|
ガンホーCOO森下一喜氏インタビュー |
続いては、「ラグナロクオンライン」の今後のプランについて、2月26日に発表されたアップデート構想をもう少し掘り下げる形でお伺いしてみた。
特筆すべきは日本オリジナル企画という「アマツ国」の存在が明らかになったこと。ひな祭りイベントで実装されたアイテムやひな壇はここから流れてきたという。そのほか、ネットカフェでの大々的な展開、野外での大規模なガンホー主催イベントなど明らかになった。
■ 日本オリジナル要素 東方の新大陸「アマツ国」とは?
2月25日に実装されたひな壇。数カ所のフィールドに設置されている |
アマツ国の企画書。かろうじて天津国(アマツ)、ツクモなどの文字が確認できる |
ガンホー森下氏(以下、森下) これは我々のスケジュール要請をGravity側に確認した上で発表していますので、まず間違いないと思います。とりあえず3月にペットシステム。これでEpisode 1.5は終了となります。
4月のEpisode 2.0に関しては、基本的に韓国でEpisode 3.0と呼ばれているものと同じ内容になります。これはどういうことかというと、各国でバージョンネームの違いだけでなく、内容にも独自性を持たせていくという今後の戦略の一環からです。韓国ではEpisode 3.0、日本ではEpisode 2.0、サブタイトルは「Under the Illusion」としました。これは日本だけの呼称です。
編 なるほど。そのEpisode 2.0ですが、今回発表された内容を見る限りでは、当初の構想にあった「ストーリーの追加」に関する部分がごっそり抜け落ちています。これは構想自体がなくなったということですか?
森下 いえ、バックグラウンドの設定は、コモドやジュノーといったエリアの実装と共に予定どおり導入されます。ただ、ストーリーの展開のしかたは、クエストやNPCによってもたらされるものではなく、GMイベントのような形を考えています。つまり我々が手動で展開させる形式を取ります。
詳しくはまだお話できませんが、現在開催されているひな祭りイベントも、実はEpisode 2.0とストーリー的な部分で連動性があります。
編 単なる時節イベントではなく連動性があると。とするとEpisode 2.0で、発展的なイベントが開催されるわけですか?
森下 ひな祭りで使用した「ひな壇」は、ミッドガルド大陸ではなく異国から来たわけです。ひな祭りイベントのバックグラウンドを説明しますと、ルーンミッドガッツ王国が、その異国から船で客人を呼んだのですが、荷物だけが先に付き、現在はそれを見た冒険者たちがひな壇を見て物珍しさから写真を撮っているという段階です。
今回はカプラ職員もイベントに使っています。これは正確にいうと彼女たちは職務規程違反を犯しているのですが(笑)。彼女たちにひなあられなどを見せるといいことがあるかもしれません。
編 なるほど、それらの布石は今後Episode 2.0でどう展開されていくのでしょうか?
森下 現段階では詳しくはお話しできませんが、ミッドガルド大陸の当方に「アマツ国」というものを追加しようと考えています。ここには大陸とは異なる文化、風俗があり、実装後は冒険者たちも船を使って渡ることができるようになります。当地オリジナルのモンスター、アイテムなども手に入ります。
編 それは初めて聞きました。まだ韓国でも公開されていない情報ですね。
森下 当然です。というのはこの企画はガンホーオリジナルのものだからです。実装されるのは日本になります。規模としてはルティエと同じぐらいになる予定です。
編 なるほど、確かにひな祭りも日本オリジナルのイベントですね。
森下 はい。実装後は随時エピソードも追加して、日本だけのオリジナルストーリーも入れていこうと考えています。アマツにはツクモと呼ばれる村などもあって、ここでは巫女さんイベントなどの開催を計画しています
編 実装はいつぐらい?
森下 現在の予定では年内を予定しています。
ひな祭りイベント期間中に、イベントアイテムを持ってカプラ本社のカプラ職員に話しかけるとさまざまなアイテムと交換することができる |
■ ギルド戦争とEpisode 2.0との関連性とは?
編 ところで、Episode 2.0で追加される新しい街「コモド」ですが、これはギャンブルの街ということですが、ここでは何で遊べるのでしょうか?
森下 基本的にはカジノ的な内容になるはずです。はずですというのは、現段階ではGravity内部でもまだ試行錯誤の段階で最終的にどのような内容になるのかというのが見えてないからです。
編 今回発表したアップデートプランの中で、日本のプレーヤーに一番ウケそうなものはどれだと考えていますか?
森下 ペットシステムではないでしょうか。「ポケットモンスター」や「たまごっち」など、育成、コレクター性の高いゲームが日本で受ける傾向にありますので、好まれるんじゃないかと考えています。
編 個人的に一番興味をひいたのはギルド戦争ですが、これについてはいかがですか?
森下 現在、競技場でPvP(Player VS Player)を行なうことができますが、実はそれほど人気はありません。だからギルド戦争もウケないというわけではないと思っています。というのはこれまでギルドの意味合いというのがほとんどなく、単にチャットグループでしかなかったわけですが、ギルド戦争システムが導入されることで、ギルドの意味合いそしてギルドメンバーとの団結感などが生まれると考えています。
また、これはビジネス的な話になりますが、特に韓国では、ギルド戦争によってギルド単位での行動が増え、それによってユーザーがゲームから離れにくくなる。つまりゲームの延命策としてもっとも適しているのです。
編 確かにそういう側面もありそうですね。ただ、私自身はこのプランを一読したときに、ゲームの雰囲気が一気に殺伐化してしまうような、そんな印象を持ちました。「ラグナロク」にギルド戦争は必ずしも必要ではない気がしているのですが、この点についていかがお考えですか?
森下 「なぜ戦うのか」ということに関しては、そこに戦いがあるからということになります。現在は、冒険者たちは平和に暮らしているけれども、実は気づかないうちに何事かが始まろうとしている……、そんな感じですが、このギルド戦争システムも「何事か」のひとつに過ぎません。当然、Episode 2.0にも関わりを持ち、ユーザー間が争うことが前提となって、ストーリーが展開していきます。なるほどこれが「Under The Illusion」だなあとなるように。
編 それはユーザーが戦争を行なっている間に、とんでもない敵が現われると?
森下 いやいやいや、内緒です(笑) まだ秘密の内容です。
編 それにしても、Episode 2.0が導入されることで、冒険者たちのプレイスタイルは大きくかわりそうですね。
森下 ユーザーは常に変化を求めますから、変えていかざるを得ないという側面もありますが、我々としてはなぜアップデートするのか、という面も大事にしてます。
たとえば、韓国の次のアップデートは「Episode 3.0 コモドバランスパッチ」というわけですが、これのどこにエピソードが入っているのかというとまったく入ってないわけです(笑)。我々のEpisode 2.0では、ギルド戦争を実装することによって、人々が新たな欲望を持ち、少し世界の雰囲気が変わってくるはずです。この状態が来ることによって世界に何かが起こります。
編 それは何でしょうか(笑)
森下 それはお話しできません(笑) ただ、ギルド戦争が導入されたからといって、すべてのギルドが戦争に参加するわけではありませんし、これまでどおりのプレイスタイルで遊ぶことも可能です。
編 昨年12月にGravityが発表した、3Dモンスターや新二次職、結婚システム、天候時間の概念の追加などは、今回はやばやと先送りされてしまった印象がありますが?
森下 それはまだぜんぜん完成の目処が立っていないからです。ただいずれにしても2003年内というお約束は守れると思います
編 個人的に残念なのは新二次職の先送りです。転職可能な街だけが先に追加されることになったわけですが、実装はもう少しかかりそうなのでしょうか?
森下 新二次職については、まだ完成の域に達していないということもありますが、延期の最大の理由は、その前に既存のジョブのバランスをしっかり取りたいということがあります。
編 今回のスキル追加や一部パラメータの再調整などもその一環ですか?
森下 そういうことになります。
編 日本での新二次職の発表は9月でしたからすでに相当待っているユーザーも多いと思います。いま一次職のまま待っているユーザーさんは辛いですね。
森下 私自身も一次職のままのキャラクタがひとりいます(笑) 商人なのですが、アルケミストになりたいなと。そのほかにはノービスのまま育てているキャラクタもいます。
編 なるほど、何にでもなれるようにということですか(笑)。ちなみに台湾では6月ぐらいに2-2次職(新二次職)を追加するという予定を聞きましたが日本ではいかがですか?
森下 もう少しあとになると見ています。台湾でもそのスケジュールでは無理だと思います。仮にその段階でリリースしたとしてもしっかりバランスが取れているとはいえない内容になると思います。
■ 今後のマーケティング展開について
編 今回、結果的に料金通常化の後にEpisode 2.0が実装されることになったわけですが、これに関してユーザーさんから反応はあったりしますか?
森下 いやそういうのはありません。「料金は引き続き払うからもっとしっかりしろ」という激励のご意見がほとんどです。世界的な水準で見ても1,480円という設定は高からず安からずだと思っています。今のところ日本がもっとも安い設定になっています。これについてGravityからクレームが付いたこともあるぐらいです。
編 台湾の街を歩いて驚いたのですが、「ラグナロク」のスターターパックがわずか39台湾元で手に入ります。日本円で150円ぐらいで、プレイ権なども含まれていることを考慮に入れると確実に元値割れしてますが、こうした試みはやはり日本では難しいのでしょうか?
森下 日本でもやりたいという希望は常に持ってます。しかし、日本ではコンビニが大々的にゲームを取り扱うということがありませんから、今のところ実現は難しいというのが現状です。
台湾のコンビニでは、キチンとした棚を設けてPCゲームの大きなパッケージをどかどか置いていますが、日本ではゲームのほかに置くべき商品がすでに無数にありますし、またコンビニ側の取り分というものが設定されていますから、日本では元値割れのような安い製品は「売っても儲からないから最初からやらない」ということになります。
ただ、我々としても流通経路を増やすという試みは続けていきたいと考えています。たとえば、現在取り組んでいるネットカフェ展開もそのひとつです。全国で2,000店舗あって、年に数百万人の利用者がいます。
これは単にネットカフェ利用者に「ラグナロク」で遊んでもらうというだけでなくて、将来的には情報の発信基地として、またコミュニティが生まれる場所として、リアルに楽しんでもらえるチャネルのひとつになればいいなと考えています。
編 マーケティングについて何か今後のプランはありますか?
森下 繰り返しになりますが、まずは顧客満足度のアップです。そしてサポート体制の充実。それからこれはユーザーさんからも指摘されていることですが「イベントが少ない!」。これをどうにかします。
イベントを開催するとサーバーに対して負荷がかかることは事実ですが、イベントをやらないとGMが育ちませんし、そもそもガンホーが考えるオンラインエンターテインメントではなくなってしまいます。イベントとはユーザーさんを楽しませることであると同時に我々が勉強する機会でもあるわけです。Episode 2.0以後は、イベントを定期的にキチッとやっていくつもりです。あとはネットカフェ方面の強化に力を入れます。
編 それは「1DAYチケット@ネットカフェ」のほかに何かやるということですか?
森下 現在契約を結んでいるネットカフェは90店舗ぐらいですが、いま検討しているのは、ネットカフェを使ったオフラインイベントの開催。これは別途事業者さんに向けた説明会などを行ない、イベント運営マニュアルなども配布し、頑張っているネットカフェさんに対しては成功事例として広く告知するといったことも行なっていきます。
編 ネットカフェに力を入れる理由というのは?
森下 ネットカフェでタッチ&トライをして欲しいというところ、それから友達が友達を紹介するというシステムを自然な形で構築したいというところがあります。やはりデータを見ても、MMORPGは友達の紹介で始めたというユーザーが多いですから、ここに力を入れることは重要だと考えています。
編 オフラインに関しては、ガンホー主催イベントもこのところ開催されてませんね?
森下 同人イベントはやっているのですが、主催イベントは確かにこのところやっていません。というのはですね、言い訳になりますが、「じゃあやります、皆さん来てください」といったときにどの程度のキャパシティの会場を用意すればいいのか、判断しかねている部分があるんです。
やるからにはできるだけ多くのひとに来てもらいたい一方で、本当に来たい人に来てもらいたいというところがあります。
編 軽く数千人は集まりそうですね。
森下 そうですね。我々としては無料でやりたいのですが、本当に来たい人に来てもらいたいので、少額の料金を頂戴して限定でやるというのがひとつ、もうひとつの代案としては、暖かくなってきたらやれるなと(笑)。
編 はははは、なるほど野外ですか
森下 今はまだ外は寒いですから。熱くもなく天気も良い春頃にやりたいなと考えています。現在、真面目に企画を詰めていっている段階です。いかにお客さんに満足して帰ってもらえるかという点に気を配ってます。キツキツだったねとか、ゲームと同じようにログインできなかったね(笑)。とか言われないように万全の体制で開催したいと考えています。
編 オフラインイベントに関して、ユーザーさんに対して何かコメントはありますか?
森下 やはり、運営者側の顔が実際に見られて、意見交換できるいい機会ですので、ぜひ足を運んでいただければと思います。逆に我々としてもユーザーさんとフランクなコミュニケーションを行なうことで得るものも大きいと考えています。
編 ありがとうございました。
(C) 2002.GungHo Online Entertainment,Inc. All Rights Reserved.
□ガンホーのホームページ
http://www.gungho.jp/
□「ラグナロクオンライン」のホームページ
http://www.ragnarokonline.jp/
□関連情報
【2月27日】ガンホー、「ラグナロクオンライン」アップデート構想を発表
「Episode 2.0 Under the Illusion」は4月 まずはペットシステムから
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030226/gungho.htm
【2月17日】ガンホー、「1DAYチケット@ネットカフェ」を販売
100円で2日間プレイできるRO公認カフェ専売チケット
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030217/ragna.htm
【12月14日】ユーザーサービス満点のGravityブースレポート
「ラグナロクオンライン」2003年以降の予定を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021214/gravity.htm
【9月30日】Gravity、「ラグナロクオンライン 1.5」を正式発表
クルセイダー、モンク、ダンサーなど新二次職を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020930/ragfes2.htm
【11月6日】ガンホー、「ラグナロクオンライン Episode1.5 -Attack of the Ancient」を正式発表 “ポリン”が飼えるペットシステムの導入などなど
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021106/ragna.htm
(2003年3月13日)
[Reported by 中村聖司]
GAME Watchホームページ |
|