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★PS2ゲームレビュー★
制作は、主観視点RPGの名作を数多輩出しているフロム・ソフトウェア。スタート数秒後に、とある仕掛けで主人公が死亡した瞬間、フロム・ソフトウェアの遊び心というか、伝統的な通過儀礼のようなものを感じた。ツボにハマるというか“琴線に直撃”という感じである。
簡単なストーリーや特徴などは以前に紹介しているため、今回はプレイ体験をもとにしたレビューをお届けする。ちなみに、クリアの参考タイムは22時間18分+α。クリア時の装備・強さのまま2周目を開始できるので、アイテムをコンプリートしたい人は、まず1周目をクリアしておいたほうがいい。
■ 操作性は前作より向上。連続攻撃のスマッシュ感 「シャドウタワー アビス」は、フロム・ソフトウェアの十八番である主観視点のRPGだ。移動は左スティック、L・Rボタンでの平行移動など、「キングスフィールド」シリーズや「シャドウタワー」シリーズの移動感覚とほぼ同じ。どちらかのシリーズ作品をプレイしたことがあるユーザーなら、すぐに慣れるはずだ。 移動速度は、前作「シャドウタワー」に比べるとアップしている。ダッシュや走り移動はないが、クリーチャーの攻撃は充分に回避できる移動速度であり、過度なストレスを感じることはない。
右スティックでは、近接攻撃をコントロールする。剣や斧など近接攻撃用の武器は、スティックを倒す方向と連動。右スティックを上に倒すことで繰り出せる「突き」、下倒しでの「上段からの振り下ろし」など、直感的な操作性を実現している。攻撃スピードも前作より向上しているため、戦闘スピードは格段にテンポアップしている。
■ 攻略の大部分を司る重要武器「銃」 今作では、遠距離攻撃用の武器に近代兵器の“銃”が用意されている。銃の操作は、アナログスティックの右スティックを1回押込むことで“構え”状態となり、さらに1度押込むと弾が打ち出せる。これら一連の動作は非常にレスポンスがよく、銃の種類にもよるが、連射性能は総じて高い。
銃の利点は、遠距離攻撃の利便性もさることながら、パラメーターの断、砕、貫が、近接攻撃用の武器に匹敵するほど高いという点だ。前作では、遠距離攻撃の魔法に対する抵抗力が強いクリーチャーには、弓矢で対抗するしか手段がなかった。弓矢は威力が低く、総弾数が1発なのでチマチマとダメージを与えることしかできなかった。しかし、今作の銃なら、魔法抵抗力が高いクリーチャー、接近戦で麻痺攻撃を仕掛けてくるといった危険なクリーチャーを、遠くから素早く安全に仕留めることが可能なのだ。
攻撃力が高い遠距離攻撃の“銃”を無効化する敵は皆無……となれば「銃だけ使っていたほうが楽なのでは?」と思われるだろう。実際その通りで、筆者も殲滅した敵の大半を銃(ライフル系)で仕留めた、クリアスタイルとしてはイージーだが、唯一“銃の弾薬数”には注意する必要がある。クリーチャーを倒した時のドロップアイテムや、ショップの在庫数には限りがある。無駄弾を撃ちすぎると、ゲーム後半で弾薬不足に悩まされることになる。
そこで、ロードネメシス本体など剣で殴ってパターンにハメられる一部のボスキャラクタ、動きが素早く照準を合わせにくい(無駄弾を撃たされやすい)クリーチャーには、剣か魔法で対処したほうがいい。要するに、無駄弾を撃ちすぎたと思ったら“データをリロードしたほうがいい”ということだ。ちなみに、弓矢を使う機会は皆無。実用性が低いため“趣味の武器”ともいえる。
■ プレーヤーの創造力と推理力が試される謎解き、そしてシナリオの謎 「シャドウタワー アビス」は、会話がとても少ないRPGだ。会話できる人間は数名で、しかもホラー映画のエキストラ並にすぐ死ぬ。そのため、主に会話をするのはクリーチャーが相手ということになる。有効なヒントの入手先といえば、絶命した人間が壁に書き残した血文字。情報収集さえも、孤独かつ不穏な空気が充満している。
シナリオに関しては、これも「シャドウタワー」シリーズらしいというべきか、エンディングを観てもシナリオの詳細が完全に判明しない。前述したように、一般的なRPGと比較して情報量が少ないため、プレーヤーの想像力でストーリーの外郭を類推するくらいしかできないのだ。
たとえば、プレーヤーが探索を続ける“単眼の槍”の謎に対する答えは、ボスクリーチャーの台詞、闘鬼ルルフォンのメッセージ、クリーチャー図鑑の解説から、自分なりの回答を導き出すしかない、といった具合だ。これは不親切とも取れるが、プレーヤーに想像の余地が残されているともいえる。
■ クリーチャーの棲息感覚を強調するSE中心のサウンド 「シャドウタワー アビス」のサウンドは、各エリアに踏み込んだ際に短いエリアBGMが流れ、その後は静寂の中に自然音のみが発生するという演出が大半を占める。必然的に、プレーヤーが耳にするサウンドは、銃の発砲音、クリーチャーが発する足音や唸り声といったSEが大部分。一抹の寂しさを感じるかもしれないが、それも不安感を煽るひとつの演出手法。下手にBGMを垂れ流されたのでは、今作のような緊張感は生まれないだろう。 また、このSE中心のサウンドは、クリーチャーの生命感の演出にも一役買っている。昆虫タイプのギチギチとした鳴き声、鳥類の羽ばたきといった生々しいSEは、クリーチャーがダンジョン内に生息している証として強い説得力を持つ。扉の向こうに居るクリーチャーの咆哮に、戦慄を覚えるシーンも多々あることだろう。
攻略面でも、SEは重要だ。たとえば、犬のようなクリーチャー「ネガ・モルドーリィ」は、一定周期で鳴り響くボスクリーチャーの吠え声を聞くと、萎縮して動きが止まる。この機に乗じて攻撃を仕掛ければ、ノーダメージで倒すことも可能だ。
SE以外のBGMで耳に残るのが、体力が減少した時に流れる心臓の鼓動音。この心音は体力を回復するまで鳴り止まないため、追い詰められた状況では特に焦燥感が煽られる。プレイ中、もっともプレーヤーが聞く機会の多い固定BGMが“心音”というのが、何ともシュールで「シャドウタワー」シリーズらしい演出といえる。
今作のサウンドは、マルチチャンネルサラウンドシステムのDolbyProLogic IIに対応している。サウンドオプションで、モノラル、ステレオ、DolbyProLogic IIの切り替えが可能。5.1chのサウンド環境をもっている人は、是非ともそれで「シャドウタワー アビス」をプレイしてほしい。クリーチャーとの位置関係はもとより、多層構造であるダンジョンを踏破している感覚が、一般的なサウンド環境とは雲泥の差が生じるからだ。
PSからPS2にプラットフォームが移行し、グラフィックスから操作方法までグレードアップした「シャドウタワー アビス」。それらはおおむね成功し、遊びやすいRPGとしての完成度も高められたといえる。客観的には、雰囲気を損なうことなく正当進化に成功したシリーズ最新作と評価したい。 だが、我ながら主観的で無茶苦茶な意見だとは思うが、「シャドウタワー アビス」についてひとつの不満点を挙げたい。それは、「シャドウタワー アビス」が「シャドウタワー」シリーズの続編としては簡単すぎるという点だ。一般的なゲームの基準からすれば、「シャドウタワー アビス」の難易度は十分高いと思う。だが、前作「シャドウタワー」で感じたデストロイな難度は、今作で実装された物理的攻撃力で遠距離攻撃が行なえる銃の存在、シリーズを通して使える攻略スタイルの定着などにより、相当マイルドなレベルに落ち着いている。 艱難辛苦に耐えて前作をプレイしたファンとしては難度に不満が残るかもしれないが、シリーズ未体験のプレーヤーに対しては、難易度に比例して敷居が低くなっていることは確かだ。1人称視点のRPGが苦手という人は、この「シャドウタワー アビス」で慣らし運転を始めてみるといいだろう。
「シャドウタワー」マニアは、全クリーチャーの殲滅、銃無しクリア、回復薬無しクリアなど、制限付きのプレイでマゾヒスティックな高揚感が体験できる。ハード、イージーなどメーカーが用意した難易度に依存せず、自分なりにプレイスタイルを調整することでドップリと世界にハマり込むことができる。そんなデンジャーかつストイックな冒険を継続できる中毒性が「シャドウタワー」シリーズ最大の魅力といえるだろう。
□フロム・ソフトウェアのホームページ (2003年10月23日) [Reported by 福田柵太郎]
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