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Taipei Game Show 2004ブースレポート
4強による寡占体制が進む台湾オンラインゲーム事情

2月6日~9日開催

会場:台北世界貿易中心

 Taipei Game Show 2004(台北国際電玩展)2日目となる2月7日は、休日ということもあって朝から多くの行列ができていた。お昼には通路という通路は来場者ですし詰め状態になり、例年どおりの集客力を見せつけてくれた。本稿では台湾最大手のGamaniaをはじめ、大手メーカーを中心にブースレポートをお届けする。


■ Taipei Game Showはユーザーの抱き込みを計るイベント!?

ユニークなイベントの筆頭はやはりGamania。写真は子供ダンサーが踊った後に満面の笑顔で登場したAlbert Liu CEO。どこまでも政治的だ
集客力ではSoft-Worldが圧倒的。イベントの種類が多彩と、配るグッズの豊富さが勝因だろう
コスプレ撮影会もポピュラーなイベントのひとつ。コンパニオンのコンテストも行なわれている
 ブースレポートに入る前に、台湾ゲーム業界の勢力図を簡単に紹介しておきたい。台湾で現在もっとも多くの会員数を誇るメーカーは、「天堂」関連のプロダクトを一手に引き受けるGamania Digital Entertainmentだ。日本にセガファンやナムコファンといったように特定の1社に肩入れするユーザーが存在するように、台湾にもGamaniaファンが数多く存在するという。ハードこそ提供していないものの、その知名度の大きさは日本におけるSCEや任天堂に匹敵する。

 次いで「仙境伝説(ラグナロクオンライン)」を展開するSoft-World、台湾と中国での「クロスゲート」の成功で一躍大手メーカーとなったSoftstar、「ストーンエイジ」で他社に先駆けて台湾にオンラインゲームビジネスを展開したWayiあたりまでがいわゆる大手メーカーとなる。ここに挙げたタイトルは、実は昨年のTaipei Game Showでも紹介している。つまり、提供タイトルと市場シェアは去年からまったく変わっていないのだ。

 なぜこういう事態になるかというと、台湾では客の囲い込みを最重視したプロモーションを展開しているためだ。一例を挙げると、スターターキットを数十円で販売するなどして敷居を限りなく低くし、地上波と衛星を合わせて80近くの番組が受信できる環境にある自宅にイメージCMを流しまくる。顧客単体のみならず、友人も芋づる式に囲い込み、そのメーカーのユーザーであることが、ユーザーにとって利益になるように顧客をうまく誘導していく。大手はより有利に、新規はより厳しくなっているというわけである。

 このため、メーカーの立場としては、Taipei Game Showは、大手の強みを見せつけるいい機会というわけで、大手、準大手メーカーは、大きなブースに、特大のステージを設け、来場者のすべてが自社ファンであるかのような勢いで、大音量のマイクで露骨に客引きをしつつ、派手なステージイベントを繰り広げる。時間などは関係なく、あっちがやればこちらもといった感じで、延々とステージイベント合戦が繰り広げられるわけである。

 びっくりするのは、通常、ステージイベントが終わったら、ゲームの紹介や、体験会。開発者のトークショウなどが始まるものだが、Taipei Game Showでは、ダンスや舞踊といったステージイベントが終わっても、そういったゲームショウ的なイベントは行なわれない。あとはクライアントやオリジナルグッズを配ったり、コンパニオンの写真撮影会に移り、お流れとなる。「えー?」という感じだ。

 良心的なメーカーは、ステージの裏に試遊台コーナーを設け、自由にプレイせるようにしているのだが、今年はSoft-Worldのように、ステージのみで試遊台なしというメーカーも出現し、この傾向は年々高まるものと見られる。もっとも、MicrosoftやNC Taiwanは、E3や東京ゲームショウにも出展しているだけあって、しっかりとしたゲーム紹介を定期的に行なっていた。これら新規メーカーが、極端にファンサービス寄りのショウに、どう風穴を開けるかが注目されるところだ。

【ステージイベント】
会場ではどこかのブースで絶えずステージイベントが開催されている。台湾の人々は、よほどの踊り好きなのか、祭り好きなのか。いずれにしても。出演者、来場者とも相当タフだ


■ 徹底したB to B戦略でアジア制覇を目指すGamania Digital Entertainment

Gamaniaブース。今年はNC Taiwanもあるため、昨年よりひとまわり小さかった
台湾ではGamaniaが展開する元気の「首都高バトルオンライン」
大々的に出展していた「O2 JAM」。少額の料金で手軽に楽しめるライトゲームだ
 2003年は1本もヒット作に恵まれずCEO自ら「試練の年」と位置づけるほどの苦戦を強いられたGamania Digital Entertainmentは、2004年度の方向性を示す同社ブースの中心に「Gamania.com」を持ってきていた。表面上は、自社ブランドタイトルを集めたゲームポータルサイトだが、将来的にはガマニアが展開しているゲーム通貨Gashを軸とした、アジア全体へ向けたオンラインゲーム総合ポータルにする考えだ。現在、韓国で展開されているゲームポータルビジネスよりさらに一回り大きいビジネスを目論んでいるわけである。

 同社は、これまでは「天堂(リネージュ)」に代表される大型MMORPGを各国からライセンスし、子会社のある台湾、中国、日本、韓国に展開するというビジネスを、事業の中心に据えてきた。このビジネスモデルの中心になるのはMMORPGそのものであり、優秀な作品に恵まれ、市場を独占できたうちは良かったが、その実態は事実上24時間365日の運営義務を背負い、パッチのたびに不安定化するゲームのクオリティコントロールをデベロッパーに依存せざるを得ないという、きわめてリスクの高いビジネスである。同社が昨年、片手に余るほどの数のMMORPGを展開し、台湾を含むほぼ全エリアで苦戦したのは、外部から見て至極当然の話のように思える。

 今年のGamaniaブースは、MMORPGばかりが並んだ昨年とはうって変わって、アジアのゲームポータルを本気で狙う強烈な意図を感じさせる、バラエティに富んだ出展内容だった。「Counter-Strike」ライクな韓国産オンラインシューティング「火線特戦隊(Heat Project)」、元気が日本で展開しているオンラインドライブゲーム「首都高 Online(首都高バトルオンライン)」、コナミの「ビートマニア」ライクなカジュアルゲーム「02 JAM」、そして日本でもβサービスが開始されたカジュアルオンラインゲーム「Cococan」などなど、一気にビジネスの方向転換を図っていた。

 これらはGamania独自のウェブマネー「Gash」を支払うことで利用できるようになるということで、当面は「天堂」と「天堂 II」ユーザーを対象に、少しずつアジア地域のユーザーに浸透させていく考えだ。


■ スクウェア・エニックスの新作MMORPG「超武侠大戦」に会場は大盛り上がり

Softstarは今年イチオシの新作MMORPG「超武侠大戦」に全力投球だった
ステージイベントはコスプレイヤーが登壇してグッズを配るだけなのだが、大いに盛り上がった
 Softstarといえば、スクウェア・エニックスからライセンスを受けた「クロスゲート」が、台湾と中国で爆発的にヒットしたことで、一躍アジア的に有名になったメーカーだ。その数は、スクウェア・エニックスの公式発表によれば1,200万人。中国で成功することがいかにとてつもないことかを実感させる数字だ。

 現在、台湾のメーカーは、こぞって中国進出を狙っているが、Gamaniaをはじめそのほとんどが不調に終わっている。韓国最大手のNC Softもその例外ではない。その理由については、本題から外れるので省くが、中国市場は世界でもっともハイリスクハイリターンのゲーム市場であることは間違いないようだ。

 その中国市場で成功を収めたSoftstarが、明確に中国と台湾をターゲットにして、現在運営準備を進めているMMORPGが「超武侠大戦」。パートナーはやはりスクウェア・エニックス。「クロスゲート」はもともと日本向けに開発され、その後、台湾、中国でサービスが開始されたあとに、その地域に合ったバージョンアップが加えられていったが、「超武侠大戦」は最初から中国、台湾をターゲットに開発が進められている。

 開発そのものは現地だが、当然のことながらスクウェア・エニックスも制作にタッチしており、イメージイラストなどは日本人が起用されている。ゲームの内容は、中国、台湾人が大好きな武侠をモチーフにしており、舞台は中国大陸と日本。時代設定は、特定の年代は設定せず、古代から中世までをカバーしたオリエンタルファンタジーになっている。

 ステージイベントでは、イメージイラストとβテストの模様をふんだんに取り入れたプロモーションムービーが再生されていた。その中で「英雄」と呼ばれるNPCキャラクタも数多く紹介されたのだが、趙雲、貂蝉、小僑ときたので「これは『三国志』モノなのかな」と思ったら、金角(西遊記)や喜媚(封神演技)ときて、なぜだか武田信玄までいる。

 要するに「超武侠大戦」は、武侠的エッセンスを備えたアジア地域の小説の英雄豪傑が多数登場するオリエンタルファンタジーMMORPGということらしい。最終目標は所属都市の全国制覇。ちなみに、選択可能な都市は、敦煌、梁山泊、長安、洛陽、成都、江戸などがある。

 グラフィックはフル3Dで、武侠MMORPGらしく、攻撃パターンはなんでもありといった感じで、いずれも「これPvPで多人数が同時に発動しても大丈夫なのか」と心配になるほどの派手なパーティクルエフェクトで処理される。肝心のキャラクタモデルや地形のビジュアルは、お世辞にも素晴らしいとは言い難いレベルだが、台湾の水準では中の上程度のクオリティは保っている。今年の台湾、中国市場の台風の目となりそうなタイトルだ。

【超武侠大戦】
中原を制覇するという大きな目標を抱えたMMORPGの割には、キャラクタデザインは思いのほかかわいらしい。カートゥーンではないが、それに違いビジュアルだ


■ ラブラブ路線で女性ユーザー獲得を狙うSoft-World

ステージイベントだらけのSoft-worldブース
「仙境伝説 櫻の花嫁」のタイトルイメージ。ひらがなの「の」が使われているところがポイントである
 昨年「仙境伝説(ラグナロクオンライン)」の大ヒットで急成長を遂げたSoft-Worldは、子会社のGameflierが展開する「仙境伝説」の最新パッケージ「櫻の花嫁」と、自社開発部門であるChinesegamerの新作MMORPG「恋愛盒子 Online」に関連したステージベントで、例年通りの集客ぶりを見せていた。

 前述したように、今回Soft-Worldは、1台も試遊台を置かずに、コンパニオンを多数使った各種ステージイベントのみで客を集めていたのだが、本当に丸1日中何かしらのステージイベントをやっていたのには驚かされた。来場者に「あー、楽しかった、得したね」と思って帰ってもらえればそれでいい、といった感じの極端なプロモーションスタイルだ。

 さて、「仙境伝説 櫻の花嫁」は、現在韓国でテストが行なわれている結婚システムを中核とした最新パッケージ。といってもこれは無理矢理アドオン形式にして全ユーザーに売っているわけではなく、スターターキット向けに最新クライアントの注目要素をタイトル化しているだけの話で、課金ユーザーは無料でアップデートが可能になっている。わざわざこまめにタイトルを変えるのは、一度退会したユーザーに復帰を促すための戦略の一環だという。

 ちなみにブースでは来場者を沸かせるような具体的な情報の提示はなく、また店頭未発売なので、その細かい内訳はわからなかった。ちなみに現在、コンビニ等で販売されている「仙境伝説 夢想天空」はタイトルからも想像できるように、日本で10月に実装されたジュノーパッチ相当の内容が盛り込まれている。

 一方の「恋愛盒子 Online」は、台湾で徐々に増えつつある女性ユーザーをターゲットにしたロマンチック路線のMMORPGで、現在台湾ではオープンβテストが実施されている。ちなみにタイトルは「恋愛の箱」というほどの意味。

 ゲームの内容は、夢見る少女である小さな天使となって、アルバイトをしてお金をためて、デパートで可愛い洋服を買ったり、部屋の模様替えをしたり、美容院で髪型を変えたり、友人と家に招待しておしゃべりしたり、魔法でいたずらしたりといった具合で、日々の淡々とした生活にきらめきを感じて楽しむようなおままごと系のMMORPGになっている。

 台湾では、オンラインゲームでゲームを知るというケースが圧倒的に多く、親が子供に対して国内のPCメーカーに務めることを望み、そのきっかけとしてオンラインゲームをやらせるということもごく一般的だという。その意味では、おままごととMMOをミックスした同作は、親も安心して遊ばせられるタイトルだと言える。

【恋愛盒子 Online】
「恋愛盒子 Online」は、可愛らしいコンパニオンや、花嫁衣装を着た美人コンパニオンによるイメージ先行のプロモーションが展開されていた。ちなみに彼女らが手に持っているハート形のアイテムはオープンβクライアント。誘惑に耐えきれず、とりあえずひとつもらっておいた

□Taipei Game Show 2004のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□関連情報
【2月7日】Taipei Game Show 2004が明日より開幕
50万人の集客を誇る台湾最大のゲームイベント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040207/tgs_02.htm
【2月5日】Taipei Game Show 2004が明日より開幕
50万人の集客を誇る台湾最大のゲームイベント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040205/tgs_01.htm

(2004年2月8日)

[Reported by 中村聖司]


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