベーダーの最大の特徴である「名古屋打ち」。もともとはバグから発生した攻略法だ インベーダーに侵略されてゲームオーバーになる直前に砲台が無敵となる。最大のリスクと最大のリターンが表裏一体となった、芸術的なゲーム性がここに存在する



■ リスクが大きくなればリターンも増え刺激が増えるものの難易度は上がる

 次に桜井氏は、アクションゲームについての説明を行なった。まず例として示されたのが、「スーパーマリオブラザーズ」である。

 スーパーマリオブラザーズには、敵としてカメ(ノコノコやパタパタ)が登場するが、マリオがカメを踏むと、カメを武器として使えるようになる。マリオとカメの距離が離れているときには、リスクは小さく、リターンもない。マリオとカメの距離が縮まると、リスクが高まっていく。そして、あと一歩でやられるという距離になり、マリオとカメの座標軸が一致した瞬間、つまり最大のリスクが発生するところでマリオがジャンプしてカメを踏みつぶせば、カメを倒せるという最大のリターンが発生する。しかも、甲羅を武器として使えるという特典もついてくる。とはいえ、カメを踏みつぶすときの位置が少しでもずれると、マリオはやられてしまう。

 つまり、スーパーマリオブラザーズでは、リスクとリターンが非常に近い位置に設定されている。ぎりぎりまでリスクを高めておいて、一気にリターンを得るというゲーム性になっている。

 ただ、桜井氏は「スーパーマリオブラザーズは、ちょっと難しいのではないか」と若かりし時に(おそらく子供の時のことだろう)感じたという。そこで桜井氏が制作したのが「星のカービィ」である。

 カービィと敵の距離が離れている場合には、スーパーマリオブラザーズ同様、リスクは小さい。しかしカービィには、そういった距離においても、敵に一方的に攻撃する特典が与えられている。敵を吸い込みほおばる、というものだ。そして、ほおばった敵をはき出して攻撃することで、さらにリターンを得られるようになっている。さらに、カービィには空を飛ぶという能力があり、これによってマップに用意されている穴などの障害や敵を避けることが可能となっている。つまりカービィは、リスクを軽減する能力をあらかじめ持っているということになる。

 リスクの高いゲームでは、高いリターンが得られるため、それだけゲームを楽しいと感じられる。それに対し、リスクが低ければ、それによって得られるリターン(ゲームの面白さ)も低くなる、というのが普通だ。ただし、人によってリスクの感じ方は全く変わってくる。同じゲームでも、人によっては非常にリスクが高いと感じることもある。たとえば、あるゲームをプレーしたときに、ゲームに慣れている人にとっては適度な難易度であっても、ゲーム初心者にとっては非常に高い難易度と感じることがある。そして、ゲーム初心者がそのゲームを何度プレーしてもクリアできなかったとすると、そのゲームはつまらないと感じるはずだ。それを避ける方向で制作されたのが、星のカービィシリーズである。

 もともと星のカービィシリーズは、ゲーム初心者をターゲットとして開発したという。そのため、ある程度リスクを軽減させることも問題がないと考えているそうだ。開発中は、こんなに簡単でいいのかという意見もあったが、初心者をターゲットとしているために、これでいいということでまとめ上げたという。

 スーパーマリオブラザーズと星のカービィを比べると、もちろん星のカービィのほうがリスクが低く(遊びやすく)できている。リスクとリターンは重要であるが、ゲーム初心者に対する配慮も必要である。プレーヤーが遊んでいる感じを保ちつつ、クリアもできなければならないということを考える必要がある。

 とはいえ、これは価値観の問題だ。ゲームが目指すところは多様にあってよく、正解というものは存在しない。このあたりはゲーム開発者のさじ加減にかかっているわけだ。リスクが大きくなれば刺激は強くなる(リターンが増える)ものの、ゲームの難易度も上がってしまう。リスクとリターンを考えてゲームのコンセプトを磨くことが、ゲーム開発者に求められる寛容な部分であると桜井氏は指摘した。

スーパーマリオブラザーズで、敵を武器に利用できるという点は、絶妙なゲーム性である マリオとカメの距離が離れている場合には、リスクは少ない 距離が短くなるとリスクが増大する
マリオとカメの距離がなくなり、リスクが最大限になったときが、攻撃(つまりリターン)のチャンスとなる スーパーマリオブラザーズは、ぎりぎりまでリスクを高め、一気にリターンを得るというゲーム性である 星のカービィには、もともとリスクを軽減する能力が備えられている
リスクが大きければリターンが大きくなり楽しいと感じる度合いが増え、リスクが少なくなればリターンが少なくなり、面白く感じなくなるのが普通 ただ、あまりにも高いリスクの場合には、まったくリターンが得られず、楽しいと感じなくなってしまう 星のカービィは、初心者をターゲットとして作られているため、スーパーマリオブラザーズよりもリスクが低く(遊びやすく)なっている



■ ゲーム性がゲームの面白さの全てではない

 その後、対戦格闘ゲームやレースゲーム、RPG、落ちものパズルゲームなど、いくつかのジャンルのゲームについて、同様にリスクとリターンという言葉を使って面白さを解説していった桜井氏。どれも的確な指摘ばかりで、会場の聴講者も真剣に聞き入っていた。ただ桜井氏は、リスクとリターンにゲーム性のすべてが内包されているわけではないとも語った。たとえばラジコンは、車や飛行機をコントローラーで操作しているだけだが、それらを操作すること自体が非常に楽しい。つまり、ゲーム性がなくても魅力的なゲームを作ることが可能である、ということを示している。

 ブロック崩しは、パドル型コントローラーでバーをコントロールするだけだが、その操作感が非常に面白いと感じることがある。また、版権もの、キャラクタものといったジャンルのゲームは、それらのファンのために作った商品群のひとつであるが、ゲーム性というより、オリジナルの世界観がいかに再現されているかという部分が重要になる。スポーツゲームは現実の世界を再現しているものが多いが、ひいきのチームや選手を操作していると、それ以外のチームや選手を操作しているときよりも明らかに楽しいと感じる。これもゲーム性とはかけ離れた部分での面白さだ。映像が興味深いゲームもこのジャンルに当てはまる。ムービーが用意されていることでディテールがよくわかり、ゲームが楽しくなることがある。また、ムービーを見たいためにゲームを進めるという場合もあり、これもゲームの面白さのひとつといえる。

 実在モチーフの再現というのも、ゲーム性とは異なる楽しさを提供する。レースゲームで、実在の車種、実在のコースでプレイできると、実世界で体験しているかのような感覚が得られる。音楽ゲームというジャンルも同様で、音楽を聴くとリズムを刻みたくなるような感覚を得るというのは、太古の昔、人類が登場した頃から存在しているものであり、ゲーム性というようなものを超越している。また、なじみの曲が登場するだけで楽しいと感じることがあるが、それもゲーム性とは全く関係のない部分である。

 このように、ビデオゲームの可能性というのは、まだまだ尽きることはない。ゲーム制作者は、ゲームを面白くしていきたいと常々考えている。しかし、ゲームは基本的に模倣で出来ている。ヒットしたゲームがあれば、それと同じようなゲームがいくつも登場する。模倣が悪いというわけではない。新しいジャンルのゲームでも、新しいだけで面白くなければ意味がない。しかし、現在はそのバランスが崩れているのではないかと桜井氏は感じているという。また、現在のゲーム開発の状況について、ゲーム制作者が遊びたいゲームばかり作られて、ゲームを遊んでくれいる人やゲームを知らない人に対する配慮が足りないとも指摘した。最後に桜井氏は聴講者に対して、プレーヤーのことを最優先に配慮しながら、リスクとリターンという考え方で新しいゲームを制作していってくださいというメッセージを残してセッションは締めくくられた。

ライセンスものや版権ものは、ゲーム性よりもオリジナルの世界観がいかに再現されているかという部分が重要となる スポーツゲームでは、ひいきのチームや選手でプレイした方が楽しいと感じる 実在のモチーフを再現したゲームも、実際に体験しているような感覚が得られ楽しいと感じる
ビデオゲームにはまだまだ可能性が秘められており、常に新しいゲームを作ろうと努力することが大事 自分が遊びたいゲームを作るのではなく、プレーヤーに対する配慮を最優先に考えることが重要だ


□「Game Developers Conference 2004」のホームページ
http://www.gdconf.com/
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(2004年3月30日)

[Reported by 平澤寿康]


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