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★ピックアップ アーケード★
前回の引き続き、「頭文字D Arcade Stage Ver.3」ヒット記念スペシャルインタビューの後編をお届けしよう。前編以上に話が脱線している部分が多々見受けられるが、その場のノリということで、平にご容赦願いたい。
■ 楽しさがわからないものは、提供できない
新井: いやー、全然。そろそろ営業とか、うちの社長から「コラッ」っていわれる頃。なにやってんだオマエ、みたいな。 -- そろそろ企画書を出せ、みたいな? 新井: そうです。今、松本と考えてるんですけどね。どうしようかなー、と。 -- やっぱクルマですか? 新井: クルマですねー。それはもう「頭文字D」も含めて、色々と可能性を考えて。やっぱり「頭文字D」だけでも、ね。ユーザーさんも飽きちゃうかもしれないし。なにかやりたいっスねー。 -- 一度キャラクタもので成功してしまうと、それが脳裏に強く残ってしまうような気がします。 新井: そうですね。なんか「頭文字D」も作るのをやめちゃうとかじゃなくて、「頭文字D」もやりつつ、また新しいモノとか考えたいなぁって感じですよね。 西嶋: さらに忙しくなる(笑) 新井: 忙しいときが華ですよ(笑)。英語版とか細かい仕事を受けるんですけど、それでうちの連中から「安請け合いしすぎ!」って言われるんですよ。「オマエねー」みたいな。あのねー、仕事してくれ、っていわれているウチが華だよ、オマエ。必要とされてるんだから。仕事は選んだらアカン!(笑) -- 選んじゃダメですか?(笑) 新井: 仕事ねー、選んでもいいですけどね、逆に、選んでいいことないんですよ。ボクの感覚的にも。やっぱり、やりやすいのを選んじゃうんですよ。自然と楽なほうを選んじゃう。選ばないと、色々こなすうちに力もつく。普通だったら「英語版? えー!?」とかなるんですけど。「まぁまぁ、やろうよやろうよ」みたいな。とか言って仕事選んじゃう時もありますけど(笑)。 -- 一般的には「そんなの外(外注)に出しちゃえよ」とか、なりますからね。 新井: そうなんですよ。でも、それもやってみようと。やってみると、やっぱり色々とノウハウがたまって、次に色々あっても俺らすぐ作れちゃうよとなる。何のゲームを作るとき、その技術が役に立つか、わからないからですからね。だから、なんでもやろうよ、と。ユーザーも喜ぶし。 -- 以前、ちょっと「首都高」のお話をしたじゃないですか。同じレースゲームでも、舞台を変えるということに興味はないんですか? 新井: う~~~ん……そうですねぇ。首都高は、あんまり興味ないですねぇ。なんとなく、ですけど。実際に走ったことは、もちろんありますけど。なんかこう、ときめかないですねぇ。原体験が……もともとバイク乗りだったこともあって、クネクネした道をどう走るかっていうのが面白くて。もちろん首都高とかも凄くテクニックが必要なことはわかるんですが。ボクね、一回見に行ったんですよ。ローリング族みたいなトコがあって、辰巳ジャンクションあたりに集まってクルクル回るっていうのを、1回見に行ったことあるんですよ。すっごい怖くて難しいんですけど、やっぱり面白くないですね。怖いばっかりで。 -- 一般車が多いし、走りの内容も峠とは異質だから? 新井: 峠って、夜中だとほんと(クルマが)いないですからね。あと、やっちゃったときのインパクトも違うし。最近なかなか峠もいってないですけど、色々問題もありますしね。最近サーキットいくのが多いんですけど。なんか、首都高はね。あと、首都高に乗ってる連中の改造も、ボクが好きな改造じゃないんですよ。 -- 新井さん的にはNG? 新井: あの、首都高の改造がダメということじゃなくて、ボクの好みじゃないんです。なんかねー、元々ラリーが好きっていうのがあって、ラリー車的な改造の仕方が好きなんですよ。ブレーキおっきくするとか。ひたすら馬力アップして直線番長みたいな改造よりも……。 -- ドレスアップではなく、チューニング? 新井: 機能的な改造が好きなんですよ。「なんでココに穴があいているかといえば、ここが冷えるからだ」とか。機能的なヤツが好きですね。峠の連中とかも、チューニングはそういう考えじゃないですか。やたらめったらつけるんじゃなくて、意味がある改造みたいなのがカッコいいな、って。首都高向けの改造が意味無いわけじゃないですけど。 -- それが、首都高にはいかない理由である、と。でも「行け」といわれれば行くんですよね? 新井: そういわれれば、まぁ試しに行ってみるって感じで。でも、やっぱり楽しいって感じではないですねぇ。
新井: そうです、そうです! 楽しさがわからないものを、提供できないですから。消化しきれてないわけじゃないですか、楽しさが。 -- たとえば、ですけど……業務命令で、どうしても作らなければならないという話になったら、ある程度無理をしてでも「消化」して面白さを見出せる? 新井: そうですね、やっぱり。それはそうですよ。前のインタビューでも話ましたけど、コックさんも美味しいご飯をたべて、美味しい経験を手から出すんです。美味いもんを食ったことがなければ、いくら美味いもん作っても絶対美味いもんはできないと思うんですよ。 -- これ、多分美味しいよ、って出されても、ねぇ。 新井: えー! ってなっちゃうでしょ? やっぱり、ラーメン作ってる人はラーメン死ぬほど食ってるわけで。ボクらも、多分面白いと思うよ、っていうものは出せないですよね。 -- それは、先ほどの演歌の話にも通じますよね。 新井: うん、うん、うん。だから、ずーっと同じラーメン作っててもいいじゃん、みたいなところね。食ってくれる人がいる限り、みたいなとこはありますよね。やっぱり、苦手なことをやっても勝てないんで。今はグローバルとかマルチプラットフォームとか、色々な話がありますけど、そういうのは得意な人にまかせて。ボクはもっとドメスティックにやって、せいぜいアジアで売るくらいじゃないのー? って(笑) -- マルチプラットフォームは、そんなにいわれますか? 確かに、そういう強い流れはありますが……。 新井: やらない、とかじゃないんですけど。たぶん、ボクがやっても上手くいかないと思うんで、みたいなところがあるんですよね。「アメリカ向けのゲームを作ってくれ」という話もありますけど、やっぱり。1回失敗してるというのもあったりとか。で、やっぱりアジア、香港とか。韓国とかいって、そこの連中とかと話すと、わかりますしね。アメリカの連中とかと話たりすると、ちょっとわかんないとこがあるんですよね「へぇ、それが面白いんだぁ」とか。 -- それは理屈ではなく、感覚的な違い? 新井: 感覚的な違い、やっぱありますよ。韓国の連中とかだと「うーん、わかるわかる、日本と同じだね」みたいなのがあって。だから、きっと俺らが作ったゲームって、韓国で人気あるのは、こういうところが何となくつながっているんだろうなーとか。たぶん、香港とかでも、俺と話が合うだろう、みたいな。だから、そこの連中に向けてゲームは作りたいな、と思いますね。これからも。 -- それでは、「NASCAR」のときは……。 新井: あのときは……やっぱり。NASCARというカテゴリは知ってましたけども、オーバルの楽しさは、はじめわからなかったですよ。今はわかりますけど、当時その……オーバルコースをグルグル走る楽しさは「なんとなく、こういうの面白いのかな?」という時点で作ったんですよね。だから、やっぱりダメだった。 -- 半信半疑で作っていた? 新井: みんなそうでした。ボクも含めて。やっぱり「こんなとこグルグル回って、なにがおもろいの?」と。で、見にいったんですけど、まぁ確かに迫力とか凄かったんですけど、走っている連中のテクニックもないとはまったく言わないですけど、案の定、日本ではあのレースは定着してない。NASCARもそうだけど、INDYとかもイマイチ定着してないってのは、やっぱり日本人にはわかりづらいからですよね。ボク、モテギとかよくいくんですけど、モテギで見てもアメリカで観るほど面白くないんですよ。ドライバー連中は同じなんだけど。あれは、周囲の観客とかの盛り上がりも含めて面白いんですね。 -- それは、凄くアメリカ的ですね。 新井: 20万人くらい観客がいて、全員「ウワーッ」って騒いでるところにポツーンていると、こっちもすっごいウワーッ! ってなるんですよ。でも、日本人がレース見てるときって、こういうふうに(腕を組んで)見てるんですよ。「今、アンダー出した」とか、そういうやらしい目で。向こうの連中は、ビール飲みながら。だから、なんかねー。その場だけ見てもつまんなくて。 -- 観客も演出の一部なんですね。もしかしたら……新井さんはWWEが嫌いですか? 新井: ボク、プロレス全般、好きですよ! WWEも毎週のように見てますし。あれも、周りにきてる連中が知ってるから、盛り上がる。で、客がみんな、前向きじゃないですか。俺も参加してやろう、騒いでやろうみたいな。だから盛り上がるんですよ。WWEの凄い選手が新日にポツンときても、客の反応が悪い。でも、団体できたらワーッていう。そういうことじゃないですかね。……次はボクも、頑張って違うの作ろうかな(ポツリと)。 -- それはそれで、期待しちゃうんですけど。 新井: 演歌的な。好きな人たちのために、こう……ね。
新井: 作りたいですねぇ! F-1とかラリーって、誰でも作りたいんじゃないですか? クルマのゲーム作ってる連中なら。ボクは、昔からF-1よりもラリーが好きで。ま、F-1、最近つまんないですから。 -- 最近は、話題が少ないですからね。なにか、牽引役になるようなものがあれば……。 西嶋: ラリーとかねぇ。もっと日本受けしてもいいような気が……。 新井: ラリー、日本受けするはずですよ。以前、タイラリーを観にいったんですけど。そんときに日本人ドライバーの応援にいってきたんですけど。もう、すっごい、バカみたいに速いんですよね。強豪相手に速いわけですよ。で、実際あってみると「ただの峠で早いあんちゃん」みたいな感じなんですよ。ちゃんとレーシングスーツきてるんだけど。なんか、昔悪かったんじゃないの? っていうヤンキー上がりみたいな人がいて。でも、すっごい運転うまいんですよ。神業的に。で、色々みてると、やっぱりイギリス人とか、フランス人とか、その国の走り屋のあんちゃん代表みたいのが一杯いるんですよ。みんなちょっとガラが悪くて「てめぇ、さっきやったろコノヤロ!」みたいな。なんか、そういう感じで。凄くいいですねぇ。日本人が好きなタイプ。凄くナショナリズムがありますしね。ボクは日本人と日本車を応援するし、フランス人はフランス人しか応援しないし。F-1とかだと、遠すぎて。今、シューマッハもそうですけど。観にいくと、凄く遠くにいるんですよ。でも、ラリーだと、凄い人たちがそのへんテケテケ歩いてたりするんですよ。で、サインしてっていうと「おまえ日本人か。お~、良くきたな!」とかいって。「運転うまい?」ってきくと「アタリマエだコノヤロー!!」みたいな。かなりガラが悪い感じで(笑)。 -- 高級クラブと大衆飲み屋みたいな違いですね(笑) 新井: ホントに面白いですよ。みんな、腕まくりしてるんですよ。レーシングスーツきて。ガラが悪いんですよ、なんか。「ここ(腕)に何かあると、集中できないんだよ」みたいな感じだと思うんですけど、事故って燃えたら危ないでしょ、みたいな(笑) 燃料かぶっても「気合、気合」みたいな。 -- まんまヤンキーじゃないですか(笑) 新井: ああいう連中を見てると、ボクと近いじゃないけど、こういうの作りたいなーと思いますね。F-1とか、カッコいいけど、あんまりにも遠すぎて、凄すぎて。ボクには関係ない世界。 -- ちょっと、美術館で絵を見ているような? 新井: そうなんですよ。凄いのはわかるんだけど。で、クルマのテクノロジーも、ラリーのクルマより全然凄いんですけど、ねぇ、みたいな。でも、作ってみたいんですけどねぇ。小さい頃から好きですから。 -- 小さい頃に観たF-1と、今のF-1は全然違うものだと思います。 新井: 違いますね。昔のほうが、色々なキャラクタがいて……ピットでタバコ吸ってる人がいたりして。引火する! みたいな(笑) 乱闘もあったりしましたからね。クルマのデザインも、メチャメチャなのがあったり……でもまぁ、やっぱラリーつくってみたいかなぁ。 -- 行き着くところは、ラリーですか。 新井: 箱のクルマが好きなんで。ラリーとかDTMが好きなんで、そういうのがやってみたいですねぇ。ただ(仮に作るとなれば)国内では、今、僕たちが作った「頭文字D」があるんで。それをどけるゲームを作るのは、ブルーになりますね。我ながら。どうしよう。みたいな。 西嶋: 2台、3台ってクルマゲームを置いてくれないですからね。他社さんのクルマゲームもあるし。 -- 近日中には、ナムコさんから「湾岸ミッドナイト マキシブースト」がリリースされますし。 新井: あれ、面白かったですよ。(ロケテストに行って)カード作って。すぐ作りました。ランエボ。前のより全然好み。あれは売れそうな気がする。あれ作ったチームとよくカート大会やるんですけど、速くてムカツクわ~(笑)。 -- カードシステムとか、重複する部分がありますけど……。 新井: あ~、それは全然かまわないんです。そういう時代じゃないですからね。今ほら、クルマ業界とかでも、トヨタのシステムを日産が採用したりするんで。ボクらの「頭文字D」だって、ハンドル部品をナムコさんから買いましたからね。だからもう、業界をみんなで盛り上げればOK。カードだって使いまわそうよ、と。全然OK。
西嶋: プロレス、作るんスか? 「ジャイアントグラム」の続編、作ってくださいよ(笑) 新井: ここで言うと怒られるんですけど、ボクね、ポリゴンのプロレスゲーム否定派なんですよ。ポリゴン否定派。 西嶋: えー、じゃ、ファイプロ(ファイヤープロレスリング)派? 新井: ジャイアントグラムはやりました。買いましたし、出来いいんですけど。ボクら、ほら、プロレスラーに幻想抱いてるから。2Dだと、嘘つけるんで。ボク、会社入ったときからずっと言ってて、小口さんが上司の頃に「何つくりたい」かってきかれて「ボク、レースゲームとプロレスゲームを作りに会社きました」っていったんですよ。プロレスゲームを作るのは、いまだにかなわぬ夢なんだけど。プロレスゲームは、毎回作りたいと思います。実は1回、黙って……もう大昔ですよ? 10年以上前に黙って、余った基板で、有志で。5人くらいかな? 作ったんですよ、プロレスゲーム。 -- ……黙って、ですか(笑)。 新井: そうしたら、小口さんに見つかってすっげー怒られて。「ちゃんとボク、(タイム)カード切って作ってますから」、「バカヤロー、そういうことじゃねぇんだ!」って、メチャメチャ怒られて。3カ月くらいで作って。みんなで居残りしてカード切って、2時間ずつくらい、毎日つくってた。リングと、馬場と猪木くらい作ったんですね。技も延髄斬りとか入りはじめた頃にバレた。 西嶋: 何がキッカケでバレたんですか? 新井: いや、たまたま作ってたら(小口さんが)きちゃったんですよ。ワッ! みたいな。「なんだおまえ、こんなとこ……え、なんだコレ」、「え、なんだこれって、なんなんでしょうね?」みたいな(一同大爆笑) 「ちょっと待て、お前ら全員集まれ」と。めちゃめちゃ怒られましたね。鼻血が出るくらい怒られた。勝手なことやるなって。 -- イタズラして、職員室に呼び出された学生みたいですね。 新井: 怒られましたねぇ。あのときは……システム32か何かだったかな? それくらい作りたかったんです。あのときはレースゲームも作れてなかったんで、フラストレーションがたまってて。で、レースゲームは作れないから、プロレスゲームでも作れたらいいなーと思って。そこでフラストレーションを発散してた、みたいな。当時、ボク「ダークエッジ」作り終えたばっかりくらいの頃で……。 西嶋: 「ダークエッジ」作ったばっかって、まだまだぺーぺーじゃないですか!!(笑)。 新井: そう(笑) その頃に、今もいるけど山縣っていうデザイナーと、ボクと、もういないけど長谷川っていうプログラマーとか。あとねー、なんだったっけ。山縣にきけばわかりますよ。「おっこられたよなー」とか。山縣とか「俺、リング描きますから」ってやってた。当時は、そういう熱いのが一杯いましたね。どうしてもプロレスゲームを作りたいけど作らせてくれないから、勝手に作る、みたいな。 -- 完成させちゃえば、文句いわないだろうと。でも、そんな簡単に作れちゃうもんなんですか? 新井: 今みたいに、ゲーム作るのが大変じゃなかったんですよね。2~3人で作れちゃったんです、なんとか。完成はしなかったですけどね。 西嶋: そうですね。2~3人で、2、3カ月。 新井: 今は、なんか、そういう暑苦しいのがあまりいなくて。勝手にゲームつくってるとか、ないですからね。熱さが見えにくくなってるんでしょうね、きっと。 西嶋: それは確かに。でも、それだけ(ゲーム作りが)大変になったっていうのがあるかもしれない。負担というか。開発のほうも完全に分業化されて。当時はデザインの人もゲーム内容に口を出せる余裕があったんだけど、今ってホントに特化してるから。たとえば、デザインでもモーションだけの人、背景の人、キャラクタの人って完全にそういうわりふりになってきちゃうと。やっぱり、自分のやることで一杯、一杯っていう感じ。 新井: 作りたいゲームが、みんなもうないんですよ、あんまり。ボクとか、作りたいゲームっていわれるとポコポコっと出てくるんですけど。それが、今は「なんでも作ります」とか。 -- 「なんでも」って、優等生っぽい答えですね。 新井: っていうか、なんか、実際あんまりないんでしょうね。別に、みんな力がないわけじゃないんですけども。あんまり、こう、ないですね。 -- じゃぁ、企画会議とかをやっても、みんな「ハイ!」、「ハイ!」というふうでは……。 新井: 企画は、結構熱い連中が多いですけどね。特に若い連中が。歳食ってくると熱くなるんじゃなくて、結果がいつも求められるんで、あんまり青臭いこといわない。でも、根は青臭いです。いい意味で。根は青臭くって……好きに作れっていわれりゃ、作るけどね、みたいな。 -- 根幹部分を作る人に、そういう人が欲しい、っていうのはありますか? 西嶋: う~ん……ま、そういうセンスは、やっぱり当然必要になってきますね。ゲームの、たとえばバランス調整から組んでいくのって、企画のアイデアがあって、さらにはプログラマーのゲームセンスって凄く出てくるところがあるんですよ。企画の人だと、どうしてもプログラミングひとつひとつが「これをこうするとこう動く」とかっていうのがないから、やるとしても「こんな感じで作って」っていうふうに発注せざるをえない。そこの部分をプログラマーが、自分の解釈とかセンスで組んでいく。だから、プログラマーのゲームセンスもどうしても必要になってくるんじゃないかな、と思いますね。ひとりいるといないとで、全然違いますよね。トップに立つ人がそういうセンスを持っていると、下も育っていくし。アタマ固いと、固いゲームになっちゃう、みたいな。 -- 詳しいですね。 西嶋: 一応、プログラマ出身だから(笑) 新井: プログラマの人のほうが、そういうの、ね。大事です。トンチがきかないと。プログラマのちょっとしたアイデアが「いいねぇ!」って。「もっと前にいえバカ!」みたいなの、ありますから(爆笑) デザイナーって描くことに集中しちゃうんだけど、プログラマは色々なこと考えていくんで、アイデアが浮かびやすい職種ではありますよね。 西嶋: こんなこともできるよ? って。んで「え! そんなのできるの!?」みたいな。 新井: だって、こういうことできるじゃん。とかいうと「あ、そっか」みたいな。もっと前にいえよ~みたいな。
新井: うち、結構そういうのありますね。 西嶋: プログラマー同士でも、わかんないこともあるから。この人が「こんなことできるんだよねー」っていうと、みんなで「えー!!」っていうのが、プログラマー同士のなかで。 -- インスパイアされあってる? 西嶋: 組んでいくうちに、あ、こういうふうにできるんじゃない? っていってふっとやったら、できちゃった、みたいな。そういうの、あったりするから。プログラミングって。 -- そういうのが、新しい土台になっていったりとか。 西嶋: 採用されるか、されないかは(別の話)。 -- そんななかでも、コアになる人っていうのが、いるわけですよね。 新井: いますね。う~ん、ゲームいっぱい遊んでいる人がゲーム作るの上手いわけじゃなくて。ホントに、普段から何か面白いことを考えている人が、いいんですよね。ゲームまったくやんないのも問題ですけど、ゲームをやってるからって安心しちゃうとね。ただやってるだけじゃ。 西嶋: ヘヴィである必要はないけど、やっぱり「やってる」必要性はありますよね。この仕事をしている人たちは。 新井: そうですね。だから、流れなんです、ゲーム業界の。今、こういうのが流行ってるんだー、とか、こういう新しい技術が出てきたんだー、とか。 -- そういう意識がないと、いいものが作れない? 新井: さっき、Unrealエンジンって話があったじゃないですか。あの話をね、会社のどこかの会議で話したときに、後ろのほうのプログラマが「Unrealって何?」って。オマエ「Unreal」知らねーのか! って。そういうのはマズイだろう、と。やってなくてもいいけど「雑誌でみたことある、なんかアレでしょ、FPSでしょ?」くらいは知ってないと、みたいな。 -- トレンドや情報くらいは、キャッチしててほしい、と。 新井: そりゃマズイよね、みたいな。 -- たしかに、エンジンを売り買いって、日本では異質な響きがありましたから…… 新井: そうですね。ボクら、暴走しましたから。「えー、Unrealみたいなゲームできんの? これ買えば」って、違いましたけど。結構、買ってから大変なんだよ、これ。みたいな。これ、いいエンジンだなぁ。でも作るの大変みたいな。 -- 部品を作るの、大変なんですよねぇ。そうえば、プロレスゲームの話なんですけど……他社さんから近日中にリリースされる予定がありますが。気になりません? 新井: いいんです、盛り上がってくれれば。作りやすくなるって、前向きにとれば。 西嶋: プロレスも、意外とパイあるよ? って(通しやすくなる)。 新井: 色々な意味で期待してます。成功してくれれば、色々な意味で嬉しい。超嬉しい。絶対ね、どこかにニッチが生まれるんで。 -- 実際作るとなったら、どんなイメージでやられます? 新井: ボクね、やっぱりカード考えてましたね。普通に、こう、(レバーとボタンで)ガチャガチャやって遊ぶのはつらいなー、と思ってましたね。仮面ライダーカードみたいに。 -- 原体験ですね。 新井: たとえば、髪が凄い長い頃の長州力がレアでいたりとか、若い頃の前田日明がいたりとか。なーんとなく思ってましたけどね。やっぱり、ボクがなんとなく考えるようなことはみんな考えてて、もちろんゲームになってて。ボクらも悔しいとは思わなくて。はやくでねーかな、みたいな。 -- 先を越された、という焦燥感はないんですか? 新井: そういうの、ないですね。作ってたわけじゃないんで。作ってたら熱いですけど、こっちが(笑) あー、誰か作ってくれたんだ、良かった良かった、みたいな。 -- 完全にお客さんの立場? 新井: これで盛り上がればいいなー、って。 -- そういう意味では、レースゲームは盛り上げた立場になるわけですが。プレッシャーは? 新井: う~ん……そうですねぇ。あんまり、あの。セガの営業の人たちって凄く頑張ってくれるんですよ。色々と押さえてくれたりとか、するんで。「うちから、こういうの出ますから」とか。うちの営業の人たち、凄いですから、そこいらへんは。「頭文字D」のときも、ホント色々頑張ってくれて、市場を押さえててくれましたから。信用してますよ、凄く。 西嶋: 営業には、ホント感謝しますよ。
■ 次回作がドライブゲームなら……第一候補はやっぱり「頭文字D」
新井: えー、第一候補ですか? 今? やっぱり「頭文字D」は考えちゃいますね。そりゃ、ユーザーが望んでますから。コンシューマか、あとはまったく新規で作るかとか、そういうのはおいといて、やっぱ「頭文字D」はずっと考えてますよ。 -- それは、ちょっと意外な答えでした。 新井: そりゃだって、お客さんがあんだけやれやれっていってくれるから、そりゃもちろん一番に考えますよ。あとは、もうF-1とかラリーとか、既存のカテゴリのゲーム……その次はないですねぇ。 -- それ以外で、可能性が残されているとしたら? 新井: 「頭文字D」に限らず、コンシューマのレースゲームをやってみようかな? っていうのはありますね。アジア向けの、つくりたいですねぇ。 -- 現代(ヒュンダイ)のクルマしか出てこない、とか? 新井: ヒュンダイというか、韓国、台湾、中国、今盛況の状態で、やっぱり、ああいう連中がこれから、昔日本で「クルマが欲しい」となったように、そうなってくるはずなんですよ。そういうところに向けたものもありかなぁと、思ってますねぇ。 -- アジアマーケットの伸びしろに期待している? 新井: 前からいってるんですけど、ボク、アジアをずっとみてるんですよ。「頭文字D」で成功して以来。以前はヨーロッパをみてたんですね。F-1とか、ラリーとか。「頭文字D」が成功してから、こういう媒体を、コンテンツを熱狂的に受け入れてくれる人が、日本以外にもアジアにこれだけいるんだ、っていうことに勇気付けられて。じゃあ、今度はアジア向けっていうと語弊があるけど、アジアに展開できるような、はじめからそういう考えでレースゲームを作るのもありかなぁ、っていうのが、一番おっきな流れがありますね、アタマのなかで。そんななかに「頭文字D」とかラリーとかF-1があったりして。 -- そういう意味では、不思議かもしれませんね。本当にレースが盛んな欧米ではなく、アジア圏で「頭文字D」が売れた、というのは。 新井: まぁ、まだ……やっぱ、アジア圏でゲームやってる連中って、それなりにマニアなんで「頭文字D」を知ってるんですよね。もう。マンガで読んでたり。そういう連中が飛びついたって感じだと思うんですけど。まだまだマイノリティだと思うんですけど。まぁその、中国なんかはマンガの前フリもない国ですから、マイノリティのはずが、一番初めに入ったことでマジョリティになる可能性もあるわけで。中国のマジョリティっていったら、上海だけで1,600万人の人口がいるところですから。すごく、やったら面白いかなーとも思うんですよね。韓国の連中と話したことがあるんだけど、いいっすよ。いい意味で熱くて。夢がありますしね。僕みたいにショッパイこといわないし(笑) 凄く熱いんです。高度成長期の日本人って、こんな感じだったのかなぁ、というくらい、いい意味で暑苦しくて。とにかく、頑張れば絶対報われるから、みたいな。すごくいいですねぇ。逆に、こっちが勇気付けられますよね。 -- 日本は不景気ということもありますけど「もう、たかがしれてっからなぁ」みたいな空気がありますね。 新井: 今ちょっと、韓国は国の事情が厳しいですけど、やっぱり、まだまだいけますよ、あの国は。韓国で「頭文字D」は人気あるんですよ。是非、やりたいですねぇ。 -- やっぱり「頭文字D」である、と。 新井: ただ、どう出すかは……ちょっと。「Ver.4」を出す気はないと思いますけどねぇ、さすがにねぇ。 -- 現実的に考えて、単なる続編ではない? 新井: そうですね。出すんだったら、もう、全然新規に出したいですねぇ。で、また、それからもっかい続編。そのほうが、お客さん喜んでくれるかなー、みたいな。 西嶋: できれば「頭文字D 2」みたいな。 -- まったくリニューアルとなると、過去の成功があるぶん難しいですね。もう、すでにビジョンがあるとか? 新井: 全然ないですね。全然ないです。パーツメーカー変えたり増やすくらい? 西嶋: 完全に趣味のほうにいってるじゃないですか(笑) 新井: ゲームは、なかなか、ほんとに。切羽詰まんないと出てこないっすね。なんとなーく考えてると、なんとなーくとしか。 -- 一番カタチになるのは、どんなときですか? 新井: う~ん……なんか、相手の企画に突っ込むときに、でてきますね。突っ込んでるときに「あ、俺、今なんかいいこと言った?」とか思って。それをまたふくらませて、っていう感じで、それを蒸留して、煮詰めてっていう感じで。初めからボーン! って出てくる、というのはないですね。「頭文字D」も、そんなに画期的なわけじゃないですからね。ただ、細かいところのツメが良く出来てるっていうところで。カードの「車検」っていう言い回しが、かなりいいかな? っていくらい。 西嶋: そういうの、多い多い(笑) -- そんな、軽いノリだったんですか? 新井: カード買い替えって、なんかイメージ悪いなーと思って。どうしてもやらなきゃいけないことだしなぁ……車検だな、みたいな。車検て、みんななんか嫌だけど、そろそろやらなきゃな。車検、それ採用! 響きがいいなぁ、と思って。これはよく松本が考えついた、みたいな。 -- 「車検」なら、仕方ないなって? 新井: いっつも松本の横で「もー、車検で何万ぶっとぶよー」とかブーブーいってると、松本が「クルマ買わなきゃいいじゃないですか」とかいきなりいうんですよ。「そうはいかねぇだろ」と。そこで松本が思いついて。それくらいですかね、アイデアで面白いのって。あとはホントに、既存のアイデアをよーく煮詰めていったっていう。 -- これだけヒットしちゃうと「次はなんだろう?」っていう期待感がありますよね。 新井: そうですよ。だから、ホントに気をつけてつくんないと。アイデアは、ほんとに凄く考えないとねーって、思うんですけど。
新井: あ、それは冗談抜きで。うちはユーザーの声が大きいんです。全然バカにしてないんで。ちゃんと全部目を通してますんで。「作ってくれ!」という声がたくさんくれば、あの、すぐにまじめに考えて作り始めますんで。ホントに色々な気持ちや感想、こんなとこダメだ、っていうのも、言ってもらいたいですし。 -- 率直な意見をぶつけてくれ、と。 新井: それが、かえってユーザーのみなさんに、楽しいかたちで還元されると思いますんで。よろしくお願いします。 -- ありがとうございました。
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□セガのホームページ (2004年3月16日) [Reported by 北村孝和]
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