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Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
2004年のアジア戦略と台湾ゲーム市場の今後を聞く

2月7日収録

会場:台北世界貿易中心

 台湾ゲーム市場における重要なキーパーソンのひとりであるGamania Digital EntertainmentのCEO Albert Liu氏。会期前はもちろん、会期中も業界関係者を集めたパーティーや、中華圏向けのプレスカンファレンス、ブースでのステージイベントなどで多忙を極める中、無理を言ってインタビューに応じて頂いた。

 約束の時間に10分ほど遅れたAlbert氏は、SPも連れず、単身タクシーを使って、CEOには見えないラフな格好で姿を現した。こちらに気づいて足早に近づくやいなや、合わせた両手を顔の前に掲げて詫びの仕草をし、立ち会いのスタッフひとりひとりに目を合わせ、「さあ始めよう」といった具合にニッカリ笑って着座した。相変わらず、みなぎる自信と人的魅力にあふれた人物だった。


■ 多様化が進む台湾オンラインゲーム市場

編集部 まず2003年までの台湾ゲームビジネスの状況を教えてください。

Albert Liu氏 全体的に順調に伸びている。2002年が終わった時点で収益を上げているMMORPGはわずか数タイトルだったが、2003年はより多くのタイトルが生き残ることができた。

 この事実が示しているのは、ひとつは台湾ゲームコミュニティの成長だ。これまでオンラインゲームはコアゲーマーのものだったが、昨年は初心者ユーザー、女性ユーザーなど数多くのユーザーが新しくコミュニティに参加した。もうひとつは、MMORPG以外のカジュアルゲームもビジネスとして成立するようになったことが挙げられる。2003年の台湾市場は、市場規模、ユーザー数、ゲームの種類など、あらゆる点で成長が感じられた年だった。

 その中で、Gamaniaのビジネスはいかがでしたか?

Albert 2003年は我々Gamaniaにとって、多くの困難と危機が訪れた年となった。Gamaniaは2002年に海外進出を果たしたが、2003年でもいい結果を残せず、国内においても「天堂」のユーザー数が伸び悩んだ。

 我々のアドバンテージは、オンラインゲームの運営のノウハウ、設備、そして人材だ。今後はそのアドバンテージを維持しつつ、有力なコンテンツが誕生した暁には、万全の体制でユーザーに提供できるようにしていきたい。台湾を中心としたアジア全域で、ねばり強くオンラインビジネスを展開していく。これがGamaniaのあるべき姿だ。

 現在、特に力を入れているビジネスはなんでしょうか

Albert 大きくわけて3つある。ひとつはGamania.com。これはMMORPGをはじめ、カジュアルゲーム、アバターシステムなどをアジア規模で利用できる総合ゲームポータルサイトだ。なぜ間口を広げたかというと、ゲーム市場が発展していくにつれて、ユーザーのゲームに対する嗜好が細分化されてきて、台湾でもっとも多いユーザーを抱えるメーカーとして、より多くのユーザーが満足できるコンテンツを提供していく必要性を感じたからだ。

 ふたつ目はB to B(企業間の電子商取引)の業務だ。基本的なプランとしては、Gamania独自の課金決済システム「Gash」を他社にライセンスしていく。これによって、我々は既存のシステムを活かしたビジネスができるだけでなく、新規メーカーのMMORPG運営のための障壁を低くすることで、市場全体の活性化を促すことができる。

 3つ目はアジア全域に向けたビジネスの展開。Gamaniaが擁する780万人のユーザーに楽しんでもらうためのビジネスを現在考えている。アジアのビジネスで最近の朗報としては、韓国子会社の黒字化が挙げられる。MMORPG「巨匠」がうまく軌道に乗り、同時接続5万人、会員数34万人を獲得でき、昨年の第4四半期に黒字化を果たすことができた。

 今韓国の話がでましたが、日本の展開はどのように考えているのでしょうか?

Albert 方向性としては4つある。ひとつは、現在日本で展開しているMMORPGタイトルを、メーカーの最低限の責任として、今後もしっかりとした運営とアップデートを続けていくことだ。

 ふたつ目はグループ全体として、日本のユーザーに合った新しいコンテンツの提供をすること。これは具体的な内容についてはまだ話す段階ではないが、すでに準備を進めている。

 3つ目はB to Bのビジネスを展開していくことだ。日本のメーカーは、MMORPGを展開する際、ゲームの開発はもちろんのこと、運営、サーバー、プロモーションまで全部自前でやろうとするが、今後はそれでは難しくなっていく。我々の「Gash」システムを導入することで、MMORPG運営のハードルを著しく下げることができる。

 実際にいくつかのメーカーから声をかけてもらっている。日本で展開する「ストーンエイジ」や、今回発表した「首都高バトルオンライン」はその一例だ。日本は今のところB to Bビジネスで一番の成績を上げている。

 4つ目はGamania.comに力を入れていく。現時点でどうなるかはまだ決まっていないが、たとえば日本の大手ポータルと提携して一緒に取り組むなどの展開も考えられる。


■ NC Taiwan設立の経緯とその任務について

 今年のゲームショウで、一番大きな出来事はNC Taiwanの出展だと思います。NC Taiwan設立の経緯について教えてください。

Albert 「天堂」の台湾サービスは、GamaniaとNC Softの業務提携により実現したビジネスだ。台湾での「天堂」の成功は、両社の関係を円滑にし、「天堂 II」では、より緊密な関係を結ぶためにNC Taiwanを設立する運びとなった。出資関係はGamaniaが51%、NCが49%、NC Taiwanの会長には私が就任している。

 NC Taiwanの任務は2つある。ひとつは「天堂 II」を台湾で成功させること。これについては半ば成功したといえる。サービス開始前は、ユーザーの環境が整うのかとか、「天堂」ユーザーと食い合いになったりしないかと心配したが、すべて杞憂に終わった。多くのユーザーは現状に満足しており、「天堂 II」のユーザー数は70万人、同時接続は7万人に達した。

 「天堂」も相乗効果を発揮して、「天堂 II」サービス開始前に比べて8%から10%の新規ユーザーを獲得した。会員数は370万に達し、同時接続者数は12万から15万人と好調を維持している。

 2つ目は、中華圏を対象にした新作ゲームの研究開発だ。これまだ着手したばかりなので、具体的な内容については教えられない。

 NC Taiwanは、Gamaniaの一部であり、重要なパートナーですが、その一方でNC Softの台湾子会社であり、ライバルではないかと思うのですが?

Albert 社内にもNC Taiwanを強力なライバルの出現と見るスタッフがいるが、私はそうは思わない。「天堂 II」のサービス提供が、「天堂」の再活性化をもたらしたように、NC Taiwanの成功は、Gamaniaの成功に直結している。あくまでパートナーとして考えている。

 「天堂 II」では、ユーザーサポートやサーバー管理はGamaniaが担当しており、マーケティングも共同でやるようになっている。今回のブースも両社でお金を出し合ったんだ(笑)

 コンソール関連の話がありませんが、参入はまだしばらく先でしょうか?

Albert 結論からいうとGamaniaがコンソール市場に参入するのは間違いない。なぜそう言い切れるのかというと、Gamaniaのアドバンテージは、世界のコンソール市場の総本山である日本に支社を置いている唯一の台湾メーカーだからだ。まずは、日本のコンソールメーカーとパートナーシップを結ぶことから始まるだろう。

 しかし、問題は台湾市場にある。台湾にはコンソールゲームは流通しているが、ゲーム端末の普及数に関する統計データすら存在しない。それぐらいあいまいで小さなマーケットでしかない。その原因は主に海賊版の存在だが、問題を解決するには政府とハードメーカーの決心が必要不可欠だ。我々としてはいつでも参入できるが、それはしっかり市場が形成されてからだと考えている。

 いま「日本子会社の存在がGamaniaの強み」と発言されましたが、「首都高バトル」のような日本タイトルのライセンスは今後も続くと考えていいのでしょうか?

Albert 今後も増えていくだろう。もっとパートナーを増やして、日本の優秀なタイトルをアジアに向けて展開していくことを考えている。

 とすると、「首都高」の次のタイトルも決まっているのでしょうか

Albert ここにその責任者がいるから直接話を聞かせよう(笑)

ガマニアCOO 浅井 清氏 えーと(笑) まだ発表の段階ではないので、現段階ではお話できませんが、数社と具体的な話を進めているのは事実です。


■ 2004年の台湾ゲーム市場は3Dゲームの波が来る

 2004年の台湾ゲーム市場はどのようなものになると見ていますか?

Albert ひとつは3Dゲームの波の到来。2つ目はカジュアルゲーム市場の拡大、3つ目は海外とのB to Bビジネスの拡大、そしてGamaniaが2003年よりずっと良くなるということだ(笑)

 先ほど具体的なプランがいくつか提示されましたが、ほかにも奇策があるということですか?

Albert ゲーム開発に力を入れたい。これは、単純に自社開発というだけではなくて、各国のニーズにあったローカライズも含まれる。我々としては常にアジア規模でビジネスを考えている。台湾は調子を取り戻しつつあるし、韓国も黒字化を果たしたが、中国と日本がうまくいっているとは言い難い。今後はそれぞれの市場に合ったコンテンツを提供し、多くのユーザーに支持してもらうことで、全アジアでの成長を達成したいと考えている。

 中国は、台湾と同じ中国語圏だけにGamaniaの得意とするところだと思ってました。何がよくなかったのでしょう?

Albert 中国ビジネスがうまくいっていないのは、だいたい日本と同じ理由で、現地のテイストにあったコンテンツを提供できていない。これはゲームの運営方法の問題ではなく、あくまでコンテンツが提供できていないことによるものだ。

 解決方法としては、現地の開発会社と契約を結ぶこと、わかりやすくいうと買収だ。もうひとつは社内の開発部門にプレッシャーをかけることだ(笑)。内部開発はすでにスタートしていて、年度内に1タイトル仕上げることになっている。

 そうして最終的にはアジア最大最強のオンラインゲームパブリッシャーになると?

Albert そのとおりだ。しかしそれは2004年内の達成は無理だろう(笑)。我々は2004年はその最終目標に至る階段を着実に上っていくための方法を確立させることだ。市場の状況は常に変化しているし、今後は中華圏に対して日本の企業も本格参加してくるだろう。短期的な成功よりも長期的な視野で成功の道筋を立てていくことが重要だ。

 現時点ではっきり言える我々の目標は、アジアのゲームメーカーにGamaniaと提携したいと思ってもらうことだ。今年のGamaniaにぜひ期待してほしい

 ありがとうございました

□Gamania Digital Entertainmentのホームページ
http://www.gamania.com/
□関連情報
【2月8日】Taipei Game Show 2004ブースレポート
4強による寡占体制が進む台湾オンラインゲーム事情
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040208/tgs_03.htm
【2月7日】Taipei Game Show 2004が開幕 ますます盛り上がる台湾オンラインゲーム市場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040207/tgs_02.htm
【2月5日】Taipei Game Show 2004が明日より開幕
50万人の集客を誇る台湾最大のゲームイベント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040205/tgs_01.htm

(2004年2月9日)

[Reported by 中村聖司]


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